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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第9章 妖精の森
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暗黒騎士の物語

新しい小説サイト「マグネット」と「ノベルバ」に移転予定です。

この章まではなろうで書きますが、次章からは移転先で書きます。

良かったら、そちらに来て下さると嬉しいです。


◆魔王モデス


 星の城の奥の謁見の間、その玉座に座り報告を受ける。


「陛下。どうやらディハルト閣下があの凶獣の復活を阻止したようでヤンス」


 宰相ルーガスの肩に座る火ネズミのナットが報告してくれる。

 あと少しでフェリオンは復活する所だったらしい。

 そのフェリオンの復活はクロキによって阻止されたようだ。

 さすがはクロキと言った所だろう。


「まさか、あの凶獣と渡り合うなんて……。やはり、危険……」


 隣で妻のモーナが何やらぶつぶつと呟いている。

 その顔が険しい。


「さすが、クロキ先生だわ。うんうん」

「うんうんって、殿下。何かわかっているのさ?」

「えっと……、とにかく先生がすごい事をしたんだよねぷーちゃん」

「まあ……、殿下らしいちゃらしいのさ」


 それに対して我が娘ポレンは何やら嬉しそうである。

 お付きのプチナ将軍と楽しそうに話している。


「さすがは陛下がお認めになった者ですな。あの者がいれば陛下は安泰。蛇達が何かを企んでも大丈夫でしょう」


 ルーガスが言う。

 確かにその通りだ。

 クロキがいればこのナルゴルは安泰だ。何も怖れる事はない。

 目の前にランフェルドをはじめとした部下達がいる。

 横には最愛の妻のモーナと最愛の娘のポレンがいる。

 近くには師のルーガスに育ての母である大魔女ヘルカート。

 全てこのモデスの家族だ。

 クロキの事を思い浮かべる。

 新しい家族。頼れる友。

 これからもナルゴルは安泰だろう。


「ルーガスの言う通りだ。さすがは最強の暗黒騎士。このモデスを救ってくれる者よ」


 ルーガスに頷くと笑いがこみ上げてくるのだった。


◆蛇の王子ダハーク


 西大陸の南にある南海諸島の中心に虹の都ニルカナイはある。

 この都には蛇の眷属しか入る事はできない。

 盟友である神々はアポフィスの地の離宮で会う事になっている。

 その虹の都の最奥で母ディアドナが不機嫌そうな顔をしている。


「失敗したようね。ボティス」

 

 母がそう言うとボティスが頭を下げる。

 凶獣フェリオンの復活させる計画は失敗した。

 再び封印が弱まる日まで数年が必要だろう。


「申し訳ございません。まさか、噂の暗黒騎士がいたとは思いませんでした」


 ボティスが悔しそうに言う。

 後少しであった。

 しかし、アルフォスを倒したという暗黒騎士の邪魔によって失敗した。

 死神ザルキシスの時もそうだが、どこにいるのかわからない奴だ。


「母上。安心しな。凶獣なぞいなくても、暗黒騎士は俺が倒す」


 そう言ってピサールの毒槍を構える。

 

