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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第5章 月光の女神
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デイモンとの契約者

◆黒髪の賢者チユキ


「チユキさん! そっちに行ったよ!!」


 リノが私に向かって叫ぶ。


「わかってる!!」


 私に襲い掛かったラットマンを魔法の手で殴り飛ばす。


「グエッ!!」


 正直杖で叩く事もできるが、できれば触れたくない。

 ラットマンは元人間のためか武器を使う。

 現に殴り飛ばしたラットマンは小剣ショートソードを持ち、体を皮鎧レザーアーマーで身を包んでいた。

 そのためかシズフェ達は苦戦をしているようだ。

 しかも、ネズミになったためか素早くなっている。幸いなのは獣になったために飛び道具を使えなくなったことぐらいだろう。

 巨大ネズミに乗ったラットマンが槍を掲げて襲ってくる。


「危ないシズフェちゃん!!」


 レイジが光弾でシズフェに襲い掛かる鼠人騎手ラットマンライダーを弾き飛ばす。


「ありがとうございますレイジ様」


 シズフェがお礼を言う。


「ふん!!」


 横でノヴィスの不機嫌な声。

 まったくわかりやすい。

 そんな事を考えながらラットマンを魔法の手で殴る。

 私達は地下水路の奥へと進んだ時だった。

 途中で待ち伏せをしていた魔物の集団に出会い、戦闘になったのである。

 しかも、出てきたのはラットマンだけでは無い。

 下半身が蛇のラミアに下半身が蜘蛛のアルケニーもまた出てきた。

 それはシロネとデキウスが応戦している。

 デキウスはともかくシロネに任せておけば大丈夫だろう。

 ラミアはここから西に多く生息している種族だ。

 女性しかいない種族で下半身が蛇である。他種族の生き血を吸って生きるのはストリゲスと同じだ。

 闘技場から逃げだした後、どこに行ったかわからなかくなっていたが、ここにいたようだ。

 ラミアやアルケニーは人間よりも魔力が強いがシロネの敵ではない。

 現に次々と倒している。

 戦いは私達の優位に進み、やがて、魔物達を全て倒す。


「デキウスさん大丈夫?」


 シロネがデキウスを心配する。


「大丈夫です。少し毒にやられただけです」


 そう言うデキウスの顔は青い。大丈夫には見えない。

 ラミアは下半身が蛇のためか毒を使う。その毒気にやられたようだ。


「サホコさん。解毒を」

「わかったわ」


 サホコが魔法を使うとデキウスの表情が元に戻る。


「少し休もうか。シズフェちゃん達も疲れただろう?」


 レイジが休憩を提案する。

 思った以上に敵の数が多かった。

 そのため、私達は大丈夫だけどシズフェ達は休んだ方が良いだろう。

 リノとサホコは清浄の魔法であたりを清める。ラットマンは何かしらの病原菌を持っているみたいだ。

 私達は大丈夫でもシズフェ達は危険だろう。


「それにしても、こんなに敵が多いとは思わなかった」


 シロネがげんなりした顔で言う。

 確かにそうだ。捕らえたグールの情報では数が少なそうに感じたが、そんな事は無かった。

 他の場所から地下水路に入った自由戦士達は無事だろうか?

 下手をすると全滅しているチームもあるかもしれない。

 見通しが甘かったと言わざるを得ないだろう。


「ねえナオさん。この地下水路にどれだけの敵がいるかわかる?」


 私はナオに聞く。


「無理っす。ところどころに結界が張られていて、感知する事ができないっす」

「うわ~。じゃあまだ、ネズミさんがいっぱいいるかもしれないんだ」


 リノが嫌そうな顔をする。


「しかし、進むしかない。彼女が何をしようとしているのか見極めないとな」


 レイジがそう言うと、サホコとリノが嫌そうな顔をする。

 確かに彼女が何をしようとしているのか気になるが、何となく嫌な感じだ。

 私は溜息を吐くとラットマンを見る。

 ラットマンは元人間なので殺さずに気絶させている。

 そういえば元に戻せないだろうか?


