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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第4章 邪神の迷宮
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光と闇の輪舞曲

◆暗黒騎士クロキ


 危ない所だった。思わず助けてしまった。

 彼女には以前に殺されかけた事がある。また自分を殺しに来るかもしれない。

 なのに彼女を助けてしまった。


「チユキさん! 大丈夫っすか?!!!」


 短い髪の女の子がこちらへと来る。


「ええ、大丈夫よナオさん……。彼が助けてくれたから」


 チユキと呼ばれた少女がこちらを見る。

 切れ長の瞳が自分を見つめている。綺麗だけどきつい目だ。何故か責められているような気がする。

 自分は彼女から目を反らすとナオと呼ばれた少女を見る。

 彼女には言わなくてはいけない事がある。

 自分は彼女に手を差し出す。


「何っすか?」

「仲間を返してくれませんか?」


 情報に寄れば彼女がナットを捕まえているはずだ。


「おや、お兄さんはルビーを迎えに来たみたいっすね。ルビー、迎えが来たっすよ」


 彼女はそう言って腰の袋からナットを出す。

 どうやら彼女はナットの正体に気付いていたみたいだ。


「ディハルト様~!!!」


 ナットが自分に飛びつく。


「えっ? そのネズミ喋るの?!!」


 チユキが驚きの声を出す。

 ナオに対して彼女は何も気付かなかったようだ。


「助けに来てくれるとは思わなかったでヤンス!!!」


 ナットが自分の顔にへばりついて泣く。


「もちろん助けるさ。それから下がっていてくれるかいナット。今から邪神と戦うから」


 顔からナットを離し床に置く。彼女達の防御魔法の範囲に入っていればナットは無事だろう。


「わかったでヤンス」


 ナットが離れると自分はラヴュリュスを見る。

 倒れたラヴュリュスは起き上がりこちらを見ている。警戒しているのか近づいてこない。


「援護するわ」


 チユキが助力を申し出るが手で制止する。


「大丈夫です。貴方は疲れているみたいだし下がっていてください。後は自分がやります」


 自分はそう言ってラヴュリュスの方へと向かう。


「何故暗黒騎士がここにいる?! なぜ勇者を助ける?!!!」


 邪神ラヴュリュスが叫ぶ。

 レイジを助けるつもりはない。

 これはただのなりゆきだ。

 そもそも、なんでレイジを助けなければならないのだろう?


