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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第9章 妖精の森
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少年と狼

新しい小説サイト「マグネット」と「ノベルバ」に移転予定です。

この章まではなろうで書きますが、次章からは移転先で書きます。

良かったら、そちらに来て下さると嬉しいです。

◆光と闇の子コウキ


「馬鹿な! こんなチビが!?」


 目の前の巨大な狼人ヤサブが剣を振るう。

 ヤサブの持つ剣は蛮刀というらしい。

 片刃ですごく重そうだ。

 それに対して、エルフのお姉さんが持っていた剣は細い。

 普通なら簡単に折れてしまいそうだけど、そうはならない。

 どうやら自分の持つ剣の方が硬いみたいだ。

 その剣で蛮刀を受け流そうとするが、うまく受け流せない。

 だから、肝心な所で相手を倒す事が出来ない。


「さすがです! コウキ様!」


 後ろでエルフのお姉さんの叫ぶ声が聞こえるけど、答える事は出来ない。

 エルフのお姉さんを助けようと無我夢中で飛び出した。

 最初の一撃は受け流せたけど次の剣は上手く流せない。

 ヤサブは何度も蛮刀を振るう。

 それを剣で受ける。


「馬鹿な! 何者だい! あのチビは!? ヤサブと剣を打ち合うなんて只者じゃないよ!」


 白い狼のお婆さんが叫ぶ。

 確かに打ち合っている。

 だけど、自分も余裕がない。

 受け流せたのも最初の一回だけだ。

 次からは受け流せない。

 理由はわからない。

 自分はクロキ先生の事を思い出す。

 今の状況はあの時と同じだ。

 クロキ先生はヤサブの蛮刀を簡単に受け流していた。

 同じことをやろうとしたけど、体がうまく動かない。

 なんでだろう? 

 やっぱり、練習が足りないのかもしれない。

 余分な力を使わず、体の重心を崩さないように動く。

 基本的な事を教えてもらったけど、実践する事が出来ない。

 先生は何度も練習すれば出来るようになると言っていた。

 だから、今は出来ないかもしれない。


「行くぞ! チビ!」


 ヤサブが再び攻めてくる。

 自分は後ろに下がる。


「コウキ様! 光弾よ!」

「させるかい! 水弾よ!」


 エルフのお姉さんの放った魔法が狼のお婆さんの魔法で防がれる。

 他のエルフさんも狼の相手をしなければいけないみたいだ。

 だとすると、こいつは自分が相手をしなければいけない。

 ヤサブの蛮刀が振るわれる。

 それを剣で受けようとする。

 その時だった。

 嫌な予感がして、床に転がる。

 剣は予測した所とは違う場所を通り過ぎる。


「グアッ!? 避けただと!?」


 ヤサブの驚く声。

 ヤサブは途中で蛮刀の軌道を変えたのだ。

 最初にエルフのお姉さんに見せた技だ。

 クロキ先生がその原理を教えてくれた。

 振ると同時に上半身を捻り、刃の向きを変える。先生に教えられなかったら気付かなかった。

 ヤサブは力でくる剣士のように見えるが、その動きはかなり修練を積んでいると先生は言っていた。

 ちょっとでも気を抜くとすぐに斬られるだろう。

 

「なるほどなチビ。あの男から剣を教わったか? だから、このヤサブ様の一撃を躱せたのか」


 そのヤサブの問いに頷く。

 先生は本当にすごい。一度見たヤサブの剣を完全に見切っていた。

 自分にはまだ無理だ。

 母様が言うには父様は偉大な剣士であるらしい。

 もしかすると先生のような剣士だったのかもしれない。

 だから、先生のような剣士を目指せば父様のような剣士になれるかもしれない。

 剣を構える。

 

「お前なんか自分が倒してやる!」


 今はまだ無理かもしれない。

 だけど、追いかけていればクロキ先生のような剣士になれる。

 自分はそう信じて剣をヤサブに向ける。


「面白い! やってみろチビ!」



◆エルフの姫ルウシエン


 コウキとヤサブが戦っている。

 普通の人間ならば狼人(ウルフマン)と正面から剣を打ち合う事は出来ない。

 妖精騎士ならば狼人(ウルフマン)と戦えるかもしれないが、あのヤサブと戦うのは難しいだろう。

 それだけあのヤサブは強いと有名なのである。

 ドワーフの資料を読んだけど、とんでもない奴だった。

 血塗られた赤狼ヤサブは、凶獣フェリオンの祝福を受けた魔狼だ。

 その魔狼と戦うコウキはさすが高貴なる御方の血を引いているといえる。

 私達はそのコウキを横から補助するべきだろう。

 私はカジーガを見る。

 白い狼婆のカジーガも有名だ。

 狼人の祈祷師(シャーマン)で、その魔法力は侮る事は出来ない。

 だけど、私も(ハイ)エルフだ。

 たかが狼に負けるものか。


「冬の峰に住む冷酷なる者よ! この婆の呼び声に応えておくれ! 雪狼の風!」


 カジーガが魔法で雪狼を呼び出す。


「ルウシエン様!」

「わかっているわよ! テス!」


 テスが私に呼びかけるがわかっている。


「優しき陽光の使者よ! 私の呼び声に応えなさい! 黄金の鷲よ!」


 カジーガが冬の冷気なら私は春の陽気で対抗する。

 互いに呼び出した雪の狼と黄金の鷲が戦う。


「姫様! 危ない!」


 オレオラが私の横に来ると何かを叩き落す。

 それは数枚の手裏剣(スローイングスター)である。

 手裏剣(スローイングスター)は何もない所から投げられてきた。

 何かが隠れている気配を感じる。

 

