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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第9章 妖精の森
172/195

取り替え子

タイトルを元に戻しました。

『暗黒騎士物語』→『暗黒騎士物語 ~勇者を倒すために魔王に召喚されました~』→『暗黒騎士物語』

タイトルで内容がある程度わからないと読んでもらえなさそうなので、タイトルを途中で変えたのですが、そろそろ元に戻しても良いかなと判断しました( ̄ω ̄;)

また、『暗黒騎士物語 ~勇者を倒すために魔王に召喚されました~』にするかもしれません。

◆暗黒騎士クロキ


 ドワーフの都ヴェルンドはエリオス天宮の真下にあるエリオス山の内部にある都だ。

 この都にはエリオスの天宮にあるトトナの書庫に行くために何度も来た。

 自分は一応エリオスの敵なので、正面から入れない。

 必ずヴェルンドを通り抜けてから入る必要がある。

 今回はトトナの書庫に用事があるわけではないので、エリオスの天宮には行かない。

 自分は今、そのヴェルンドの最上部近くの会議室にいる。

 ここは寄り合い所であり、様々な事柄を話し合うためにドワーフやその妻達が集まる。

 その会議室に魔法の映像が映し出される。

 映像に移っているのは森の一部だ。


「ん? なんだ、あれは? 枯れているみたいぞ。クロキ」

「ああ、そうだねクーナ」


 横にいるクーナの言う通り、映像の中の森は枯れている。

 そして、その周りには森の生き物の死骸が倒れている。

 燃えている様子はない。おそらく毒だ。


「その通りだ、暗黒騎士。そして、枯れた森の奥を見るが良い」


 ヘイボス神が自分を呼び、映像の一点を指さす。

 そこには巨大な蛇の頭が見える。

 蛇の頭と形容したのは、完全な蛇ではないからだ。その蛇には4つの足が生えている。

 その蛇の口からは紫色の煙。

 おそらく、あの蛇が毒を吐き、森の木々を枯らしているのだろう。


「あれは?」

「あれはムシュフシュ。猛毒を吐く魔獣だ。そして、その上に乗っている者は……」


 ヘイボス神が言う通り、ムシュフシュの上に誰かが乗っている。

 その者には見覚えがあった。


「あれは、蛇の王子ダハーク……。それに鮮血の姫ザファラーダ」


 褐色の肌に長い槍を持った男、間違いなく蛇の女王ディアドナの息子ダハークだ。

 それに紅い衣装を纏った女性は死神ザルキシスの娘ザファラーダに違いない。

 まさか、エリオスを攻めに来たのだろうか?

