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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第9章 妖精の森
180/195

夢幻の都アルセイディア

11月10日からマグネットでも投稿開始しました。

まだ1章だけですが、こちらでもよろしくお願いいたします<(_ _)>

続けて2章3章も移していきたいと思います。

◆黒髪の賢者チユキ


 夢幻の都アルセイディアはエルフ達の国だ。

 場所はエリオス山の麓に広がる大樹海に隠されるように存在する。

 アルセイディアの周囲には複数の砦が建造され、魔法の結界で守っている。

 その1つがカータホフの砦であり、私達はそこからアルセイディアへと向かう事にする。

 妖精騎士タムリエルの先導の元、私達は森の中に敷かれた白石の道をケリュネイアの鹿が牽く車に乗って進む。

 カータホフの砦を抜けるまでは、木々が鬱蒼と茂っていたが、アルセイディアへと続く道はそうではない。

 木々は多いが見晴らしは良く、晴れた空が広がっている。


「チユキさん! 見て見て! すごいよ! 樹が黄金に輝いている! しかも、すごく大きい!!」


 車の窓から巨大な黄金樹を見たリノが私に呼びかける。

 窓から外を見ると行く先に巨大な樹が見える。

 その樹は黄金に光り輝いていて山のように大きい。

 あれ程の巨大な樹を見るのは初めてである。


「本当。すごいッスね」

「うん。あんな樹、初めて見る」


 ナオもシロネも黄金樹を見て驚きの声を上げる。


「あれこそ、黄金樹です。太古より聳え立つ偉大なる樹なのですよ」


 鹿車を操縦するタムリエルが説明する。

 黄金樹はこの世界が生まれる太古の昔から存在するらしい。

 その麓にはエリオスの神々の盟友である黄金の神竜王が住み、黄金樹を守っている。

 そして、エルフの都アルセイディアはそんな黄金樹と神竜王を世話するために建造されたそうだ。

 しばらくすると巨大な門が見える。

 かなりアラベスク、つまりは唐草模様が入った壮麗な造りだ。

 エルフの趣味がうかがえる。

 この門がアルセイディアへの入り口なのだろう。


「うわ~! すごい綺麗!」


 リノが感嘆の声を出す。

 門の中に入るとそこは別世界であった。

 深緑の木々の中に白磁の建物が並んでいる。

 その白磁の建物は金と銀を使った模様で飾られ光り輝く。

 通りには美しいエルフ達が歩き。

 所々に花園があり、小妖精(フェアリー)が飛んでいる。

 その光景はまさに御伽の国だ。


「本当に綺麗……」

「これは、中々っすね……」


 リノだけでなく私やシロネにナオもその光景に魅入ってしまう。


「これぞ我らが都アルセイディアです、お嬢様方。さてこのまま我らが女王陛下がいる琥珀の宮まで案内したいのですが……。一応、お目通りの許可が必要です。申し訳ないのですが、しばらく別の館で待機をお願い致します」


 タムリエルは申し訳なさそうに言う。

 確かに鹿車は大通りから少し離れた道を走っている。

 ここまで来て騒ぎを起こす必要はない。少し待っても良いだろう。

 やがて、1つの館にたどり着く。

 庭に綺麗な泉がある趣味の良い館だ。

 おそらく、外から来た者に一時待機してもらう館なのだろう。


「あれ?」


 館に近づいた時だった。

 私は思わず声を出す。

 エルフの乗り物とは思えない武骨な車が館に止まっていたからだ。


「あれは? ハンマーの紋章? ということはドワーフ達が来ているのかしら?」


 ハンマーの紋章は鍛冶と財宝の神ヘイボスの紋章だ。

 そして、ヘイボスは全てのドワーフの父であり、彼らから崇められている。

 だから、あの車はドワーフのものである可能性が高い。


「賢者殿の推測通りです。あれはクタルに住む者達の車。彼らは生きていない金属は扱えても、生きている木々は扱えない。我々から作物を得るために、たまに来ることがあるのです。そして、申し訳ないですが彼らと共に待っていて下さい」


