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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第9章 妖精の森
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妖精騎士

◆エルフの姫ルウシエン


「どうしたのですか? おばあ様!? いつもと何か違うようですが?」


 私はエルフの女王であるおばあ様タタニアに問いかける。

 エルフの都アルセイディアに戻った私はおばあ様に会うためにコウキを連れてシシアスの宮へと向かった。

 シシアスの宮はアルセイディアの中心であり、おばあ様はいつもそこにいる。

 お暇なのか、私が来ると嬉しそうにして、お茶を一緒にすることが多い。

 エルフの都はいつも穏やかであり、おばあ様は毎日退屈だと愚痴を言うのだった。

 だけど、今日は違った。

 執務室にいるおばあ様は何だかとても忙しそうである。

 おばあ様は少しやつれている。私が森を離れる前はいつも通りだった。

 こんなおばあ様を見るのは初めてだ。


「ルウシエン。 今森は大変なのですよ……。フェリオンの事は知っていますね? 今年はその封印が弱くなる年です。おかげで牙の者達がうるさいのですよ」


 おばあ様の言う凶獣フェリオンの事は知っている。

 私が生まれる前に暴れまわった邪神だ。

 ただ、今は封印されていて、その封印は7年ごとに弱くなると聞いている。

 封印が弱くなった年はフェリオンの眷属である狼人ウルフマン人狼ワーウルフ達が凶暴化するので少しだけ忙しくなる。

 しかし、忙しいとはいっても妖精騎士達は優秀だ。牙の者達等怖れる事はない。

 牙の者達は力が近接戦闘には強いが、遠距離での攻撃手段をもたない。私達が得意とする魔法や弓などでかく乱すれば、勝てる。

 これまでもそうだったはずだ。おばあ様がこれ程疲れるとは思えない。


「確かに今年はフェリオンの封印が弱まる年です。ですが、それは今までもあった事だと思います。何かあったのですか?」


 おばあ様は溜息を吐く。


「それがねルウシエン。今回はちょっと問題なのよ。奴らはどうやら西の蛇達と手を組んだみたいなの。ラミアの妖術師がこの森に入ってきているわ」

「ラミア? 強いのですか?」


 ラミアは下半身が蛇の女だけの種族だと聞いている。

 知ってはいるが、強さは知らない。


「かなり強い相手ですよルウシエン。私達ハイエルフ(アルセイド)程ではないけど、ウッドエルフ(ドライアド)達では対処するのは難しいでしょう。それに探知能力に優れているから奇襲も効きません。また、彼女達は薄汚いオーク達を連れて来ているようです。こんな大変な状況は1000年ぶりです」

「そっ、そうなのですか!? そんな大変な状況になっているなんて!? 天上の方々はなんと?」

「もちろん。天上の方々も動かれています。どうやら、邪神も来ているようです。蛇女達も彼らが連れてきたとみて間違いないでしょう。邪神は天上の方々が相手をして下さります。私達はその配下から森を守らねばなりません。良いですねルウシエン」

「はい。おばあ様……」


 私達エルフは天上の方々より森の管理を任されている。

 可能な限り私達の手でどうにかしなければならないとおばあ様は言う。


「さて、ルウシエン。戻って来てそうそう悪いのですが、アーベロンの所に行ってもらえませんか? 今はクタルにいるはずですから」

「えっ、アーベロン? ドワーフロードの所へですか? どうしてですか?」


 私は疑問に思う。

 ドワーフ達の住むクタルは高貴なるエリオス山の麓にある。

 一応交流はあるが、深い付き合いはない。

 アーベロンはドワーフの王と呼ばれる者で、普段は北西のカウフの地にいる。

 しかし、今は大変な時だからかエリオスの麓のクタルの城塞にいるみたいだ。



「それがですね、天上の方々より、ドワーフと協力して蛇や狼共と対処しなさいとお達しが来たのです。

 彼らがどれぐらい役に立つかわかりませんが、天上の方々の言葉です。ドワーフと協力する事にします。ですから、取り合えず貴方に使者に行って欲しいのです」

「私がですか? 他の者はいないのですか?」


 正直に言うとドワーフ達の所には行きたくない。

 何しろ彼らは泥臭い。

 華やかな妖精騎士エルフィンナイトとは大違いだ。だから、あまり付き合いたい相手ではない。

 誰か別の者に行ってもらいたい。


「駄目です。他の者には別の用事を頼んでいます。ですから、貴方に行ってもらいたいのですよ。具体的に何をするのかは後で指示します。また、それ相応の立場の者を使者にしなければ、あのへそ曲がり達が怒るでしょう。我が娘や孫で手が空いているのは貴方だけなのですよルウシエン」