「ふふ、頼もしいわねダハーク。確かに暗黒騎士は邪魔ね。先に何とかした方が良いかもしれない」


 母は笑うと手に持つ混沌の霊杯を触る。

 混沌の霊杯はこの世界が生まれる元となった混沌の海を呼び出す事が出来る。

 全てを無にして、全てを生み出す神器だ。

 偉大なる大母ナルゴルは混沌の霊杯を使い世界を再生させようとした聞いている。

 母はその役目を代わって行うつもりなのだ。


「今回は動けなかったけど、いざとなればこの私自ら倒してくれようぞ」


 そう言って母は遠くを見るのだった。



◆鍛冶と財宝の神ヘイボス


 エリオスの天宮は雲の上にある都だ。

 複数の宮殿が並び、それぞれの宮殿で神々が暮らしている。

 その宮殿の中でも神王の宮殿は一際大きい。

 まさにエリオスの中心にふさわしい。


「そうかヘイボス。フェリオンの復活は暗黒騎士が止めてくれたのだな」


 神王の宮殿の奥でオーディスが言う。

 この場所はオーディスの書斎だ。

 少数で話し合いをする時はここを使う事になっている。


「そういう事だオーディスよ。感謝せねばなるまい」

「そうだな」


 オーディスは頷く。

 エリオスの神々とモデスは対立していると思われているが、それは間違いだ。

 オーディスや一部の神々は対立する気はない。

 しかし、少数派である。

 オーディスはエリオスの盟主だが、あくまでまとめ役である。

 出来る限り、争いが激化しないようにする事しかできない。

 だが、それだけでも良しとするべきだろう。


「それにしても蛇の女王はこれでしばらくは大人しくしてくれるかな?」


 オーディスは険しい顔をして西を見る。

 蛇の女王ディアドナは明らかな敵である。

 ザルキシスが力を取り戻した今、油断ならない相手である。


「それはわからぬ。蛇は執念深い。諦める事はないだろう」


 そう言って西を見る。

 まだまだ、争いは続きそうであった。



 ◆知識と書物の女神トトナ


 エリオスの書物庫。

 私は座椅子に座り本を読む。

 膝の上にネルフィティが頭を乗せている。

 ジプシールの猫の女神である彼女はたまに私の所に遊びに来る。


「トトナん。フェリオンの復活は阻止出来て良かったにゃあ」


 ネルがにししと笑う。

 エリオス山の麓には彼女を崇める猫女達が沢山いる。

 そこから報告を受けたのである。

 それにあそこには彼女の父親であるヘイボスもいる。

 気にするのも当然だった。


「そうね、さすがはクロキだわ」


 私もネルと同じように笑う。

 すでにフェリオンの復活阻止の話はエリオスに響いている。

 ただし、クロキが活躍したというのは秘密という事になっている。

 もっとも、すでに広まっているだろう。

 しかし、あえてエリオスの男神達は無視をしている。魔王の配下が活躍したのは面白くないようだ。

 クロキの事を考える。

 クロキはエリオスを助けるために来てくれた。

 もしかすると私のためかもしれない。そうだったらすごく嬉しい。


「トトナちゃん! いる~!」


 ネルとそんな事を話していると誰かが入って来る。


「えっ? この声はイシュティア様にゃあ! どうしたのかにゃ?」


 ネルが起き上がると首を傾げる。

 確かに謎だ美と愛の女神である彼女は滅多にここには来ない。

 何だか嫌な予感がする。

 やがて彼女が姿を見せる。

 相変わらず大きな胸だ。

 私もレーナも胸は大きいが、イシュティア様に比べると少し小さい。


「イシュティア様? どうしたのですか?」


 私は座椅子から立ち上がると礼をする。


「いやね。ここに来たのは暗黒騎士の彼の事よ」

「暗黒騎士の彼? 誰の事ですか? イシュティア様」


 嫌な予感が的中して私はとぼける。


「あら、何でもあのフェリオンと渡り合ったそうじゃない! すごいわ! これはぜひともお会いしたいのよね。紹介してトトナちゃ~ん」


 そう言うと私に抱き着く。


「嫌です! 絶対に紹介しません!」


 私は見境のない痴の女神を引きはがすと、ぷいと背を向ける。

 気になる男に手を出さずにはいられない彼女は絶対にクロキに会わせられない。


「そんな~。良いじゃないトトナちゃ~ん」


 そんな私の気も知らず、なおもお願いをする。

 私はクロキの事を考えて溜息を吐くのだった。



◆黒髪の賢者チユキ


「はあ~。チユキさん。クロキと全く話せなかったよ。うう」


 エルドに戻るとシロネが私に溜息を吐く。

 私達がゴブリンの奴隷にされた人達の保護をしている間にシロネの幼馴染は帰ってしまっていた。

 白銀の髪の子もいつの間にか姿を消していたのである。

 すぐ近くまで来ていたのに間が悪い。


「まあまあ、シロネさんまた会えるよ」

「そうそう。またきっと会えるっすよ」


 リノがナオがシロネを慰める。


「私もそう思いますわ。何だかんだ言ってクロキさんとは何度も会っています。きっと縁があるのですわ」


 キョウカも同じことを言う。

 その顔が少し赤い。

 キョウカもシロネの幼馴染に会いたいようだ。

 それに対して側のカヤは微妙な顔をしている。こちらは会いたくないようだ。

 それはレイジも同じだろう。

 そのレイジは所用でここにはいなかったりする。

 この地域の魔物の動きが活発化しているのでレイジは救援に行っている。

 勇者レイジはこの世界の人々の本当の希望となりつつあるのかもしれない。


「ところであの子は戻って来ないの? サーナが待っているのだけど」


 サーナを抱っこしているサホコが言う。

 サホコの胸の中のサーナが目を潤ませている。

 今にも泣きそうだ。


「それなら多分大丈夫だと思う。ニーアが確実に戻すって言っていたから」


 コウキはまだ戻って来ていない。

 だけど、あの様子ならすぐに戻って来るだろう。

 そんな事を話ていると扉が叩かれる。

 私が入るように言うとレーナ神殿の司祭ハウレナが姿を見せる。


「エルフに連れ去られていた子が戻ってきました」


 ハウレナが言うとその後ろからコウキが姿が見せる。

 

