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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第9章 妖精の森
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森からの訪問者

◆暗黒騎士クロキ


 御菓子の城(スイーツキャッスル)の中、レープクーヘンの廊下を歩き、アイアシェッケの扉の前へと来る。

 その扉の前には女性のデイモンと闇エルフ(ランパス)がいて、自分に気付くと頭を下げる。

 女性のデイモンの名前はグゥノ。モデスが自分に与えてくれた配下である。


「グゥノ卿。彼の様子はどうですか?」

「はい、閣下。先ほどまで暴れていましたが、今は部下の魔法で眠らせています」


 グゥノに聞くと、彼女は横の闇エルフ(ランパス)を見て言う。

 闇エルフ(ランパス)木エルフ(ドライアド)と同じように精神魔法を使える。

 その魔法で眠らせたようだ。


「ありがとう。様子を見させてもらうね」


 そう言って扉に近づくと、近くにいた人の形をした焼き菓子(ヴェックマン)が扉を開けてくれる。

 部屋に入ると中央に鎖に繋がれた一人、いや一匹がいる。

 男の頭は完全に狼へと変わっている。

 ダイガン。

 それが男の名だ。

 人狼ワーウルフであり、自分に忠誠を誓っているはずだった。

 しかし、ある理由から完全に正気を失い拘束されている。


「クロキ。なぜこいつを殺さない? さっさと殺してしまえば楽だぞ」


 隣にいるクーナが物騒な事を自分に言う。

 クーナにとってはどうでも良いのだろう。つまらなそうにダイガンを見ている。


「駄目だよ。クーナ。ダイガンは自らの意志でこうなったんじゃないんだ。だから殺すのはダメ」


 首を振って答える。

 ダイガンがこうなったのはつい最近だ。

 人狼ワーウルフ狼人ウルフマン等の牙の血族は凶獣フェリオンの眷属だ。

 そのフェリオンは現在、とある場所で封印されている。

 そのためか牙の血族の力は弱くなり、性格も大人しくなった。

 今は各地でひっそりと暮らしているのが現状だ。

 中には強い力を持つ他種族の配下になる者もいる。

 ダイガンがオーガに飼われていたのも、そのためだ。

 しかし、その牙の血族が凶暴化する時がある。

 それはフェリオンの封印が弱まる時だ。

 フェリオンの封印は7年周期で一時的に弱くなる時がある。今がその時なのだろう。

 自分はモデスから、前もってその事を聞いていた。

 だから、アルゴア王国にいたダイガンを前もって回収していたのである。

 これでダイガンが人間を襲う事はないはずだ。


「元に戻すのは無理かな?」


 闇エルフ(ランパス)に聞くと彼女は首を振る。


「もうしわけございません。閣下。血を求めて暴れる姿こそが、この者の本性なのです。大人しくさせたいのなら、魔法で精神を操るしかございません」

「精神を操るか……。その手はあまり使いたくないな」


 精神を操る手は使いたくない。

 操られたまま生きているなんて、生きているとはいえない。

 だから、他の方法で大人しくしてあげたい。


「閣下。フェリオンの封印ならば、すぐに戻ります。放っておいても良いのではないでしょうか?」


 グゥノがそう提案する。

 確かにそうだろう。一時的に封印が弱まるだけで、時間が経てば戻るはずだ。

 だから、このまま拘束しておけばダイガンも元に戻るはずだ。

 しかし、自分は首を振る。


「確かにそうだけどね……。だけど、どうやら問題が起こっているみたいなんだ。念のため封印の様子を見に行こうと思うよ」

「そうですか……」


 実は最近フェリオンが封印された場所に、蛇の女王の手の者の姿が見えるようになったという情報を得ているのだ。

 フェリオンが封印された場所は秘密にされていた。その秘密がバレたみたいだ。

 封印された場所はエリオス山の麓である。

