愛の魔法薬
◆ガリオスの妻ペネロア
「ただいま帰りました、ペネロアさん」
クロが帰って来た。
クロは旦那であるガリオスの恩人である。
あの細い体で倍近い体格の旦那を背負って現れたときは本当に驚いた。
弟であるレンバーが言うにはクロと言う青年は魔術師かもしれないとの事だった。
魔術師と言えばニムリ先生しか知らないが、クロはそのニムリ先生よりも不思議な感じがした。
クロは静かな青年だ。そばにいるとほっとした気分にさせてくれる。
「あの、知り合いに会ったので招待したいのですが、いいですか?」
クロを出迎えるとクロはそう言って後ろに顔を向ける。
最初、人がいる事に気付かなかったがフードを被った女性がいた。
その事に私は驚く。
「旦那からクロが女性を連れてくるかもと言ったけど本当だったとはね……」
クロはあまりそういう事をしそうには見えなかった。
「ちっ違いますよ! 前に会った事のある人です! たまたま今日再会しただけです!!」
クロは顔を赤くしながら否定する。照れているようだ。
後ろの女性を見る。フードを被っていて顔が良く見えないが。口元からかなりの美人のようである。
女性は照れているクロに対して平然としている。
クロが一方的に想いを寄せているのかもしれない。
「冗談だよ、ようこそロクス王国へ。クロの知り合いなら歓迎するよ」
私がそういうと2人は部屋を通り離れへといく。
クロはロクスに滞在している間、我が家の離れの部屋を使っている。
私はクロを呼び止める。
「なんでしょう?」
「後で飲み物を持って行ってあげるよ、何が良い?」
「ありがとうございます、ペネロアさん。それでは自分はいつものでお願いします」
「ああミセネンだからかい」
「はい、未成年だからです」
「お連れは? ミセネンかい?」
私が聞くとクロは少し考えて言う。
「お任せします……。おそらく未成年じゃないと思います」
「そうかい、良い物が手に入ったからそれをあげるよ」
「ありがとうございますペネロアさん」
クロが私に頭を下げる。礼儀正しい子だ。
クロ達は今度こそ離れに行く。
今日は隣の人から上等な蜂蜜酒をもらったのでクロの連れて来た女性に少しあげようと思った。
蜂蜜酒は新婚の夫婦が飲むお酒だ。
クロのような青年の恋がうまくいくようにと、このお酒をあげようと思った。
◆知恵と勝利の女神レーナ
あなたの騎士になれません。
そう言われた時は少しショックだった。
だが、ディハルトが言うとおり簡単に裏切るような者なら騎士とはいえない。
そういう者だからこそ、この男が欲しいのだ。
それに、この男の意志は問題ではない。
嫌でも私の物になってもらう。
私は懐にある小瓶を触る。
私はチユキではなく、この薬をこの男に使うつもりだ。
ディハルトに出会った時は本当に驚いた。
ディハルトは最初に出会った時のように私を殺す気はないようだった。
ディハルトからは私に対する敵意を感じなかった。私の美貌をもってすれば当然だが。
私の美貌に目が眩む、それだけならそこらの男と変わらない。
だが、ディハルトは今やこの世界でも最強の剣士かもしれない男だ。そんな男が私の奴隷になるのは最高に楽しい事だと思う。
それに、強いだけなら奴隷にしようとまでは思わないが、ディハルトの容姿はレイジよりも私の好みだ。奴隷になったら、首輪をつけてあげよう。
私は想像し笑う。
首輪をつけられたディハルトが私にひれ伏す姿。それは良い光景だった。
その時は、足に口づけまでは許しても良い。
ディハルトになぜここにいるのか聞かれた時、咄嗟に嘘をついてしまった。
もちろん、ディハルトは信じていないようだったが。
ここでディハルトを排除する事ができれば私の勝ちだ。レイジ達に頼らなくてもディハルトにモデスを倒させればいい。
