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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第9章 妖精の森
181/195

剣の乙女と白銀の魔女

告知です。

ノベルバとマグネットに移転します。

マグネットには既に投稿開始しています。9章以降はこちらには書きません。

また、移転するなら全部消した方が良いとアドバイスがあったので、9章が終り次第なろうから消します。

◆黒髪の賢者チユキ


「シロネか? それはこちらの台詞だ。なぜ、お前達こそ、ここにいる? 全く面倒な奴らだ」


 銀髪の少女は面倒臭さそうにシロネを見る。

 シロネと白銀の魔女が睨みあう。


「誰が面倒よ!! 何を企んでいるの!?」


 シロネが剣の柄に手を当てる。

 このまま斬りかかりそうな様子だ。

 それに対して、白銀の魔女は冷静である。


「何も企んでいないぞ。シロネ。そもそも、お前達と争うつもりはない……」


 そこまで、言うと白銀の魔女は考え込む。


「お前の事など知らんぞ……にゃあ。そういう事にするにゃあ。クーナはただの猫人にゃあ」


 突然語尾に「にゃあ」を付けて、ごまかし始める白銀の魔女。

 当然、バレバレだ。

 しかし、猫の真似がちょっと可愛いと思ってしまった。

 私は可愛いと思ってしまったが、シロネにとっては馬鹿にされているように感じただろう。

 シロネの背中が怒りで震えているのがわかる。


「ふざけないで!!」

「別にふざけていないぞシロネ……にゃあ。クーナはお忍びでここに来ているぞにゃあ。だから、お前なぞ知らないにゃあ」


 知らんなと言う割にはシロネの名前をはっきりと言っている。

 それにお忍びと言う割には、全然忍べていない。

 そもそも、彼女は見るからに目立つ。お忍びなんて無理だろう。

 白銀の魔女はそっぽを向く。

 本気で相手をするつもりはないようだ。


「でも、本当に何でこの子がここにいるかな?」

「本当に謎っすね。リノちゃん。ところでチユキさん。どうするっすか? 捕まえて吐かせるっすか? ちょっと捕らえるのは難しそうっすけど」


 ナオが私にそう言ったあと部屋の中を見渡す。

 見ている先にはただ部屋の壁があるだけだ。

 誰もいないように見える。

 だけど、もちろんわかっている。

 誰もいないように見えて、何かがいるのだ。


「何か部屋にいるの? ナオさん?」

「部屋中に壁に擬態している蟲がいるっす」

「なるほど……」


 蟲は白銀の魔女が使役しているのだろう。

 もし、戦いになればその蟲達が襲い掛かってくるだろう。

 そして、白銀の魔女を見る。

 その周りに蒼白く輝く蝶が舞っている。

 あの蝶はやっかいだ。

 近距離だけど、転移を簡単に出来るのだ。

 私やリノを狙われたら敵わない。

 だけど、2人の様子を見ていると今にも戦いが始まりそうだ。


「お忍び? やっぱり何か企んでいるんじゃない。言わないのなら力尽くででも喋ってもらうわよ」

「お前と戦うつもりはないぞ。前は亡き者にしてやろうと思ったが、今は違うぞ。そもそも、シロネ、お前なぞクーナの敵じゃないぞ」

「どういう意味よ!?」


 ようやく猫の真似をやめた白銀の魔女にシロネが激昂する。


「それはクロキへの愛の差だぞ、シロネ。クーナはクロキを愛している。その愛はお前なぞとは比べ物にならない。そして、クロキもクーナを必要としている。相思相愛だ。だから、お前なぞ敵ではない」