「はあ……」


 ここまで言われてはどうしようもない。

 行くしかないだろう。私は覚悟を決める。


「ところでルウシエン。そちらの可愛い子は誰ですか?」


 おばあ様が私の腰のあたりを見る。

 そこにはコウキがいる。

 コウキはおどおどしている。どうして自身がここにいるのかわからないみたいだ。

 まあ、目が覚めたらエルフの国だったのだから無理もない。

 そのうち慣れるだろう。


「ふふっ、可愛いでしょう。この子の名はコウキです。きっと立派な妖精騎士になると思います。どうですか? おばあ様」


 私はコウキを前に出すと後ろから抱きしめて紹介する。

 コウキは私に抱きしめられて少し赤くなっている。とても可愛い。


「今まで誰にも見向きもしなかった貴方が見初める子なんて珍しいわ。どれどれ、私にも見せてくれないかしら?」


 おばあ様が興味深そうに近寄ると、しげしげと見つめる。

 コウキは見つめられて少し気まずそうだ。


「フフッ、確かに可愛い子ね。でも、少し気が弱いみたい。騎士にはちょっと無理かもしれないわね。貴方が見初めた子だから騎士にしてあげたいけど、決まりは守らなければいけないわ」


 おばあ様が残念そうに言う。

 全ての男の子が妖精騎士になれるわけではない。妖精騎士になるにはとある試練を潜り抜けねばならなかった。

 そして、妖精騎士になれない男の子はこの国にはいられない。記憶を消され人間の国に返さなければならない。

 それが、決まりだ。

 これはエルフが優秀な人間の男性を独占しないようにと、天上の方々が定めた決まりの1つである。

 優秀な男の子を全て妖精騎士にしたら、人間の国が弱くなってしまう。

 だから、厳選して限られた子だけを妖精騎士にするのだ。


「いいえ、おばあ様! コウキは良い騎士になります! 間違いありません! そうよねコウキ!」


 私は反論するとコウキを見る。

 コウキを見て運命を感じたのだ。きっと試練を乗り越える事が出来るはずだ。


「ええと、ルウシエン様。確かに自分は騎士にはなりたいと思っているのですが……、でもそれは」


 コウキはおどおどして答える。

 確かに気が弱い。だけど、そのうち自信を持つだろう。


「そう、やる気はあるのね。でも今は試練を授ける暇はないわ。良いですねルウシエン」

「はい、わかりました。おばあ様」


 私はそう言うと頭を下げるのだった。






◆黒髪の賢者チユキ


 精霊の作る風の道を抜けて私達は森の奥へと進む。


「確かこの辺りにエルフ達がいるのよねリノさん?」


 私はリノに聞く。

 精霊と会話が出来るリノなら、私達の状況がわかるだろう。


「うん、間違いないと思うよチユキさん。エルフさんの住んでいる所ってある意味わかりやすいもの」


 リノが頷くとシロネとナオも頷く。


「確かにそうだね。幻惑の魔法の気配がするよ」

「そうっすね。わかりやすいっすね」


 エルフは自らの住みかに幻惑の魔法をかけて、望まない者を入れないようにする。

 私の魔力探知にも引っかかっている。

 おそらく、この近くにエルフがいるのだろう。

 もっとも魔法の守りに気付いたからといって突破できるとは限らないが、ここには探知能力が高いナオと幻惑の魔法が得意なリノがいる。

 すぐに発見できるだろう。

 ほどなくしてナオとリノが魔法の抜け道を見つけて案内してくれる。


「さてこれで進めるわね」


 そう言って私が一歩踏み出した時だった。


「危ないチユキさん!」


 突然シロネが剣を抜き私の前に立つ。

 そして、シロネの周りに落ちる矢の残骸。

 その矢には見覚えがある。エルフの矢だ。


「馬鹿な! 我らの矢を撃ち落としただと!」

「何者だ!?」


 驚く声。

 見ると複数の者達が私達の前に立ちはだかっている。