その機会を窺うためにもディハルトにエスコートを許したのだ。
そして、彼が拠点にしている人間の住処に来た。
人間の住処はみすぼらしかったが我慢をする。
ディハルトが寝泊まりしているであろう部屋は大変小さく、ベッドとテーブルが1つあるだけだった。
ディハルトが椅子を持って来て私の席を作ってくれる。
汚い椅子だが我慢しよう。
それよりもやる事があるので部屋を出ようとする。
「どちらへ、レーナ?」
ディハルトが尋ねてくる。
「すぐに戻るわ。それに、そういう事を聞くものではないわ」
そういうとディハルトは黙った。
わかりやすい男だ。レイジよりも扱いやすそうに感じた。
部屋を出て先ほどの女のいる所を探す。小さな家なのですぐに見つかった。
私は気配を消し人間の女に近づく。
女は2つの飲み物を用意していた。飲み物は私とディハルトに出す物のようだ。
こっそり近づき杯の中の飲み物を見る。1つはどうやらお酒のようであり、もう1つはお茶のようだった。
飲み物が違う理由を私は知っていた。
レイジはお酒を沢山飲むが、チユキを始めとした女達はお酒を飲む事をしない。
レイジ達が元いた世界では女性がお酒を飲む事はあまり良くないらしいのだ。
ディハルトはレイジと同じ世界から来たから同じ理由で飲み物が違うのだろう。
私は愛の魔法薬をお酒にたっぷりと入れた。
人間なら一滴で永遠の愛を誓う。
この量なら、いくらディハルトでも私の愛の奴隷になるだろう。
薬を入れると私はディハルトのいる部屋に戻る。
ディハルトは少し怪しんでいるが問題はないだろう。
それに私にはこれがある。そう思い私は首飾りを触る。
賢者の目を騙す首飾り。
この魔法の装飾品は発動すると一定範囲にいる者の勘を鈍らせ、あらゆる探知能力を阻害する。
この道具を使うのは、魔法の薬が魔力を帯びているため、魔力探知で薬が入っていることに気付かれてしまうかもしれないからだ。
チユキは強力な魔力探知能力を持つのであらかじめ持ってきたのだ。
問題は使用者の勘も鈍くなる所にある。そのため簡単には使えない。
しばらくすると女が飲み物を持ってくる。
「ありがとうございますペネロアさん」
ディハルトが女に礼を言う。
女は飲み物をそれぞれ席に着いた私とディハルトの前に置く。
「それじゃごゆっくり」
女はそのまま出ていく。どことなく楽しそうだ。
だが、そんな事は気にしてられない。私はフードを外すと、首飾りを触りこっそり魔法を発動させる。
そして、目の前の杯を取りディハルトに向ける。
「ディハルト、何でも貴方のいた世界ではカンパイという風習があるそうね。私達もカンパイしましょうか?」
このカンパイとはどういう意味でするのかわからないが、やり方は知っている。杯を合わせ、持ってる飲み物を飲むだけだ。これで飲ませる事ができる。
「はあ……、何にカンパイするかちょっとわかりませんが……。まあいいですよ」
ディハルトはそう言って自身の杯を差し出す。
私も持っている杯を差し出す。
「カンパイ」
私とディハルトは杯を合わせ互いの杯に口をつける。
杯の飲み物を一口飲みディハルトの様子を窺う。
ディハルトの喉が小さく鳴り杯の中の飲み物を飲んだ事を教えてくれる。
勝った。
そう思った。
さあ私を見なさい。私はもう一口飲む。エリオスのお酒には劣るが人間のお酒もなかなか美味しく感じられた。勝利の美酒だからだろう。
ディハルトがこちらを見る。
これであなたは私の奴隷。何だか楽しくなってくる。何かがちょっと引っ掛かったが、ディハルトを見ているとどうでも良くなった。
ディハルト。いや確か本当の名はクロキと言うのではなかっただろうか?