「なっ!? 何よそれ! 何でクロキが貴方を必要としているってわかるのよ!?」


 シロネが白銀の魔女に詰め寄る。

 そのシロネに白銀の魔女は呆れた表情をして立ち上がる。

 両者が向き合う状態だ。


「はあ? 何を言っている? シロネ? クーナが存在している事が、クロキがクーナを必要としているという事だぞ! クーナはクロキに愛されるために生まれたのだ!」


 白銀の魔女は胸に手を置いて堂々と宣言する。

 すごい自信だ。

 背中の様子からシロネが絶句している様子がわかる。

 もちろん私達もだ。


「す、すごいよ。あの子。本気であんな事を堂々と言えるなんて……。愛されるために生まれたなんて、リノも自信をもってあんな事を言ってみたい……」


 リノが口に手を当てて呟く。

 その言葉から、白銀の魔女が嘘を吐いていない事がわかる。


「そうっすね……、すごい自信っす。それにしても、あんな美少女にあそこまで愛されているなんて、こりゃシロネさんに勝ち目はないんじゃないっすか?」

「いや、それはちょっとシロネさんが可哀想かも……」


 ナオの言葉に私はそう言うとシロネの方を見る。

 シロネは後退して、よろけている。

 かなりのショックを受けているのがわかる。

 そもそもシロネは幼馴染が白銀の魔女に利用されているのだと思っていた。

 だけど、白銀の魔女は本気でシロネの幼馴染を愛していたのだ。

 もしかすると、シロネの幼馴染は洗脳されてはいないのかもしれない。

 彼女は魔王の娘らしい。

 これほどの美少女に愛されたら、父である魔王を守ろうとするだろう。


「う、嘘……。あのクロキが、こんな美少女に愛されるなんて……」


 シロネはそう言うと力なく崩れ膝を付き、項垂れる。

 かなり精神的なダメージみたいだ。もしかすると立ち直れないかもしれない。


「だから、シロネ。クーナはお前とは戦わない。クロキはお前を大切に思っている。クロキが悲しむ事はしないぞ」


 白銀の魔女がそう言った時だった。

 シロネが顔を上げる。


「クロキが私を大切に思っている……?」

「ん? そうだが、それがどうかしたか?」


 白銀の魔女はシロネの様子に首を傾げる。

 シロネはのろのろと立ち上がる。


「そっかあ~。大切に思ってくれているんだ……。えへへへへ」


 シロネは頬を掻いてそう答える。

 おそらく、正面から見たら嬉しそうに笑っているだろう。


「何か、一瞬で立ち直ったっすよ……」

「うん。そうだねナオちゃん。シロネさん、ちょろい……」


 ナオとリノが呆れた声を出す。

 本当にちょろい。

 シロネの将来が心配になる。


「確かにちょろい。でも、これで戦いにならなそうね……」


 ここで、白銀の魔女と戦っても被害が多くなるだけで逃げられそうだ。

 向こうに戦う気がないのなら、今は戦わない方が良いかもしれない。

 そもそも何故彼女がここにいるのかわからない?

 それを聞きださないといけないだろう。


「賢者殿。あの麗しい少女は何者です? 紹介をしてもらえませんか?」


 シロネと白銀の魔女の話が終ったみたいなのを感じたのか、横のタムリエルが聞いてくる。

 だけど、正体は言えないだろう。

 争いになるかもしれない。


「あー。ちょっとした知り合いよ。気にしないで」


 私は眉間を抑えながら返事をする。

 私達と出会った時より反応が違う事に釈然としないものを感じる。


「ま、まあ。何かよくわからないが、今は休戦でよいな。シロネ?」

「う……、まあ仕方がないか、でも貴方が何故ここにいるの? それだけは聞かせて欲しいわね」


 正気を取り戻したシロネが白銀の魔女に言う。


「良いだろう。その代わりお前達がここにいる理由を聞かせてもらおうか?」


 白銀の魔女はここに来た目的を簡単に教えてくれるらしい。

 それが、本当か嘘かはわからないが、取り合えず聞いてみよう。


「何事ですか? 騒がしいですね?」


 白銀の魔女が話始めようとした時だった、誰かがこの部屋に入ってくる。

 新しく入って来たのはエルフだ。

 かなり豪華な服装であり、ハイエルフで身分の高い者だろう。

 見た目だけなら私達よりも少し年下に見える。

 しかし、エルフの年齢はわからない。

 もしかすると、かなりの年上かもしれない。


「これは!? 女王陛下!? どうしてここに!?」


 部屋に入って来たエルフを見て、タムリエルが片膝を床に付けると頭を下げる。


「えっ? 女王陛下? どうして!?」


 私はいきなりの事にビックリする。

 エルフの女王という事は彼女がタタニアなのだろう。

 もっとも長く生きているエルフであり、世界中のエルフの頂点に立つのが彼女だ。

 外見は中学生ぐらいなのでそうは見えないが……。

 それにしてもなぜ彼女がここにいるのだろう?


「久しぶりだなチユキ。まさかお前達がここに来ているとはな、連絡が来た時はビックリしたぞ」


 タタニアの後ろから、新たに誰からが部屋に入って来る。


「ニーアさん? どうしてここに?」


 入って来たのはレーナの側近の天使、戦乙女のニーアだ。

 どうしてここにいるのだろう?


「それは、こちらの台詞だチユキ。たまたま、アルセイディアに来ている時にお前達が来ていると連絡を受けたのでな、女王を伴ってこちらに来たのだ」


 ニーアが説明する。

 私達がカータホフの砦に着いた時に、タムリエルは先に女王に対して連絡を入れていた。

 その時にニーアが一緒にいたのだろう。

 天使とエルフでは天使の方が上位だ。

 女王を動かす事が出来ても不思議ではない。

 だけど、ちょうど良かった。

 コウキを取り戻す交渉がうまくいくかもしれない。


「それなんだけどね、ニーアさん。エルフのお姫様が攫った子どもを取り戻しに来たの」


 私がそう言うとニーアは首を傾げる。


「子ども? わざわざ、そんな事のために来たのか? もしかして、お前達の誰かが生んだ子どもか?」

「違います。私達が生んだ子どもじゃないです。エルドの神殿に預けられていた子どもです」

「神殿に預けられていた子ども? まさか、レーナ様の神殿か?」

「そうです!」


 私がそう言うとニーアは眉を顰める。

 そして、反応を示したのはニーアだけではなかった。


「神殿から、子どもが攫われただと? 黒髪、その話クーナにも聞かせてもらうぞ」


 白銀の魔女が私の方に来る。

 その顔は真剣だ。

 どういう事だろう?

