夢で逢えたら
ちょっとエロ成分があります。
◆暗黒騎士クロキ
今日のポレンとの修行が終わり、自分の屋敷へと戻る。
屋敷は魔王城の郊外にある。
屋敷といっても小さな城と言っても良い大きさだ。
中に入るとグゥノを初めとした女性騎士達が出迎えてくれる。
「おかえりなさいませ。閣下」
「ただいまグゥノ卿。変わった事はなかったかい?」
「いえ、特には……。そういえば、沼地の大魔女様がお見えになられました」
沼地の大魔女とはヘルカートの事だ。
そういえば、昼食を食べた後、クーナの様子を見に行くと言っていた。
「ただ、その事でクーナ様が不機嫌になられました」
「そっ……。そうなんだ……」
冷や汗が流れるのを感じる。
クーナはヘルカートが苦手のようだ。
でも、最初に強くなりたいからとヘルカートの元へ弟子入りしたのはクーナだ。
一応クーナの恩人だし、断る事はさすがに出来ない。
しかし、クーナを宥めに行くべきだろう。
「それじゃあクーナを宥めに行かないといけないな」
そう言ってグゥノ達を見る。
「閣下。どうしました?」
「いや。いつも思うけど……。その格好はどうなの?」
グゥノ達は屋敷にいる間は何故か暗黒騎士の格好では無く、黒いボンテージを着ている。
後ろから見るとお尻が丸出しだ。
デイモン族は天使族と同じぐらい、美しい種族だ。
その女性デイモン達がそういう格好をされると目のやり場に困る。
「えっ? 閣下はこういう格好が好きなのでしょう?」
グゥノが不思議そうに言う。
ちょっと待って欲しい。
自分はグゥノ達からどういう目で見られているのだろう?
確かに大好きだ!!
しかし、バレないようにしていたはずだ。
「確かに好きだけど……。すごく、下半身に悪いのですが……」
「閣下。私達はそれが目的でこういう格好をしているのですが? それよりも鎧を脱ぐのを手伝いますね」
グゥノ達が胸の谷間を見せつけるように寄って来る。
「あうあう……」
グゥノ達から鎧を脱がされる。
そして、上等な黒絹で作られた衣装を着せられる。
「ありがとうグゥノ卿……」
「いえ、気になされないで下さい」
そう言ってグゥノは魅力的に笑う。
彼女達は上級騎士だ。だから、こんな事までする必要は無い。
現に闇エルフと人熊族のメイドがこの屋敷にいる。
だが、自分の世話は彼女達がする。
流されるままにお世話をされている。あまり良く無い状況だと思う。
着替えた後、クーナの所に行く。
この屋敷のお姫様は寝室でふて寝をしている。
「お帰りクロキ」
気配を感じたのか寝台からこちらを見ずに言う。
いつものように抱き着いて来ない。不機嫌な証拠だ。
「ただいまクーナ」
寝台に近づくとクーナの頬をさわる。
するとクーナが抱き着く。
抱き着いてはいるがふくれっ面になっている。
それも、また可愛いが機嫌を治してもらいたい。
「ぶう~」
「ごめんごめん。機嫌を治してクーナ」
自分は頭を撫でながらクーナを宥める。
「わかった……。でも一杯愛してくれないと駄目だぞ」
そう言ってクーナは甘えてくるのだった。
◆デイモンの女性騎士グゥノ
「閣下の鎧を任せたぞ」
クロキ様の着替えを手伝うと、脱がせた鎧を人熊の少女に渡す。
「はいグゥノ様」
私の半分ぐらいの身長しかない少女には閣下の鎧は重そうに見える。
彼女達は普段人間の少女の姿をしていても、正体が熊なのでかなり力がある。
彼女達はとても強い種族でゴブリンやオークの数匹ぐらいなら子供でも勝つことが出来る
もっとも、私達高貴なデイモン族に比べれば遥かに弱い。
「ルコラ。急いで閣下の食事を用意せよ。閣下はおそらく昼食をあまり取っていない」
私は闇エルフのメイドのルコラに命じる。
クロキ様はオーク族の食事を好まれない。
だから、昼食をあまり食べていないはずである。
どちらかといえば、エルフ族の食事が好みだ。
そのため、エルフのメイドが料理を作っている。
だけど、料理だけだ。
ナルゴル最強の騎士の世話は私達デイモンがすべきである。
それだけは譲れない。
「わかりました、グゥノ様。いつものように精の付くもので良いのですね?」
ルコラが確認するように聞く。
私は振り返り当然のように答える。
「もちろんだとも♪」
