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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第8章 幽幻の死都
159/195

聖騎士VS死神

◆白銀の魔女クーナ


 ルヴァニアの地の外側。

 結界の外にクーナの乗る空船は浮かんでいる。

 どんよりと曇るルヴァニアの地に比べて空は明るい。

 しかし、クーナの心は晴れない。


「そうか、クロキは危ない目に会っているのだな?」


 戻って来た道化から報告を聞く。

 その体はボロボロだ。

 人形の体はひび割れ、道化の服はところどころが破けている。

 追って来るザルキシス達にやられたようだ。

 そして、報告だとクロキは危険な状況のようだ。

 助けに行かねばならない。


「はい~。クーナ様ぁ~。そしてこれを~」


 道化はそう言うと体から宝珠を取り出す。


「ゲロッ!? それは魂の宝珠(ソウルオーブ)!?」


 ヘルカートが驚きの声を出して、宝珠を取ろうとする。

 しかし、クーナはヘルカートに渡すまいとオーブを先に回収する。


「渡さないぞヘルカート。これはクーナのだ」


 この宝珠が何かはわからない。しかし、重要なものな事はわかる。

 だとしたら、簡単に渡す訳にはいかない。

 宝珠を背中に隠すとヘルカートは少し悔しそうな顔をする。


「ゲロロ……。仕方がないね……。だけど、早く戻らないとザルキシスが追って来るよ。早く転移をするんだね」


 ヘルカートが転移魔法でナルゴルに戻れと言う。

 しかし、そんな事ができるはずがない。


「駄目だ! クロキを置いて帰れるものか!」


 そう言うとヘルカートの六つの目が開かられる。


「ゲロロ! 馬鹿な事をお言いでないよ白銀! 力を取り戻したザルキシスはお前よりも強いよ! 折角の魂の宝珠(ソウルオーブ)を取り戻されちまうよ!」

「ヘルカート! お前はクロキを見捨てるつもりか!」


 クーナがそう叫んだ時だった。

 空が灰色に染まる。

 それを見たデイモンの女達が慌てる。


「クーナ様! これは!?」


 デイモン女のグゥノが聞くがクーナにわかるわけがない。


「ゲロ!? これは!? 転移封じ!? まずいね! 奴が来たみたいだよ!」


 ヘルカートの慌てる声。

 ルヴァニアの地から凍てつく風が空船を揺らす。


「待てえええええ! 魂の宝珠(ソウルオーブ)を返せええ!」


 その声と共に巨大な蝙蝠の翼を広げた何かがクーナ達へと向かって来る。

 その何かの後ろには巨大な空船。

 幽霊ゴーストを纏わせた空船は幽霊空船ゴーストスカイシップと呼ぶべきだろう。


「あれはザルキシス!? ゲロッ! 思ったいじょうに早いね!」


 あの巨大な蝙蝠の羽を持つ者がザルキシスなのだろう。

 そのザルキシスから凍てつく風がこちらに向かって来る。

 凍てつく風を受けたグゥノ達が膝を付く。


「まずいぞ!」


 大急ぎで九つの魔法盾を展開する。

 ザルキシスから飛んで来た何かが、瞬時に五つの魔法盾を打ち貫く。

 飛んで来た何かはザルキシスの腕へと戻る。

 捻じ曲がった剣が伸びてこちらを攻撃したようだ。

 距離はあるが、ここまで届くようだった。

 ザルキシスを睨む。

 強い。

 間違いなくクーナよりも強いだろう。

 再び魔法盾を展開する。

 ザルキシスの攻撃をなんとか防ぐが、何度ももたないだろう。


「お前達! 船を北に向かわせるんだ!」


 急いでグゥノ達に命令する。

 するとヘルカートが慌てる。


「ゲロゲロ!? 何をとち狂っているんだい白銀! それじゃザルキシスに追いつかれちまうよ! お前が勝てる相手じゃないよ! ゲロゲロ!」


 しかし、言う事を聞く訳にはいかない。

 そもそも、この場にいる者でザルキシスに勝てる者はいないだろう。

