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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
外伝ハーピークエスト
90/195

仲間達と乾杯(外伝エピローグ)

◆リジェナ


「これはリジェナ様。今日はどうされたのですか?それから後ろの方々は?」


 家に入ると太ったトルマルキスさんが頭を下げる。

 その顔を見ると溜息が出そうになる。

 この男は問題を起こしてくれた。


「こちらの方は法の騎士であるデキウス様です。そして、その後ろにいるのは魔女狩人の方々ですよ、トルマルキスさん」


 私が紹介すると、頭を下げているトルマルキスさんの体がビクンと震える。


「あっ……。あの、なぜ法の騎士と魔女狩人がここへ?」


 トルマルキスさんが顔を上げながら言う。

 その顔からは、大量の汗が流れ落ちている。


「何故だと? それは、お前自身が知っているのではないのか?」


 魔女狩人の1人が前に出て来る。

 魔女狩人達は全員が違う恰好をしている。中には普通の市民と変わらない者もいる。

 理由は人間社会の影に潜む魔女に気付かれないためだ。

 まあ、当たり前だろう。私は魔女狩人ですとわかりやすい恰好をすれば、魔女に逃げられてしまう。


「な、何の事だ?! 私は何も知らない!!」

 トルマルキスさんは目に見えて狼狽して、後ろに下がる。


「魔女狩人の皆さん。この家の持ち主である私が許可します。家探しをしても良いですよ」


 私がそう言うと、魔女狩人達は、ずかずかと家の中へと入って行く。

 法の騎士は明確な証拠が無ければ強制捜査ができない。魔女狩人にはそもそも捜査権が無い。

 しかし、どちらでもあっても、家の持ち主が認めたら捜査する事は可能である。

 これで、この家の地下室にある、魔術師の研究所は発見されるだろう。


「待って下さい!!」


 デキウス卿が叫ぶ。

 目の前ではトルマルキスさんが殴られている。


「何ですかな? キリウスとかいう魔術師の話では、この男が有罪なのは確実。邪悪な魔術師を匿ったのだ。このような仕打ちは当然だろう?」

「確かに彼は罪を犯したかもしれない! しかし、アリアディア共和国では裁判をせずに、罰を与える事を認めていない! 君も神王オーディス様に仕える者ならば、定められし法を守りたまえ!!」

「ふん、それは健全な市民に対するもののはずだ。このような者に法を適用する必要があるとは思えないがね」


 デキウス卿と魔女狩人が目の前で言い争う。

 魔女狩人が来たのは失敗だった。

 本当はデキウス卿だけを連れてくる予定だった。

 しかし、どこから話を聞きつけたのかは知らないが勝手について来たのだ。

 おそらく、魔女狩人と通じている者がオーディス神殿にいる。

 そうシェンナさんが言っていた事は本当だったのだろう。

 今後、注意しなければならない。

 何故なら私も魔女狩人から見たら魔女である。

 もっとも、世の中の人間が私をどう思おうがかまわない。

 例え魔女と呼ばれようが、愛しい旦那様の使徒になれたのだから。

 私は暗黒騎士である、旦那様を思い出す。


 旦那様に会いたい。


 旦那様の事を思い出すだけで体が熱くなる。

 今度会いに行けないだろうか?そんな事を考える。

 しかし、今は目の前の事を片付けなければいけないだろう。

 目の前ではトルマルキスさんが豚のような悲鳴を上げていた。





◆シズフェ


「ありがとうございます! 戦乙女シズフェ様!!」


 愛と美の女神であるイシュティア様の神殿の一室で、サルミュラさんが私に頭を下げる。


「いえ、フィネアス君が無事で良かったです」


 私は手を振ってサルミュラさんに応える。

 あの後、シェンナさんから事件の背景を聞いた。

 デキウス様が捜査していた薬はハーピーの体液を原料にしているらしい。

 薬を作っていたのは件の魔導師。

 そして、その体液を得るためにワルラスはハーピーと取引をしていたようだ。

 何て奴らだ。


「あの、報酬ですが、本当によろしかったのですか?」


 サルミュラさんが申し訳なさそうに言う。


「ああ、報酬は別に良いですよ。サルミュラさんから受け取れません。貰いすぎになってしまいます」


 実はリジェナさんから迷惑料として大金を貰ってしまったのだ。

 何でも魔導師に薬を作らせていたのは、リジェナさんの部下だったらしく、迷惑料はその為である。

 だから、サルミュラさんから報酬は受け取れない。貰いすぎになってしまう。


「それでは私はこれで、仲間達が待っていますから」


 私は席を立つ。

 後ろではサルミュラさんが、何度もお礼を言っている。

 私はイシュティア様の神殿を後にすると近くの飲食店に入る。ここで仲間達が待っているはずだ。

 ちなみに、ここは友人のジャスティが働いている店でもある。


「遅かったな、シズフェ。待ちくたびれたぜ」


 先に来ていたノヴィスが待ちきれないとばかりに私に言う。


「ごめん、ごめん。それからサルミュラさんが貴方に、お礼を言っていたわよ。戦士団を紹介してくれて、ありがとうって」

「フィネアスの事か? いいって事よ。若い戦士を鍛えるのは、先輩戦士の務めだからな」


 ノヴィスはニッっと笑う。

 フィネアスはノヴィスの紹介する戦士団へと入団する事になった。

 その戦士団は戦神トールズ様を信仰する戦士団で、厳しいが真っ当な戦士団らしい。

 正直に言えば、華奢なフィネアス君がやっていけるとは思えない。悪いけど、直ぐに死んでしまいそうだと思う。

 しかし、これはフィネアスの希望である。

 何でもノヴィスみたいに、なりたいらしい。

 彼が筋肉ムキムキの戦士になる姿は想像できない。


「みんな~。飲み物と料理を持って来たわよ」


 給仕のジャスティ達が飲み物と料理を運んで来る。


「よっ! 待ってました!!」


 ケイナ姉が料理を見て喜ぶ。


「さあ、シズちゃん。みんなが待っているよ」


 マディの言葉で私は立ち上がる。

 続けて仲間達も立つ。

 そして、私は仲間達を見る。

 ケイナ姉。

 マディ。

 レイリアさん。

 ノーラさん。

 そして、ノヴィス。

 私は依頼が終わるたびにいつも思う。

 ここにいる仲間達がいたから、ここまでやって来れた。

 だから、祝杯を挙げる時は、いつも感謝している。


「さあみんな! 杯を高く掲げて! 依頼が成功した事を祝いましょう!!!」


 私が言うと仲間達が杯を高く掲げる。


「乾杯!!」


 私が言うと仲間達がそれに応える。


「「「「「乾杯!!!!!」」」」」


シナリオ終了。シズフェ達は経験点を得られます。


これで外伝は終了です。自由戦士を主人公にした話を書きたいと思って、外伝を作りました。

いかがだったでしょうか?

次は第6章。モデスの娘がいよいよ登場です。

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