凶獣フェリオン
新しい小説サイト「マグネット」と「ノベルバ」に移転予定です。
この章まではなろうで書きますが、次章からは移転先で書きます。
良かったら、そちらに来て下さると嬉しいです。
◆暗黒騎士クロキ
フェリオンのデイモンを倒した後、ヘイボスと共に第3層へと降りる。
すると冷たい風を感じる。
側にいるヘイボスの顔を見ると青ざめている。
「大丈夫ですか? 大丈夫ですかヘイボス殿?」
「何とかな。お主は大丈夫のようだな暗黒騎士よ。このフェリオンの風に触れておるのに……」
「フェリオンの風?」
問うとヘイボスは頷く。
「フェリオンの風は魔法の風。心を恐怖で震わせる。それは神であってもだ。だが、お主とモデスは違うようだ」
ヘイボスは自分を見て言う。
「お主なら、この中でも行動が出来る。来てもらって良かった。この先にフェリオンはいるはずだ。急ぐぞ暗黒騎士」
自分は頷くとヘイボスは空舟で先へと進む。
この第3層にはあれ程数が多かったマーナガルムやイビルアイにオーバーイーター等の魔物の姿は見えない。
そして、フェリオンの獣の悪魔の姿もない。
第3層に広がるのは荒野だ。
一応第1層や第2層には森や湖があり、街があった。
しかし、第3層にあるのはここからずっと奥にある巨大なドーム型の建物だけだ。
まるで霊廟のようなあの建物の中にフェリオンはいるのだろうか?
ドーム型の建物は巨大で第3層の天井までもある。
そこを目指して空舟は進む。
ある程度まで進んだ時だった。
巨大なゴーレムの一団が見える。
ゴーレム達は何かを壊そうとしている。
壊そうとしているのは霊廟の周りにある塔のような建物である。
その塔から光の帯が、巨大なドームへと繋がっている。
「いかん! あれはフェリオンの封印の1つだ! 暗黒騎士!」
「わかっています! ヘイボス殿!」
自分は剣を構えると空舟から降り、ゴーレムへと向かう。
ゴーレムは自分に構わず封印を壊そうとしている。
このゴーレムがリベザルが放った封印を解くためのゴーレムだろう。
近付くと自分はゴーレム達を斬り裂く。
「さすがだな、一瞬で全てのゴーレムを倒すとはな」
「いえ、このゴーレムは反撃もしませんでしたので、簡単でした」
自分はゴーレムの残骸を見る。
このゴーレム達は封印を解くためにのみ動いていたので、反撃すらしなかった。
そのため簡単に倒せたのである。
「それよりもヘイボス殿。封印は?」
問うとヘイボスは首を振る。
「かなり壊されておる。直さなくてはいかん」
そうヘイボスが言った時だった。
空気が震える。
「これは!?」
自分は空気が震えた震源地を探す。
どうやら、奥に見える巨大な建造物から発せられているようだ。
「どうやら、フェリオンが封印を破ろうとしているようだな。このヘイボスは急ぎゴーレム達が壊した封印を修理する。暗黒騎士よ、それまでフェリオンを押えて置いてくれ。危険な仕事だが、お主にしか頼めぬ、すまぬ……」
震える声でヘイボスは自分にお願いをする。
フェリオンの恐怖の風はヘイボスに効いている。
神族であるヘイボスでこれなら、他の種族ではフェリオンに近づく事さえできないかもしれない。
「わかりました。行ってきますヘイボス殿」
ヘイボスを残し、自分はフェリオンの元へと向かう。
中心部へと向かうと一段と風が強くなる。
そして、巨大なドーム型の建造物に入るとそれはいた。
巨人をも飲み込めそうな巨大な顎を持つ狼。
頭に角が生え、その角が赤く光るとごとに、波動がドームを越えて吹き抜ける。
この狼がフェリオンで間違いないだろう。
その狼に無数の光り輝く鎖が巻き付いて、その内の何本かの光が薄くなっている。
光の鎖を巻き付けられたフェリオンは暴れている。
ドームを壊そうとしているみたいだ。
「ん!? 誰だい?」
自分に気付いたのかフェリオンがこちらを見て叫ぶ。
「自分は暗黒騎士クロキ! フェリオンよ申し訳ないが、大人しくしてもらうぞ?」
そう叫ぶとフェリオンが自分を見下ろす。
「匂う。黒い炎の匂い……。そうか、モデスの手の者だな。これは楽しい。再び黒い炎の者と戦えるなんてね。だけど、少し待ってもらうよ、もうすぐ封印が解けそうなんだ」
とても楽しそうにフェリオンは笑う。
「この縛りを解いて、今度こそ世界を喰らいたい。ああ楽しみだ……」
そう笑いながらフェリオンは封印を破ろうと体を動かす。
体を動かすたびに強烈な風が吹く。
その風に含まれているのは無邪気な敵意。
この狼を解き放ってはいけない。
強くそう感じる。
「そんな事はさせるか!」
自分は剣を構えて、フェリオンに飛ぶ。
押えろと言われたが別に倒しても良いはずだ。
しかし、そうはいかなかった。
近付こうとすると吹き飛ばされドームの壁に叩きつけられる。
その一撃は思った以上であった。
体が悲鳴をあげている。
自分は大きくせき込むと口から血を吐く。
「う、嘘だろ……。たった一撃で……」
自分はフェリオンを見る。
たった一撃で鎧を砕き、内臓がやられてしまった。
自己回復して元に戻すが、何度も喰らうと危ない。
フェリオンは自分を見て笑っている。
魔法で縛られて全力を出せないはずなのに何て奴だ!