「あ、あのただいま戻りました……」


 コウキが前に出てくると頭を下げる。

 中々礼儀正しい子だ。

 コウキの姿を見るとサーナが笑い出し、サホコの腕で暴れ出す。

 おそらく、コウキの所に行きたいのだろう。

 コウキはハウレナに促されサーナの元に行く。


「良かったねサーナちゃん。会いたい人に会えて……あれ?」


 シロネがそう言うとコウキの元へと行く。

 そして、コウキの側に近づいて目線を下げた時だった。

 シロネは首を傾げてコウキの顔を見る。


「あれ、どうしたのシロネさん」


 シロネの様子を見たサホコが疑問の声を上げる。

 シロネは中腰になるとコウキの顔をまじまじと見ている。

 何かあったのだろうか?


「どうしたの? シロネさん?」

「なんでだろう? 君の顔すごく懐かしい感じがする。 どうして?」


 私の問いに答えず。シロネはそう呟くとコウキの顔を触る。

 シロネはコウキと会う事はあまりなく、顔もしっかりと見た事がないはずであった。

 だから、実質会うのは初めてである。

 そのシロネがコウキの顔を見て不思議そうな顔をする。


「チユキさん。シロネさんじゃないけど、その子から何だか不思議な感じがする」

「そうっすね。エルフが攫うほどの子っすから何かあるのかもしれないっすよ」


 リノとナオも側に行くとコウキの側に行く。

 美女3人に見つめられてコウキは困った顔をしている。


「ねえ、サーナがコウキ君の所に行きたがっているのだけど、良いかな」


 サホコがコウキの顔を見ているシロネ達に言う。

 サーナがぶうと怒った顔をしている。


「ああ、ごめんなさい! サーナちゃん! サーナちゃんの大切な人を取るつもりはないのよ!」

 

 シロネがそう言うと3人は離れる。


「コウキ君。サーナを見てあげてね」

「はい。わかりましたサホコ様」


 コウキがそう言ってサーナを受け取ろうとした時だった。

 コウキの体がよろける。

 まるで力が入っていないようだ。

 

「危ない!」


 慌ててシロネがコウキの体を支える。


「あ、ありがとうございますシロネ様」


 コウキが謝る。


「どうしたのコウキ君! 全然力が入っていないみたいだけど!」


 サホコは体の力が入らないコウキからサーナを受け取る。

 サーナは少し不満そうだ。


「ごめんなさい。戻って来てから何だか体に力が入らないのです」


 コウキがそう言うと私達は顔を見合わせる。


「もしかして、エルフさん達に何かされたんじゃ?」

「その可能性はあるわね、リノさん」


 私はコウキに近づく。

 あのエルフ達はコウキに執心だった。

 もしかするとコウキに何かしたのかもしれない。

 体が傷ついているわけじゃないだろうから、治癒魔法では治せないかもしれない。

 だから、まずはコウキを調べた方が良いだろう。


「ごめんなさい。コウキ君、ちょっと服を脱いで。何かされているかもしれないから調べるわ」

「えっ? 服をですか?」


 私が言うとコウキは恥ずかしそうにする。

 