◆黒髪の賢者チユキ
グリフォンに乗って北へと向かう。
目指すは北の都ヴェロス。
空は雲が多いがグリフォンが飛ぶのに問題は無い。
「結局。出発するのが遅くなってしまったわね。レイジ君」
「そうだな。チユキ」
横でペガサスに乗って飛んでいるレイジ言う。
出発が遅れた理由は特に無い。
一応雑用が色々とあったが、北へ様子を見に行った後からでも出来る内容だ。
遅れる理由にはならない。
私は横で飛ぶレイジの顔を見る。
いつもは積極的に動くのにそれが無い。
私にはわかる。レイジは様子を見に行く事に気が進まないのだ。
おそらくシロネの幼馴染を怖れている。
だから、足が鈍った。
怖れを知らないレイジがこうなってしまった事に驚きを隠せない。
もっとも当の本人は怖がっている事を認めないだろう。
「ねえ、チユキさん。そろそろ、休まない?」
ヒポグリフに乗っているリノが休憩を提案する。
確かに朝に出てからずっと飛んでいる。
「え~。リノちゃん。まだ先は長いよ。もう休むの?」
自前の翼を生やして飛んでいるシロネが不満そうに言う。
シロネは直線を行くだけならこの中で一番速い。
彼女としてはもっと先に行きたいのだろう。
「シロネさん。急ぎたい気持ちはわかるけど。今は休みましょう。確かにもう少し進めそうだけど、きちんとした宿の所で休みたいでしょ?」
私は諭すようにいうが、シロネは不満そうだ。
まだ、日が暮れるのには時間がある。
しかし、きちんとした宿屋がある国は少ない。
下手をすると野宿をしなければならないだろう。
だが、この近くには少し大きな国があるはずだ。
今夜はそこに宿泊しよう。
「シロネ。今はサホコもカヤもいない。食事を作る者がいないのでは野営は無理だ。ここは休もう」
レイジがシロネを宥める。
サホコはキョウカとカヤと共に留守番をしている。
そのため今はいない。
そして、私達の中で食事を作る事ができるのはサホコとカヤだけだ。
そこら辺から食材を拾って来ても調理ができない以上、野営は無理だ。
手軽に食べる事が出来る携帯食を持って来ているが、なるべく消費したくない。
そういう理由からも今日は早めに宿をとるべきだろう。
「うう~。わかったよ。レイジ君」
レイジがそう言うとシロネは渋々納得したように言う。
私達5人は地上に降りる。
降りた先には1つの国がある。
確か名前はセンデア王国。
100年前に若き王様が妻子を捨て、エルフの娘と駆け落ちした事で有名になった国だ。
2人はここから南のハーディの森へと逃げたらしい。
その後、2人がどうなったのかわからないが、人間の方は死んでいるだろう。
それ以来、国全体がエルフ嫌いになったらしいが、私達には関係が無い事だ。
「ナオさん。監視している者が付けている様子はある?」
地上に降りると私はナオに聞く。
「いや、何も感じないっす。付けているのなら、いぶり出せると思ったんすけどね。さすがに空を飛んでまでは付いて来れないみたいっすね……」
ナオは首を横に振る。
私達は何者かに監視されているみたいなのだ。
ナオが時々、嫌な気配を感じると言っている。
今回の旅の目的とは別にその監視者を捕まえるという目的もあった。だけど、付いて来ていないならどうしようもない。
「ナオちゃん。ルビーちゃんとは違うの?」
ルビーというのはナオが以前に捕まえた私達を監視していた火ねずみの事だ。
そのねずみはシロネの幼馴染に連れられてナルゴルに帰ったらしい。
「いや、リノちゃん。ルビーだったら、わかるっすよ……。監視しているのはものすごく気持ち悪い視線をしてるっすよ。ルビーじゃないっす」
「付けていないって事はサホコさん達の方にいるのかな?」
シロネが首を傾げる。
「シロネさん。一応、カヤには何かあったら知らせてくれる事になっているわ。いざとなれば転移で戻る手はずになっているはずよ」
今の所、そんな連絡は無い。
「もしサホコに手を出す気なら、相手が誰であれ、直ぐに戻って剣の錆にしてやる」
レイジが不敵な笑みを浮かべる。
まあ、やる気になってくれるのは良い事だ。
気落ちされたままではこちらが困る。
それにしても私達を監視している気持ち悪い者。一体何者なのだろうか?