 その近くにはドワーフの集落とエルフの国がある。

 凶悪な力を持つフェリオンが目覚めればドワーフの集落は大変な事になる。

 そこでドワーフの神であるヘイボス神はモデスに相談したのである。

 ヘイボス神やドワーフと縁のある自分も気になる。だから、様子を見に行く事にしたのである。

 その事はモデスにも伝えて了承を得ている。


「そういうわけで、グゥノ卿。クーナと一緒に出掛けるよ。用意は出来てるかい? クーナ?」

「大丈夫だクロキ。用意はちゃんと出来ている。ウォード。クーナがいない間はお前が指揮を取れ、任せたぞ」


 クーナはそう言って、後ろを見る。

 そこには赤い鎧を身に着けた戦士を中心に複数の男達が跪いている。

 彼らはクーナに付き従い、後ろに付いて来ていた。

 先頭にいる者は魔戦士イビルウォーリアのウォードである。元は魔王を崇める人間だった。

 そして、魔鎧イビルアーマーを与えられて魔戦士イビルウォーリアとなった。


「お任せください、クーナ様。必ずやこの城を守り通してみせますぞ。グフフフフ。さあ、ジュシオ卿。愛らしいクーナ様に踏まれ隊の同志達に連絡だ。クーナ様の留守を守るのだ!」

「ええと……。同志? いつの間に……。しかし、まあ、わかりましたウォード卿」


 同志と言われ戸惑うジュシオを連れてウォード達は去っていく。

 その後ろ姿を見守る。

 そのやり取りを聞いて、何とも言えない気持ちになる。

 その団名はどうにかならないのだろうか?

 クーナは団の名前事態はどうでも良いのか、何も言わない。


「グゥノ卿。後はお願いするよ……」


 魔王に従う者にとってエリオスは敵地だ。

 だから、大勢で行くわけにはいかない。だからグゥノ達はお留守番だ。

 自分やクーナも天使達に見つからないように隠れて様子を見に行かなければならないだろう。

 ドワーフ達が案内してくれるので、大丈夫のはずだ。


「はい、閣下お任せ下さい」


 グゥノが頭を下げる。

 不安を感じる中、自分とクーナは御菓子の城(スイーツキャッスル)を後にするのだった。




◆黒髪の賢者チユキ


 エルドの宮殿の謁見の間に私達は集まっている

 その私達の目の前には4名のエルフがいる。

 エルフは常若の種族で女性しかいない。容姿は美しく、目の前の4名も中々の美人だ。

 お互い興味深そうに相手を眺めている。

 エルフは代表である1名を前に後ろに3名が並んでいる。

 後ろの左端のエルフはおそらくドライアドだろう。

 ウッドエルフと呼ばれ、エルフの中でもっとも数が多い。

 彼女達は木を住みかとして、好きになったイケメンを攫い連れ込む事で有名だ。

 中央にいる弓と剣を持ったエルフはオレイアドだ。

 マウンテンエルフともボウエルフとも呼ばれる彼女達は、生まれながらの戦士だ。

 彼女達は森から出て人間のイケメン戦士の仲間になる事がある。

 そして、愛を育んだ後、森へと帰る。

 右端にいる小柄なエルフはナパイアだと思う。

 バリーエルフともウインドエルフとも呼ばれる彼女達は成長しても人間の12歳か13歳ぐらいの少女にしか見えない。

 だから、目の前のエルフ達の中で一番年上の可能性もある。

 彼女達は風の吹く場で輪になって踊るのが好きで、その踊りに誘われて来た人間のイケメンを攫う事がある。

 イケメンは何年かナパイアの里で暮らした後、記憶を消され元の場所に戻される。

 そして、イケメンはいつの間にか何年も経っている事に驚くのである。

 最後に一番前にいるのはアルセイドだろう。

 ハイエルフともライトエルフとも呼ばれる彼女達は、ダークエルフを除き他のエルフの上位種だ。

 気品に溢れ、他のエルフのようにいやらしい事は考えないと言われている。

 実際目の前にいる彼女の立ち姿は優雅である。

 アルセイドを見るのは私達は初めてだ。だから、彼女に注目が集まる。

 彼女達は普段森の奥にあるエルフの国に引きこもっていて、表に出てくる事はない。

 その彼女が我が国に来たのはどういう理由からだろう?


