森の中の戦い3
新しい小説サイト「マグネット」と「ノベルバ」に移転予定です。
この章まではなろうで書きますが、次章からは移転先で書きます。
良かったら、そちらに来て下さると嬉しいです。
◆剣の乙女シロネ
「シロネ、気を付けろ。奴は強いぞ」
白銀の髪の子クーナが私に言う。
クーナによって私は助けられた。彼女が魔法の盾を使わなければ、私はやられていたかもしれない。
「まさか、貴方に助けられるなんて……」
私は空を見上げる。
そこには血に染まったような赤い衣装を纏った女性が飛んでいる。
鮮血の姫ザファラーダ。
チユキさんから一度聞いていた。確か死神の娘でかなり強いと聞いている。
一見美しい人間の女性に見えるが、その姿が嘘である事が私にはわかる。
彼女は真っすぐにクーナを見ている。
「なぜ、ここにお前がいる。白銀の娘」
「決まっているだろう。お前達の邪魔をするためだぞ。そのためにシロネなんかを助けたのだ。クーナだけだとさすがにキツイからな」
クーナは笑って言う。
まあ、彼女が私を本気で助けたいと思ってはいないだろうなと気付いていた。
もしかすると、彼女は敵にザファラーダがいる可能性に気付いていたのかもしれない。
だからこそ、私達と協力する気になったのだ。
前に戦った事があるのでクーナがかなり強い事は知っている。
そのクーナがかなり警戒しているのだ。
目の前のザファラーダはクーナよりも強いのだろう。
「なるほどね! 以前のようにうまくいくとは思うな! 最初から全力で戦ってやる!」
そう言うとザファラーダの顔に新たな目が生まれ、全部で九つになる。
そして、背中から巨大な蝙蝠の羽が生えてくる。
口は耳まで裂けて、長い牙が生えるのが見える。
口の中は真っ赤であり、数本の長い舌が出てくる。
完全な化け物の姿だ。
「ふん! 相変わらず醜い姿だぞ! ザファラーダ!」
「言わせておけば! この爪で貴様の顔を私よりも醜く斬り刻んでやる!」
ザファラーダの指先の爪が伸びる。
その長さは私の持つ剣と同じぐらいある。
「ゆくぞ! 私をこの忌まわしき醜い姿にさせたのだ! 死んでもらう!」
ザファラーダがこちらに来ると爪を振るう。
私とクーナはその爪を持っている武器で防ぐ。
「えっ!? 重い!」
その爪の一撃で私は後ろに飛ばされる。
軽く振るわれただけなのに、何て力だ。
クーナも吹き飛ばされ、後ろに下がっている。
そのクーナにザファラーダが襲い掛かる。
最初の標的をクーナに定めたみたいだ。
クーナは複数の魔法の盾を作り、ザファラーダの爪を防ぎ距離を取ろうとする。
「私を無視しないでよね!」
体勢を立て直した私はザファラーダへと斬りかかる。
しかし、蝙蝠の羽で受け止められる。
私の剣を受けるなんて、何て硬い羽だ!
それに、後ろにも目があるみたいだ。
「ふん! 愚か! これでも喰らえ! 魔血霧!」
ザファラーダから赤い霧が噴出する。
私は急いで彼女から離れる。
赤い霧は広がり、森の木々を枯らしていく。
「森が枯れていく! 風の精霊よ!」
私は風の下位精霊であるシルフを呼び出して霧を吹き飛ばそうとする。
「させるか紅閃!」
しかし、ザファラーダから真紅の光が飛んでくる。
私は剣でその光を受ける。
「きゃあ!」
だけど、その光は強力で体勢が崩れる。
その隙を逃さず。ザファラーダが私に迫る。
とんでもない速さだ。
「とどめだ! なに!?」
ザファラーダの爪が私に届く寸前。
私は青く光る蝶に包まれる。
そして、気付いた時にはクーナの側に移動していた。
私に迫っていたザファラーダは少し離れた所にいる。
クーナに助けられたみたいだ。
「くっ、これほどとは。強くなったのかザファラーダ?」
「ふん、最初から本気を出せば貴様なぞに不覚を取ったりしない」
クーナが悔しそうに言うと、ザファラーダがぐふふと笑う。
「シロネ! 協力しろ!」
「わかったわ。今は貴方に協力してあげる。」
私は森を見る。
ザファラーダの通ったところにいた兎の死骸がある。
彼女の発する瘴気にやられたみたいだ。
こいつをこの森から追い出さないといけない。
不本意だけどクーナと協力して戦う事にするのだった。
