森の中の戦い2
新しい小説サイト「マグネット」と「ノベルバ」に移転予定です。
今章まではなろうで書きますが、次章からは移転先で書きます。
良かったら、そちらに来て下さると嬉しいです。
◆黒髪の賢者チユキ
森の中で戦いが始まった。
私は魔法で状況を見る。
エルフとドワーフの軍団がオークの軍団と戦っている。
「チユキさん。どうやら間に合ったみたいっすね」
「そうね、ナオさん。最初のゴーレム達が頑張ってくれたわね」
私はナオに頷く。
エルフの都アルセイディアの一歩手前でオークの達の進撃を止める事に成功した。
進撃する道筋がわからなかったから、ゴーレム達を分散させて各方面を守らせている。
分散させたので、どうしてもそれぞれの守りは薄くなる。
そのため、最初にオークの軍団に当たった部隊は足止めが任務になる。
最初の部隊の頑張りで、ゴーレムの移動が間に合い、
アルセイディアの防衛に間に合ったのだ。
巨大猪であるパイアの重戦車と言えども、オリハルコンゴーレムを突破する事はできない。
そして、オーク達は突撃力は凄いが、その他はダメだ。
突撃さえ止めてしまえば、後はエルフの弓騎兵で削り取れば良い。
オーク達はエルフを追いかけようとするが、猪騎兵は突撃力はあっても小回りが苦手だ。
ケリュネイアに乗った妖精騎士達を捕えられない。
妖精騎士タムリエルの指揮でエルフの軍勢がオーク達に矢を射かける。
エルフの矢は魔法を帯びているので強靭なオークの皮膚を貫ける。
それでも、耐久力の高いオーク達は耐えているが、徐々に数を減らしている。
「後は私達の番ね。ここでゴブリンを叩いておかないと」
私はゴブリン達を見る。
エルフとドワーフの軍勢の全てはオークと戦っている。
全軍を当てているからこそ、オーク達を止められたのだ。
ここでオーク達に援軍、もしくは別動隊がアルセイディアを狙ったら形勢は逆転するだろう。
敵の数がどれだけいるのかわからないが、残りのゴブリン達は私達で絶対に止めないといけない。
すでにリノの魔法で、ゴブリンの不快な風は止んでいる。
この魔法の風は音を乱すので、中で喋ると変な声になるので好きではない。
シロネは先行してゴブリンの親玉の所に行っている。
白銀の髪の子はどこかに行ってしまった。
まあ、元々戦力には数えていないので問題ない。
一応手伝ってくれるみたいなのは間違いなさそうなのだから。
風が止みリノの歌声が響き渡る。
綺麗な歌声が苦手なゴブリン達が逃げ出し始める。
「ナオさん。それじゃあ、捕らわれた人達を誘導してくれる。私は周囲を警戒するから」
「わかったっす!」
ナオが獣人形態になると、走り出す。
人間は綺麗な歌声が苦手というわけじゃないので、そのまま残っている。
ナオはその人間達を誘導して、安全な所に逃がすのが役目だ。
リノの頼みで緑人達が来ている。
彼らに保護を頼むつもりだ。
私は魔法で周囲を警戒する。
ゴブリン以外の相手がいる可能性もあるからだ。
私はそれを警戒する役目だ。
ただ、大軍ではないだろう。
そんな奴がいればさすがに痕跡が残る。
もちろん、蛇の王子のように強い単体の敵がいるのなら別だ。
空でも戦いが繰り広げられている。
その様子を見る。
蛇の王子と騎士姿のアルフォスが戦っている。
歌と芸術の神と呼ばれ、戦いとは無縁の神のように思えるが、かなり強いみたいだ。
そのアルフォスと天使達の攻撃により、蛇の王子が押されている。
手助けする必要はないようだ。
そんな時だった。
魔法の警報が私に危険を知らせる。
何者かがこちらに来ている。
私は急いで魔法の防御壁を作ると、その次の瞬間に魔法弾が飛んでくる。
「どうやら防がれたようね。もう少し隠密に徹するべきだったわね」
魔法弾が来た方向を見ると、そこには下半身が蛇の女がいる。
一瞬ラミアかと思ったが、ちょっと違う。
頭に角が生え、魔力もラミアに比べると段違いに高いようだ。
私が作った魔法の防御壁の一部が壊れている。
「何者なのかしら?」
「まさか誤算だったわ。光の勇者の仲間が来ているなんて。どうしてここにいるのかしら? 貴方達が来るなんて聞いていないわよ」
角の生えた蛇女が私を見る。
その目は邪魔者を見る目だ。よほど、私達がここにいるのが予想外だったのだろう。
「下半身が蛇のところを見ると、蛇の王子の仲間みたいね。貴方達に答える必要はないわ」