 子どもが攫われた事と彼女に何か関係があるのだろうか?


「おまえ……、いや貴方は?」


 ニーアが白銀の魔女を見て驚く。

 もしかして、どこかで会ったのだろうか?


「クーナはお忍びだ。そういう事だぞ。それよりも詳しい話を聞きたいぞ」


 白銀の魔女がそう言うとニーアは何も言わなくなる。

 やはり、彼女の事を知っているようだ。


「確かに今は子どもの事を聞くべきか。女王よ。一応聞くが最近この国に連れてこられた人間の子どもがいるのは間違いないか?」


 ニーアはエルフの女王に聞く。


「はいニーア様。ルウシエンが確か人間の子どもを1人、連れて帰りました。ですが、たかが、人の子。我らエルフと共にある方が良いはずです。気にする程ではないと思いますが?」


 ニーアが聞くとエルフの女王は悪びれずに答える。

 この辺りはエルフの共通認識なのだろう。やはり納得はできない。


「確かにいつもならそう思うのだがな……。チユキ、念のために聞かせてくれ。攫われた子どもの名は?」

「コウキって子よ」

「「!?」」


 私がコウキの名を出した時だった。

 白銀の魔女とニーアが驚いた顔を見せる。


「ああーーーーー!! 女王よ!! 何てことをしてくれたのだ!! これは大変な事だぞ!!」


 ニーアが大声を上げて女王の肩を揺さぶる。


「あ、あの? ニーア様あ!? どうされたのですか? な、何が大変なのでしょうか?」

「大変も大変だ!! この事がバレたらとんでもなくお怒りになられるぞ!!」


 ニーアは叫ぶ。

 その慌てっぷりを私達はポカンとした表情で見る。


「すでに遅い。なぜ、こんなに怒っているのかわからなかったが、ようやく判明した。そして既に降りて来ている。これは面倒だぞ」


 白銀の魔女が天を見上げて呟く。

 何が大変なのだろう?

 全く意味が分からない。



◆エルフの姫ルウシエン


 ドワーフの里のクタルに来た私達は客用の部屋に案内される。

 アルセイディアの外来用の館の最下級の部屋と比べてもみすぼらしい。

 まあ、ドワーフの部屋なぞこんなもんだ。


「殺風景ですが、広さだけはありますね。ルウシエン様」


 テスは部屋を見渡して言う。

 ドワーフは私達エルフの繊細な意匠を嫌い、重厚な意匠を好む。

 そのためか華やかさにかけるのである。

 まあ、いかにも鈍重なドワーフらしい。

 しかし、今はそんな事などどうでも良い。

 それよりもやる事がある。


「ねえ、テス。貴方あの剣士の事が気になるのでしょう。しばらく暇そうだから行っても良いわよ」

「えっ!? 本当ですか? それじゃあ行ってきますね」


 そう言うなりテスは部屋から出て行く。

 素早い動きだ。よほど、あの剣士が気になるらしい。

 あの剣士は今はアーベロンと一緒にいるはずだ。

 さてこれで邪魔者はいなくなった。

 今この部屋には私とコウキしかいない。

 オレオラは鹿車を見ている。

 ピアラは散歩だ。

 私はコウキを見つめる。

 その視線が気になったのか、コウキは私を不思議そうに見ている。

 とても綺麗な瞳だ。

 そんな瞳で見つめられると下腹が熱くなってしまう。


「ふふ、これで私達だけね」


 私はコウキににじり寄る。


「あ、あの、どうかしたのですか?」


 コウキが後ろに下がる。

 だけど逃がさない。

 コウキが悪いのだ。

 帰りたいなどというから。

 私は床に膝を付くとコウキの頬に手を添える。


「ふふ、別にどうもしないわ……。貴方が私から離れられないようにするつもりよ」


 コウキはきょとんとした目をしている。

 驚いているのだろうか?

 だけど、そこで気付く。

 コウキは私の後ろを見ている。




「へえ、誰から離れられないようにするつもりなのかしら?」




 突然後ろから声がする。とても冷たい声だ。

 そこで気付く。

 私達以外に誰かいる。コウキに夢中になって部屋に誰かが入って来たことに気付かなかった。

 もちろん、テス達ではない。

 そして、その声には聞き覚えがあった。

 私はおそるおそる振り返る。

 そこにはゴミを見るような目で私を見るレーナ様が立っていた。





さて更新です。遅くなりました。

実は移転作業がうまくいっていません。修正したい箇所を修正しながらやっているせいですね……。

そして、御免なさない。来週は休みます。移転作業に専念しようと思います。

進捗はマグネットを確認して下さると助かります。

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