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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第9章 妖精の森
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森の中の戦い1

新しい小説サイト「マグネット」と「ノベルバ」に移転予定です。

今章まではなろうで書きますが、次章からは移転先で書きます。

良かったら、そちらに来て下さると嬉しいです。

◆オークの女族長ボルダ


あたいの乗る巨大猪(パイア)重戦車(ヘビーチャリオット)が森の中を疾走する。

 6頭の巨大猪(パイア)が牽く巨大な車は城だ。

 この城を拠点にあたい達は各地で略奪をしている。

 前にはあたいの軍団が先行している。 

 巨大猪(パイア)重戦車(ヘビーチャリオット)を先頭にして、木々を倒し道をあける。 

 その次に猪騎兵(ボアライダー)猪戦車(ボアチャリオット)の軍団が後に続く。

 最後にあたいの乗る巨大猪(パイア)重戦車(ヘビーチャリオット)が号令を出す。


「いくよ野郎共! エルフの都を襲撃だ!」

「「「グワアアアアアアアアアアアアアアアアアグ!!」」」


 あたいの掛け声に配下の野郎共が雄叫びを上げる!

 その雄叫びには期待が含まれているいる。

 スケベな野郎共はこれから襲うエルフの事を考えているのだろう。

 それはあたいも一緒だ。

 もちろん、女のあたいの目当てはエルフではない。

 あのいけ好かない女共が持つお宝だ。

 エルフ共の都は沢山の宝石で彩られているらしい。

 美しい宝石はあたいのような美女にこそふさわしい。

 あたいは今まで集めた宝の1つを手に取る。

 宝は首飾りで巨大なダイヤモンドを中心に小粒のサファイアとエメラルドが嵌め込まれている。

 

「ぐふふふふ。これよりも、もっとすごいお宝があるのかしらねえ」


 首飾りを手に取りダイヤモンドを舐める。

 この世において宝石ほど、あたいを魅了するものはない。

 絶対に手に入れてやる。


「ふふ、母様。あたしは妖精騎士に興味があるわ。寝台でどんな声で鳴いてくれるかしら」

「ええー!? 姉様が上に乗ったら折れてしまうわよ。顔は良いだろうけどね。剥製にして愛でるだけにした方が良いんじゃない」

「うーん。やっぱり、そうなのかしら。顔は良いのに残念ね」


 娘である姉と妹が楽しそうに喋っている。

 これまでに2000匹以上生んだが、その中で娘は10ぐらいだ。

 この娘の姉達はすでに独立して、遠くの地で暮らしている。

 あたいと同じように多くの男共を従えているはずだ。

 オークの女はオークの男を操る力がある。

 しかし、女が生まれる事は少ない。

 それがあたい達オークだ。

 

