首無し騎士
◆首無し騎士と首だけ姫
月夜の街を馬に乗った騎士が走る。
私はその騎士に抱きかかえられて夜の外出を楽しむ。
ザンド様の物になった事は大変光栄な事だけど、手足が無いのは不便だ。
だから私だけの騎士を作ってお出かけするのである。
「どうかしらマルシャスさん、騎士になった感想は? 本来なら貴方みたいな人が着る事できない鎧なのよ」
私を抱き抱えている騎士を見て言う。
騎士は立派な鎧を着ている。そして乗っている馬も良いものだ。
これらは全てザンド様から貰った物である。
そして本物の騎士が身に付ける物と同じらしい。
私の騎士となった男は本来なら騎士になれるような男ではない。それを私は特別に騎士にしてあげたのだ。当然私に感謝しているだろう。
だけど彼は何も答えない。
「ふふ、まあ何も答えられないでしょうね」
私は笑う。
何しろ首が無いのだ。答えられるはずがない。
首の無い騎士は首の無い馬に乗り夜を走る。
夜の風が心地良い。
この体になってから太陽の光が苦手になってしまった。
だからこそ、夜の中を思いっきり走ろう。
人に見られても構わない。
見られた時は首を斬れば良い。
先程も2人の首を首の無い騎士に斬らせた所だ。
人間という脆弱な生き物は首と胴を離しただけで死んでしまう。本当に可哀そうな種族だ。
なぜ彼らはあんな弱い生物である事に耐えられるのだろう?
私はあんな弱い生物から生まれ変わらせてくれたザンド様に感謝する。
生まれ変わった私は強くなった。強力な魔法だって使える。首の無い騎士を使わなくても、強そうな男性も私の前にひれ伏すだろう。
「あら? また誰かいるのかしら?」
再び進行方向に誰かがいるのを感じる。
私は騎士に命じると剣を抜かせる。
通り抜けると同時に首を斬り落とす。私の騎士の駆る馬は速い。人間ごときでは避ける事は出来ないはずだ。
私はそう思ったが騎士は突然立ち止まる。
「え?どうしたの? さあ首を刈りなさい」
騎士に命じるが騎士は動こうとしない。何があったのだろう?
私は前にいる者達を見る。
漆黒の鎧を纏った騎士のような者だ。まるでザンド様から聞かされた暗黒騎士のようではないか。
この暗黒騎士が首の無い騎士の動きを止めたのだろうか?
その暗黒騎士は後ろに一人の女を連れている。
「申し訳ないですが、止まっていただけないでしょうか?」
暗黒騎士は一礼すると私に静かに言う。
物腰は丁寧だけど有無を言わさない迫力がある。
首無し騎士からも怖れを感じる。首を無くして感情が無くなったはずなのにどういう事だ?
「何の用かしら?」
私は不機嫌にそうに答える。
「え~と……。用と言うか……。その体はマルシャスで間違いないですよね?」
私は驚く。この暗黒騎士は首の無い騎士の正体がマルシャスだと気付いているみたいだ。
マルシャスを首の無い騎士にしたのはつい先程だが何故その事を知っている?
「ええ、そうだけど。なぜそんな事を知っているのかしら?」
暗黒騎士を睨む。兜のため顔が見えない。
「あー、やっぱりか……。マルシャスの身に何か起こった事は感じたけど。まさかこんな事になっているなんて」
暗黒騎士は首を振る。
「あなた、マルシャスさんの知り合いかしら?」
彼は何をしにここに来たのだろう?
もしかしてマルシャスの仇を取りに来たのだろうか?