「よく来てくれました。ルウシエン姫。歓迎します。」


 レイジが前に出て、優雅に挨拶すると、後ろの3名のエルフ達が歓声を上げる。

 その中でもナパイアは特にはしゃいでいる。


「チユキさん……。何だか私の時と違うのだけど……」


 横のシロネが頬を膨らませて言う。

 シロネは私達が戻るまでエルフ達の対応をしていた。

 その時のエルフ達はものすごくつまらなさそうにしていたみたいだ。

 納得いかない気持ちはわかる。


「まあ、エルフは大体こんなものなのよねえ……」


 そう言ってため息を出す。

 エルフのほとんどは面食いだ。イケメンに目がない。

 旅の途中で出会うエルフもレイジを見るたびに寄って来るのが多かった。

 もちろん、だからと言って納得したわけではない。

 そして、その中で唯一静かなエルフを見る。

 ルウシエンと名乗ったハイエルフの姫だ。さすがエルフの王族だけある。

 レイジを見ても騒がず気品がある。

 彼女達が来た理由は人間の国の見物だそうだ。そして、途中でエルドに立ち寄ったので光の勇者レイジに挨拶来たらしい。

 だけど、それは嘘だ。

 嘘を感知するリノが理由を聞いた時に怪訝な顔したので間違いないだろう。

 真の目的は何かはわからない。

 敵意を感知できるシロネは彼女達から何も感じなかったそうだ。だから、こちらも何もしない。

 ルウシエンがエルフの姫ならば、歓待しようと思う。

 ルウシエンを見る。

 彼女はにっこりと笑うとレイジに応対するのだった。



◆エルフの姫ルウシエン


 歓迎の晩餐が終った後、私達は揃ってエルドの宮殿を歩く、勇者レイジは私達が宮殿を自由に移動する事を快く承諾してくれた。

 私室以外は自由に見ても良いらしい。

 だから、宮殿を見物する事にする。

 宮殿はエリオスの天宮やアルセイディアの宮殿に比べるとみすぼらしい。大きくもないし、素材もそこまで立派ではない。

 しかし、所詮は人間の国の宮殿だ。比べるのも馬鹿らしい。

 だから、こんなもんだろう。

 後ろを歩く彼女達も同じで、宮殿には興味を示さない。

 もっぱら勇者レイジの話しをしている。


「こりゃ大当り~! 久々だね~♪ あんな良い男は中々いないよ! あたい住み着いちゃおうかな~♪」


 ピアラがはしゃぐ。

 確かに美形だった。あれ程の殿方はエリオスでもそうはいない。

 私の父親であるアルフォス様と同等だろう。


「確かにピアラ殿の言う通りだな。妖精騎士の中にも彼ほどの者がいるだろうか? もし、姫様が残られるのなら、私も傍にいようと思う」


 そう言うオレオラから視線を感じる。

 オレオラはこの国に残りたいようだ。しかし、私の護衛なので少し遠慮をしている。

 許可を出したら、きっとこの国に住み着くだろう。

 それに対して一歩引いているのがテスだ。

 彼女も勇者レイジを見て感嘆の声を上げたがピアラやオレオラ程には夢中になっていない。

 どうやら、前にもっと好みの男性に会っていたようだ。


「確かにすごい美形だったね~。前に彼に会ってなかったら夢中になっていたかも~。そうだ、ルウシエン様はどうですか? 勇者様を見た感想は?」


 テスが私に振る。何かを期待するような目だ。

 ドライアドはこういった話が特に好きだ。テスも例外ではないらしい。

 確かに麗しい殿方だった。

 しかし、それほど心が動かなかったのも事実だ。私の好みに合わなかったし。

 むしろ、初めてレーナ様を見たときの方が心が躍ったような気がする。


「う~ん。確かに素晴らしい殿方だったけど……。あら?」


 私は視線を感じ立ち止まる。

