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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第1章 謎の暗黒騎士
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戦う理由

◆召喚されし者クロキ 


 かつて神々の住まう祝福された地エリオスに一柱の男神がいた。

 その男神はエリオスの中でも強大な力を持っていたが、その姿は醜かった。

 そのため他の神々が夫婦になっているにも関わらず独り身だった。

 それでも、男神は妻が欲しいと独身の女神達に言い寄った。

 しかし、誰からも相手にされなかった。

 次に女神に仕えている天使や妖精に言い寄った。しかし、彼女らは醜い男神をいやがり、自分達が仕えている女神に助けを求めた。

 醜い男神を嫌っていた女神達はその男神を追い出そうと画策した。

 女神達はレーナという女神を中心に行動した。

 女神たちは、男神が天使や妖精に、妻になれと強要していると神々の王オーディスに嘘の訴えをしたのである。

 オーディスは他の神々と相談し、その男神を暗き土地ナルゴルへと追放することを決定する。

 男神は泣いた。その男神は何かを強要した事は無かったからだ。。

 男神もオーディスに訴える。

 しかし、女神達は共謀して、男神に不利な証言をしたため決定が覆ることはなかった。

 男神は決定に従うしかなかった。

 そのとき、男神はオーディスに一つの要求をする。独身の女神達の中でもっとも美しいレーナの髪を一房いただけるならその決定に従うと。

 オーディスはその要求を聞き、レーナに交渉する。

 レーナもそれで出ていくならとしぶしぶ髪を一房わたす。

 男神はナルゴルへと去った。

 男神はその地で決意する、誰も自分の妻になってくれないなら、自分で妻となってくれる女神を造ってやろうと。

 様々な試みにより、ついに男神はレーナの髪を元に、一柱の女神を造る事に成功する。

 だが、その女神はレーナの複製ともいえる存在だった。

 自分の複製を造られたことに気付いたレーナは怒り、その女神を自分に引き渡すよう要求する。

 しかし、今度は男神はその決定には従わなかった。

 ナルゴルの地に結界をはり、徹底抗戦の構えをみせる。

 レーナは神々に男神を討伐するよう訴える。

 だが、さすがにそれは敵わなかった。

 男神の力は強く、神々でもオーディスぐらいしか太刀打ちできない。

 だが、オーディスは神の王でありエリオスから簡単には離れる事はできない。

 レーナを除く他の神々は男神と戦いたくなかったのである。

 やむなくレーナは人間の英雄と軍勢をナルゴルに差し向けた。

 これが、戦いの始まりだった。

 そして、レーナと争った男神こそが魔王と呼ばれるモデスである。

 モデスとレーナの軍勢は激しく戦った。

 結果はモデスの軍勢の連勝。

 レーナはこのままでは勝てないと考えた末、予言の力を持つ女神カーサの教えを乞う。

 カーサの予言は異界より呼び寄せた勇者ならば、モデスを倒す事ができるというものだった。

 レーナはモデスを倒せる存在を異界より召喚する。

 それが、光の勇者レイジとその仲間たちだ。

 もっとも、モデスは当初はその予言の事を知らなかった。

 勇者レイジ達が凄まじい力で次々と防衛線を突破していくまでは。

 驚愕したモデスは勇者達の正体を調べ、予言の存在を知る。

 モデスが勇者と戦えば予言により倒されてしまうだろう。

 よってモデスは勇者と戦う事ができない。

 モデスはさらに情報を集めた。

 そこで、モデスはレーナが教えを乞うたときにカーサが勇者を止める事が出来る者もまた異界の者であると予言した事を知った。

 そこでモデスはレーナの元から召喚術の情報を盗み出し、勇者達に対抗できる存在を召喚した。


 その召喚された存在が自分。


 魔王モデスの話を要約するとそういう事らしい。

 戦いに負ければモーナは消されてしまうだろう。それだけは何としても避けたい。

 モデスは涙ぐみながら自分に言う。

 ちなみにモデスの話によれば盗み出した召喚術には帰還の方法が記されていなかった。

 帰還の方法が無いか、まだ見つかってないかのどちらかとの事だ。

 つまりはレイジ側も帰還する方法を知らないとみて良いだろう。

 モデスが嘘を言っているようには感じられなかった。

 なにより、自分に言う事を聞かせたければ、言う事を聞かなければ帰還させないぞと脅迫すれば良い。

 だとすれば彼らは何故戦っているのだろう?

