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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第1章 謎の暗黒騎士
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勇者達の会議

◆チユキ


 部屋には8人全員が集まっていた。

 レイジが起きて3日、何とか起き上がれるようになったが、まだ本調子ではない。だが、回復するのは時間の問題だろう。

 レイジが無事な事が確認でき、私達はようやく日常を取り戻した。

 そして、今後の事を話し合おうと神殿の一部屋を借りて皆で集まったのだ。


「魔王討伐をやめるべきだわ」


 私は言う。


「なぜだチユキ?」


 レイジが疑問の声をだす。


「なぜって……。あなた自分の状態を見てなんとも思わないの?あなた死にかけたのよ」


 私は怒ったように言う。

 もともと私は危なくなるようなら魔王討伐をやめさせるつもりだった。

 今までは自分達が命を奪う側だった。

 だが、ディハルトに出会った事で命の奪い合いに変わってしまった。

 本来ならこんな事は最初からやめておくべきだった。


「すまないがチユキ、俺は女との約束を破るつもりはない」


 レイジが恰好をつけて言う。

 その言葉に頭に血が上りそうになる。


「あなたねえ、サホコや他のみんなもあなたが死にそうになって心配したのよ! あのディハルトって奴は強いわ! もう一度やったら死ぬかもしれないのよ!!」


 この男はいつもそうだ、女性のためなら命すらおしまない。

 だが、この男のその馬鹿さかげんのおかげで助けられた自分がいる。

 だからこそ今まで付き合ったのだ。ここにいるシロネやナオもそうだろう。おそらく、過去にこの男に助けられたのだ。

「悪いが、レーナを助ける事をやめる気はない」

 わかっていた事だ。この男はこんな事でやめたりしない。


「あのね……チユキさん、魔物のために多くの人が傷ついている。困っている人を見捨てて良いのかな?」


 今度はリノが言う。

 そもそも、この旅の目的は魔物の被害に苦しむ人々を助けるために始めたものだ。

 魔王モデスはこの世界の全ての魔物を支配する王だ。そして、その魔物達に人間を襲わせている。

 そして魔王モデスはエリオスの神々を滅ぼし、この世界を支配しようとしている。

 直接レーナに聞いたわけではないが、人々の口からそう噂されている。

 その魔王モデスを倒し世界を平和にする。それが私達の目的である。

 まあ実際は冒険を楽しんでいただけだが、表向きはそうなっている。


「それなのだけど、私達がやらなければいけない事なの? もともとこの世界の問題でしょ?」


 この世界の問題を私達が解決するのはおかしいはずだと私は思う。


「確かにそうですわね」


 キョウカに同意されると微妙な気持ちになるが、まあ良いだろう。

「そもそもエリオスの神とやらは私達にばかりに働かせて何をなさっているのでしょう?自分の手を動かそうとは思わないのかしら?」


 キョウカの言葉に幾人かはお前も何もしてないだろうという顔をする。

 しかし、キョウカの言葉ももっともだ。

 魔王モデスがエリオスに攻めてきたら困るのは神々の方だろう。なぜ動かないのか?