「まあ……。知り合いと言えば知り合いなんですけどね……。はあ……どうしたものかな?」
暗黒騎士の表情は見えないが困惑しているのを感じる。
何しに来たのかわからない態度に少しイライラする。
そして、ふと暗黒騎士と一緒にいる女を見る。
女は私を見て震えている。
そこで私は気付く。
「あら、あなたは? ひさしぶりね」
私は震えている女に笑いかける。
女には前に会った事が有る。
彼女はマルシャスの同じ劇団に所属していたはずだ。確か名前はシェンナ。
シェンナは目を大きく開いて私を見ている。その顔が青い。
「シェンナ。彼女を知っているのかい?」
暗黒騎士がシェンナに訊ねる。
シェンナは震えながら頷く。
「はっ! はい! まっ前に! 劇団へ入団希望に! きっ来た女の子ですっ!!」
シェンナは口が震えているためかうまく喋れないみたいだ。
「その時から首だけだったの?」
「いっいえ! そ、そ、その時は普通の人間でした!!」
シェンナの言葉を聞き暗黒騎士は頷く。
「なるほどね……。彼女をこんな姿にした者がいるみたいだね。申し訳ないですが、あなたを首だけにした者の事を教えていただけませんか?」
ザンド様の事を教えて良いかどうかわからない。暗黒騎士から敵意を感じる。
「なぜ、私が教えなければならないのかしら?」
私はそう言うと首の無い騎士の腕から離れ空を舞う。
この暗黒騎士は危険だ。逃げるべきだろう。
「悪いけど!!力づくでも吐いてもらうよ!!」
暗黒騎士がこちらに一歩踏み出す。
「我が下僕よ! 私が逃げる間! あの者を足止めしなさい!!」
私は首の無い騎士に命じる。
首の無い騎士の首を無くした所から黒ずんだ血が吹き出す。
黒ずんだ血は独立した意思があるかのように青い光を発しながら首の無い騎士の周りを飛ぶ。
黒ずんだ血は呪いの血と呼ばれる物だ。
この血を浴びた者は死の宣告を受け7日の間に苦しみながら死ぬ事になる。
呪いの血がシェンナへと向かう。
おそらく暗黒騎士に呪いの血は効かないだろう。だから、シェンナを狙って隙を作る。
「黒炎障壁!!」
暗黒騎士の体から黒い炎が噴き出しシェンナを守る。
本来なら魔法で首の無い騎士を援護する所だけど、今のうちに逃げた方が良いだろう。
首の無い騎士の事は諦めよう。また作れば良い。
私は空を飛び急いで離れようとする。
「逃げられると思っているのか?」
突然後ろから声がすると後頭部を掴まれる。
私を掴んだ者が自身の方へと私を向かせる。
そこには白銀の髪の美女いた。
その美女から危険な力を感じる。
「ザンド様!!」
私はザンド様に助けを求める。
しかし、いつもならすぐに精神が繋がるはずなのに何も答えがない。
「無駄だ。この場にはクーナが結界を張っておいた。おまえは逃げる事ができない。さあクロキに全て喋ってもらうぞ」
そう言って白銀の美女が冷たく笑うのだった。
◆暗黒騎士クロキ
黒い炎でカティアの首を燃やす。
情報はクーナの力で全て聞き出した。だから問題は無い。
何故燃やしたのかというと、これ以上見ていられなかったからだ。
カティアという女の子は自分の境遇を全く不幸だとは思っていなかった。
むしろ幸せだと思っていた。
それが見ていられなかったのである。自分が見ていられないから燃やす。自分勝手だと思うけどそうせずにはいられなかった。
「そんな……。これがマルシャスだって言うの?」
シェンナが首の無いマルシャスを見て茫然として言う。
無理も無い。知り合いがこんな姿になったのだ。ショックであろう。
彼女は自分がマルシャスの所に行くと言うと、自分も連れて行けと言ったので連れて来た。
だけど、まさかマルシャスがこんな姿になっているとは思わなかっただろう。
顔が青く震えている。
自分も少しきつい物がある。
首の無い騎士となったマルシャスは黒い棘で動けなくしている。
自分はマルシャスにゼアルの元へと案内してくれたお礼に力を与えた。
与えた力は様々な耐性を上げる物だ。
効果も2年ぐらい消えるで短い物だけど、これの効果がある間は弱い魔法なら防御する事ができる。
そして、力を与えている間だけ、自分は相手と少しだけ繋がりができる。
だからマルシャスに何かが起こった事はわかった。
しかし、まさかこんな事になっているとは思わなかった。
マルシャスの体は半分だけ生きている。吸血鬼のように生と死の狭間にいるようなものだ。子供も作れるだろう。
クーナがカティアから聞き出した所によると、マルシャスはすでに人間とは違う存在となったので元に戻す事は出来ないそうだ。
それに首も無い。これでは甦らせる事もできない。
また、首の無いマルシャスはカティアの支配を離れると首を求めて他人の首を狩り続ける幽鬼となってしまうらしい。
歯ぎしりをする。
自分のせいだ。自分がマルシャスに力を与えたからこうなってしまった。
悔しいが、どうする事もできない。
「すまないな、マルシャス……」
自分は黒い炎を出すとマルシャスを燃やす。
マルシャスをこのままにはしておけなかった。
「クロキ? これからどうするのだ?」
クーナが自分の様子を見て心配そうに声を掛ける。
「ごめんねクーナ。心配を掛けて」
クーナの頭を撫でる。
さて、これからどうしよう?