「この炎は邪魔だな……」


 自分は黒い炎を出して部屋に充満している赤い炎を打ち消す。


「馬鹿な!!俺のモロクの火を消しただと!!!」


 驚愕するラヴュリュス。


「悪いけどヘイボス神から頼まれているんだ。貴方を倒して欲しいとね……」


 自分は剣を構える。


「待て!!!」


 後ろから声を掛けられる。

 回復したレイジがこちらへと来る。


「何かな……」

「お前の助けなんかなくても俺達は勝てる! 余計な事をしないでもらおうか!!!」


 そう言って2本の剣を構える。その内の1本は折れている。


「別に助けるつもりはないよ……」


 好きにすれば良い。

 そもそも自分がいなくても助かっていた可能性はある。

 それに恩に着せるつもりもない。

 自分はレイジを無視してラヴュリュスに剣を向ける。


「なぜ光の勇者と暗黒騎士が共に俺に向かってくる! どういう事だ!!」


 ラヴュリュスが斧を構える。

 自分とレイジがラヴュリュスに向かう。

 暗黒騎士と光の勇者と邪神の三つ巴の戦いが始まった。




◆黒髪の賢者チユキ


「ねえチユキさん、これはどういう状況なの?」


 リノが私に聞く。


「そんな事を言われても私にも状況がわからないのだけど……」


 目の前ではレイジと暗黒騎士の彼がラヴュリュスと戦っている。

 援護をするつもりはない。

 なぜなら、明らかにレイジ達の方が押している。

 ラヴュリュスは2人の攻撃に押されている。

 これなら援護をしなくても大丈夫そうだ。

 それに私達も余裕が無い。

 休まなければ魔力が回復しない。

 特にサホコの負担は大きかった。

 ずっと治癒魔法と防御魔法を唱えていたのだ、無理はない。

 今彼女は横になっている。お疲れ様と言いたい。


「状況はわからないけど助かったっす……」

「ええ、そうね……」


 暗黒騎士の彼が来たことで状況は逆転した。

 ラヴュリュスは彼に炎と雷で攻撃するが、全く効いていないみたいだ。

 斧や槍や剣で攻撃するが簡単に受け流されている。

 また、彼の怒涛の攻撃を盾で防ぎきれていない。

 彼はラヴュリュスを圧倒している。とんでもない強さだ。

 それにレイジもいる。

 レイジは暗黒騎士の彼と共にラヴュリュスを攻撃している。

 レイジの光の剣と彼の黒い炎が踊るように舞う。

 それは光と闇の輪舞曲であった。




◆暗黒騎士クロキ


「閃光烈破!!!」


 レイジの剣が自分とラヴュリュスを襲う。

 自分は体を反らしながらレイジの剣を避ける。

 レイジの攻撃は自分がいる事を考慮していない。

 まあ、レイジからしてみれば自分は仲間でもなく、ただ同じ敵を攻撃しているだけの存在だ。

 だから自分が前にいるにも関わらず平気で広範囲の魔法を使ってくる。

 レイジが守るのは女の子だけなのは知っているから別に構わない。

 問題は後ろを気にしながら戦わなければならないと言う事だ。

 正直戦いにくい。

 背中から来るレイジの斬撃を身をかがめて躱す。

 斬撃はそのままラヴュリュスを斬る。

 自分が間に立っている事でレイジの攻撃に対応するのが遅れたようだ。

 ラヴュリュスが膝を付く。


「何故だ! 何故光の勇者と暗黒騎士が協力している!!!」


 ラヴュリュスが叫ぶ。

 だけど協力なんかしていない。

 ラヴュリュスは誤解をしている。

 連携しているように見えるかもしれないが、後ろから来るレイジの攻撃を自分がただ躱しているだけだ。

 息を合わせて戦っているわけではない。

 ラヴュリュスが口から炎を角から雷撃を出す。

 だけど自分には炎も電も効かない。

 ラヴュリュスが斧や槍を向けて来る。

 振りが大きすぎる。

 そんな攻撃では自分を殺す事はできない。

 自分は斧と槍を受け流して返す剣でラヴュリュスの腕を斬り裂く。

 そしてそのまま横へと逃れる。

 それまで自分がいた位置をレイジが剣を構えて突っ込んで来る。危うく自分も串刺しになる所だった。

 レイジはそのままラヴュリュスに向かう。

 ラヴュリュスは盾で防ぐ事ができずそのまま貫かれ吹き飛ばされる。