「そういえば、ねえ、サホコさん。このラットマンを元に戻せないかしら?」

「呪いだったら、解けるけと思うけど・・・。やってみるね」


 サホコが魔法を唱える。

 するとラットマンの顔が中年の男性の顔へと戻る。


「さすがサホコさんっす! 人間に戻ったっす!!」


 ナオが興奮する。

 どうやら元に戻せるみたいだ。これは大きな収穫である。


「しかし、このまま連れて行くのは無理だな」


 レイジが男性を見て言う。

 確かにそうだ。これから大きな戦いが待っているかもしれない。戦えない者を連れてはいけない。


「確かにそうね。どうしようかしら? そうだわデキウス卿。申し訳ございませんが、シズフェさん達と共にこの者を連れて脱出してもらえませんか?」


 私はデキウスを見て言う。

 正直に言うとデキウスは足手まといだ。敵の数が少ないならともかく、これから先には強大な敵が待ち構えている。

 魔物からの情報で水路の奥には上位のデイモンがいる事が判明したのだ。

 彼らを守りながら戦うのは難しい。


「しかし、チユキ殿。私はシェンナの事が気になります。それに、月光の女神が何をしようとしているのか見届けねばなりません」


 だけどデキウスは首を横にする。


「しかし、ですね。デキウス卿……」


 私が何とか説得しようとするのをレイジが押しとどめる。


「はっきり言おう。足手まといだ!!」


 レイジがはっきりと言う。


「進むのがすごく遅くなっている。月光の女神がもし大変な事をしているのなら手遅れになるかもしれない。それでも良いのか?」


 レイジの言葉にデキウスは黙る。

 数秒の後。デキウスは頭を縦に振る。


「……わかりました。この者を連れて撤退します。しかし、他のラットマンはいかがいたしましょう?」


 デキウスは倒れているラットマンを見て言う。


「姿を戻していないので、おそらく襲われる事はないでしょう。一応結界は張っておきますので心配はありません」

「そうですか、では妹の事をよろしくお願いします」


 デキウスはしぶしぶ頭を下げると元に戻った男性を肩に担ぐ。


「シズフェさん。デキウス卿をよろしくお願いね。それからアイノエさんから目を離さないでね」

「わかりました。まかせて下さい」


 シズフェ達もデキウスに続く。当然アイノエも一緒だ。

 何かの役に立つかもと思い連れて来たが敵の攻撃が激しくなっている。これ以上は連れて行けない。

 だから、帰らせる事にする。

 シズフェ達は来た道を戻って行く。

 これで私達だけになった。


「ちょっと言い過ぎだったかな」


 レイジが私に言う。


「いいえ、あの場合は仕方がないわ。それにシェンナさんがラットマンに変えられている可能性も考えたら帰ってもらった方が良いわね」


 私が言うと皆が頷く。