 少し視線を下げると赤子を抱いた人間の男の子がこちらを見ている。

 女の子のようにも見えるが、エルフには性別を感知する力がある。だから、間違いなく男の子だ。

 男の子は私達が進む向かいから来た。狭い通路であり、私達が広がって歩いていたから通り過ぎる事が出来なかったのだ。

 そして、私達は男の子が小さかったので気付くのが遅れたのである。

 男の子を見る。レーナ様と同じ色をした髪だ。そして、深く青い空を思わせる群青の瞳が私を映している。

 その瞳に見つめられると、何故か心がざわつくのを感じる。


「御免なさい。行く手を阻むつもりはなかったのです」


 男の子が通路の脇に移動する。

 礼儀正しい。その様子に感心する。


「幼いのに中々わきまえているようですね。姫様。 おそらく、この宮殿で働いている下働きなのでしょう。さあ行きましょう、姫様」


 オレオラが私を促すが、その言葉に首を振る。


「待ってオレオラ。ちょっと、その子と話をさせてくれないかしら?」


 そう言うとオレオラ達が驚いた様子を見せる。

 だけど、どうしてもこの男の子と話をしてみたい。

 私は男の子の前で膝を付く。

 男の子はきょとんとして私を見る。中々良い瞳だ。飾っておきたくなる。


「あの……。何でしょうか?」

「別に、ただお話がしたいだけ、ずっと見てたけど私が怖い?」


 男の子に聞く。

 もし、怖いって言ったら少しだけ悲しい。

 だけど、男の子は首を振る。


「怖くないです……。綺麗だなと思って見ていました。ごめんなさい」


 男の子がそう言って謝った時だった。

 ずきゅーんと私の体に何かが駆け巡る。


「そ、そう。謝る必要はないわ。私が綺麗なのは事実だもの。ところでその手に抱いているのは貴方の妹?」

「こちらはサーナ様です。勇者様の御子様です。なぜか懐かれちゃって、お世話をすることになったのです。実はこれから聖女様の所に向かう途中だったのです」


 男の子が説明する。

 聖女というのはサホコという勇者レイジの仲間の女の事だろう。おそらくこの赤子の母親に違いない。

 赤子は女の子だ男の子にしがみついて安らかに眠っている。

 何故か赤子にイラっとしてしまう。


「そうなの、大変ね……。ところで貴方の名前を聞いても良いかしら?」


 私はまっすぐ男の子を見て聞く。

 見つめられて男の子がしどろもどろになる。

 とても可愛い。


「はい。コウキといいます」


 男の子が名乗ると、私はその名を心の中で何度も呼んだ。

 コウキ。

 良い名だ。

 私は心が躍るのを感じるのだった。



レープクーヘンもアイアシェッケもドイツの御菓子です。相変わらず甘そうなお城です。そして、今回はルビが多いです。でも中二っぽくて良いかも。


そして、前回貴族の名前を日本風にしたら不評でした(´;ω;`)

フランス王家だったブルボンも元々は泥という意味。先祖がブルボネという土地を支配してからそう呼ばれました。つまり、日本風にいうと泥野さんです。

木下や川辺も異世界っぽくした方が良かったかも、キノーシェタとかクァワーヴェみたいな感じです。


それにしても暑いです。自室にエアコンがないのがこんなにもきついとは……。でもお金はないし……。そのうち干物になるかもしれません(´・ω・`)


絵の進捗については活動報告で……。


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[気になる点] ショタコンエルフか....
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