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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第8章 幽幻の死都
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暗黒騎士VS死神

◆白銀の魔女クーナ


 クロキと共にグロリアスに乗り空を飛ぶ。

 眼下で黒薔薇の花園が広がっている。

 巨大な黒薔薇の花弁の中にいるのは妖花乙女アルラウネ達だ。

 妖花乙女アルラウネは瘴気を養分として成長するが、養分が足りなくなると生き物を殺して養分を吸う事もある。

 しかし、今は問題無いだろう。なぜなら、瘴気の塊が目の前にあるのだから。

 黒薔薇がモードガルに纏わりつき、瘴気を吸い上げる。


「我が眷属共! あの黒薔薇を断ち切れ!」


 目の前のザルキシスが叫ぶ。当然だ、アンデッドにとって瘴気は動力源のはずなのだから。

 ザルキシスの言葉で死の軍勢が黒薔薇を排除しようと向かう。

 もちろん、ヘルカートとグゥノ達が立ち向かう。

 敵の方が数が多い。

 しかし、この魔道結界の中ではこちらが優位だ。負ける事はないだろう。


「クーナ。良いかい?」


 クロキが振り向いてクーナを見る。

 クロキはこれからザルキシスと戦うのだ。

 だから、クーナは離れる。下には死の御子がいる。こちらが優位でも奴らは危険だ。

 だから、クーナが動く。


「もちろんだ! クロキ! 存分に戦ってくれ! クーナは下の死の軍勢を叩く!」


 そう言ってクーナはグロリアスから飛び降りる。

 モードガルの体に飛び降りるとアルラウネと切り裂こうとする幽鬼の騎士(スペクターナイト)達に向かう。


「消えろ! しかばねども!」


 大鎌で幽鬼の騎士(スペクターナイト)数体を倒す。

 この程度の奴らなら、どれ程の数がいても勝てる。

 問題は死の御子だ。

 蝙蝠女ザファラーダと蛆蝿ザルビュートはヘルカートと戦っている。

 どちらも手負いだ。黒薔薇の花園で魔力を増強したヘルカートだけで対処できる。

 だから、他の死の御子を探す。後一匹いたはずだ。


「ところで、なぜお前はクーナの背後に立つのだ?」


 クーナの背後から蛙人トードマンの戦士が近づいて来る。

 その様子がおかしい。もっとも、その原因はわかる。

 突然、蛙人トードマンから数本の触手が腹を突き破って出てくる。

 触手の先には口があり、クーナに吸い付こうと襲いかかる。


「馬鹿か!? バレバレだぞ!」


 蛙人トードマンが敵に操られているのはわかっていた。だから、簡単に対処できる。

 大鎌を回転させて、触手を斬ると、蛙人トードマンの頭を斬り落とす。

 頭の無くなった蛙人トードマンは逃げるように後ろにさがる。


「さすがだね。ますます欲しくなったよ」


 蛙人トードマンの体の頭の無くなったから箇所から何者かが出てくる。

 死の公子ザシャ。

 その姿は人間の子どもと同じだ。

 しかし、その本当の姿はクーナにはわかる。

 巨大な赤い蛭。本当に醜い奴だ。


「背後からくるなら、もっと怪しまれないようにするのだな。お前の動きはバレバレだ」


 クーナが言うとザシャはいやらしく笑う。

 その目はとても不快だ。


「ふふふ、本当に綺麗だね君は、その可愛いほっぺに僕のシルシをつけてあげたいよ」


 その言葉に笑う。


「馬鹿か? クーナに触れて良いのはクロキだけだ。お前のような不細工が触れて良いと思うなよ。そもそもザファラーダに劣る貴様が勝てると思っているのか?」


 ザシャは死の公子の中でも特に強くはない。

 ザファラーダやザルビュートに比べれば小物のはずだ。

 こいつがクーナに勝てるとは思えない。

 だがその割には余裕だ。


「それはどうかな? このモードガルには僕の取って置きがあるのさ! 暗黒騎士の時には出さなかったこいつの相手をしてもらうよ! 出でよ死命蟲王ドゥームヴァーミンロード!」