カティアを消した事でザンドに気付かれただろう。
ザンド。
カティアを首だけにした者の名だ。おそらく人間ではない。
何しろ普通の少女だったカティアに、これ程の力を与える事が出来る者だ。神族に違いない。
そして、会った事はないが彼からは気持ち悪い物を感じる。
その彼のコレクションであるカティアを消してしまった。おそらく敵対してしまった事になるだろう。
「クーナ、せっかく遊びに来たのにごめんね。行かなくちゃならない所ができた。シェンナを連れて先に戻ってくれないか?」
自分は震えているシェンナを指して言う。
確かめに行かなくてはならない。ザンドの事、そしてゼアルにアイノエも問いただした方が良いだろう。
「わかったぞクロキ。クロキは自分のしたい事をすれば良いぞ」
クーナは笑いながら答える。
何故かわからないが、それはとても楽しそうだった。
「ありがとうクーナ。それじゃ行ってくる。大人しく待っててね」
自分はクーナの頬をなでると夜空を飛んだ。
◆月光の女神クーナ
夜風が吹く街の上空をクロキが飛び離れて行く。
「悪いがクロキ。大人しくするつもりはないぞ」
クロキが飛んだ方角を見ながら呟く。
この人間の国に来て不満だった。
クロキと一緒に歩くのは良い。だけど、なぜ人間に遠慮しながら行動しなければならないのだろう?
あんな弱い奴らに遠慮する必要はない。
クロキはいつもそうだ。いつも何か我慢している。いつも自分を抑え込んでいる。
クーナにもどこか遠慮している。
それが不満だった。
クロキは強い。だからクロキはもっと自分を解放すべきだ。
絶対的な強者として振る舞うクロキが見たい。
どうすれば良いだろうか?
首だけ女と首無し男が消えた後を見る。
こいつらの主であるザンドの事を考える。
面白そうな奴だと思った。不愉快なこの国の人間共を玩具にしている。清々しく見どころがある。
こいつを利用できないだろうか?
良し決めた、こいつにはクーナの役に立ってもらう事にしよう。
笑みがこぼれる。
きっとクーナは悪い笑みを浮かべている。この顔はクロキには見せられないだろう。
「ナルゴルの闇の森の奥。エーディンの花園に住まうプシュケアの白く輝ける蝶よ。クーナの呼び声に応えよ」
精神を集中させて蟲を呼ぶ。
蟲使いの能力はかつてオーガのクジグが持っていた能力だ。
クーナはこの能力をクジグから奪い取ったのである。
この蟲使いの力は微妙で操る蟲の力に左右される。つまり、どんなに強力な魔力を持つ者でも強い蟲を使役できなければ弱いままなのである。
クジグが持っていた蟲にはあまり強い蟲がいなかった。
だからクーナは強い蟲を探す事にしたのである。
そして見つけた。
クーナの周りにどこからともなく白く輝く蝶達が現れる。
この蝶はナルゴルの闇の森に生息する特殊な妖蟲である。
この蝶は神族に負けない程の魔力を持ち、幻術が仕える上に探知能力に優れている。
また空間を自在に移動する事ができるので結界を張られた場所にも簡単に侵入できる。
攻撃力は殆ど無いが、使いようによっては強力な武器になるはずだ。
この蝶を使役できるようになるのは大変だった。
だが、オーガには無理でもクーナならば使役できる。そう思って頑張ったのである。
「行け! 蝶達よ! 闇に潜む者をその光で探し出せ!!」
蝶達は羽を白く輝かせながら夜の闇へと消えていく。
「さて、これで良いだろう。ところで、いつまで震えているのだシェンナ?」
クーナはシェンナの所へ行く。
「めっ女神様?!」
だけどシェンナは震えたまま動かない。
おそらくデュラハンには見た者を恐怖させる力があったのだろう。クーナやクロキには効かないがシェンナにとってはかなり強力だったみたいだ。
シェンナはその恐怖から抜け出せずにいるようだ。
「仕方のない奴だな。クーナの目を見ろ」
この女には踊りを教えてもらった。だから少しだけ面倒をみてやろう。
魔法を使うとシェンナの顔色が戻る。
「ありがとうございます……。女神様……」