 魔法盾の展開が間に合わず空船の一部が破壊される。


「うるさいぞ! ヘルカート! そんな事はわかっている! クーナに考えがある! 急げ!」


 クーナの声で空船が北へと進路を取る。


「ゲロゲロゲロ! なにを考えているんだね! だけど仕方ないね妖霧よ!」


 ヘルカートが不満の声を出すと魔法を使う。

 魔法の霧が出て、空船とザルキシスとの間に広がる。

 心なしかザルキシスの剣が鈍ったような気がする。


「グゥノ! グロリアスを出せ! 少しで良い! 時間を稼げ!」


 さすがの上位竜グレータードラゴンのグロリアスでもザルキシスが相手では苦しいだろう。

 しかし、それでも時間は稼げる。

 そして、北へと向かう。

 甲板から出てきたグロリアスが爆炎のブレスを放つ。

 天使やデイモンすらも焼き殺せるブレスもザルキシスには効かない。

 しかし、凍てつく風を和らげる事は出来た。

 力を取り戻したデイモン達がクーナ達に協力する。

 これなら、なんとか間に合う。

 ザルキシスの相手なんかしてはいられない。

 だから、あの男に押し付ける。

 クーナ達では敵わない相手でも、あの男ならどうだろうか?

 ザルキシスがこちらに迫る。

 その攻撃は激しく気を抜く事が出来ない。

 防ぎきれず、空船の後部が半壊する。


「ゲロロ! まずいよ銀髪! どうするつもりだい!? このままじゃもたないよ!」


 ヘルカートが叫ぶ。

 確かにまずい。

 しかし、想定ではそろそろのはずだ。


「ちょこまかと! だがこれまでだ! 喰らえ真霊腐瘡……何!?」


 ザルキシスの腹の口が大きく開いた時だった。

 突然矢が飛んで来てザルキシスへと向かう。

 慌ててザルキシスは捻じ曲がった剣でその矢を防ぐ。

 どうやら間に会ったようだ。

 振り向くと空船の進行方向に白い竜に乗った男が立っている。

 その周りには数多の天使達が飛んでいる。


「大丈夫かな? 姫君?」


 白い竜に乗った男が笑う。


「ゲロ? お前はアルフォス?」


 何度目だろう? 

 ヘルカートがまたも驚く。

 アルフォスは天使達にクーナを監視をさせていた。

 だから、クーナ達の居場所はわかっていた。

 ここに来るのも偶然ではない。

 レーナの情報からこの男が来る事はわかっていたのだ。


「アルフォス! クーナを助けろ! 美女を助けるのがお前の使命だろう!?」


 クーナが叫ぶとアルフォスがにっと笑う。


「もちろんだよ! 姫君! 僕に任せたまえ!」


 そう言ってアルフォスは弓を構える。

 既に首から下は聖騎士の姿になっている。

 性格はともかくこいつならザルキシスと渡り合えそうな気がする。

 だからこいつに押し付ける。


「アルフォス様!? なぜこいつらを助けるのですか!?」


 アルフォスの側の女天使が言う。


「よくわからないけど、暗黒騎士は君を助けたそうじゃないか? 暗黒騎士が君を助けたのに、僕が彼女を助けないのは負けた気がするとは思わないかい?」


 アルフォスは連続で矢を放ちながら答える。

 ザルキシスはアルフォスの矢でこちらを攻撃できない。

 天使達の横を通り過ぎる。

 天使達はアルフォスに止められているのかこちらに攻撃して来ない。


「礼は言わないぞアルフォス! 貴様が勝手に助けたのだからな!」


 アルフォスに向かって叫ぶ。

 クーナは助けられて当然の存在だ。

 だから、こいつに感謝することはない。


「わかっているさ! 姫君! ザルキシスは僕に任せてくれたまえ! さあ行くよヴァルジニアス! 害虫駆除の時間だ!」


 アルフォスが言うと白い竜ヴァルジニアスが咆え、天使達が攻撃体勢を取る。


「なめるな! 若造があ!」


 ザルキシスの怒りの咆哮。

 聖騎士と死神の戦いが始まる。

 しかし、そんな事はどうでも良い。

 アルフォスがザルキシスを引き付けている間にクロキの所に向かう。

 待っていろクロキ!