「チユキさん……。何しれっと脱がそうとしてるっすか?」


 ナオが私をジト目で見る。

 ナオは何か私を疑っている。


「な、何よ!? ナオさん! 調べるだけです! 変な誤解をしないで!」


 私はこほんと咳払いをするとコウキの服に手をかける。

 全く失礼な。

 コウキはエルフが攫うだけあってかなり可愛い顔をしている。

 こんな可愛らしい顔をした子のぴょこぴょこしたのを見ても何とも思わない。

 だから、これはただ純粋に調べるだけだ。

 さあ~て、どんなのかな~。

 なぜかウキウキした気持ちになりながら、コウキの下着を降ろした時だった。


「えっ?」


 私は驚きの声を出す。


「おお!」

「え~、これって!」

「ふ~ん」


 ナオとリノとシロネも声を出す。


「どうしたのですの?」

「ダメです! お嬢様は見てはいけません!」


 こちらに来ようとしたキョウカをカヤが取り押さえる。


「ああああ」


 私は呻き声を出す。

 コウキのあれはぴょこぴょこした可愛らしいものではなかった。

 かなりのブルンである。

 過去のブルルルルンを思い出す。


「蛇が~! 巨大な蛇が~!」


 私は思わず叫んでしまうのだった。


◆エルフの姫ルウシエン


 エルフの都アルセイディアを離れて、私達はエルドのレーナ神殿へと来ている。

 つい先ほどコウキをこの神殿の司祭に引き渡したところだ。


「うう、これからは影からしかコウキ様を見れないなんて……」

「まあまあ、ルウシエン様。側にいられるだけでも良いじゃないですか」


 テスが私を慰めてくれる。

 これからは私達はこっそりとこの国で過ごさなければならない。

 こっそり暮らすのは構わない。

 たまにならアルセイディアに帰っても良いと許可を得ている。

 それを聞いてピアラは喜びエルドの街に遊びに行った。

 問題はコウキと正面から接する事が出来ない事だ。


「姫様。これも試練です。時がくればレーナ様も会う事をお許しになるでしょう」

「そうだったら良いのだけど。オレオラ……。でもそう考える方が良さそうね」


 オレオラの言葉に頷く。

 少なくとも側にはいられるのだ。

 ここでコウキの成長を見守る事にしよう。

 そんな事を考えているとコウキが向かった先で、叫び声がする。


「どうしたんだろう? 何だか蛇がどうとか言っていたような?」

「はい。確かに蛇と聞こえました。まさか、蛇の者達が攻めて来たのでしょうか」


 その言葉を聞き、立ち上がる。


「コウキ様が危険だわ! 行くわよ!」


 私達は姿を消すと叫び声がする方へと走るのだった。



 

◆暗黒騎士クロキ


 御菓子の城へと戻るとさっそく竜になった副作用を解消させる。

 時刻は夜であり星空に月が浮かんでいる。

 

「どうしたのクロキ?」

 

 半裸のレーナがこちらに来る。

 クーナと違いレーナは大丈夫のようだ。

 クーナは自分の膝ですやすやと眠っている。


「いや、穏やかな夜だなと思って」


 自分は月を見上げて言う。


「これは貴方のおかげよクロキ。貴方がフェリオンに勝ったから、こんな穏やかの夜が来るの」

「魔法の封印のおかげだよ。そうじゃなきゃ、きっと負けていた」


 フェリオンの強さは本物だった。

 魔法の封印があり、本来の力を取り戻していたらフェリオンに負けていただろう。


「でも、それでも貴方のおかげだわ。ありがとう私達を守ってくれて」


 レーナはそう言うと背中に顔を寄せてお礼を言う。

 気恥ずかしが、悪い気はしなかった。

 まだ、戦いは続くだろう。

 蛇の女王ディアドナは諦めていないはずだ。

 だけど、今は穏やかな夜をすごそう。

 自分は月を見上げてそう思うのだった。



◆?


 これは神々争いに巻き込まれた青年が暗黒騎士となって世界を救う物語。

 暗黒騎士の物語はまだまだ続きます。

 だけど、ここで1度締めさせていただきます。

 ここまで読んで下さった方々にあつくお礼を申し上げます。

 


これでなろう版の暗黒騎士物語は終わりです。

続きはカクヨムで掲載します。来て下さると嬉しいです。

また、長いあとがきを活動報告で載せる予定ですので良かったら見に来て下さいm(。≧Д≦。)m


次回予告

間章 御菓子の城のおかしな奴ら

友であるクロと会うためにレンバーは水エルフのニミュと共に北へ行く。

その途中でレンバーは新しく出来た奇妙な国へと辿り着く。そこは御菓子の城がある奇妙な森のほとりに建てられた国。その国にははびこる悪魔の影、レンバーは無事にクロと再会できるのだろうか?

出来れば半年後は書き始めたいと思います。


次々回予告

10章 紺碧の魔海

セアードの内海は海神ダラウゴンと海王トライデンが争う場所だ。その海にクロキはポレンと共に訪れる。訪問の理由はポレンの友達であるダラウゴンの娘と会うためだ。

しかし、内海で何者かが暗躍する影があった。

はたしてポレンはヒロインに昇格できるか? 炎の効かない海の中でクロキはどう戦うか?

怒涛の第10章です。

一応ポレンがヒロインの章にしようと思います。


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