「偉大なるオークの大族長ボルダ様と姫様方。ご機嫌ですね」


 側にいるラミアが声をかける。

 この蛇女は蛇の王子の元から派遣されて来た。

 あたいの城に滞在して、魔法で補助をするのが役目だ。

 オークは魔法が苦手だ。

 (ハイ)エルフの迷いの魔法を打ち破る事は出来ない。

 通常なら森の中で迷ったあげく、妖精騎士達によって削り取られていただろう。

 しかし、蛇女の探知能力により、正しい道を進むことができる。


「まあね。エルフは宝をたんまりと持っているそうじゃないかい? それを本当に全部あたいのものにしてもかまわないのだろうね?」

「もちろんです、ボルダ様。もっとも、エルフ達を倒せたらの話になりますが」


 蛇女が頭を下げて言う。


「ふん、正面からの殴り合いでならエルフに負けやしないよ」


 あたいは笑う。

 エルフ達は魔法には強いが、力が弱い。

 正面から戦えば負けはしない。


「それよりも、天上の奴らは本当にこちらに来ないのだろうね? さすがにあれの相手はできないからね」

「それは大丈夫です。我らが王子と死の御子の方々が天上の者達を押えます。その間に好きなだけ略奪なされば良いのです」


 その言葉に頷く。

 エルフの都を占領するつもりはない。

 いくらなんでも、それは危険だ。

 あたいは蛇女を見る。

 この女の主である蛇の王子が何を狙っているのかわからない。

 だけど、利益があるのなら、乗らない手はない。


「お相手はエルフとドワーフだけ。ボルダ様が天上の奴らを相手にする事はないでしょう」

「ドワーフ? エルフはドワーフと仲が悪いのじゃないのかい? 奴らは鈍足だが、固いんだよね」


 あたいは昔の事を思い出す。

 過去にドワーフの集落を襲った事がある。

 相手の数が少ないから、僅かの手勢で攻めたら、手痛い反撃を喰らった。


「それについては調べています。奴らもこちらの侵攻する道筋を探っているようです」


 蛇女が説明する。

 ナパイアの斥候がうるさく飛び回っているようだ。

 ナパイアは風エルフとも呼ばれる奴らだ。

 素早い上に空を飛び、透明(インビジブル)の魔法を使うので、周囲を探るのが得意だ。

 ただし、戦闘力は皆無なので、無視すれば良いだけでもある。

 だけど、こちらの進撃方向を探られたらやっかいだ。 


「大丈夫なのかい? うん? どうしたんだい」


 大丈夫なのか問おうとした時だった。

 前方の野郎共の動きが遅くなる。


「どうやら、エルフ共が足止めに来たようですね」


 蛇女の言葉であたいは目を凝らす。

 あたいの視力なら前方で何が起こっているのかわかる。

 オレイアドの一角獣騎手(ユニコーンライダー)共が遠くから魔法を使っているようだ。

 一角獣騎手(ユニコーンライダー)は一生を処女である事を誓った者だけがなれると聞いている。

 側にはケリュネイアの鹿に乗った妖精騎士(エルフィンナイト)がいるのに触れる事が出来ない可哀想な女共だ。

 その男知らずの女達が呼び出した土の中位精霊である土蜘蛛(アーススパイダー)が、行く手を遮っている。

 

 

「男との楽しみを知らない女なんかの魔法に止まっているんじゃないよ! 蹴散らしな! グワアアアアアアアアアアアアアアグ!!!!」


 あたいは雄叫びを発する。

 あたいの雄叫びは配下の野郎共を滾らせる効果がある。

 力を増した野郎共が猪を駆り、進撃する。

 さすがの土蜘蛛(アーススパイダー)も止める事ができず、吹き飛び、あたい達は進撃する。


「さあ、もっと進撃するよ! エルフ共の都はもうすぐだよ!」


 あたいの叫びで野郎共も雄叫びを上げる。

 しかし、再び進撃が遅くなる。


「今度は何だい!?」


 再び目を凝らすと石で出来た人型が前方を遮っている。

 ドワーフ共のストーンゴーレムだ。

 その上空にはドワーフの乗る空舟(スカイボート)が飛んでいる。

 ストーンゴーレムはかなりの数だ。

 奥を見ると数は少ないがアイアンゴーレムの姿も見える。


「侵攻の道筋が読まれていたとは思えません。おそらく、全方位にゴーレムを配置していたのでしょう。まさか、これ程の数を防衛に割くとは、ドワーフ達も奮発しましたね」


 蛇女が嬉しそうに言う。

 なぜ嬉しそうに言うのかわからない。

 しかし、猪騎兵(ボアライダー)は簡単には方向転換する事ができない。

 あたい達は進むしかない。


「さっさと蹴散らすんだよ! うかうかしていると増援が来ちまうよ!」


 あたいは叫ぶ。

 ゴーレムの数は多いがあれだけの数なら突破できる。

 問題は手間取ると増援が来ることだ。

 全方位に配置しているのなら、かなりのゴーレムが他にいるのだろう。

 その全てが来たら、さすがに突破できない。

 あたい達がどこから来るのかすでにバレているはずだ。

 時間をかけるとまずい。

 再び、蛇女を見る。

 その顔は笑っていた。





◆ゴブリン王子ジャーギ


私の乗る一際大きな巨大蜘蛛ジャイアントスパイダーが森の中を疾走する。

 巨大蜘蛛ジャイアントスパイダーの上に築かれた建造物は私の館だ。

 この館を拠点に私は人間の巣を襲っている。

 前には私の軍団が先行している。 

 巨大蜘蛛ジャイアントスパイダーを先頭にして、木々をすり抜け進撃する。 

 その次に蜘蛛騎兵(スパイダーライダー)と歩兵部隊が後に続く。


「さあ、行きますよ! オーク共の後に続くのです! だが、決して急いではいけません! エルフの軍団はオークに任せ、我々はおこぼれをいただくのです!」

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアギャ!!」


 私がそう言うと配下の者達が叫ぶ。

 決して急いではいけない。

 エルフ達は強い。正面からは戦えない。

 不意を突き横から戦うのだ。

 だから、馬鹿なオーク共に矢面に立ってもらわなくてはならない。

 そもそも、こちらのほとんどは歩兵だ。急いではいけない。

 歩兵はゴブリンの戦士を中心にゴブリンの歩兵と人間の奴隷兵で構成されている。

 ゴブリンの歩兵はともかく人間の奴隷兵の足はとても遅い。

 幻覚キノコの効能で従順になっているが、代わりに身体能力が落ちているのだ。

 いくらなんでも遅すぎる。


「人間共を鞭で叩き急がせなさい! あまりにも遅い奴は食っても構わいません!」


 側近であるゴブリン戦士長に伝えて、命令させる。

 人間共は家畜だ。

 働かせ、使えなくなったら肉として喰らえば良い。


「偉大なるゴブリンの王子ジャーギ様。どうかお慈悲を……」


 突然、側に侍らせていた妾の1人が頭を下げる。

 そういえば、人間の奴隷の中にはこの女の夫がいた事を思い出す。

 何度もこの女の体を抱いたが、心までは夫にあるつもりなのだろう。

 だが、それもまた面白い。

 