「さあ、これで身軽になったし、先に進もう、みんな」


 私達は地下水路の先へと進む。





◆水の勇者ネフィム


「何とかしのぎましたね」


 私達はラットマンの襲撃から逃れた所だ。


「ネフィム殿がいなければ我々は全滅でした。さすが水の勇者殿です」


 自由戦士の1人が私を誉める。


「戦えそうな者は何人残っていますか?」

「ネフィム殿を入れて4人って所でさあ」

「そうですか、厳しいですね……」


 私達の班は12名。

 光の勇者殿とは違う場所から地下水路へと入った。

 そして、先に進むとジャイアントスラッグに会い、大量のラットマンと遭遇したのである。

 応戦したが、数が多い。そのため撤退したのだが、帰り道も塞がれていたので別の水路を通る事にした。

 おかげで今どこにいるのかわからない。

 それにしてもネズミの数が多い。自由戦士200名では足りない。もっと人手が必要だ。

 意図的に情報を隠したとは思えない。

 おそらく将軍もこれほどの魔物がいるとは予想していなかったのだろう。

 かなりの被害が出てしまった。

 おそらく他の班も同じ目に会っているだろう。

 私はそこで近づいて来る気配を感じて槍を構える。


「皆さん武器を取って下さい。何者かが近づいて来ます」


 私は水路の奥を見る。

 やがて水路の奥から松明の光りが見える。近づいて来るのは人間だ。


「松明の光りが見えるから、誰かと思ったが水の勇者ネフィムじゃねえか」

「あなたは地の勇者ゴーダン」


 近づいて来たのは地の勇者であるゴーダンとその仲間だ。


「おめえらも大変な目に会ったようだな」

「ええ。あなたも」

「かなりのネズミがいるみたいだな」

「そうですね。これでは脱出できません」


 私達は暗い表情になる。


「光の勇者が頼りだな」


 ゴーダンの言う通りだ。このままでは全滅だ。

 助かる可能性があるとすれば光の勇者が何とかしてくれる事だろう。

 私は光の勇者を思い浮かべる。美しい女性に囲まれた羨ましい男だ。

 彼らは強い。だから信じるしかないだろう。

 私達はそう言って天を仰ぐのだった。





◆戦乙女シズフェ


「ちょっとノヴィス! デキウス様に代わって貴方が運びなさい!!」


 地下水路の来た道を戻りながら。私はノヴィスに言う。

 デキウス様よりもノヴィスの方が力がある。

 だから、ラットマンから人間に戻った男性を運ぶのはノヴィスがやるべきだ。


「ええ、何でだよシズフェ。可愛い女の子ならともかく野郎なんか運びたくないぜ」


 ノヴィスが私に嫌そうな顔をして言う。


「良いのですよシズフェ殿。ノヴィス殿の方が私よりも強いのです。戻る途中で魔物に遭遇するかもしれませんし。ですからノヴィス殿の体力を消耗させるべきではないでしょう」