 しかし、今はそんなことを考えても答えはでないだろう。

 自分はモデスの城の中庭に移動していた。

 エリオスにあった、モデスの住居を元に作られたのが、この中庭だそうだ。

 あまり華美でもなく、ほっとするような場所だ。

 この場所はモーナとモデスと特別な者数名だけが入る事が出来るらしい。

 円形の椅子に座ってモデスからこれまでの経緯を聞いていた。

 モーナが淹れてくれたお茶らしきものが目の前にある。

 お茶からは独特の芳香がした。

 一口飲むと少し苦味があるが結構おいしかった。

 そのお茶を飲みながら、これからの事を考える。

 レイジともう一度戦わねばならないのだろうか?

 何か夢を見ている気がする。

 モデスは戦ってくれたら、自分のために女神をもう一柱、造ってくれるそうだ。

 女神を造るのは簡単ではないが、あと一柱ぐらいなら大丈夫らしい。

 それは、魅力的な報酬だ。

 何しろ今まで女性と付き合えたことが無い。

 むしろ、目つきがいやらしいと避けられてきた。

 過去の事を思い出す。

 最初は普通に接していた女の子が何故か途中からよそよそしくなる。

 どうやら、可愛い女の子を見ると気付かないうちに視姦していたようだ。

 これはシロネからも指摘されている。普段はともかく、ミニスカートの女の子を見る時にギラギラした目になるそうだ。

 そんな事を言われても本能だから仕方がないじゃないか……。

 これでは永遠に誰とも付き合えない。

 その事を考えると何か哀しくなってきた。

 考えるのはやめよう……。

 それに、女神レーナの姿も見せてもらった。

 モーナに細部こそ違うがよく似ていた。

 次に造る女神もモーナと同じくらい美しくなるのだろう。

 それを貰えるのだ、魅力的でないわけがない。

 そして、何より自分を無条件で好きになってくれるのが良い。

 自分が良い男で無くてもだ。

 自分だって可愛い女の子といちゃいちゃしたい。

 レイジのように複数じゃなくて、一人で良いからと思う。

 すごく可愛い女の子が恋人になれば、この世は幸せだろう。


 だけど……。


 そのためにはレイジと戦って勝たねばならない。

 正直勝てる気がしない。

 実は過去にレイジと戦ったことがある。

 あれはつまらない試合だった。

 もう少し前になるだろうか?

 自分が中等部の時に剣道に興味をもったレイジが、学園の剣道を学んだ事のある者達全員と戦った時があった。

 その中に自分がいた。

 その時自分はレイジに惨敗したのだ。

 別に自分が特別に強いとは思った事はない。

 だけど、あんなに簡単に負けるとは思わなかった。

 かなりショックだった。

 まず、動きが違う。同じ歳なのになんであんな動きができるのだろうと思った。

 その試合を見ていたシロネの言葉は今でも覚えている。


「何だか落ち込んでいるみたいだけど、大丈夫クロキ? レイジ君は特別なんだから、負けても気にする事ないわよ」


 シロネはそう言って慰めてくれたが、とてもみじめだった事を覚えている。

 正直あの時に剣道をやめようと思った。

 だけど、なぜか今も続けている。

 ちょっとは強くなったかもしれないが、レイジはもっと強くなっているだろう。

 とにかく断らないとだめだ。

 真剣でやれば死ぬかもしれない。

 報酬は魅力的だが、命を失っては元も子もない。

 そもそも、モデスの為に戦う義理はなかった。

 モデスを見捨ててしまえば良い。

 だが心の奥底で何かが引っかかっていた。

 奥底で引っ掛かっている物はすごくつまらない物だ。

 またモデスにとってモーナはやっとできた伴侶なのだろう。

 どこか見捨てられない自分がいた。


「お願いしますクロキ殿! あなたに頼るしかないのです!」


 モデスが涙目になりながら自分の手を取る。

 自分は力なく笑うしかなかった。


「すみません、少しだけ時間をくれませんか……」




2話に比べて短いです。昔書いたのを修正して投稿してます。小説書くのって難しいですね。

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レイジを倒すためにレーナが異界から呼び出したモノを倒すためにモデスが異界から呼び出したモノを倒すためにレーナが異界か
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