 やがて映像を見ていると、甲冑に身を包んだ天使たちがダハークの前に現れる。

 アルフォス率いる聖騎士達だ。

 アルフォス達が現れるとダハークとムシュフシュはあっさり撤退する。

 ダハーク達が撤退するとアルフォス達もそれ以上は深追いしない。

 良く見るとダハークだけではない。

 ムシュフシュの近くに複数の異形の者達も見える。その中には複数の狼人ウルフマンも見える。

 仲間がいるのなら、アルフォス達も無理は出来ない。

 そもそもダハークだけでもかなり強敵のはずだ。


「奴は数日前から突然現れた。フェリオンの封印が弱まる時期を狙ってな。もしかすると奴らはフェリオンの封印を解くつもりなのかもしれん」


 ヘイボス神が髭を触って唸る。

 フェリオンはエリオス山の麓に封印されている。

 と言ってもエリオス山は巨大だ。麓も広い。

 しかし、ダハーク達はその封印からもっとも近い場所から森に侵入してきたようだ。


「やはり、封印を狙っているのでしょうか?」


 そう言うとヘイボス神は首を振る。


「わからん。じゃが、もしフェリオンの封印を解くつもりならば、奴らは仲間割れを起こすじゃろうな……」


 凶獣フェリオンは凶悪な力を持つ暴神だ。

 蛇の女王ディアドナの仲間の神々の多くは、彼の封印を解く事に反対するだろうとヘイボス神は説明する。

 ディアドナが動いていないのもそれが理由なのだろう。

 ディアドナ達は言ってしまえば烏合の衆だ。

 簡単に仲間割れをする。

 まともな仲間はザルキシスぐらいだろう。

 ただ、情報によるとザルキシスは自分と戦った時に魔力を消耗しすぎて、まだ回復していないらしい。

 そもそも不完全な復活であり、無理をしすぎたようだ。

 現にザルキシスも動いていない、森に侵入している大物はダハークとザファラーダだそうだ。

 もちろん、これから援軍が現れる可能性もあるのだが。


「あまり、大した事はないな。蛇の王子とやらは強いのかもしれないが、アルフォス共がいれば問題ないのではないか?」


 クーナが映像を見ながら言う。

 確かにクーナの言う通りなのかもしれない。

 ダハークは強いがエリオスの近辺で戦えばアルフォスの方が有利だ。それにいざとなれば神王オーディスも動くだろう。

 自分が動く必要はないかもしれない。

 現にレーナは動いていないみたいだ。レイジ達に助けを呼んでもいない。


「すまないな暗黒騎士。念のためにモデスに連絡をしたが、無駄だったかもしれぬ。わざわざ来てくれて礼を言う」


 ヘイボス神が頭を下げる。

 ヘイボス神がモデスに連絡したのも万が一を考えての事だ。

 しかし、来てみればディアドナもザルキシスも来ていない。

 わざわざ来てもらって悪かったとヘイボス神は謝罪する。


「構いません、万が一もあるのですから。それに折角ですからエリオスの麓を見学に行こうと思います」


 別に構わない。ヘイボス神にはタダで様々道具を作ってもらっている。

 そのお礼をしなければならない。

 エリオス山の麓にはヴェルンドとは別にドワーフの集落がある。

 その集落のドワーフ達はフェリオンの封印を管理するためにいる。

 もし、アルフォス達が突破されれば最終防衛ラインになる。

 もっとも、そこまで来るとは思えない。

 だから、そこを拠点にクーナと共に森を見学するのも良いだろう。

 暗黒騎士の鎧を身に付けず、ドワーフの案内があれば大丈夫のはずだ。

 こうして、自分とクーナはヴェルンドを後にするのだった。




◆黒髪の賢者チユキ


 レイジとサホコを除き私達は宮殿の談話室に集まる。

 目の前には御菓子と御茶が用意され、久しぶりにのんびりとすごす。

 御菓子はゴマと蜂蜜を練り込んだ揚げ菓子だ。

 甘味が強いので、さっぱりしたお茶と共に食べる事にする。


「何だかあっさり帰ったね、チユキさん」


 リノが首を傾げながら私に言う。

 エルフ達が来て、次の日の今日、彼女達はあっさり帰っていった。

 オレイアドとナパイアは残りたがったが、リーダーであるハイエルフの姫ルウシエンがあっさり帰る事を決めたのだ。

 あまりにも、あっさり帰ったので不思議に思う。

 何しに来たのだろう?