「姿を見せてよ! 狼さん!」


 ピアラが風の魔法を使い。隠れた敵の姿を露わにする。

 姿を現したのは影色の狼達。

 影走り(シャドウランナー)と呼ばれる者達だ。

 敵の数は思った以上に多いようだ。


「さすがはナパイア。我らの術を破るとは」


 そう言うと影走り(シャドウランナー)の一匹が直刀を抜いて構える。

 影走り(シャドウランナー)の数は4匹。多くはないが、今の私達には厳しい相手だ。

 そもそもテスもピアラも直接戦闘は苦手だ。

 まともに戦えるのはオレオラだけだが、オレオラはカジーガの側の狼の戦士を相手にしなければならない。

 そして、私はカジーガの相手だ。手伝う余裕はない。


「ピアラ、テス。少しだけ時間を稼ぎなさい。確かに状況は悪いわ。だけど、時間を稼ぐしかない」

「うう、そうは言っても! ん?」


 泣きごとをいうピアラが何かに気付いた様子を見せる。

 そして、私達の後ろから何かが飛んでくる。

 飛んできた何かは影走り(シャドウランナー)の直刀に落とされる。

 それはクナイと呼ばれる武器だ。

 苦無(クナイ)と呼ばれる両刃のナイフは穴を掘ったり、後部が輪になっていて紐や縄を通したりして様々な用途に使える。

 そして、それは影走り(シャドウランナー)と同じ忍びの者の武器だ。


「大丈夫かにゃ!」


 姿を見せたのは5匹の猫女達だ。

 夜目衆(ナイトアイズ)と呼ばれる彼女達は影走り(シャドウランナー)に負けない忍びの者だ。

 異変に気付いて救援に来たのだろう。


「くっ、救援が来たかい! だけど、偉大なる方を出迎えるためにも引くわけにはいかないよ!」


 カジーガが叫ぶ。

 だけど、引けないのはこちらも同じだ。

 救援が来た今なら、劣勢ではない。

 私達は狼に挑む。



◆暗黒騎士クロキ


「暗黒騎士!」

「わかっています!」


 ヘイボスの呼び声で後ろから来たマーナガルムを斬り裂く。

 ガルムの上位種族であるマーナガルムは巨大な狼の姿をしている。

 フェリオンの血から生まれるこの狼達は自分達の行く手を阻む。

 ヘイボスと共に地下宮殿の第2層を降りてから戦いっぱなしだ。

 いるのはマーナガルムだけではない。

 巨大な目の化け物であるイビルアイも多数出没している。

 自分は挑んできた最後のマーナガルムを斬る。

 

「前に来た時に一掃したはずなのだがな、どこから湧いて出て来たのやら。ナルゴルの眷属は理解ができぬ」


 ヘイボスがイビルアイの死骸を見て呟く。

 イビルアイはこのクタル以外にもいる。だけど、ここのイビルアイはそれよりもはるかに大きい。

 ガーゴイルと同じみたいだ。

 また、ガーゴイルと同じく生態は謎だ。

 闇の力が濃い場所なら無限に生まれるのかもしれない。

 

「はあ、全く面倒な。それにしても地上はどうなっているのでしょう?」


 自分は上を見上げる。

 地上にはレーナ達がゴーレムと狼に対処しているが大丈夫だろうか?

 さすがにコウキが戦う事はないと思うが心配である。


「気にしても仕方がない。それに本当の戦いはこちらだ暗黒騎士。凶獣の封印こそが奴らの狙いなのだからな」


 そのヘイボスの言葉に頷く。

 

「確かにそうですね。行きましょう。確か第3層への門はもうすぐなのですよね?」

「うむ、もうすぐだ。それにあの門を守っていたケルベロスはモデスのいるナルゴルに行ったから今はおらぬ。簡単に通る事ができるはずだ」


 ヘイボスのいうケルベロスは3つの頭を持つ巨大な魔犬だ。

 フェリオンの眷属であったが、今はモデスの配下になっている。

 一度会った事があるが、気の良い犬だった。

 自分達は再び空舟(スカイボート)に乗り先に進む。

 やがて、第1層と同じく神殿が見える。

 この神殿の中に第3層へと続く門があるはずだった。


「むっ!? 暗黒騎士よ、何者かがいるぞ!?」


 ヘイボスの言う通り門の前に誰かがいる。

 直立した狼だ。

 それだけなら巨大な狼人(ウルフマン)というべきだろう。

 しかし、その狼人(ウルフマン)には翼が生え、頭から角が生えている。

 まるで悪魔のような姿である。

 その悪魔のような狼人(ウルフマン)の数は4体。

 それぞれが武器を持ち、こちらを待ち構えているようであった。


「凶獣と共に封印されていた者達が目覚めたのか!?」


 ヘイボスが叫ぶ。

 フェリオンのデイモンというべき者達がこちらに来る。


「どうやら、簡単に通してはもらえないようです」


 自分は魔剣を構えると空舟から降りるのだった。


 


何とか更新。

ここ数日、花粉で目が痛い、鼻がずるずるです(>_<)

もう少しコウキの話を書きたかったけど、これ以上は無理、頭がガンガンします。

マグネットとノベルバで加筆ができたらします。


正直に言うと移転先は1つにした方が良いかもと思っています。


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