もしかすると、旅の最中に出会うかもしれない。
そんな予感がした。
◆白銀の魔女クーナ
光り輝く庭園にクーナはいる。
庭園には白い花が咲き、青い小さな鳥が綺麗な声で歌っている。
こんな場所はナルゴルにはない。
これは夢だ。その事がわかる。
クーナは今エリオスの天宮にいるのだ。
ナルゴルにいるはずのクーナが突然、エリオスにいるのだ。普通に考えたら、これは有りえない事だ。
だから、これは夢だ。
クーナは庭園を歩く。
すると、目の前に開けた場所が現れる。
そこに供えられた卓の椅子に座る。
すでに先客は待っている。
「待っていたわよ。分身」
先客はクーナの事を分身と呼ぶ。
自分こそが本物とでも言いたいようだ。
「何の用だ? レーナ」
目の前の本物を睨む。
女神レーナ。
クーナの元になった者だ。
元が一緒なためかクーナとレーナは精神が繋がっている。
そのため、このように夢の中で会う事ができる。
「呼びだした理由は抗議するためよ。分身。全く何で分身の貴方ばかり愛されているのよ」
レーナが怒ったように言うがそんな事は知らない。
「仕方が無いだろう。お前はエリオスに居るのだ。側にいるクーナが愛されるのは当然だぞ」
「それにしても愛され過ぎよ!!何よ、あのメイド服とかナース服は!!」
メイド服もナース服もクロキの故郷の衣装だ。
クロキはたまにクーナにそれを着せる事がある。
「別に構わないだろう。それを着ると、クロキが喜ぶ」
「クロキが喜ぶのは構わないけど……。そのため、すごく激しいのだもの、それを夢で見せられる私の身にもなってよ……」
レーナが溜息を吐く。
その頬が赤くなっている。
おそらく、クロキとクーナの夜の事を思い出しているのだろう。
「何を言っている。モーナの夢を見るよりはましだろう?」
「確かにそうだけど……」
クロキがクーナを作った事でレーナはモーナの夢を見る事が無くなったそうだ。
理由は同じ男を愛しているから、精神がクーナに近いからに違いない。
「ならば別に構わないだろう。クーナはもう行くぞ」
「待って。今度クロキに私の所に行くように言いなさい。トトナの書庫に行くついでで良いから。最近クロキ分が足りないの……」
その顔はとても弱弱しい。
クロキに会えないのが辛いみたいだ。
「それは、難しいぞ。お前の屋敷はエリオスの中央部。トトナの書庫から離れすぎている」
トトナの書庫はエリオスの外れ目立たない所にある。
だから、暗黒騎士のクロキが行く事も可能だ。
それに対してレーナの屋敷はエリオスの中央部。もし、クロキが行けば目立つだろう。
そもそも、この女は自分の立場を捨てられず、クロキとの事を隠している。
だから、クロキが屋敷に行って困る事になるのはレーナの方ではないだろうか?
「うう~。どうすれば良いのかしら、私の方が根暗の所に行けばよいのだけど、根暗は私の事が嫌いみたいだし……」
レーナが頭を抱える。
根暗とは知識と書物の女神トトナの事だ。
本ばかり読んで表に出て来ない所からレーナはそう呼んでいる。
クロキは調べものをするときはトトナの書庫に行く事がある。
その根暗女はクロキに色目を使うのであまり好きでは無い。
レーナもトトナとは仲が悪い。
そのため、トトナの書庫に行けず、悩んでいる。
しかし、これ以上話に付き合うのは面倒だ。
「話はそれで終わりか? 今度こそクーナは戻るぞ」
クーナは立ち上がる。
「ちょっと! 待って!!」
「まだ何かあるのか?」
クーナは振り返る。
「色々な衣装を着るのは良いけど、猫の尻尾だけは止めなさい。あれは夢で見るにしてもきついわよ」
すごく真面目な顔をしてレーナは言うのだった。
エロは18禁ではないのでがっつりは書けない。本当に何やってんだよクロキ。
少しナルゴルでの日常を書こうと思って書いたけどどうだろう?
熊っぽい使用人は第1章にちょこっと書いてるけど気付いている人はいるのだろうか?実は人熊です。
それから今回はストーリーが全く進んでいないや……。