 タムリエルが申し訳なさそうに言う。

 館は広そうだから、私は相部屋でも構わない。

 シロネやリノやナオを見ても同じようだ。

 私達を乗せた鹿車がドワーフの車の横に止まると館から誰か出てくる。

 10歳前後ぐらいの人間の子どもだ。

 一見すると女の子のように見えるが、エルフの性質を考えると男の子に間違いないだろう。

 どうやら、この館で働かされているようだ。

 コウキももしこのままエルフの国にいたら、彼のようになるのかもしれない。


「これはこれはタムリエル様。お客様ですか?」

「その通りだヒュラス。急な事で申し訳ないが、確かドワーフ達しか来ていないのなら、最上級の部屋は空いているはずだ。そこにお嬢様方を案内しておくれ」


 タムリエルがそう言うとヒュラスと呼ばれた少年は困った顔をする。

 何かあったのだろうか?


「申し訳ございません。タムリエル様。今あの部屋はドワーフの方々が使用されています。ですので別の部屋をお願いいたします」

「何!? そんな馬鹿な!? ドワーフ達は常に最下級の部屋に案内するのが定めのはずだ! なぜ、そんな事になっている!? 早々に立ち退いてもらえ!」


 タムリエルが不機嫌そうにそう言う。

 噂には聞いていたが、エルフとドワーフは仲が悪いらしい。

 同じエリオスの神々の眷属なのに困った事だ。例え仲が悪くても最下級の部屋にしてはいけないだろう。

 タムリエルのその言葉にヒュラスは困った顔をする。


「駄目です! タムリエル様! あの部屋はあの方達が使うべき部屋です! 立ち退いてもらうなど出来ません!」

「なっ!?」


 タムリエルが絶句する。

 ヒュラスの言葉が信じられなかったのだろう。

 ヒュラスは一歩も引かない様子だ。


「ねえ、ちょっと待って」


 そんな中、突然リノが出てくる。

 リノはヒュラスの前に出ると身を屈めてヒュラスに顔をよせる。


「あの? 何を?」


 ヒュラスが戸惑うのを感じる。


「ねえ、君。リノの眼を見て」


 リノがそう言った瞬間だったヒュラスの眼が胡乱な状態に変わる。


「ちょ!? 何やってんの!? リノ!?」


 私は慌ててヒュラスに駆け寄る。

 おそらくリノはヒュラスに精神魔法をかけたのだ。

 何をやっているのだろう?


「違うよチユキさん。この子、誰かに精神支配を受けていたの。それを解いたの」


 リノの説明にその場にいた全員が驚く。


「精神支配!? ヒュラスは魔法を受けていたと言うのですか!? まさかドワーフが!? 馬鹿な!!」


 タムリエルが信じられないと首を振る。

 ドワーフは土系の魔法や付与魔法は得意だが、精神魔法は使えないはずだ。


「どういう事なの? もしかして、ドワーフ以外の何者かが入り込んでいるんじゃ?」


 シロネが不安そうに言う。

 もしかするとエルフに良からぬ事を考える何者かがドワーフを騙り、侵入しているのかもしれない。


「まさか!? そんな!? このアルセイディアに!? だが、他に考えようがない……。ドワーフは妻として猫女を連れてくる事があるが、彼女達も精神魔法は使えなかったはずだ……」