シェンナは涙目になりながらお礼を言う。
「さあ戻るぞ、シェンナ。これから忙しくなるぞ」
クーナがそう言って笑うとシェンナはきょとんとした顔をするのだった。
◆黒髪の賢者チユキ
「大丈夫っすかチユキさん?」
私に肩を貸してくれているナオが聞く。
「大丈夫よナオさん。ちょっと気分が悪くなっただけ」
「本当に大丈夫ですか賢者殿。いったい何を見たのですか?」
横を歩くデキウスが心配そうに聞く。
しかし、見た事の内容を言うわけにはいかない。
私達がいるのは宿屋兼酒場が立ち並ぶ場所だ。
私はマルシャスを探すために透視の魔法を使って宿屋の中を覗いたのである。
しかし、それは失敗だった。
どいつも、こいつもサカリやがって……。
思わずそう呟きそうになる。
透視の魔法で各宿屋の2階を覗いたら、沢山の男女が頑張っている最中だったのである。
そして中には同性で頑張っている者もいた。愛の形はそれぞれだからとやかく言うつもりは無い。
顔の良い男性同士なら、むしろ推奨したくなる。
だけど、毛むくじゃらのおじさんが5人で重なりあっているのを見た時はさすがに気分が悪くなった。
良く考えたら、この界隈はそういう店が立ち並ぶ場所だ。透視をすればそういう姿が見えるのは当たり前だ。
私が顔を真っ赤にして倒れそうになったので、デキウスが気を利かせて捜索を打ち切る事にしたのである。
「ごめんなさい、デキウス卿。私達は先に戻ります」
私はデキウスに謝る。
デキウスは1人残ってマルシャスを探すので、ここに残る予定だ。
「はい。後は私1人で大丈夫です」
デキウスは私達から離れ夜の街へと消えて行く。
「戻りましょう、ナオさん。取りあえず1つ手がかりが出来たのだから。一旦レイジ君達と合流しましょう」
「はいっす」
私達は夜の街を歩く。
「はあ……。我ながら少し情けないわね……」
私は自己嫌悪に陥る。
「そんな事はないっすよ。こういう所も含めてチユキさんらしいっすよ」
ナオが笑いながら言う。
「何だか引っ掛かる言い方ね」
しっかり者を演じているつもりだけど。ナオは私の事をどう思っているのだろう?
「いやいや、特に何でもないっす。さあ戻るっすよ」
ナオは笑ってごまかす。
「もう……」
そんなやり取りをしながら私達は戻るのだった。
◆剣の乙女シロネ
「どうですかシロネ様」
劇場の中でミダス団長から台本を受け取り読む。
物語の内容は先にチユキさんから聞いていたがベタベタな話だ。
内容は魔女にさらわれた王子様を助けに行くお姫様の物語である。
チユキさんによると男女は逆だがペルセウス型神話というらしい。日本神話でもスサノオのオロチ退治がこれにあたるそうだ。
まあ万人に受ける話というのはこういうものだろう。
しかし、問題はそこではない。
「あの……。これ衣装としておかしくないですか?」
私は衣装を見て言う。
薄いひらひらした服だ。露出が激しい。これを着たら大変な事になってしまうだろう。
「そうかしら? 普通だと思いますが?」
ミダスは首を傾げる。
私は頭を抱える。ミダス団長に言っても通じない。劇団員の女の子の中にはもっとすごい格好の子がいる。
よほど敬虔なフェリア信徒じゃなければ肌をさらす事にためらいはないのだろう。
「良く似合っていると思うぜシロネ」
「そうだよ。シロネさんは綺麗な足をしているから良く似合うよ」
レイジ君とリノちゃんが楽しそうに言う。
「ちょっとレイ君にリノちゃん。シロネさんに悪いよ」
唯一の良心であるサホコさんが止めてくれる。
「あの、僕も似合うと思います」
そう言ったのは劇団員のアルト君だ。
彼が攫われる王子役である。女の子と間違いそうな顔の彼にぴったりな役と言える。
ちなみにアルト君はクリオさんの義理の息子で今は恋人なのだそうだ。
最初にそれを聞いた時は驚いたが、長命で姿が変わらないエルフだとそういう事もあるらしい。
可愛かったアルト君をクリオさんが目を付けて、親御さんと交渉した後で自分の養子にしたそうだ。
だけど自分の恋人にするのはどうなのだろう?
