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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第9章 妖精の森
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破壊の女神の宮殿

新しい小説サイト「マグネット」と「ノベルバ」に移転予定です。

この章まではなろうで書きますが、次章からは移転先で書きます。

良かったら、そちらに来て下さると嬉しいです。

◆暗黒騎士クロキ


 自分は暗黒騎士の姿になると、鍛冶の神ヘイボスと共にクタルの地下宮殿の入口へと行く。

 入り口の門は巨大で大地の巨人(ギガテス)でも簡単に中に入る事が出来そうであった。

 既に門は開いている。

 どうやらリベザルのゴーレムが開けたらしい。

 凶獣の封印を解くために様々な工作をしていたようだ。


「お気を付け下さい。大親父様、暗黒騎士クロキ殿。我らが不甲斐ないばかりに……」


 門の管理者であるドワーフが頭を下げる。

 今この場には自分とヘイボス以外にも門の管理者であるドワーフが数名いる。

 彼らは本来門を守るゴーレムの暴走を止められなかった。

 そのゴーレム達は中に入っているようだ。

 暴走したゴーレムはここだけではない。ドワーフの里で暴れている。

 

「わかっている。お主は暴走したゴーレムを止める事に全力を尽くせ」


 ヘイボスは管理者のドワーフの肩を叩く。

 乱暴な言い方だが、元気を出せと言っているようにも感じられる。


「はい! 大親父様!」


 そう言うと管理者のドワーフは走り去る。

 他のドワーフと合流するようだ。

 技師のドワーフはゴーレムの暴走を止めるために動き、戦士のドワーフは狼達を止めるために動いている。

 正直手が足りていない。

 本来ならゴーレムは味方のはずだが、今は敵になってしまった。

 レーナがいるが、全てを押える事は難しいだろう。

 しかし、自分にはそれを気にする余裕はない。

 なぜなら、もっと凶悪な獣に会いに行くのだ。

 誰もいなくなった門の前にヘイボスと自分だけになる。


「暗黒騎士よ。さて、行くか」


 そう言ってヘイボスは小型の空舟(スカイボート)に乗り込む。

 クタルの地下宮殿はとんでもなく広い。

 空舟(スカイボート)を使わないと時間がかかってしまう。


「はい、ヘイボス殿」


 自分は頷くとヘイボスの後ろに乗る。

 空舟(スカイボート)は小型で4名ぐらいしか乗れないが、鍛冶の神であるヘイボスが作っただけあって高性能である。

 空舟(スカイボート)が床から少し浮かび上がると地下宮殿へと侵入する。

 地下宮殿の中は真っ暗で、長い坂を下りて行くごとに闇が深くなっているような気がする。

 いや実際に深いのだろう。

 進むほど、周囲には闇の下位精霊であるシェイドの気配を複数感じる。

 破壊の女神ナルゴルは闇の神々の大母神だ。進むほどに闇が濃くなるに違いない。

 だが、どんなに闇が濃ゆくても自分には暗視の力があるので、周囲の状況を見る事が出来る。

 広い空間の中に、漆黒の艶やかな石が床に敷き詰められ、巨大な円柱がいくつも立っている。

 何だか魔王城に似ているなと思う。

 そこまで考えて自分は首を振る。

 魔王城がこの地下宮殿に似ているのだろう。

 この地下宮殿は魔王であるモデスの母親が主であった場所だ。

 モデスが似せて作ってもおかしくはない。

 この地下宮殿は7層あり、7つの門をくぐり抜けた先に玉座がある。

 もっとも、凶獣は3層目にいるのでそこまでは行かない。


「どうやら、周囲の景色が見えているようだな暗黒騎士」


 ヘイボスが自分の様子を見て言う。

 自分は首を傾げる。

 

