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遅れすぎた謝罪


「春也、お粥出来たよ」

ガチャ とドアが開き、部屋に夏希が入ってくる。

その左手にはお粥が入っているであろう茶碗が乗ったお盆を持っていた。


「おせぇよ……」

実際そこまで時間はたっていなかったがそう声をかけた。


「なに、そんなにお腹空いてたの? 」

「いや…別に、そんなじゃないけど」

流石に一人でいて寂しかったとか言えなかった。

病みって怖いな… ここまで素の自分の弱さが出るものなのか……。


「あっそ。どう? 食べれそう? 」

夏希は、お盆をテーブルに置いて、ベッドのそばに腰を下ろした。


「まぁ。多分、大丈夫」

起き上がり、マスクを取ると美味そうなにおいがする。

朝から何も口にしてないことを思うとやはり、空腹感がやってきた。

夏希は茶碗を手に取り、俺のもとへ寄ってくる。

「はい。食べさせてあげようか? 」

彼女はスプーンでお粥を掬って微笑む。

きっと冗談で言っているのだと思う。……が、


「……あぁ、頼むわ 」

自分でも予想外の言葉だった。風邪を引いていることを言い訳にして甘えたかったのだろう。

夏希は目を丸くして少し驚いたようなリアクションをしている。

「え? 本当に食べさせるの? 」

「いや、お前が言ってきたんだろ……」

「えと、冗談だったんだけど」


俺も、自分が一体何を欲していてそんなことを言ったのか解せなかった。

「……じゃあ、はい。」

すると夏希は、唐突にお粥を掬ったスプーンを俺に突き出してくる。

俺は、それにぎこちなく口を運ぶ。

「どう? 美味しい? 」

「普通に旨い……」


「……そう。ならよかった」

夏希はちょっと嬉しそうだった。


「てゆーか、『ふーふー』とか『あーん』とかねーの? 」

言ってはみるが、そんなの漫画で見たりしたものだ。実際にやってもらうのには羞恥心もある。


「そんなんしないって。春也猫舌だから、もう冷ましてあるし」

夏希は微笑みながらそう言う。


確かに、俺は熱いものが苦手だが

……多分、それを夏希に言ったことはなかった。


彼女は俺のことをよく知っているし、夏希に大事にされていることもわかる。

だが俺は、今まで夏希に何をしてあげられただろうか。ろくに理解もせず、また思わせ振りな態度に彼女を傷付けてしまっているのではないか。

自意識過剰かもしれないが、そう考えてしまうとつい俯いてしまう。


すると夏希が口を開く

「やっぱり、今日元気ないね。大丈夫? 」

彼女は、不安気な顔でそう尋ねる。


そんな顔を見ていると、考えるより先に体が動いた。

「ごめん。ちょっと……」

ここまで、自分を想ってくれている夏希がとても愛しかった。

自分が何をしているかもわからず、

気付けば 彼女に抱きついていた。


――あぁ……きっと、風邪を引いているせいだ


衝動に駆られて俺の理性など既に抵抗力を失っていた。


「は、春也? え、ちょっと何?! 」

突然の俺の行動に、夏希が焦るのも無理はない。

その勢いで夏希が持っていた茶碗は床に落ちてしまう。カーペットを敷いていたのでかろうじて割れはしなかったが、中のお粥は勿論溢れてしまった。


驚いていた夏希も、落ち着いてきたようで「……どうしたの」と俺に声をかけてきた。


「わりぃ。もうちょっとだけこのまま……」

俺が答えると、夏希が小さく笑う。

「春也熱ありすぎ。凄い汗かいてるし」


そう言われるが今はそんなことはどうでもいい。

一層彼女を強く抱き締める。

「今だけだから……」

弱々しい声でその言葉を吐き出す。


「今だけ、だよね……」

夏希も俺の背中へ手をまわし、小さく耳元で呟く。


そして俺は口を開く。

「夏希……

――ごめんな」


夏希にしたかった過去に対しての謝罪。


それは今まで言えなかった、彼女への言葉だった――











少し遅れましたがネタ切れじゃないっす!

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