ちなみにエルフの中には人間の子供を無理やり攫う者もいる。いわゆる取り替え子だ。ある日突然自分の子供が丸太に変わっていたらそれはエルフの仕業なのらしい。
無理やりそんな事をしないだけクリオさんはましと言える。
アルト君はきらきらした瞳でレイジ君を見ている。彼は勇者であるレイジ君に憧れているみたいだ。
その様子はレイジ君と一緒にいる女の子と変わらない。
良く考えたら男性から慕われるのは珍しいのではないだろうか?
もっともレイジ君は少し戸惑っているみたいだ。
彼をどう扱って良いのか困っているように見える。
このお姫様っぽい王子を助けるの姫騎士が私の役なのだが、もう少し露出がどうにかならないだろうか?
「う~ん。できればもう少し抑えて欲しいのだけど……」
要望は通らないと思うけど一応言って見る。
「大丈夫だ! シロネ! もしシロネに変な目で見る奴がいたら俺が何とかしてやる! 俺がシロネを守る! だから安心してくれ!!」
レイジ君はフッっと笑うと私の肩に手を置いて真剣な目をして言う。
そんな風に言われたら断れないではないか。こういう所が私の弱い所だ。押しに弱い。
私はため息を吐く。
結局私が自分の意思を通せる相手はクロキぐらいなのだろう。
クロキは今何をしているのだろう?
窓の外を見ながらそんな事を考えるのだった。
◆眠りと夢の神ザンド
「ザンド様! 姉様が! 妹が!!」
暗い闇の中を僕の妖精達が舞い叫ぶ。
「わかっているよ。やってくれたねえ……。暗黒騎士」
夜の散歩に出かけたカティアの繋がりが突然消えたのである。
そして、しばらくして暗黒騎士が店へと現れた。
そこでカティアの身に何が起こったのかわかったのである。
おそらく暗黒騎士はマルシャスに何か細工をしていたのだろう。うかつだった。
彼はカティアから情報を引き出した後、真っすぐに僕の所へと来たみたいだった。
戦って勝つ自信もあるけど、万が一と言う事ある。だから逃げる事にした。
かなり危なかったけど僕の妖精達が時間を稼いでくれたおかげでなんとか逃げる事ができた。
妖精達は暗黒騎士よりもはるかに弱いけど、彼は何故か妖精達と戦う事を躊躇しているみたいだったので助かった。
彼はまだ僕を探しているだろう。
だけど、隠れる事や逃げる事には自信がある。そう簡単に見つかるものか。
さて、どうしてくれようか?
僕の妖精を殺した事へのお返しをしなくてはいけないだろう。
ここは彼の白銀の女神で贖ってもらうべきではないだろうか?うん、そうすべきだ。
妖精達の代わりは彼女に決めた。彼女の首をもらってやろう。
その事を考えると笑みがこぼれる。
「さてと、予定もかなり変更しなくてはいけないね……。ん?」
今一瞬だけど光る蝶が僕の前を横切ったような気がしたのだ。
この場所は僕の妖精の他は誰も知らず。また結界で空間は閉じられている。虫一匹だって入る事はできないはずだ。
蝶はすぐに消えてしまった。気配を探るが何も感じない。
どういう事だ?一瞬だけ疑問に思う。
まあ良い。気のせいだろう。
これからの事を考えなくてはいけない。
本当は勇者の仲間の1人である聖女を狙うつもりだった。その女を使い勇者をおびき寄せる。そしてゼアルを使い暗黒騎士をおびきよせて両者を戦わせる。
そして、両者が互いに傷ついた所でまとめて潰す。
だけど予定変更だ。まずは暗黒騎士の白銀の女神を狙う。妖精達のお返しをしなければ収まらない。
さあ行動だ。
ゼアルにはタラボスの所に行かせてある。ウルバルドも何か利用できるだろう。
僕はこれからの事を考えるのだった。
こっそり更新。
ギリシャ神話でオデュッセウスの妻ペーネロペーはオデュッセウスが20年放浪して戻って来て死んだ後、オデュッセウスが放浪中に余所の女性とできた息子と再婚していると知って、ちょっとびっくりです。