「変っすね。鹿さん達によるとエルフさんはレイジ先輩を見に来たはず何すけど……」


 ナオも不思議そうだ。

 ナオは獣と会話が出来る。

 彼女達もさすがに連れてきた鹿までは口止め出来なかったようである。

 鹿はナオの能力で色々な事を教えてくれた。その情報によるとルウシエンがレイジに興味を持ったのでわざわざ森から出てきたらしい。

 教えてくれた鹿達に感謝である。

 エルフ達が連れてきた4頭のケリュネイアの鹿を思い出す。

 金色に輝く角を持つケリュネイアはヘラジカ程ではないが大きく、そして力が強い。

 そんなケリュネイアをエルフ達は乗騎として飼っている。

 その鹿の脚力を持ってすれば、森の中を素早く移動できる。

 そして、ケリュネイアの角は金色に輝いて、とても硬いらしい。

 エルフはこの角を元に剣や矢じり等の様々な道具を作る。

 オレオラと呼ばれた弓エルフ(オレイアド)の武具もおそらくケリュネイアの鹿の角から作られたものだろう。

 彼女達はそのケリュネイアの鹿の牽く車に乗り、数日でここまで来たようだ。

 エリオス山の麓にあるエルフの国からここまで、かなりの距離がある。普通では数日では到着しない。

 その事を考えるとケリュネイアの鹿が一匹欲しくなる。

 それでも、来るのは大変だったみたいだ。魔物もそうだが、特に人が面倒臭かったと鹿達は言っていたそうだ。

 何しろケリュネイアの鹿車は珍しく、人の国に入れば多くの人が寄ってくる、そんな人々を追い払うが大変だったらしい。

 この国入る時も、魔法で人を押しのけながら道を進んだようだ。

 だが、帰る時は楽なようだ。ルウシエンはかなりの魔法の使い手みたいで、転移をして森の近くまで戻った。

 今頃は故郷の森を走っているだろう。


「まったく、何しに来たのかしら? 来たと思ったらすぐに帰るなんて?」

「本当何なの?」


 キョウカとシロネも首を傾げる。

 ちなみにキョウカはエルフ達とほとんど話をしていない。

 まあ、エルフの姫の性格を考えたら、話にならないのはわかっているので、しなくて良かったと思っている。

 たまたま、キョウカはカヤと共に出かけていたのが幸いした。

 エルフの姫は間違いなく人間を、特に女性を下に見ている。

 彼女からは美形であるレイジはともかく私達女性陣を見下している感じがした。

 喧嘩をするならともかく、そんな性格の者を相手にするには下手に出るしかない。

 だから、下手に出る事ができないキョウカには相手をさせられなかった。

 しかし、おかげでシロネが大変だった。

 サホコもいたが晩餐の指示をしなければいけなかったので相手をすることが出来なかった。

 ご愁傷様である。


「しかし、早く帰ってもらって助かりました。食事のメニューを考えるは大変だったようですし」


 カヤが言うと全員が頷く。

 エルフ達は肉類を好まないので、出せる食事がどうしても限られてくる。

 私達が好んで使う魚醤は使えず、味付けは塩と果実油がほとんどになってしまった。

 また、食材が野菜でだとメニューに限りがあるので、早く帰ってもらって助かった。


「なんだ、みんなここに集まっていたのか?」


 私達がそんな話をしているとレイジとサホコが部屋に入る。

 レイジは用事があったのでサホコと共に出かけていた。

 どうやら、用事は終わったようだ。

 そして、2人が席につこうとした時だった。


「サホコ様! サホコ様は御戻りなのですね!」


 突然、扉がノックされる。

 入るように言うと誰かが入って来る。

 入って来たのは宮殿に仕えるメイドだ。

 確かネリアだったと思う。

 そして、レイジとサホコの娘沙奈子の付き人だったはずだ。

 何だかすごく慌てている。どうしたのだろう?