クロキ。その名を思うと胸が熱くなった。
「ふふっ」
思わず笑みがこぼれる。
クロキの目が私を熱く見つめているのがわかる。
「クロキ」
私はそう言ってクロキの顔を引き寄せた。
◆暗黒騎士クロキ
まずいなと思った。
完全に相手のペースである。
レーナの目的がさっぱりわからない。
夕方になったが何もわからなかった。
しかし、レーナがシロネ達に危害を加えるかもしれないので放ってもおけない。
そもそも、なぜレイジやシロネ達に加えてレーナがこんな所にいるのかもよくわからない。
レーナは何か企んでいるのは間違いない。
だが、それがわからない。
女性と碌に話した事のない自分には難易度が高すぎる。
わからないことだらけだ。
レーナとこのまま別れるのもどうかと思ったので、取りあえずレーナを夕食に誘ってみると意外にも了解してくれた。
しかし、食事を提供する店は混雑していて、とてもレーナを連れてはいけない。
やむなく、ペネロアさんにお願いする事にしたのだった。
「乾杯」
ペネロアさんが持って来た飲み物で乾杯をする。
レーナと自分は杯を合わせ互いの杯に口を付ける。
レーナの喉が小さく鳴る。
レーナは今フードをはずしていて、その顔が良く見える。本当に綺麗だ、今まで出会った中で一番美しいのではないだろうか?
これほど綺麗な女性とこんな風に2人きりになれるとは思わなかった。嬉しいというよりも居心地の悪さを感じる。
経験豊富そうなレイジだったら上手くやれるのかもしれないな。そんな事を考えてしまう。
レーナがこちらを見て蠱惑的に微笑んでいる。
その顔は反則だと思った。
魅了の魔法という物があるが、レーナならそんな魔法を使わなくても相手を魅了する事が出来るだろう。
レーナが潤んだ瞳でこちらを見る。
「クロキ」
レーナが突然自分の名を呼ぶ。
えっ!?と思ったなぜ自分の名を知っているのだろう。
疑問に思う間もなく引き寄せられる。
信じられなかった、レーナの美しい顔がすぐ眼の前にあるなんて。
頭がくらくらしてくる。
そしてレーナの紅い唇が自分の口に合わされる。酒気が自分の中へと入ってくる。
頭の中で何かが外れる音がした。
◆神殿騎士隊長ルクルス
「何をやっているのだ!!ヒュロスは!!」
思わず口に出てしまう。
しまったと思い口に手をやる。
勇者様の別荘で大声を上げるのは良くない事だった。
「どうかしたのですかルクルス卿?」
1人の女性がこちらに来る。
「これはチユキ様」
頭を下げる。
美しい少女である。
黒髪の賢者チユキ。
それがこの少女の名だ。
一見ただの女の子だ。しかし、この少女は神殿にいる聖レナリアにいる魔術師が束になってもかなわないほどの魔力を持っている。
おそらく西方にあるサリアの学院の魔術師でもこの少女には敵わないだろう。
その、黒髪の賢者と呼ばれる少女は入浴したばかりなのか、髪が濡れていてとても色っぽかった。
「実は街に捜索に行かせた者達が今だに戻ってこないのです」
「捜索……。ああ私達が頼んでいたことですね。お手数をお掛けしますルクルス卿」
少女が頭を下げる。その態度に戸惑う。
「いえ、神殿の騎士として当然の事です」
背筋を伸ばして言う。
勇者様達はなんでもある人物を探しているらしい。それを我々神殿騎士達が手伝っている。
その探している人物は隠形を使うらしく、そのためにヒュロスを行かせたのだ。
神殿騎士ヒュロスはその腕もさることながら、生まれつき幻術や隠形を見破る破幻の能力を持っていた。
さすがに妖精の舞姫の放つ幻術を見破る事はできないが、それでもかなりの高度な幻術を見破る事ができる。
だからこそ、彼を捜索を任せた。
だが、それは失敗だったのかもしれない。
彼は能力だけなら神殿騎士団の中で1、2を争うほど高いのだが、その素行は悪く、たびたび問題を起こしていた。その類まれな能力があるから、見過ごされてきたが、それも限界だろう。
彼の選んだ部下も能力は高いが素行が悪い。当に帰還の時間はすぎている。
彼らは過去に任務中に女性に悪さをした事があり、今回も同じだろうと思っている。