「ブモオオオオオオオ!!」


 ラヴュリュスは床を転がる。

 しかし、すぐに部屋が光り回復する。

 ラヴュリュスは何事もなかったように立ち上がる。


「これぐらいでやられるかああああああ! 俺は負けんぞ!!!!」


 ラヴュリュスが叫ぶ。

 ラヴュリュスの攻撃は自分には効かず。自分達の攻撃はラヴュリュスにダメージを与えてもすぐに回復される。

 負ける事はないだろうけど面倒くさい。

 だからこんな戦いは早く終わらせよう。

 自分はラヴュリュスと戦いながら少しずつ部屋の脇へと誘導する。


「シロネ! 今だ!!!」


 自分は叫びシロネに合図を送る。

 この部屋の入口から奥にある祭壇に向かって猛烈なスピードで何かが飛ぶ。

 入って来たのは当然シロネだ。


「何だ?!」


 ラヴュリュスがシロネに気付くがもう遅い。

 猛烈なスピードで飛んで来たシロネは祭壇に辿りつく。


「何をするつもりだ!」


 ラヴュリュスが祭壇に戻ろうとするのを前に立ち阻止する。


「悪いけど行かせないよ!」


 突然部屋全体が光に包まれる。

 光が収まると周囲の景色が変わる。


「ここは?」


 ラヴュリュスが周りを見る。

 今いる場所は第13階層の地下ではない。迷宮の地表部分だ。


「緊急の転移魔法だよ。ヘイボス神はもし迷宮が攻め落とされるような事態になった時のために、脱出装置を第13階層に作っていた。これは貴方も知っているはずだよ」


 自分は剣をラヴュリュスに向けて言う。

 第13階層は普通の転移魔法は使えない。だけど緊急用に脱出する方法が用意されていた。

 ラヴュリュスが座る玉座の後ろの祭壇にある魔法装置を起動すると、あの部屋にいる全ての者が迷宮の外へと強制的に転移させられる。


「これでもう回復する事ができない! もちろん逃がすつもりもない! 貴方の負けだラヴュリュス!!!」




◆剣の乙女シロネ


 祭壇の魔法装置を起動させてあの場にいた全員を迷宮の外へと転移させる。

 これは前もってクロキと打ち合わせていた事だ。

 ラヴュリュスはあの迷宮にいるかぎり無限の力を得る。

 だから迷宮からラヴュリュスを引きずり出さなければいけない。

 そのために私とクロキは設計図にあった緊急のための転移魔法装置を使う事にした。

 クロキがラヴュリュスを引き付けている間に、私が魔法装置を起動させる。

 全てうまくいった。

 魔法装置が起動して全員が迷宮の外へと強制的に転移させられる。

 転移先は迷宮の地表部分の広場である。

 私は空を1回転するとチユキさん達の所へと降り立つ。


「シロネさん!!!」


 チユキさんが私の名を呼ぶ。


「良かった!みんなが無事で!!!」


 私はみんなを見る。疲れているみたいだけど大丈夫そうだ。


「ええ助かったわ、シロネさん。彼のおかげでね」


 チユキさんがクロキの方を見る。

 まだ戦いは終わっていない。

 クロキとレイジ君がラヴュリュスとまだ対峙している。

 だけど私達の勝ちだ。


「すごいっすよ、シロネさん! 2人の息がぴったりだったっす!!」


 ナオちゃんが興奮した声を出す。


「本当にそうだよね。初めて一緒に戦っているはずなのに……」


 私も部屋の入口から2人の戦いを見ていた。

 2人が共に戦う姿は感動的だった。

 きっとこれが私の望んでいた光景なのだろう。

 そう思っているときだった。突然空が光り輝く。

 私達は頭上を見る。

 そこには巨大な船が飛んでいる。

 船の周りには武装した女天使達が飛んでいる。

 そして船の先頭に誰かが立っている。


「あれはレーナ?」


 船の先頭には武装した女神レーナが立っていた。




◆暗黒騎士クロキ


 空に光る船が浮かんでいる。

 その船の先頭に槍と盾を持ったレーナが立っている。

 おそらく迷宮の遥か頭上で待機していたのだろう。

 自分達が迷宮の地表部分に転移して来たので降りて来たようだ。

 自分もレイジもラヴュリュスも戦いをやめて空を見上げている。


「久しぶりですね、ラヴュリュス」


 レーナが優しく笑う。