◆暗黒騎士クロキ


 この村に来てから、かなりの時間が経つ。

 村の外は少し騒がしい。

 どうやら、この地に侵入した人間をまた捕えて来たようだ。

 彼等はなぜか殺さず。捕えただけに止めている。

 後で助けに行くべきかもしれない。

 ティベルの話ではこの村の大人達の一部は捕えた者達の世話をするために、領主の城へ行っているらしい。

 そのため、子ども達の監視が緩くなっている。

 おかげでウェンディがこの廃屋に頻繁に来る事ができる。

 彼女は頻繁にここに来て自分の話を聞きたがる。

 しかし、今日は遅いような気がする。


「クロキ様~。大変です~」


 ティベルが叫びながら戻って来る。

 彼女はウェンディと一緒にいたはずだ。


「どうしたの? ティベル? ウェンディは一緒ではないの?」


 ティベルはウェンディの協力で、この村の事を調べていた。

 ここに戻る時は一緒に来る事が多い。


「それが~。クロキ様~。あの下僕の人間が連れ去られたのです~」

「ええっ!? ウェンディが!?」


 ティベルの言う下僕の人間とはウェンディの事だ。

 すごく懐いているのに下僕扱いは可哀そうだと思うが、今はそんな事を言っている場合ではない。

 どういう事だろう?

 ウェンディが連れ去られるなんて。

 嫌な予感がする。


「どういう事だろう? もしかして、ウェンディは危険な状況になっているいるんじゃ?」


 もしそうなら助けに行くべきだろう。


「いえクロキ様~。あの下僕はどうでも良いです~。ただ、食事の調達が難しくなったのですよ~」


 ティベルの悲しそうな言葉を聞いてこけそうになる。

 ティベルにとってウェンディの身よりも、食事の方が心配なのだろう。


「……そうだね。大変だね。ところでティベル。ウェンディはどこに連れて行かれたのかわかる?」


 身を起こしてティベルに聞く。


「はい。それならわかりますです~。クロキ様~。他のチビ人間達と一緒に城へ連れて行かれたです~」

「他のチビ人間も?」

「はいです~。全員連れて行かれたです~。大人間達は食事をしないので、これから食事が手に入らないのです~」


 他のチビ人間とは迷子の家の子供達の事だ。

 それが全員も連れて行かれた。

 そして、大人間は白い頭巾で顔を隠したこの村の大人の事である。

 この村の大人達はなぜか食事を取らないらしい。

 もしかすると普通の人間ではないのかもしれない。それならば顔を隠しているのもわかる。

 人外の顔を見せる事で子ども達に恐怖心を与えないようにしているのだろう。

 もっともそれは善意からではなさそうだ。


「動いた方が良いかもしれないな……」


 自分は窓の外から城を見る。

 城は相変わらず不気味だ。確実にアンデッド共が巣食っているだろう。

 しかし、行かなければならない。


「動く? もしかして、下僕を助けに行くのですか? えー! それは駄目ですよ~。クロキ様~。まだお体が回復していないのですよ~」


 ティベルが自分の周りを飛び回り慌てる。

 確かにティベルの言う通りだ。

 体はまだ回復していない。

 だけど、これぐらいで駄目だと思うのなら、最初からレイジと戦ったりしない。

 おそらく、あの戦いから自分はタガが外れてしまったのかもしれない。

 あの戦いに勝ち、クーナを手に入れた。

 ギャンブルに勝った快感を忘れられずに、さらにのめり込む。そんな感じだ。

 もしかすると、行きつく先は破滅かもしれない。

 見捨てるのが正しい。

 だけど、ここで退いたら、逃げる事を覚えてしまって、今後戦う事が出来なくなりそうだった。


「ごめんねティベル。ここで退いてはいけないんだ。だけど、出来る限り、無謀な事はしない。約束するよ」

「うう~。そうですか~。わかりました~。おともするです~」


 ティベルは付いて来てくれるみたいだった。


「ありがとうティベル。それじゃあ行こうか」



エイプリルフールなので、日をずらしてから投稿しようかと思いましたがやめました(´・ω・`)


アルフォスVSザルキシスは飛ばします。脇役同士だしね。

こういう脇役同士のバトルは自分は好物なのですが……、書いた方が良いかも?

また、実はティベルとウェンディの掛け合いをもっと書く予定でしたが、〇ンポが悪いとの指摘があったので、これも削除です。

しかし、指摘を気にしてばかりだと、書きたいものが書けなくなりそうな気がします(。>0<。)





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