 デキウス様がそう言うとノヴィスは勝ち誇った顔をする。


「ほうら見ろ! シズフェ! デキウスの旦那もそう言ってるぜ!!」

「む――!!」


 ノヴィスの態度に私は悔しがる。


「2人とも喧嘩はやめて下さい。まだ油断はできませんよ」


 レイリアさんが呆れた声を出す。


「ふん、何痴話喧嘩しているんだい。いい加減私を解放しな!!」


 アイノエさんが私達を見て不機嫌な声を出す。


「悪いなアイノエさんよお。あんたを逃がすわけにはいかないぜ」


 アイノエさんを縛った縄を引きながらケイナ姉が言う。


「そんな事を言っても良いのかねえ。私を解放した方が身のためだと思うけど」


 アイノエさんが不敵な笑みを浮かべる。


「止まるんだみんな!!」


 ノーラさんが叫ぶ。


「どうしたのノーラさん?」


 ノーラさんが前方を注意深く見ている。

 明かりはマディの杖の先に灯った魔法の照明しかない。これはチユキ様が戻る時に必要だろうと点けてくれたものだ。

 しかし、この魔法の照明は光条の魔法と違い周囲しか明るくしてくれない。

 これでは奥に何がいるのかわからない。


「俺に気付くとは、さすがエルフだな」


 暗がりから人影が姿を現す。

 影だけなら人間に見える。

 しかし、現れた者の頭部は人では無い。

 筋肉質で人間よりも1回り大きな体の首から上にあるのは大きな黒い山羊の頭である。

 故にそれは人では無くそれと言わねばならないだろう。


「嘘……。レッサーデイモン」


 マディが信じられないと首を振る。

 レッサーデイモンは下位とはいえデイモンだ。人間よりもはるかに強い存在である。

 それが私達の帰り道を阻んでいる。


「降伏するんだな。そうすりゃ女だけは生かしてやる」


 レッサーデイモンは大きな鉈のような剣をこちらに向ける。


「どうするシズフェ?」


 ケイナ姉が不安そうに聞く。


「戦うわ。それしか無いわ」


 私は剣を抜く。そうするしかない。女性の命は取らないと言っても何をされるのかわからないのに降伏なんかできるわけない。


「確かにそれしかありません。悪魔に降伏なんかできません」


 デキウス様は担いでいた男性を降ろすと壁を背にして座らせた後で武器を抜く。

 仲間達も各々武器を取る。


「待ちなデイモン! この女の命がどうなっても知らねえぞ!!」


 ケイナ姉が槍の穂先をアイノエさんに向けて前に出る。

 卑怯な手だ。しかし、そんな事は言ってられない。


「ゼアル様、助けに来てくれると信じておりました。はあ!!」


 突然アイノエさんを縛っていた縄が地面に落ちる。そして、ケイナ姉が横に跳ぶ。


「うう……」


 ケイナ姉は槍を落として手を押さえている。


「ケイナ姉!!」


 私はケイナ姉に寄る。ケイナ姉の腕から血が出ている。

 アイノエさんの手には剣身がぐにゃぐにゃの剣がある。


「この剣は帯剣と言ってね。腰に巻き付けて携帯する事が出来るのさ。これからは良く身体検査をするんだね」


 アイノエさんは笑いながらレッサーデイモンの横に立つ。


「これで人質はいなくなったな。さあどうする人間どもよ」


 レッサーデイモンが笑う。


「シズフェ! 後ろからも来るぞ!!」


 振り向くと武器を持ったラットマンが沢山出てくる。

 挟み撃ちにされてしまった。

 彼らはすぐには攻撃する気が無いのか動かない。

 おそらく私達を生け捕りにするつもりなのだろう。

 見るとレッサーデイモンの後ろからもラットマンが複数出て来る。


「シズフェ。俺が突破口を開く。その隙に何とか逃げろ」


 ノヴィスが愛用の大剣を構えて言う。


「ちょっとノヴィス。あれを使う気なの?」

「当たり前だ。ここで獣の霊感を使わなくてどうする?」


 ノヴィスは真剣な顔で言う。

 ノヴィスは力と戦いの神であるトールズ様に仕える獣戦士だ。

「汝、獣となるべし」。それがトールズ様の教えだ。

 トールズ様に仕える戦士達は城壁の中で暮らす事を良しとせず。魔物の多い野外で生活することを良しとする。

 戦士達は鎧を身に付けずに魔獣や野獣の毛皮を纏い戦う。そこから自分達の事を獣戦士と呼ぶのである。

 そのため、トールズ様の神殿を持つ国は少ない。基本的に教団は野外にある事が多いからだ。

 獣戦士達は野外で獣司祭を中心に教団を作る。そして、魔物の多い場所を求めて移動しながら生活する。

 魔物の被害が多い国にとって獣戦士達は大変ありがたい存在である。

 なにしろ、獣戦士達は金銭を求めない。貨幣収入が少ない国はおかげで助かっているそうだ

 そんな獣戦士達だけが使う秘術に獣の霊感がある。

 凶悪な魔獣の血を元に作った染料を刺青として体に描く。すると、その魔獣の力を得る事できるようになる。それが獣の霊感だ。

 この獣の霊感を得る事は難しいらしく、刺青をした結果死んでしまう事もあるらしい。そのため、体をならしながら少しずつ刺青をいれる。ただし、才能がある者は短期間で全ての刺青を入れるそうだ。