「どうしたの? 落ち着いて、私に何か用なの?」


 サホコがメイドを落ち着かせる。


「大変です! サーナ様が! サーナ様が泣き止まないのです!」


 ネリアは慌てたように言う。

 沙奈子はこの世界風にサーナと呼ばれる事が多い。

 そのため、私達もサーナと呼んでいる。


「え? サーナがどうしたの? 泣きやまないってどういう事なの? コウキ君はどうしたの?」


 サホコがネリアを問い詰める。

 サホコが言ったコウキ君というのは宮殿の敷地内にあるレーナの神殿に預けられている少年なのだそうだ。

 どういう経緯で預けられたのかはわからない。

 会った事はないが、かなり綺麗な子らしい。

 レイジも特に興味はないのかコウキについてはベビーシッター程度にしか考えていないらしく、会った事はないそうだ。

 そのコウキに、なぜかサーナがなついてしまった。

 彼がいるとサーナは御機嫌になり、泣かなくなる。

 そのため、用事がある時にサホコはコウキにサーナを任せたりする。


「彼はサーナ様の傍にいます。しかし、泣き止まないのです。しかも、その泣き方がいつもと違うのです」


 ネリアはどうして良いのかわからないみたいだ。

 こんな事は今までなかったみたいである。

 私達は顔を見合わせる。

 様子を見に行った方が良いだろう。だから、全員でレーナ神殿に行くことにする。

 レーナ神殿は宮殿の敷地内にある小さな建物だ。

 宗教勢力はなるべく入れたくないが、さすがに全て排除する事は出来ない。

 そもそも、敵対するつもりもないのだ。

 レーナ教団も特に気にしてないのか、司祭を1名派遣しただけである。

 司祭は使用人を何名か雇い、その1人がコウキのようである。

 神殿に入ると一人の女性が出迎える。司祭のハウレナだ。

 何だか慌てているように思える。


「ああ、聖女様! お待ちしておりました! どうか! どうか! コウキさんを! コウキさんを助けて下さい!」


 サホコが来たのを確認するとハウレナがサホコにすがりつく。

 私達はそこでまた顔を見合わせる。

 大変なのはサーナではなかったのだろうか?

 神殿に入るとハウレナが案内してくれる。

 一つの部屋に入ると寝台に少年と赤子が並んで寝かされていて、その周りではメイド達が途方にくれている。

 赤子はサーナだものすごく泣いている。


「どうした? サーナ? なぜ泣いているんだい?」


 レイジが近付きサーナを抱き上げる。

 するとサーナは少し泣くのをやめる。

 どうやら、ただ、泣いているだけで普通みたいだ。


「ん?」


 レイジが怪訝な声を出す。

 その目はサーナの隣の少年に向けられている。

 私達も近づく。

 隣にいる少年はぐっすりと眠っている。中々の美形だ。

 この子がコウキなのだろう。

 コウキはサーナがあれ程泣いているのに眠ったままだ。かなり疲れているのだろう。

 少年の顔を良く見る。


「あれ? この子……」


 そして、私は大変な事に気付く。


「チユキ様。コウキさんが目を覚まさないのです……。いつもなら、サーナ様が泣き出すと目を覚ますのですが……。いつもなら、こんな事はないはずなのですが……」


 ハウレナが困った声を出す。

 ハウレナにとってコウキはただの下働きの子じゃないみたいだ。

 コウキが大変な事になって慌てている。

 もっとも、側にいるメイド達は私達の使用人なので、心配しているのはサーナだけだったりする。

 一緒に来たネリアもサーナだけを心配している。

 しかし、大変なのはサーナではない。隣のコウキだ。


「どうやら、大変なのはサーナちゃんじゃなくて、隣の子だったみたいだね」


 リノが言うと全員が頷く。


「どうりでサーナが泣くわけだわ」


 レイジからサーナを受け取ったサホコが呟く。


「こりゃ起きるわけがないっすよ……」


 ナオの言う通りだ、コウキが起きるはずがない。


「誰がこんな事をしたのかしら?」

「お嬢様。こんな事をするのは彼女達しかいませんよ」


 キョウカとカヤが言うとハウレナが不思議そうな顔をする。


「どういう事なのでしょうか? コウキさんに何が起こっているのです?」


 どうやらハウレナには見えていないみたいだ。


「見てなさい。ハウレナ司祭」


 私はコウキの額に手をかざす。

 するとコウキの体が板切れに変わる。


「え!? どういう事ですか!? これは!? コウキさんが板切れに!?」


 ハウレナとメイドが驚きの声を出す。


「違うわ。板切れがコウキ君になっていたのよ。ここにコウキ君は最初からいなかったわ」


 私は説明する。

 コウキはいなかった。

 だから、サーナは泣きやまなかったのだ。


「チユキさん。これって……、まさか?」

「ええ、そうよシロネさん、これは……」


 シロネに言葉に頷き、一呼吸おいて言葉を続ける。


取り替え子(チェンジリング)よ」





更新です。

暗黒騎士と勇者サイドを交互に、視点を増やす、前と同じスタイルです。

正直に言いますと第8章はもう少し視点を増やしたかったのです。テンポが悪くなりますが……。


そして、用事があるので次回休みます。

平日は書けず、土日しか書けないのですが、休日である土日に用事が入ったらどうしようもないや……。

小説だけでは生活はできないのですよ(´;ω;`)


そんな、中で絵の練習もしている、無謀ですね……。


最後に地味に第7章で出せなかったムシュフシュの登場です。


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