 離れた所にいるが自分の視力ならその顔をはっきりと見る事ができる。それはレイジもラヴュリュスも一緒のようだ。


「レ、レーナ! 俺の所に来てくれたのか?! 俺の愛を受けてくれるのか?!!!」


 ラヴュリュスが自分に都合の良い事を言う。


「御免なさい、ラヴュリュス。私が愛するのは彼だけです。だから貴方の愛は受けられません」


 そう言ってレーナは自分とレイジの方を見る。


「天空の女神が異界の男を選ぶと言うのか!!!!」


 ラヴュリュスが叫ぶ。


「そのとおりですよ、ラヴュリュス。私は異界から来た彼の事を愛しています。彼の事を想うと夜も眠れないほどなのですよ」


 そう言うとレーナの蕩けそうな笑みを浮かべる。

 そのレーナの瞳が熱っぽい。

 女神の愛の告白に周囲がどよめく。

 横にいるレイジが嬉しそうに笑っている。

 そりゃそうだ、レーナは美しい女神だ。その女神から愛していると言われて喜ばない男はいない。


「くそがあああ! 殺してやる!」


 ラヴュリュスがレイジに攻撃する。

 しかしレイジはそれを簡単に避ける。


「小さい男だな、邪神ラヴュリュス! 好きな女が自分に振り向いてくれないからその男を攻撃するのかよ! 男だったら好きな女の幸せを願って黙って身を引けよ!!!!」


 レイジは楽しそうに笑いながらラヴュリュスの攻撃を避けている。


「黙れええええええ!!!!!」


 ラヴュリュスはなおも攻撃をする。


「どんどん来いよ、ラヴュリュス! 俺はお前のような男を返り討ちにするのが好きなんだ! 男としての格の違いを教えてやる!!!」


 レイジとラヴュリュスの戦いが始まる。

 後ろにいたシロネや他の女の子達もレイジを援護しに来る。

 空にいる武装した天使達もラヴュリュスに攻撃する。

 もはやラヴュリュスに勝ち目はない。

 自分はそっとその場から離れる。

 もはや自分が戦う必要はない。ナットも助けた。

 そもそも何が悲しくてリア充男を助けなければならないのだろう。


「ディハルト様~~!!」


 ナットがこちらに来る。ナットも地表へと転移してきたようだ。


「ナット。先にナルゴルに戻ってくれないか?」

「先にでヤンスか?」

「ああ、クーナがこちらに向かっているみたいだ。迎えに行ってやらないと」


 自分は指輪をはめた左手を見る。

 クーナがこちらに来ている。どうやら待ちきれ無かったようだ。


「わかりやしたでヤンス。陛下にはこちらから報告しておくでヤンス」

「ありがとうでう、ナット」


 自分は魔法の道具を使いナットを転移させる。

 そしてラヴュリュスとレイジ達の方を見る。

 ラヴュリュスは迷宮にいなくても強い。

 だけど徐々に追い込まれている。


「行くかな……。これ以上はここにいる必要はないみたいだし……」


 この場を離れようとした時だった。中央山脈の方角から何かが飛んで来るのを感じる。

 自分は飛ぶと空船に乗っているレーナに向かって来る何かを叩き返す。

 飛んで来たの槍だった。

 槍はそのまま来た方向へと戻る。

 自分はそのまま空船へと着地する。

 助けるつもりはなかったのに体が勝手に動いてしまった。


「ありがとう、クロキ。守ってくれて」


 周りを見ると誰もいない。全員がラヴュリュスに向かっていったようだ。

 何人かは残ってレーナを守れよと言いたい。

 お陰で自分がレーナを守るはめになってしまった。

 自分とレーナは槍が飛んで来た方向を見る。

 中央山脈から巨大な鳥がこちらへと向かって来るのが見える。


「あれはルフ鳥! 何でこんな所に?!!」


 レーナが驚きの声を出す。

 ルフは南大陸に生息する巨大な鳥の事だ。この地域には生息していないはずである。

 良く見るとルフ鳥に誰かが乗っている。


「あれはザルキシス?それに他に誰か乗っているみたいだ……。レーナ、何者かわかりますか?」


 ルフ鳥に乗っている者は2人。1人はザルキシスだ。あの仮面には見覚えがある。

 そしてザルキシスと一緒に女性らしき者が乗っている。

 女性は右手に槍を持ち赤い法衣を纏っている。

 彼女がレーナに槍を投げたのだろうか?

