死の都モードガル
第6回ネット小説大賞期間中受賞しましたーーm(。≧Д≦。)m!!
皆様のおかげです!ありがとうございます!!
◆死神ザルキシス
「ようやくモードガルへ戻る事ができたな……」
モードガルの中心である、神殿の最上階から外を眺める。
死の都モードガルはこのザルキシスの拠点であった。
その死の都も半ば崩壊している。
かつての戦いの時に魔王モデスによって破壊されたからだ。
このモードガルには再生能力がある
だが、そのモードガルの有する再生能力でも、完全には元に戻っていない。
それだけモデスの力が凄まじかったと言う事だ。
だが、その数千年の時を得て、モードガルの基礎となる力は回復している。
これなら、問題ないだろう。
懐から宝珠を取り出す。
魂の宝珠。
ディアドナの持つ混沌の霊杯と同じ母の残した四至宝の1つである。
残りの2つ、黒血の魔剣と天の王笏。
この2つは、そのうち手に入れるつもりだ。
外を見るのをやめて、振り返る。
そこには再建されたばかりの祭壇がある。
「本当は黒いピラミッドを使う予定であったが、まあ良い。モードガルよ再び働いてもらうぞ」
魂の宝珠を祭壇へと置く。
祭壇の赤い紋様が血のように蠢く。
嘆きの森が吸い取った魂がモードガルへと運ばれ、魂の宝珠へと注入される。
これで、魂の宝珠は輝きを増すだろう。
「これで良い。さて下に戻るか」
祭壇の間の下の王の間へと戻る。
そこには娘のザファラーダと従者の吸血鬼達の姿が見える。
「これはお父様」
ザファラーダが頭を下げる。
「ザファラーダ。周辺の状況はどうなっている」
娘には情報収集をさせている。
うるさい虫共がルヴァニアの周囲を飛び回っているからだ。
「アルフォス率いる天使共は周辺を飛び回っているだけで、入っては来ないようです。こちらから討って出ますか?」
「いや、それは駄目だ。奴らはこちらが出て来るのを待っておるのよ。今は何もせずとも良い」
「そうですか……。それから気になる事が1つ。ナルゴルから空船が1隻、こちらに向かっているそうです。率いているのは件の暗黒騎士との事です」
「何?!暗黒騎士が?」
その情報に驚く。
暗黒騎士まで来ているとは思わなかった。
いや、ジプシールの事を考えれば、来ていてもおかしく無いだろう。
どこまでも邪魔な奴だ。
「どうなさいますか?お父様」
「奴も捨て置け。アルフォスよりもやっかいな奴だが、こちらから手を出すのは危険だ」
「わかりました」
ザファラーダが了解したとばかりにさらに頭を下げる。
そこで、後ろの吸血鬼に見ない顔がいる事に気付く。
「その者は?見ない顔だな」
そう言うとザファラーダが嬉しそうな顔をする。
「ふふ、お父様。この者が以前にお話しした天使殺しですわ。ジュシオ。前に出なさい」
「はい。姫様」
ジュシオと呼ばれた吸血鬼が出て来る。
天使殺しジュシオ。
その名は聞いていた。
ザファラーダが拾い、育てた人間の子だ。
戦士として育て、成長した所で吸血鬼へと変えた。
資質があったのかジュシオは強力な戦士となり、天使ですら倒せるようになった。
「ジュシオか、お前の事は聞いている。かつてフェリアの羊であった者が、その羊飼いを喰い殺す。これは愉快だ。褒めてやる」
思わず笑みがこぼれる。
かつて眷属で有った者に喰われる。とても面白い。
ミナの眷属に相応しい末路だ。
「お褒めいただきありがとうございます」
ジュシオが片膝を床に付き頭を下げる。
そのジュシオの前まで歩く。
「ジュシオよ。忌まわしきミナの眷属として生まれた者よ。貴様はかつての同胞の血を啜り、死を広げるのだ。そして、最後は渇いて消滅せよ。それこそが大いなる母への贖罪と知れ」
「はっ!」
ジュシオがさらに頭を下げる。
慈悲は無い。
罪は血と共に洗い流さねばならない。
◆暗黒騎士クロキ
「これが死の都モードガル?」
嘆きの森を抜け、冷たい霧の中にその都はあった。
白い都だ。
白い霧の中にあるためか、幻のようにも見える。
周囲の霧は普通では無い。
時々霧の中に骸骨の姿が浮かんでは消える。
この霧は幽霊の集合体であるらしい。
一緒にいる道化がいなければ、この霧は自分達を襲って来るのだそうだ。
「そうだよ~。ここがモードガルなのさ~」
道化が踊りながら答える。
「何だか不気味~」
懐のティベルが不満そうに言う。
確かに不気味だ。
城壁の壁には様々な生き物の骨が埋め込まれている。
いや、正確には骨で出来ているのかもしれない。
「ふふふ~。想像の通りだよ。モードガルは死者の体で作られているんだよ」
「あっやっぱり。そうなんだ」
自分の表情を見て察したのか道化が説明してくれる。
本当にこの道化は詳しい。
しかし、今さら驚かない。
「ねえ、どうする旦那様? ここから先は僕がいても襲われるよ~。引き返す?」
道化の言葉に首を振る。
「いや、ここまで来たら、行くしかない。道化君、侵入できる場所はあるかな?」
「どこでも一緒だよ。モードガルは数千年前に壊れているんだ~。どこまで元に戻っているのか?そこまではわからないよ~。元に戻っていたら、どこから入っても気付かれるし、壊れているのなら、どこから入っても気付かれない」
「そう……」
ここから先は道化にはわからないようだ。
だけど、行くしか無いだろう。
自分はモードガルを見上げるのだった。
ああ短いです……。ごめんなさいm(_ _;)m
そして、次は休んで再来週になります。
今は落ち着かないのです。
ちなみに四至宝はトランプがモデル。ただしコインを宝珠に変えています。