もしかして何かあったのかもしれないが、その時は緊急を知らせる笛を吹くはずだ。それすらできないのでは神殿騎士失格である。
探しに行こうにも護衛の人数をこれ以上減らす事はできない。いらだちが募る。
彼らが戻ってきたらどうしようか。
「彼らが戻ってきたら処罰したいと思います」
「いえ、私達の勝手な頼み事です。どうか穏便に」
チユキ様がヒュロスを庇う。
この黒髪の少女は強力な魔法を使う事から恐れられているが、本当は優しい心の持ち主である事を最近知った。
「それよりもルクルス卿。レイジがどこに行ったのか知りませんか?」
「勇者様ですか? 確かお部屋に籠られ、誰も入るなと言われた後は見ていませんが。いらっしゃらないのですか?」
チユキ様は首を縦にふる。
本来なら勇者様も護衛対象だが、あの方が行方を眩まそうと思ったら自分達ではどうすることもできない。
その点はチユキ様もわかっているので非難はされない。
「まったくどこに行っているのやら」
少女はため息をついた。
◆ロクスの姫アルミナ
「レイジ様」
ベッドの上、私は愛しい人の胸に顔を寄せる。
胸には醜い傷跡が右肩から左の腰まで1つの線となって残っている。
前に会った時にはなかった傷だ。
光の勇者と呼ばれたレイジ様にこんな傷を負わせた暗黒騎士を憎たらしく思う。
その暗黒騎士に負わされた傷は聖女サホコ様の癒しの魔法でもこの傷跡は消す事ができなかったらしい。
女神様に愛された男に何て事をしてくれるのだろう。きっと女神様が罰を下されるに違いない。
ふとそこで考える。
女神様もこんな風に抱かれたのだろうか?
私は神様に会った事はないが、時折り大国である聖レナリアに降臨なされるそうだ。
おそらくレイジ様に会いにくるのだろう。
美しき女神レーナから愛された男。それが彼だ。
不遜な考えだが、彼と一緒にいる間だけ自分も女神になったような気がする。
愛しい人がベッドから出る。一糸も纏わない体が露わになる。
美しい体だ、もっと見ていたくなる。
だがそれも終わりだ。女神レーナだけでなく彼の周りには私などよりも美しい女性がいる。私が一緒にいられるのはほんのわずかな間だけだ。
「行かれるのですか?」
「ああ、そろそろ戻らないとな」
レイジ様の言葉に黒髪の賢者様の事を思い浮かべる。
チユキ様は美しいが恐ろしいお方だと聞く。私との関係がバレたら、私はただではすまないだろう。
なにしろ魔法の力であの強固な城壁を簡単に壊してしまうお方なのだから。きっと、強力な魔法で私は石に変えられてしまう。それを思うと恐怖が湧き上がりそうになる。
それでもレイジ様と一緒にいたいのだが。
「そうですか……」
寂しそうに言う。ちょっとでも彼の記憶に残って欲しい。
だが、私の願いも空しくレイジ様は服を着る。
「ああそうだ、アルミナ。例の件はまかせておきな」
レイジ様はこちらを見て笑う。
例の件とは昨日の夜に起こったゾンビ発生事件の事だ。
この国を襲ったストリゲスの生き残りがいたのではないかと言われている。
ストリゲスは強力な魔物なのでレイジ様の力をお借りしようという事になったのだ。
これは婚約者であるレンバーに頼まれた事だ。
レイジ様とこんな関係になってレンバーには悪いと思っている。
レンバーの事は嫌いではないが彼を知ってしまったらもう他の男を見る事はできない。
「ストリゲスか……。まさか生き残りがいたとはね。必ず倒すと約束するぜアルミナ。君に誓ってね」
そのレイジ様の言葉を頼もしく思うのだった。
◆神殿騎士
「じゃあ頼みましたよ、オルアさん。俺達は勇者様のお屋敷に連絡に行きますので」
「ああ、まかしときなよ」
そのやり取りを乗せられた板の上で聞く。
体が動かない。見ると自分と同じ他の神殿騎士達も同じように板に乗せられてここまで運ばれていた。
ここまで私達を運んだ男達が出て行く音が聞こえる。
どうしてこんな事になったんだ。泣きたくなる。
さっさと警報の笛を鳴らせばよかったと後悔する。
路地であったあの男は何者だ?