 ザシャがそう叫ぶとモードガルの体の中から巨大な甲虫が出てくる。

 巨大な顎をカシャカシャとならしクーナを威嚇する。


「君も蟲を使うようだね、僕も同じなんだ。気が合うかもしれないね僕達は。さあ蟲戦といこうじゃないか?」


 ザシャが本気で気持ち悪い事を言う。


「お前なんかと気が合うわけがないだろう。だが、蟲戦というのなら乗ってやる! 出てこい魔虹彩甲虫レインボースタッグビートル!」


 クーナの呼び声に応えて巨大な虹色のクワガタが出てくる。

 クーナが飼っている中でも戦闘に特化して、姿も虹色に輝く美しい蟲だ。

 あんな不気味な蟲ごときに負けるものか!

 ザシャはさらに蟲を召喚する。ウデムシやゲジゲジに似て気持ち悪い。

 だから、クーナも蟲を召喚する。

 頭上でも戦闘が繰り広げられているのを感じる。

 クロキとザルキシスの戦いが始まったようだ。

 クーナの大切なクロキがザルキシスに負けるものか!


「さあ行け死命蟲王ドゥームヴァーミンロード!」


 ザシャの声と共に甲虫が向かって来る。


魔虹彩甲虫レインボースタッグビートル! あんな不細工等捻りつぶしてしまえ!」


 クーナもまた迎え撃つのだった。



◆暗黒騎士クロキ


 モードガルの頭上でザルキシスと対峙する。

 ザルキシスの周りにはモードガルから伸びた巨大な触手が蠢いている。

 触手の口には巨大な牙が生え、その奥から悪霊ラルヴァの嘆きが聞こえる。

 その触手の間でグロリアスが自分を乗せて空を飛ぶ。

 触手がグロリアスを捕えようと向かう。

 触手の口が開くと蒼閃を吐き出す。


「グロリアス!」


 自分が叫ぶとグロリアスは咆哮して、爆炎の吐息ブレスで蒼閃を吹き飛ばす。

 上位竜グレータードラゴンであるグロリアスの力ならその程度の攻撃でやられはしない。

 爆炎の吐息ブレスで次々と触手を吹っ飛ばす。


「おのれ! 暗黒騎士! ならばこれならどうだ! 悪霊ラルヴァよ我が剣に集まれ!」


 ザルキシスの罪の剣に蒼い霊魂が纏わりつく。

 一見炎のようにみえるが、感じるのは冷気である。

 人の顔が浮き出た蒼炎の剣が向けて振るわれる。

 自分も黒い炎を剣身に纏わせ向かえ撃つ。

 空中で炎がぶつかる。


「うわっ!」


 飛ばされたのは自分達だ。

 ザルキシスの力は凄まじい。モードガルから溢れる魔力が注ぎ込まれているようだ。

 モードガルから放たれた悪霊ラルヴァがザルキシスの体に吸い込まれていくのが見える。


「死ね! 暗黒騎士!」


 ザルキシスが剣を次々と振るう。

 その一つ一つが強力で、受け流すだけで精一杯である。

 しかし、その勢いが少しづつ弱くなるのを感じる。

 理由は黒薔薇によりモードガルの瘴気が吸われ、ザルキシスに渡す力が無くなっているからだ。

 それに対して自分は瘴気を吸って成長した黒薔薇から、魔力を吸収して力を増している。

 そのため、次第に自分が優位になっていく。


「ぐううううううう! 何故だ!? 何故だ!? 世界を世界を死で満たす事が何故出来ないのだ!?」


 ザルキシスは悔しそうに叫ぶ。

 その言葉を聞きザルキシスに少しだけ心が痛くなる。

 ザルキシスは世界に死を撒く存在として生まれたのだ。それが敵わない事はとても悔しいのだろう。


「ザルキシス。お前もモデスのように変われたら良かったのに……」


 そう呟く。

 モデスの力は破壊の力だ。ナルゴルによって世界を破壊するために生まれた。

 しかし、自分の考えで行動して、結果母親のナルゴルを裏切った。