 女性は普通の人間のように見えるがザルキシスと一緒にいるのだから人間ではないに違いない。


「嘘……。蛇の女王ディアドナ。彼女が何でこんな所に……」


 レーナは目を開いてルフ鳥に乗る女性を見ている。

 蛇の女王ディアドナの事は聞いたことがある。南海諸島に住むゴーゴン族とラミア族に崇められる女神だ。

 そして破壊神ナルゴルの配下だった女神でもある。

 彼女はザルキシスと同じように魔王と敵対しているはずだ。

 ルフ鳥は一定の距離まで近づくと止まる。

 その場にいた全員がルフ鳥に気付き戦闘を止める。


「助けに来たわよ、ラヴュリュス!!」


 ディアドナがルフ鳥から降りる。

 降りながらディアドナが法衣を脱ぐと体が変化していく。

 背中から巨大な蝙蝠のような翼が生え下半身が巨大な蛇へと変わる。

 頭には巨大な2本の角が生え。瞳が黄金に輝く。


「いけない! 盾よ! その力を解放しなさい!!!」


 レーナが自分の盾を天にかざすと盾が青い光を放つ。

 ディアドナの瞳が輝きを増し辺りが光に包まれる。


「何だこれ……?」


 強力な魔法の光だ。その光により周囲が見えにくくなる。

 そして光が消えた時、そこにはザルキシスもディアドナもラヴュリュスもルフ鳥もいなくなっていた。


「今のは……」

「ディアドナの石化の魔眼ですよ、クロキ。まともに浴びれば神族であってもただでは済みません。しかしそれよりも……」


 そう言ってレーナはルフ鳥がいた方を見る。


「どうやら逃げられたようですね……。まさかディアドナが来るとは思いませんでした」


 レーナの表情が暗くなる。

 しかし、逃げられた以上はどうにもならない。


「元気を出して下さい、レーナ。逃げられましたがラヴュリュスの企みを阻止できたのです。貴方の勝ちですよ。ここは笑うべきです」


 自分がそう言うとレーナが笑う。


「そうですね……。少し元気が出てきました。それから、もし彼らが現れたら貴方が私を守ってくださいね」


 そう言ってレーナが顔を寄せて来る。


「いや、あの……」


 綺麗な顔が近づき自分は慌てる。

 レーナはそんな自分の様子を楽しんでいるのか嬉しそうに笑う。


「さて、そろそろ私も下に降りますね。レイジを出迎えねばなりません。また会いましょう」


 レーナはそう言うと空船から降りる。

 空船から下を見るとレイジの周りに女の子達が集まっている。

 女の子達はレイジを中心に笑い合う。

 再会を喜び合っているのだろう。

 その中にシロネもいる。

 シロネは仲間に抱き着き、再会できた事を喜んでいる。

 それを見て良かったと思う。

 できればシロネには幸せになってもらいたい。

 レイジの周りには可愛い女の子が沢山いるからシロネはなかなか愛してもらえないかもしれない。

 だけど、それもシロネの選んだ道だ。黙って見送ろう。

 何より、もうこの事でシロネと喧嘩をしたくない。

 やがてシロネ達にレーナが合流する。

 レーナが来たことで女の子達は道を開ける。

 レイジがレーナの手を取る。

 レイジとレーナが並ぶと美男美女のカップルでとても絵になる。

 それを見て羨ましいと思う。

 シロネや他の美少女を手に入れておきながら、レーナという美しい女神を手に入れている。

 見ていると何だか悲しくなる。


「うう……やめよう……。これ以上見るのは。悲しくなるだけだ」


 自分はそう呟くと魔法を使い空を飛ぶ。

 他人を羨んでも仕方がない。

 自分は自分の幸せを追い求めるべきだ。

 ナルゴルの方向へと飛ぶ。

 クーナと合流しよう。

 自分は夕焼けの空を1人で飛ぶ。





◆黒髪の賢者チユキ


「チユキさん、何っすか今の光は?!!!」


 ナオが叫ぶ。


「わからないわ……。おそらく何かの魔法なのでしょうけど……」


 突然蛇女が現れると蛇女が目を光らせた。

 その目の光が消えるとラヴュリュスが消えてしまった。

 どうやら逃げられたようだ。


「見て! 天使達が!」


 リノが指した方を見ると一緒に戦っていた天使が宝石のように透き通った彫像に変わっている。


「石化の呪いだわ……。多分死んではいないはずよ。後で解呪しなければならないでしょうけどね……」