「ヘイボス殿には見えていないのですか?」

「ここの闇は特殊でな。このヘイボスこれがないと見えぬ」


 そう言ってヘイボスは顔につけたゴーグルらしきものを触る。

 ゴーグルはヘイボスが中に入る時に装着したものだ。

 特に気にしなかったが、魔法の道具のようだ。


「この闇の世界は光に生きる者を拒む。暗黒騎士は闇に愛されているようだな」


 ヘイボスは笑う。

 ヘイボスも暗視の魔法が使えるから、それで見えていると思っていた。

 だけど、実際は違うようだ。

 しばらくすると、大きな建造物が並んだ場所へと来る。

 

「まるで街みたいですね」

「うむ、この宮殿には巨人が多く住んでいた。そのなごりだ」

「なるほど……」


 ヘイボスの言う通り、ここには巨人が住んでいたのだろう。

 周囲の建造物の造りは人間には大きすぎる。

 巨人は種類によって大きさが違うが、小さい者でも4メートル近くはある。

 そして、古の巨人達は技術力は高いようで、周囲の建造物はとても立派で、美しい装飾が施されている。

 その巨人はエリオスの神々との戦いに敗れ、その多くが死んだらしい。

 世界中にある石造りの遺跡はその巨人達が造った物の名残だ。

 この地にいた巨人達もどこかに行き、この世界のどこかでひっそりと暮らしている。

 自分とヘイボスは街の大通りを通り、奥へと向かう。

 すると奥に一際大きな建造物が見える。


「あれが第2層に入る門がある場所だ暗黒騎士。許しなく入る者を襲う守護者がおる。命なきゴーレムには襲ってこぬが、このヘイボスとお主は別だ。気を付けろ」

「はい。ヘイボス殿」


 返事をすると、やがて門の手前の巨大な広場へと出る。

 その広場の端には多くの石像が並んでいる。

 蝙蝠のような羽に、獣の顔をした巨大な石像は奇怪な化け物の姿をしていて、今にも動き出しそうであった。


「来るぞ暗黒騎士!」


 ヘイボスがそう言って、空舟(スカイボート)を止めた時だった。

 突然全ての石像の首が動きこちらを見る。


「こ、これは!?」

「ガーゴイルだ! 暗黒騎士!」


 そのヘイボスの言葉が言い終わらないうちにガーゴイルは翼を広げて、こちらに向かって飛んで来る。

 ガーゴイルの事は知っている。

 なぜなら、魔王の城で見た事がある。

 ガーゴイルは破壊神ナルゴルが生み出した生物もどきである。

 ガーゴイルはトロルと同じように石の体を持ち、普段は本物の石像のようにしているが、侵入者が入ると動き出し襲い掛かる。

 そのガーゴイルがこちらに来る。

 最初気付かなかったのは、ここにいるガーゴイルがあまりにも大きかったからだ。

 自分が普段見ているガーゴイルは人間と同サイズだが、ここのガーゴイルはその倍はある。

 これが動き出し空を飛ぶとは思わなかった


「ヘイボス殿は下がってください!」


 そう言うと自分は魔剣を構えて飛び出す。

 ガーゴイルは自分には目もくれずヘイボスの方に向かう。


「させるか!」


 体を回転させてヘイボスへと向かうガーゴイルの首を落とす。

 それを見た他のガーゴイル達の動きが止まる。

 自分が動いたのが信じられないようだ。

 もしかすると、少しは知恵があるのかもしれない。

 残りのガーゴイルは5体。

 こちらの様子を窺うように見ている。

 やがて、意を決したのか5体のガーゴイルが大口を開けて水を吐き出す。

 ガーゴイルは体の中に水をため込む習性がある。

 そのため、建物に上部に住み着いてくれると、雨樋替わりになる。

 そして、ため込んだ水を攻撃にも使って来る。


「黒炎よ!」


 すかさず自分は黒い炎で壁を作り、水を防ぐ。

 そして、ガーゴイルが動かないうちに距離を詰めると剣を振るい、1体ずつ倒す。

 ガーゴイルは巨大な爪で応戦する。

 普通のガーゴイルに比べて遥かに強いのだろうが、自分の敵ではない。

 やがて、全てガーゴイルが動かなくなる。


「さすがだな。暗黒騎士よ。このガーゴイル達を簡単に倒すとはな。これだけ壊せばしばらくは復活するまい」


 ヘイボスがガーゴイルの残骸を見て言う。

 