「どうしたんだい? 黒い炎の使い手? 君の力はそんなものかい?」
フェリオンに嘲られ、自分は立ち上がる。
こんな事で終わって良いはずがない。
ヘイボスや地上の者達は自分を信じている。
だから、全力で応える。
「こんなものじゃない。竜よ力を貸してくれ……」
自分は目を瞑ると、中にいる竜に呼びかける。
暴力的な力が自分の体を満たしていく。
竜になる。
このフェリオンを相手にするには人間の姿ではダメだ。
竜になるのはリスクが多い。
アルフォスの時のように暴走する可能性があり、また変身を解いた後は下半身が暴走する。
終わった後はレーナに来てもらう事にする。
黒い炎が全身を覆うと、自分は姿を変えていく。
凶暴な力に支配されそうになる。しかし、そんな事になれば封印が解けてしまう。
だから、気をしっかり持つ。
「これは面白い! さすが黒い炎の使い手だ! このフェリオンを押えられるか!?」
フェリオンは笑いながら封印を解こうとする。
そんな事はさせられない。
「グアアアアアアア!」
竜になった自分は吠えるとフェリオンに挑みかかる。
意識が飛びそうになるが、何とかもたせなければならない。
竜と狼がぶつかる。
これが、ここでの最後の戦いのはずだった。
◆知恵と勝利の女神レーナ
オリハルコンゴーレムの最後の1体を何とか倒す。
オリハルコンでできたゴーレムは固いが、私の宝石の槍なら貫ける。
だけど、手間取ってしまった。
暴走させたドワーフ達に腹を立てる。
そして、そんな時だった。
地底から波動を感じる。
「これはクロキ? 竜になったのね」
私は過去に竜になったクロキを思い出す。
竜になったクロキは強い。
あのアルフォスが全く敵わない程にだ。
そのクロキが竜になる。それだけフェリオンは強敵なのだろう。
「問題は後よね……」
私はクロキが竜から元に戻った時の事を考える。
クロキならばフェリオンに勝てる。
そこは心配していないのだけど、後の処理は私がしなければならない。
その事を思うと頬が赤くなる。
「さて、コウキの様子はどうかしら?」
私は気になっていたコウキの様子を見に行く事にする。
そして、驚愕の光景を目にする。
「なぜ、コウキが戦っているの?」
コウキの気配を探り様子を見に行くと、そこではコウキが戦っていた。
そして、狼達を圧倒している。
その事は嬉しい事だ。我が子が強くて喜ばない親はいない。
考えてみればコウキは強くて当然、私とクロキの子なのだから。
目の前で戦うコウキの手に、薄く黒い炎が見える。
コウキは私に気付かず戦う。
勇ましい姿。その拙いながらも父親の剣技を受け継いでいる。
その姿に見惚れる。
だけど気になる事があった。
「あれは黒い炎。まずいわね、コウキの出自がバレるかも」
私は少しだけ不安に思うのだった。
ようやくフェリオン登場。
実はフェリオンはかなり迷った。
狼の少女にしようかなと思ったけど、それだと何だかな~。思ってしまいました。
マグネットノベルバ版ではフェリオンの娘でも出そうか迷います。
また、もっとモンスターを出したい。
設定資料集でモンスター図鑑を作りたい。
いつになるかわかりませんが……。
そして、この9章も後2話か3話で終わりです。
つまりなろうで書くのもそろそろ終わりです。