 獣の霊感にはいくつか種類があり、熊の霊感だったり、狼だったり、獅子だったりする。

 そして、獣の霊感を最大化する獣化の能力を使えば力は数倍になり、強力な戦士となる。

 しかし、問題として獣化を使えばたまに暴走することがある。

 暴走すると見境がなくなり味方にも攻撃をするようになる。そのため、獣戦士と呼ばれずに狂戦士と呼ばれる事もあるのだ。

 ノヴィスは過去に獣の霊感を得るために獣戦士団に入団したことがある。ノヴィスは才能があったのか普通は9年かかる所を2年で獣の霊感を得た。

 ノヴィスが得た獣の霊感は猪。獣化する事で強力な突撃力を得る。

 ノヴィスは火の勇者の称号を得る前は赤い猪と呼ばれていたのだ。

 それをノヴィスは発動しようとしている。


「ぐうううう!!」


 ノヴィスの体の刺青が血のように脈動する。

 体の筋肉が膨れ上がり、口から牙が出てくる。


「お願いだから、暴走しないでよ……」


 私はノヴィスに言うが聞こえていないみたいだ。


「何をしている? 降伏するのかしないのか早く決めろ!!」


 レッサーデイモンがノヴィスの様子を見て慌てる。


「があああああああ!!!」


 ノヴィスが剣を掲げてレッサーデイモンに突っ込む。


「何だと!!」


 ノヴィスの攻撃を受けてレッサーデイモンが吹き飛ぶ。


「ゼアル様!!」


 アイノエさんがラットマンを引き連れて向かって来る。


「申し訳ありませんが貴方達の相手は私です」


 デキウス様がアイノエさんに対峙する。


「悪いがこっから先は行かせねえぜ」


 レイリアさんに治癒してもらったケイナ姉が横に立つ。


「みんな! 後ろをお願い! 私はノヴィスを援護する!!」


 ああなったノヴィスは防御をしない猪武者だ。援護しなければすぐに死ぬ。


「お願い女神レーナ様。ノヴィスを守って」


 私はレーナ様より授かった魔法を使う。女神様の盾はあらゆる攻撃から対象を守る。

 女神レーナ様はトールズ様と同じ武神だ。

 ただし、トールズ様と違って守りの神だ。どこの国の城壁にもレーナ様の聖印が彫られている。

 だから、私はレーナ様に祈る。ノヴィスを守ってと。

 ノヴィスの体が光に包まれる。

 光がノヴィスを攻撃しようとしたラットマンの攻撃を防ぐ。その間にノヴィスは大剣を振るいラットマンを薙ぎ払う。

 吹き飛ばされたレッサーデイモンも起き上がりノヴィスへと向かう。

 後ろでは激しい戦いの音が響いている。

 かなり厳しい戦いだ。しかし、最後まで諦めない。


「女神様!!みんなに勇気を!!」


 私は勇気の魔法を使う。これでどんな困難にも怖れずに立ち向かう事ができるはずだ。

 私達には女神様の加護があるのだ。絶対に負けてなるものか。




◆暗黒騎士クロキ


「ここが魔女の家か、クロキ?」


 横のクーナが可愛らしく聞く。


「多分そうだと思うよクーナ。ここが魔女アリマの家のはずだ」


 自分はウリムから話を聞いた後、クーナが起きるのを待って魔女アリマの家を探した。

 家は幻術で隠されていたようだが、すぐに見つける事ができた。

 グロリアスを降ろせる所に降ろした後で、クーナと共に歩いて魔女の家に向かったのである。

 自分達の目の前には木造藁ぶき屋根の一軒家がある。ここが魔女のアリマの家だろう。

 この家は森の中にぽつんと寂しく建っている。

 普通ならこんな一軒家に住んでいると魔物や獣によって食べられてしまうだろう。

 しかし、住んでいるのはデイモンから力を貰った魔女だ。

 ウリムの話しでは魔女アリマはそんなに悪い人間ではないらしい。

 しかし、魔女であるので人里離れた場所で暮らさざるを得ない。

 だけど、善良である事は知られているそうで、オーディス教団やフェリア教団に隠れて近くの国の者が来る事もあるらしい。