 このことは私も少し気になっていたのだ。


「確かに、キョウカさんが言うのももっともね」

「ふふっ」


 私の言葉にキョウカが得意げな顔をする。


「今度レーナ様に会った時にでも聞いてみましょう。なぜ、神々は動かないのかを」


 なぜ神々は魔王を放置しているのだろう。

 つまらない理由なら、抗議しなくてはならない。


「あのチユキ様よろしいでしょうか?」


 今度はカヤが意見を言う。


「何、カヤさん?」


 私は実はカヤの事が苦手だったりする。いつも、能面のように表情がなく何を考えているかわからないからだ。

 それにカヤは他の皆と常に距離をおいて話す。様付するのもそのためだ。彼女はこの中の誰とも打ち解けていない。


「そもそも、魔王を倒さなければ、私達は帰してもらえないのではないのでしょうか?」


 カヤの言葉は幾人かが頷く。帰してもらえない以上、魔王討伐をやめる事などできるはずがない。


「そこは交渉でどうにかするしかないと思う。仮にも女神が脅迫めいた事するとは思えないし。魔王を倒さないかぎり帰らせないなんて言わないと思う」


 もっとも、それはレーナが見た目通りの慈愛の女神ならばの話だが。


「あの~チユキさん。ちょっと良いかな?」


 今度はシロネだ。


「どうしたのシロネさん?」

「あのね。私達が帰ったらどうなっちゃうのかな?今度は誰か別の人が呼ばれるのかな……って思っちゃって」


 そしたら別の誰かが大変な目に合うとシロネは言う。


「うう~ん、確かに、それだと厄介事を他に押し付けたみたいっすね」


 ナオがシロネに同意する。


「そうだぜチユキ。やめる事よりも今度は勝てる方法を考えるべきだ」


 レイジの言うとおり結局どうにもならないのだろうか。だが、私は釈然としなかった。誰かが死ぬかもしれないのだ。それに……


「でもね、みんな。今度は誰か死ぬかもしれないのよ。それにもう半年も過ぎているのよ。家族だっ

て心配しているわ」


 そう、もう半年だ。いい加減帰らなければならないだろう。

 私の言葉にみんな沈黙する。


「シロネさん。あなただって幼馴染の男の子に会いたいでしょう?」


 私はシロネに話をふる。

 自分一人だけでは皆を説得できない。同志が必要だ。


「えっ! シロネさんにもそんな男性がいたのですか?」


 そこにサホコが食いつく。


「あっサホコさん知らないんだ~。シロネさんには将来を誓いあった幼馴染がいるんだよね~」

「ちょ……ちょっとリノちゃん。クロキはそんなんじゃないよ!!」


 シロネが抗議の声を上げる。


「私ね、気になったから、見にいったんだ~、シロネさんの実家の道場に。地味で目立たない感じだけど結構イケメンでカッコ良かったよ。レイジさんがいなかったら結構人気が出たんじゃないかな」


 私はシロネから幼馴染の話だけは聞いていたが、実際にその幼馴染に会ったことはない。

 だが、モデルをやっているリノは数多の美男子を見ている。その彼女が結構イケメンということは一般レベルでなら充分美形だろう。

 しかし学園ではレイジがいるため他の男子生徒が目立たない。そのため、その幼馴染の男の子も目立たないのだろう。


「格好良いかな……? 確かにきれいな顔はしているけど」


 シロネが首をかしげる。彼女は彼の事を格好良いとは思っていないようだ。


「へえ……」


 レイジが何か含みのある声をだす。


「レッ……レイジ君も勘違いしないでね。クロキとはホントになんでもないんだから!!」


 シロネがあわててレイジに弁解する。

 ここの女の子達は皆レイジに気がある。シロネも誤解されたくないだろう。

 私が見るに、シロネは彼の事を特になんとも思ってないようだ。もし、その幼馴染に気があるのならレイジの側にいないだろう。

 もっとも幼馴染の方はシロネが好きかもしれない。

 だが、彼女はここに来る前に幼馴染とひどい事を言ってしまったので謝りたいと言っていた。


「でもシロネさん。幼馴染に謝りたいと言っていなかったかしら?」


 私はシロネに聞く。


「それは……」


 シロネが口ごもる。

 そのシロネの言葉にリノとナオが身を乗り出す。あの奥ゆかしいサホコも聞きたそうだ。

 サホコとリノにしてみれば、ライバルが減るだろうからか興味津々だ。


「まあまあみんな。まずはレーナに話を聞かなければわからないだろ? それを聞いてから考えても遅くはないだろ?」


 レイジが話を終わらせる。


「え~」


 リノが不満そうに言う。

 確かにレーナに色々と聞かなければならないだろう。

 そもそも、旅に出る前に色々と聞かなければならなかった。

 なぜ、エリオスの神々は魔王を放置しているのか?

 本当に魔王を倒さなければ帰してもらえないのか?

 その後、私達は二言三言と雑談をして解散した。


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[一言] 勇者パーティーは全員死ぬべきだと思う。
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