一見するとただの優男だがその男の動きは只者ではなかった。
抵抗することもできず、叩きのめされてしまった。
何という技を使われたのかわからないが、体が痺れて動かず口も動かせなかった。
ただ、鈍い痛みだけが体を走っている。
それもこれもヒュロス隊長が悪いと思った。
私は嫌だったんだ。
それをヒュロス隊長が無理やり、あんな事をするから。
ヒュロスという男は能力は高いが無類の女好きだ。
サホコ様達の姿にあてられ、ヒュロス隊長の発案の元で女を誘いに行ったのが運の尽きだ。
サホコ様の姿を思いだす。あの清純可憐なあの方があんな格好をするとは思わなかった。
その姿は忘れられない。今でも目を瞑ればその姿を思い浮かべる事が出来る。
そして、サホコ様に愛される勇者が妬ましかった。
サホコ様の側にいるだけで癒される。
薬師の女ではなくサホコ様に癒してもらえないだろうか。
白の聖女と呼ばれるあの方の癒しはどんな傷も治す。
あの白い手で触れてもらえないだろうか。
そうなれば、このような目に会わせたあの男に感謝しても良い。
本当にあの男は何者なのだろう。
もしかするとサホコ様達が探している男かもしれない。
サホコ様に知らせなければならない。
そうすれば褒めてもらえるかもしれない。
「くくっ、体はどうだい?」
この家の主人である女が近づいてくる。
私達は路地の男に倒された後、すぐ近くの薬師であるこの女の所に運ばれたのだった。
寝かされた首の向きから女の姿を見る事がなんとかできた。
黒い女だった。
女は黒い服に黒いフードを被り目元を薄い布で覆っている。
ほとんど顔が見えないので女がどんな容貌しているかわからないが口ぶりからかなり年を取っているようだ。
女は何でも目が悪く。強い光がある所では生活できないらしいと、ここまで運んだ男達の話しからわかった。
そのためこの家の窓は遮られていて暗く、窓からわずかに差し込む夕日の光だけが部屋を照らしている。
薬師というだけあって部屋には薬草の匂いが充満している。
その匂いを嗅ぐと頭がくらくらしてくる。
「お前さん達はあの勇者を守る騎士だってね」
その口調に違和感を覚えた。
女の口調にはどこか敵意が含まれていた。
「くくく……私は運が良いよ、獲物が自ら飛び込んで来るのだからね」
獲物何を言っているんだ?
女の様子からただならぬ気配を感じる。
そして、女が目の布を取ったとき自分は息を飲む。
それは人間の目ではなかった。
鳥……。梟の目。
布を取った女の目は丸く、本来白い部分が黄色くてその中心に黒い瞳孔があった。
爛々と光るその目は人間の目ではない。
そこで気付く。
女は魔物だったのだ。
「ううっ」
その目を見た私を含む同僚達がうめき声を上げる。
「お前達には私の手先になってもらうよ」
女が笑う。その口から長い牙が見えた。
「私の可愛い娘を殺した。この国と勇者達を滅ぼすためにね」
女が笑う。
だが、呻く事しかできなかった。
お約束な展開です。レーナのような役は物語で誘拐されるか、石にされるかのどちらかなので。布石は打ったと言えます。