 その時のモデスの心の内を考えると、なんとも言えない気持ちになる。

 しかし、世界を死で満たす事はさせない。何だかかんだと自分もこの世界に愛着があるのだ。

 ザルキシスに恨みは無いが、止めさせてもらう。


「行くぞ! ザルキシス! 竜達よ力を貸してくれ!」


 体の中の竜達が咆哮する。

 全身に活力が漲り、魔力が高まるのを感じる。

 魔剣を構える。


「おのれ暗黒騎士! モードガル! その全ての力を貸せ!」


 ザルキシスの体がモードガルの口へと飲み込まれる。

 するとモードガルの口が限界まで開かれる。

 巨大なモードガルの口の中。そこにあったのはザルキシスの顔だ。

 悪霊ラルヴァが一つになり顔となったのだ。

 モードガルが口を大きく広げ自分を飲み込もうと迫る。


「グロリアス!」


 自分が叫ぶとグロリアスが飛ぶ。

 モードガルが迫る。


「はあああああ!」


 渾身の力を込めて魔剣を横に振るう。

 剣身から赤い光を帯びた黒い炎が伸びる。


「オノレエエエエエエエ! 暗黒騎士イイイイイイイイイ!」


 ザルキシスの叫び。

 力を失ったモードガルでは自分の力には敵わない。

 モードガルは上下に斬り裂かれる。

 上半身が一部が吹き飛び、残った体が膝を付く。

 グゥノ達から歓声が上がる。

 モードガルの残った体を黒薔薇が覆う。

 残った死の眷属達は吹き飛んだ上半身へと集まる。

 完全に消し飛ばす事は出来なかった。残ったモードガルの体は動き逃げようとしている。


「くそが暗黒騎士! いつか貴様を縊り殺してやる!」


 モードガルの体から出たザルキシスが叫ぶと死の眷属達が睨む。

 ザファラーダにザルビュートにザシャ。奴らも健在だ。ザルキシスと同じようにこちらを睨んでいる。

 モードガルの体が幽幻の霧に包まれると消えていく。

 黒薔薇の花園は魔道結界として未完成だ。結界の綻びから逃げたようだ。

 グロリアスと共に下に降りる。

 下にはクーナがいる。その傍らには巨大な蟲の死骸が横たわっている。

 クーナが倒したみたいだ。


「クロキ!」


 クーナが嬉しそうに駆け寄ると抱き着く。

 腕を広げてクーナを受け止めると、頭を撫でる。


「さすがクロキだ! 死神なんか敵じゃないな!」


 クーナが頭を自分の胸に擦り付ける。

 そのクーナの後ろからヘルカートが近づく。


「こちらが優位とはいえ、さすがに討たせてはくれないみたいだね。ゲロゲロゲロ」


 その言葉に頷く。

 ザルキシスも死の御子も最後の力を振り絞って戦っていた。討ち取るのは容易ではない。

 グゥノ達もこちらに来る。


「閣下。死神は去りました。どうしますか?」


 ザルキシスは去った。追う事も出来るが、黒薔薇の花園はこの場所からは動かせない。

 黒薔薇の花園のない所では戦うのは得策ではない。


「そうだな……。さすがにこれ以上戦う事は無理だ。ナルゴルに帰ろう。まずは空船の修理だ。どんな状況だい?」


 そう言って落ちた空船を見るのだった。




これで第8章の残りはエピローグだけです。はっきり言って8章は不完全燃焼です。

色々とありすぎて書くことが難しかったです。

クーナ対ザシャはムシキ〇グのイメージ……。ほっぺに〇紋。


書籍化作業でここまで心が抉られるとは……。本当に吐きそうです……。

砕け散りそう……。本当になぜこうなるのでしょうね?


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