 ウリムもエファの事で何度か世話になった事があるそうだ。

 自分は家の周囲にある護符を見る。

 護符には2つの四角が重なりあった印がある。これは魔王モデスの聖印だ。

 つまり、この魔女と契約した者は魔王モデスに繋がりが有る者のはずだ。

 それを確認すると自分は暗黒騎士になる。この姿の方が話がしやすいと思ったからだ。

 近づくと突然扉が開かれる。

 扉から1人の老婆が顔を出す。

 おそらく、誰かが来たらわかるようになっていたのだろう。まあ、隠れて来たわけでは無いの気付かれて当然だ。

 黒いローブを身に纏ったその姿は魔女のようである。

 そこで、首を傾げる。

 老婆は自分の姿を見ると膝を付く。


「偉大なる魔王様の使いの方よ、当家に何の御用でしょう」

「いえ、顔を上げて下さい。いきなり訪ねて来たのはこちらです。貴方がアリマさんでしょうか?」


 自分が聞くと老婆は顔を上げる。


「はい。私がアリマでございます」

「突然訪問をして申し訳ありません。実はあなたに尋ねたい事があるのです」


 自分は丁寧に挨拶する。


「はい何でございましょう! 偉大なる暗黒騎士よ!!」


 アリマは大きく目を開いて答える。

 少し力をいれすぎだと思う。


「魔女アリマ。実はあなたと契約を結んだデイモンの名を知りたいのです」


 自分が丁寧に尋ねるとアリマは言い難そうにする。

 言って良いか迷っているみたいだ。


「おい女。クロキの問いに何故答えない?死にたいのか?」


 クーナが鎌をアリマの首に当てる。


「ひい!!!」


 アリマは恐怖で顔を引きつらせる。

 ちょっとやりすぎだ。クーナを止めようとする。

 しかし、クーナは止めない。


「おい女。クーナの目を見ろ」


 クーナが魔法を使う。

 アリマの目が虚ろになる。

 自分は溜息を吐く。結局この方が速いのかもしれない。


「私が契約したのはマンセイド様です……」


 アリマは小さく呟く。

 マンセイド。

 自分はその名を知っていた。確かウルバルドの側近のデイモンだったはずだ。

 マンセイドはデイモン族の魔道士である。彼はウルバルドの命令で時々ナルゴルの外で諜報活動をする事があると聞く。

 彼女と契約をしたのはその時かもしれない。

 だが、ウルバルドの側近の場所がわかればウルバルドの居場所がわかるかもしれない。

 彼の居場所がわからないだろうか?


「その……。マンセイド卿はどこにいるのかわかりますか?」

「はい、マンセイド様と別れて30年になります。繋がりも薄くなりました。ですが、あの方の居場所は今でもはっきりとわかります。マンセイド様はアリアディア共和国におります」


 はっきりと答える。


「アリアディア共和国は広いのでもっと具体的にどこにいるかわかりませんか?」

「地下……。おそらくこの感じは地下にいると思います」


 アリマの言葉を聞いて驚く。

 地下と言う事は地下水路か?何故地下水路にいるのだ。

 自分は混乱する。

 どういう事だ。今地下水路にはレイジ達がいるはずだ。


「おや、ウルバルドは地下水路にいるのか。これは運が悪いな。勇者にやられるかもしれないぞ」


 クーナが笑いながら言う。

 だが、笑い事ではない。何でそんな所にいるのかわからないが、助けに行くべきだろう。


「クーナ! 急いでアリアディアに戻るよ!!」



長期休暇をもらったのでいつもより早い更新です。そのかわりお盆は休めないでしょう。


時間ができて、改めて読み返してみると、やはりレイジの性格を酷くし過ぎました。色々な人から言われるので、全部を変える事はできないけど、少し良くなるように改訂すべきかもしれません。

後から書き直すのは良く無いと思うのですが。


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