 私は彫像になった天使を見て言う。

 石化の呪いは強力な呪いだけど死ぬ事はない。解呪すれば元に戻るはずだ。


「それにしても強力な魔眼ね。レーナが防御魔法を使ったにもかかわらずこれ程の威力があるなんて……」


 私は戦慄する。

 蛇女が魔眼を発動させる前にレーナが防御魔法を使ってくれたみたいだ。青い光が私達を守ってくれたのを覚えている。

 おかげで私達は無事だったが、私達よりも対魔力が劣る天使達はそれでも抵抗できなかったみたいだ。

 しかも普通の石像では無く、宝石の石像へと変えられている。

 エメラルドの綺麗な彫像へと変えられた天使達。生きてはいるだろうけど解呪するのが大変そうだ。


「あれと戦う事になるんすかね……」


 ナオがげんなりした表情で言う。

 私もあんな化物と戦うのはごめんだ。

 みんなの表情が暗くなる。


「もうみんな! 今はそんな事は良いじゃない! それよりも今は無事を喜ぼうよ!!」


 シロネが明るく言うと私に抱き着く。


「シロネ……」

「良かった、みんな!!!心配したんだよ!!!」


 シロネの顔が泣きそうになっている。よっぽど心配していたのだろう。


「ああ悪かったよ、シロネ……。心配をかけた」


 レイジが笑うとみんなも笑う。


「レイジ。無事で何よりでした」


 レーナがこちらへと来る。


「レーナ!!!」


 レイジはレーナの元へと向かう。


「すまない、レーナ! 心配をかけた!!」


 レイジがレーナの手を取り申し訳なさそうに言う。


「私はあなたの無事を信じていました。ですが少し不安だったのですよレイジ。彼が傷ついてしまうのではないかと……」


 レーナは少し憂いを帯びた表情で言う。

 私はレーナの今の言い方に少し違和感を覚える。

 ちょっと言い方がおかしい。そこは「貴方が傷ついてしまう」と言うべきだろう。

 だけどそんな些細な事はレイジにとってどうでも良い事みたいだ。

 レイジがレーナの言葉に感動している。


「悪かった、レーナ! もう心配をかけない!!」


 レイジがレーナに抱き着こうとするがレーナはすっとレイジを躱す。


「レイジ……。無事を祝いたい所ですが今は皆を癒さねばなりません。だからまた後で会いましょう」


 レーナはそう言って彫像になった天使達を見る。

 天使達は全員が彫像になったわけではない。無事な者もいれば、部分的に石になっている者もいる。

 レーナは私達から離れて無事な天使達に指令を出す。

 無事だった天使達は彫像になった天使達を空船へと運ぶ。

 そしてレーナ達はこの場を離れる。

 レーナ達が去り私達だけが残される。


「レイジ君。私達もアリアディア共和国に戻りましょう」

「そうだな」


 エウリアはラヴュリュスと戦う前にアリアディア共和国に転移させている。

 私達もアリアディア共和国に戻るべきだ。

 シロネの話しではキョウカとカヤがそこで待っているはずである。


「そういえばクロキは?」


 シロネが周囲を見る。

 だけどここには私達しかいない。


「そうよ、彼はどこに行ったのよ、シロネ? 彼をナルゴルから取り戻したのでしょう?」


 私も彼を探す。彼にはまだお礼を言っていない。

 だけどシロネは悲しそうに首を振る。


「ううん……まだなの……。もしかするとまたナルゴルに行ってしまったのかも……」


 シロネは泣きそうだ。


「詳しい話を聞かないといけないわね。でも今はアリアディア共和国に戻りましょう。キョウカさん達も待っているでしょうし」


 シロネから詳しい話を聞かねばならない。私達がいない間に何が会ったのかを。

 そして彼の事を良く知りたいと思った。

 シロネの幼馴染であるクロキの事を思い浮かべながら私は転移魔法を唱えた。

あけましておめでとうございますm(_ _)m


次回で第4章も終わりです。

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 勘違いが勘違いを呼び、誤解が誤解を招く。主観的には、精神的NTR……ドンマイ……
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