◆戦乙女の天使ニーア
天上では戦いが繰り広げられている。
目の前ではアルフォス様率いる聖騎士の方々が戦っている。
蛇の王子と呼ばれるダハークは有翼のムシュフシュに乗って戦い迎え撃っている。
戦いは今の所アルフォス様が優勢だが、攻めあぐねている。
「ニーア隊長。鮮血の姫が撤退して良かったですね……。こちらに来ていたら大変でした。天上の御方達が戦われなくて良かったです」
同じ戦乙女のソグンが私に報告する。
ザファラーダの強さは本物だった。
すでに多くの戦士達が傷ついている。
あのままこちらに攻めてきたら天上の御方達にも犠牲が出ただろう。
「本当にそうね。天上の御方が戦われなくて良かったわ」
私は天上の御方達を見る。
エリオスの若い男神である彼らは自身の空船で地上から連れて来た人間の美女達と遊んでいる。
戦いをする姿ではない。
高みの見物をしている。
まあ、鮮血の姫は去ったので、敵は強敵となるのは蛇の王子だけだ。
蛇の王子はアルフォス様が抑えているから、問題はない。
天上の御方達が遊んでいても問題はない。
もっとも、レーナ様は別の感情を抱くだろう。
結局、戦いはアルフォス様率いる聖騎士の方達ばかりが戦っている。
ちなみにトールズ様も先程まで一緒に戦っていたが、蛇の王子に敗れてしまった。
今はアマゾナ様に連れられて撤退している。
私は地上を見る。
地上ではエルフとドワーフ達がオーク達を止めたようだ。
また、ゴブリン達にはチユキ達が向かっている。
おそらく、鮮血の姫もチユキ達に気付いて地上に降りたのだろう。
チユキ達に助けられた事になる。
「でもソグン、油断はできないわ。奴らの狙いは凶獣の復活。エリオスの天宮や地上のエルフの都を狙ったのは陽動のはずよ」
「なるほど、では隊長は奴らの狙いはあくまでドワーフの里だと思っているわけですね。でも、あそこの守りは固いですよ」
ソグンの言う通りだ。
ドワーフの里の守りは固い。
エルフ達にゴーレムを貸しても、それでもかなりの数が残っているはずであった。
おそらくオークとゴブリンの全軍が向かっても防げるだろう。
蛇の王子や鮮血の姫が向かったらさすがに危ないかもしれないが、そいつらが向かったらさすがに神王様も動くだろう。
そもそも、神王様が動かれていないのは、敵の戦力が不明だからだ。
そして、ドワーフの里に強敵が向かっている様子はない。
狼達が向かったようだが、オークやゴブリンよりも数が少ないので、脅威ではない。
心配する事はないはずであった。
しかし、それだと奴らの行動が不自然だ。
わからない? 何を考えているのだろう。
私は言い知れぬ不安を感じるのだった。
◆黒髪の賢者チユキ
私はボティスと名乗った蛇女と戦う。
「中々やるようですね。黒髪の女チユキ」
「そちらもね」
私はボティスに答える。
ボティスは強い。だけど、どうやら戦闘は不向きなようだ。
私の方が強い。
こちらに出て来たのは私達の存在が予想外で、やむを得ずといった感じである。
「さて、貴方の動きから、どうやら私の意図に気付いているわけではないようですね。少し安心しました」
「へえ、どんな意図があったのかしら」
「ふふふ。それはもうすぐわかります。光の勇者がこちらに来ていないのは間違いない。それが確認できたました」
ボティスが笑う。
確かにレイジは来ていない。
「さて、そろそろ魔法が発動します。見ていなさい」
ボティスがそう言った時だった。
強力な魔力の波動を感じる。
私は感じた方を見る。
「魔法の結界!?」
巨大な紫色に輝くドームがある場所を覆っている。
確かあそこはドワーフの集落があったはずだ。
「その通りですよ。黒髪の賢者チユキ。これで、しばらくあの中には誰も入れません」
「どういう事?」
「すでに毒は入り込んでいます。凶獣の復活はもうすぐですよ」
ボティスは勝ちを確信して笑うのだった。
更新です。
やはり、色々な事を同時に平行してやっているので、文字数が増えません。
本当はチユキVSボティスをもっと書く予定でした。
移転作業が終わるまでは少なくせざるを得ないみたいです。
絵の練習もやめた方が良いかもしれません。