 私達は顔を見合わせる。

 嫌な予感がする。

 今、この館に来ているのはドワーフやその仲間ではないかもしれない。


「ねえ、様子を見に行ったほうが良いんじゃないっすか?」


 ナオの提案に全員が頷く。

 この館に来ている者が何者なのか確認をした方が良いだろう。

 私達はタムリエルを先頭に館の中を進む。

 広く趣味の良い内装だ。

 特に荒らされている様子はない。

 奥に進むと突き当りに壮麗な扉の前へと来る。


「ここが、この館で最上級の部屋です。良いですか? 開けますよ」


 私達が頷きタムリエルが扉を開けると、そこは宴会場だった。

 宴会をしているのはドワーフと猫人の女性、そして、わずかに人間の女性も混じっている。

 そんな中を美少年達が忙しそうに動いている。

 少年達はこの館で働いている者だろう。


「うわ~。何だか楽しそうっすね。それにしてもドワーフさん達だけじゃないっすけど。どういう事っすかね?」

「彼女達はドワーフの妻となった者達です。あまり、我らが姫君達は好ましく思っていないのですが」


 タムリエルが説明する。

 我らが姫君達というのはエルフの事だろう。

 まあ、エルフは人間の娘や猫人の娘を下に見ているらしいから、タムリエル達も下に扱わなくてはいけないのだろう。

 基本的に女性には紳士的な彼も困っているに違いない。


「という事は彼女達の中に、精神魔法を使える者がいるって事ね」


 見た感じドワーフ達は本物だ。魔法で何者かがドワーフに化けている感じはしない。

 最下級の扱いに怒った誰かが魔法を使ったのかもしれない。

 そんな事を考えていると私達に気付いたドワーフの1名がこちらに来る。


「おや、タムリエルじゃないか? この館に、こんな上等な部屋があるとはな、いつもはみすぼらしく狭い部屋ばかりだから、エルフ達は貧しいのかと思っておったは」


 酒瓶を持ったドワーフが酒臭い息で悪態をつく。


「ベレガール殿か、申し訳ないが貴方達の扱いは姫様方の指示なのだ。悪いが即刻この部屋から退去してもらいましょう」

「それはちっと難しいな、あの娘っ子が承諾するかどうか……ん? 後ろにいる娘っ子は誰じゃ? 性悪なエルフ共ではないようだが?」


 ベレガールが私達を見る。


「彼女達はあの女神レーナ様が認めた勇者レイジ様の御仲間達だ。訳有ってこの都へと来ている」

「何じゃと!? 勇者の仲間!? いや、これは……。不味いやもしれぬ」


 ベレガールの言葉の最後の方が小さくなる。

 何が不味いのだろう?

 そんな事を考えているとシロネが突然前に出る。


「えっ? どうしたのシロネさん?」


 しかし、シロネは私の声に応えない。

 まっすぐ部屋の奥を見ている。

 釣られて私もその視線を追いかける。

 広い部屋の真ん中、そこでこの部屋でもっとも豪華な椅子に銀色の髪の少女が座っている。

 とんでもない美少女だ。

 彼女の頭には黒い猫耳が付いているが、猫人ではないだろう。

 見るからに飾りだ。

 銀髪の少女の周りには少年達が待機している。

 まるで御主人様の命令を待っているみたいだ。

 その少女は大きな椅子に寝そべるように座り、まるでこの部屋の主のようであった。


「ちょっと! あの子どこかで見た事があるよ!」

「確かにそうっす! アリアディア共和国で見た事があるっす!」


 リノとナオが驚く声を出す。

 ナオの言う通り私も彼女に会った事がある。

 あんな美少女は見間違えようがない。彼女とはアリアディア共和国で会った。

 白銀の魔女クーナ。

 それが彼女の名前のはずだ。

 なぜ彼女がここにいるのだろう?

 シロネが歩きだし、彼女の方へと向かう。


「なぜ? 貴方がここにいるのかしら?」


 シロネが怒ったような口調で問い詰める。


「シロネか? それはこちらの台詞だ。なぜ、お前達こそ、ここにいる? 全く面倒な奴らだ」


 銀髪の少女は面倒臭さそうにシロネを見る。

 シロネと白銀の髪の少女が睨みあう。

 何だか大変な事が起こりそうな気がするのだった。

ついにシロネとクーナが鉢合わせました。

次回はキャットファイトになるかどうか?


また、前書きでも書きましたが、マグネットでも投稿開始です。

そして、表紙なのですが……。土曜日に頑張って書いたのですが。

上手くできませんでした(´;ω;`)

とりあえず仮の表紙を書きました。

その辺りは活動報告で。

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