「このガーゴイルは復活するのですか?」

「ああ、今倒したガーゴイルと同じものかどうかはわらかぬ。しかし、倒しても倒しても、しばらくすると同じ場所に復活して戻るのは確かだ」

「何とも不思議な……」


 自分もまたガーゴイルの残骸を見る。

 不思議な生き物だ。そもそも、ガーゴイルの生態はかなり謎だ。

 解明してみたいと思うが、今はそれどころではないだろう。


「さて、先に行くか暗黒騎士よ。この先に下層に続く扉があるはずだ」


 ヘイボスに促され、自分は再び空舟(スカイボート)に乗る。

 次は第2階層である。



◆エルフの姫ルウシエン


 目の前でレーナ様が戦っている。

 相手は暴走した2体のオリハルコンゴーレムだ。

 ゴーレムはドワーフの里を守るべく壁の近くに配置されている。

 オリハルコンゴーレムは最後の守りとして少し奥の場所に配置されていたが、暴走して壁を壊そうと動き出した。

 レーナ様はそれを止めているのだ。

 石のゴーレムならともかく、オリハルコンゴーレムは硬く強い。

 また、オリハルコンゴーレムは再生機能があるので、生半可な攻撃ではすぐに回復してしまう。

 さすがのレーナ様も手を焼いているみたいだ。

 私は強力なオリハルコンゴーレムを暴走させたドワーフに怒りを覚える。

 側にいる私達も戦わないといけないが、相手がオリハルコンゴーレムでは太刀打ちできない。

 

「さすがに硬いわね。こんなの相手にしてられないわ。数が少ないのが幸いね……」


 レーナ様はオリハルコンゴーレムを見て言う。

 このドワーフの里に残ったオリハルコンゴーレムは3体。

 その内の2体をレーナ様が相手にしている。

 残りのオリハルコンゴーレムと鉄や石のゴーレムはドワーフが相手をしている。

 だから、ここにドワーフはいないのである。

 ドワーフ達は暴走したゴーレムを元に戻すので必死だ。

 レーナ様がいなかったら、この里は簡単に落ちていただろう。

 私の側にいるコウキが不安そうな目でレーナ様を見ている。


「ルウシエン。貴方はコウキを連れて下がっていなさい。もし、何かあったら逃げるように。わかっているわね。コウキに何かあったら許さないわよ」


 そう言うとレーナ様が私を見る。

 その目はとても冷たい。


「はいっ、 わかっております! さあ、コウキ様、下がりましょう! みんな行くわよ!」


 私はコウキの手を取ると、側にいる仲間達に言う。


「ええ、でも……」


 しかし、コウキは行きたがらない。


「コウキ様、さがりましょう。ここは危険です」

「ここにあたい達がいるとレーナ様が戦いにくいのですよ~。下がるべきです~」 


 オレオラとピアラがコウキを促す。


「コウキ。下がりなさい。オリハルコンゴーレムは強力ですが、負ける相手ではありません。心配はいらないわ。良いわね」


 レーナ様が強く言うとコウキは項垂れる。


「はい、母様」


 母親に強く言われたので渋々コウキも下がる事を了承する。


「それではレーナ様。ご武運を」


 私はコウキの手を引き、その場を離れる。

 向かうのはドワーフの里の奥だ。

 壁から離れた方が安全のはずだ。

 壁の上を見るとドワーフの戦士と野伏がいる。

 昇って来る狼達を追い払おうとしているようだ。

 かなり、苦戦している感じがする。

 離れた方が良さそうであった。

 私達は急ぐ。

 ドワーフの里は城塞と言った方が良く、強固な造りだ。

 ただ、通路は巨体のゴーレムを移動させるため、広い。

 だから、中に入られると守りにくくなる。


「ピアラ、テス。安全な場所はどこかわかる?」

「ダメみたい。変な風が吹いてて動きが読めない~」

「私もですルウシエン様。探知がうまくできません。おそらく、この結界の影響です」


 走りながら私が問うとピアラとテスは首を振る。


「貴方達もそうなの……。ちょっとまずいわね」


 実は私も魔法がうまく使えなくなっている。

 これはまずい状況かもしれない。

 