そう言うと杖を構えると、魔法の通信で、仲間達を呼ぶ。
私だけでは厳しいかもしれない。
「黒髪の女チユキ。お前の事は調べさせてもらったわ。かなり、やるようだけどこのボティスに勝てるかしら。力づくでも何故ここにいるのか喋ってもらうわよ」
ボティスと名乗った蛇女が逆手に持った小剣を構える。その柄には大きな宝石がついている。
おそらく、魔法の杖の代わりだろう。武器としても杖としても、使えるようにしているのだろう。
「チユキさん! 大変っす! 蛇さん達がこちらに来ているっす!」
ナオから魔法の通信が入る。
来ているのはボティスだけではないようだ。
もしかするとシロネやリノの所にも来ているかもしれない。
仕方がないので、私だけでボティスの相手をするしかない。
「いくぞ! チユキ! 計画の邪魔になる要素はこのボティスが速やかに排除する!」
◆剣の乙女シロネ
「ああ、天使様……。私達を救いに来て下さったのですね」
ゴブリンの王子の側にいた人間の女性達が私に跪くと頭を下げる。
別に天使と言うわけじゃないのだけど、説明するのは面倒だった。
「うん、助けにきてあげたから、後ろに下がっていて、そいつを殺すから」
「ひいい!」
私がそう言うとゴブリンの王子が情けない声を出して後ろに下がる。
チユキさんからゴブリンの生態を少し聞いた事がある。
ゴブリンは男性社会で、その王族は必ず角を持っている。
角を持ったゴブリンは他のゴブリンよりも優秀で部族を率いる力がある。
だから、王の子と言えども角を持たなければ王族にはなれない。
王族のいないゴブリンの部族は指導者がいなくなり、弱体化するので、他の部族の奴隷になる。
そのため、角を持ったゴブリンは大切に育てられる。
ただし、2匹以上角を持った子が生まれると、王位を巡り争いになるそうだ。
そして、角持ちのゴブリンは、同じ角持ちのゴブリンから生まれやすいらしいので、王となった者はハーレムを作る。
そのハーレムの中にはゴブリンではない他種族も入る。
ただ、ゴブリンの王はオスが多く、また人間の方が好みみたいなので、ハーレムに入れられるのは人間の女の子が多いようだ。
このゴブリンの王子は女の子を攫って酷い目に合わせた。
許せる相手ではない。
「馬鹿な! 偉大なるゴブリンの王になるはずの私がこんな所で!」
「何馬鹿な事を言ってんの?」
剣を構えるとゴブリンの王子の頭を突き刺す。
ゴブリンの頭は石のように固く普通の刃物では傷1つ付かないが、私の剣は魔法の剣だ。
バターを刺すように簡単に貫ける。
頭を貫かれたゴブリンの王子は足をジタバタさせるとやがて動かなくなる。
頭を貫いたというのに即死じゃないなんて、なんて生命力だろう。
彼を守るゴブリン達は我先にと逃げ出している。
指導者がいないゴブリンは脅威ではないから、放っておいて大丈夫だろう。
周りには女の子達が私に救いを求めるように見ている。
この子達を安全な場所まで、送らなければいけないだろう。
「シロネ! 上だぞ!」
突然叫び声が聞こえると私の頭上に魔法の盾が展開する。
その直後赤い光が魔法の盾に当たる。
魔法の盾が一瞬で壊されてゴブリンの王子が乗っていた巨大蜘蛛を貫く。
魔法の盾で軌道がずれて、私は直撃を免れて無事だ。
女の子達は巨大蜘蛛の上から投げ出されたが、特に怪我はなく無事のようだ。
私は上を見上げる。
そこには真紅の衣装を纏った女性が飛んでいる。
「あれは鮮血の姫ザファラーダとかいう女だぞ。気を付けろシロネ」
いつの間にか私の側に来たクーナが鎌を構えている。
この子が魔法の盾を張っていなければ危なかったかもしれない。
「白銀の髪の女……。なぜ、お前がここにいる? 計画を邪魔しようというのか?」
ザファラーダが憎しみの目を向ける。
「計画? どういう事よ!?」
私は叫ぶが、ザファラーダは答えない。
「知らないみたいね。だけど、予想外の存在を見過ごすわけにはいかない。相手になってもらうわよ」
ザファラーダが構える。
「来るぞシロネ! 奴は強敵だぞ!」
「わかったわよ!」
まさか、白銀の髪の子であるクーナと共闘するとは思わなかった。
私は剣を構え、ザファラーダに立ち向かう。
ちょっと短いです。ごめんなさい。
クーナを描きましたので、良かったら活動報告に見に来て下さい。