 全員女性と勘違いしてしまいそうなぐらいの美形だが、男性のようだ。

 エルフは女性しかいない。つまり彼らはエルフではない事になる

 おそらく彼らが妖精騎士エルフィンナイトなのだろう。

 エルフは素質のある人間の男性を攫い、自らを守る騎士とするといわれている。

 つまり、彼らの中には過去に無理やり攫われた者もいるのだろう。

 しかし、彼らが可哀想かというとそうは思われない。

 美しいエルフの女性の側にいられるのだから、男性の中には羨ましく思われる事の方が多かったりする。


「やめなさい! 貴方達じゃ私達には敵わない!」


 シロネが背中から翼を出して威嚇する。

 それを見て妖精騎士達がさらに驚く。

 シロネの翼は天使の翼に似ている。驚くのは無理もない。

 シロネの翼を見た妖精騎士の隊長らしき者が他の者達を制止する。


「何者かと思えば、まさかこんな可愛らしいお嬢さん達だったとは、そして、天使様と同じ翼。蛇共の仲間ではないようですが、何者です?」


 妖精騎士の隊長が私達に問う。

 蒼い長髪の綺麗な男性だ。リノの目が輝いているのがわかる。


「私達は女神レーナ様に選ばれたる勇者レイジ様の従者です! 貴方達と敵対するつもりはありません!」


 私はあえてレーナの名を出す。

 エルフはエリオスの神々の眷属。

 レーナはエルフ達の上位者にあたる。これで、彼らの警戒が解ければ良いのだが。


「レーナ様の!? なぜここに!? もしや我らの手助けのためか?」


 案の定妖精騎士の1人が驚きの声を出す。

 しかし、同時に気になる事を言う。

 我らの助けとはどう言う意味だろう。


「待て! 我らは何も聞いていない! ここは女王陛下に伺うべきだ!」


 妖精騎士の隊長が止める。

 そして、私達に頭を下げる。


「もうしわけございません、お嬢様方。知らぬとはいえ、矢を射かけてしまいました。深くお詫び申し上げます。私の名はタムリエル。麗しき女王タタニア様に仕える者にございます」


 タムリエルと名乗った妖精騎士が優雅に頭を下げる。

 こういうイケメンがやると様になるのを感じる。


「いえ、気にしないで下さい。タムリエル殿。勝手に侵入したのはこちらなのですから」

「そういっていただけるとありがたい。すぐにも我らの都アルセイディアへと案内したいのですが、今は緊急事態です。取り合えずカーターホフの砦でお待ちください。すぐに女王陛下に連絡をしますので」


 またも気になる事を言う。

 そう言えば緑人グリーンマン達も森に異変が起こっていると言っていた。

 もしかすると関係があるのかもしれない。

 私達はタムリエルに付いていく。

 カータホフの砦はエルフの都アルセイディアの周囲を守る砦の1つだとタムリエルは説明する。

 そして、今森は邪神が率いる蛇達と戦いになっているらしい。

 どうやら私達は面倒な時に森に入ってしまった事を感じるのだった。





更新です……。駄目だ5000字に届かない!?

そして、来週リアルの都合で休みます。ごめんなさい(´;ω;`)


そして、登場人物の紹介。

※タタニア……エルフの女王。元ネタはティターニア。子供をめぐってオベロンと争います。

※タムリエル……妖精騎士。元ネタはタム・リン。カーターホフの森の番人。彼も幼いころに妖精に攫われて騎士になりました。とういうかタムリンが妖精騎士の元ネタだったりします。

乙女の純潔を奪う者らしいですよ。


絵の練習の成果は活動報告で……。

色々とコメントで教えて下さる方。本当にありがとうございます(´;ω;`)

この場を借りてお礼を申し上げます。

折角教えて下さっているのに、うまく実践できていないのが心苦しいです。


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