「待って!」


 突然、コウキが止まる。


「どうしたの? コウキ様?」

「何か嫌な予感がする」


 コウキは真っすぐ前を見ている。

 言われて私は魔法を発動させる。

 精神を集中させると複数の何かが近付いてくるようだ。

 その気配はドワーフやゴーレムではない。

 そして、前方の通路先の曲がり角、そこから何者かが姿を見せる。

 現れたのは赤い毛並みの狼人(ウルフマン)である。

 その姿には見覚えがあった。


「まさか、また会うとはエルフの姫」


 赤い毛並みの狼人(ウルフマン)ヤサブが笑う。

 ヤサブの後ろには白い狼婆のカジーガに複数の狼人(ウルフマン)達がいる。

 まさか、既に侵入されているとは思わなかった。

 私はコウキを後ろに下がらせると剣を抜く。

 狼の数はヤサブとカジーガを入れて7匹。

 幸い数は少ないが、こちらも少ない。

 そして、ヤサブの剣は私よりも強い。

 冷汗が出てくる。


「この奥で指揮を執っているドワーフの大将を殺すつもりだったんだけどねえ。見つかるとは運のない」


 カジーガは残念そうに言う。

 私としても、侵入して来た敵を発見できたのは良い事なのだろう。

 だけど、発見できたとしても対処できなければ意味がない。


「まあ、良いよ! まずはお前を血塗られた御方の贄にしてやる! 行きなヤサブ!」

「おう!」


 カジーガの声でヤサブの蛮刀が振るわれる。

 私は後ろに少し飛び、躱そうとする。


「えっ?」


 私は驚きの声を出す。

 思った以上にヤサブの蛮刀が伸びたのだ。

 何とか剣で防ぐが無理な体勢で受けたためか尻もちをついてしまう。

 しかも、剣も落としてしまう。


「姫様!」


 オレオラの悲痛な叫び。

 しかし、カジーガ達がいるのでこちらに来ることは出来ないようだ。

 目の前でヤサブが蛮刀を大きく振り上げる。

 魔法を使おうにも間に合わない。

 

「ひっ!」


 私は思わず悲鳴を上げて目を瞑ってしまう。  

 蛮刀が空を斬る音がする。

 もうダメだ。斬られると思った時だった。


「何っ!」


 金属音と共にヤサブの驚く声がする。

 目を開けると、そこには私の剣を持ったコウキが立っている。


「馬鹿な! こんなチビが、俺様の蛮刀を受け流しただと!」


 ヤサブが信じられない目でコウキを見ている。

 後ろを見るとカジーガ達も驚いている。

 それは信じられない光景だった。

 狼人(ウルフマン)は人間や私達エルフよりも大きい。

 その狼人(ウルフマン)の中でも特にヤサブは一回り以上も大きい。

 その巨大な狼人(ウルフマン)に小さいコウキが立ち向かおうとしているのだ。

 コウキの背中を見る。

 私の腰にも届かない背丈なのに、なぜか大きく感じた。

  

「お前は自分がやっつけてやる!」


 コウキは剣を構えるとヤサブに向かって叫ぶのだった。

 

 



先週は休んでごめんなさい。取り合えず更新です。

そして、次回はコウキVSヤサブです。


最近ネットが有線なのに途中で切れます。なぜ?

そして、ついにスギ花粉が飛ぶ季節がやってきました……。

目がかゆいです。


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