「仕方がありません。良いでしょう、貴方の夫は助けます。ただし、今夜私を楽しませなさい。良いですね」

「はい。ジャーギ様」


 女が頭を下げる。

 もちろん、夫を助けるというのは嘘だ。

 そもそも、奴隷の管理には興味がない。もう死んでいるかもしれないのだ。

 嘘を吐く必要はないが、その方が楽しめそうだ。

 もっとも、この女も飽きて来た。

 新しい女が欲しい。

 次はエルフの女が良いだろう。

 強力な魔法を使うが、1匹や2匹なら攫う事も可能なはずだ。

 エルフの女は人間よりもはるかに美しい。

 今から楽しみであった。


「殿下! 大変です!」


 妄想に浸っていると側近の呪術師(シャーマン)がやってくる。

 私の養育係であり、呪術の師でもある。

 ゴブリンの中では強い魔力を持っている。

 もっとも、魔力に関しては私の方が強い。角のないゴブリンの魔力ではどんなに努力しても限界がある。

 角ありし者である私は、選ばれしゴブリンなのだ。


「爺! 何があったのです!?」

「はい。音乱しの風がなぜか弱まっているのです。もう一度、風を吹かす儀式を行う必要があります」


 その言葉に驚く。

 そういえば、風が弱くなっている。

 私達の周りには音乱しの風が吹くようにしている。

 この風は私と側近である呪術師達の儀式によって吹かせたものだ。

 音乱しの風が吹く場所では、誰も歌えなくなり、外から歌が聞こえなくなる。

 ゴブリンは歌が苦手だ。 

 音乱しの風が止めば、エルフの歌が聞こえてしまう。

 そうなれば、戦いどころではなくなる。


「わかりました。すぐに儀式を行います。呪術師達を呼びなさい」


 立ち上がり、儀式の準備をする事にする。

 小範囲ならともかく、音乱しの風を軍団全体を覆う程に吹かせるは大変な力がいる。

 これだけの風を吹かせる私は優秀なのだ。

 父もそれがわかっていない。

 なぜ、弟を後継者に選んだのかわからない。

 後継者争いに敗れた私は生まれた地を出て行かねばならなかった。

 なぜ、私ではないのか?

 いつか必ず戻って、私の方が優秀だと思い知らせてやる。

 私はそう誓う。


「悪いけど貴方の風はもう吹かないわよ」


 突然、頭上から声がする。

 見上げると翼が生えた女が飛んでいる。

 美しい女だ。

 その女は剣の切っ先をこちらに向けている。


「て、天使!? 馬鹿な!?」


 驚き、後ろに倒れ尻を床に激しくぶつける。

 なぜ? 天使がここに?

 天使はゴブリンの相手をしない。

 なぜなら、それはハンマーで蟻を潰すようなものだからだ。

 天使にとって私達ゴブリンは虫のようなもの。

 人間を使う事はあっても直接殺しになぞ来ないはずなのだ。

 天使は冷たい目で私を見下ろしている。

 周りにいた妾達が額を床に付けて天使を讃える声を出す。

 人間の女にとって天使は敬うべき存在なのだろう。


「さて、捕らえた人達を解放させてもらうわよ」


オークの元ネタはグレンデル。グレンデルは種族でオークナスです。

そこからオークが生まれたようです。

つまりグレンデル=オーク。またグレンデルよりも母親の方が怖ろしいという記述があるので、オークは女性の方が強いのかなと思い、こういう設定にしました。つまり女性が強い社会です。

対してゴブリンは男社会にしました。


さて、感想欄で色々とありますが、自分がこの小説で一番やりたいのは神話や騎士物語に出てくるような異世界を作りたいという事です。その中にはドロドロした話も含まれます。

例えばアーサー王物語は部下に妻を寝取られて、姉との間に出来た子と殺し合います。

そんな、世界を作りたかったのです。そのためのレイジやシロネでした。

だけど、やりすぎて読まれないのでは意味がない。そこが難しいところだったりします(´;ω;`)




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