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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第8章 幽幻の死都
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魔戦士

◆知恵と勝利の女神レーナ


 私はエルドからエリオスの私の宮へと戻る。

 エルドに行ったのはレイジ達に会うためでは無い。

 エルドにある私の神殿にコウキを預けるためだ。

 コウキは泣いていたが、強い子だ。わかってくれる。

 それに私は何時でも会いにいける。

 だから、特に問題無い。


「どこに行っていたんだい? レーナ?」


 声を掛けられる。

 するとそこには兄のアルフォスが立っていた。

 珍しく聖騎士の格好をしている。


「別にどこでも良いじゃない、私が何をしていようと。それよりも気になるのは貴方の格好よ。聖騎士の姿になって何をしていたのかしら?」


 この不真面目な兄が聖騎士となって働く理由は今の所1つしかない。

 わかってて、あえて聞く。


「ザルキシスが復活したからね。ここから北へ様子を見に行くのさ。すでに他の聖騎士達は動いているよ」


 私は眉を顰める。


「北へ? もしかしてモードガルまで行くの?」


 エリオスから北にはかつてザルキシスの本拠地だった地が有る。

 瘴気が大地に満ちた地は私達にとって危険だ。


「いや、さすがに奴の支配地へは踏み入れないさ。主が戻ったので、瘴気がますます濃くなっているみたいだ」


 さすがにそこまで馬鹿では無かったようだ。


「それが、賢明だわ。あの地ではザルキシスの力はますます強くなる。あの地で勝てる者がいるとすれば魔王モデスぐらいよ」

「確かにね。結局外から監視するぐらいしかできない。そうだ、どうかな君の勇者君を潜り込ませては?彼なら中の様子ぐらいはわかるのではないかな?」

「はあ、何を言っているの?アルフォス。彼等では目立ちすぎる。潜入なんて無理よ。まあ、ナオなら可能でしょうけど、他の者が承知しない。それにレイジはザルキシスと相性が悪いわ。何も出来ずに殺されるだけよ」


 アルフォスはレイジ達を使い捨てにさせるつもりだ。

 しかし、これからの事を考えるなら、それは得策では無い。

 だからこそチユキには何も教えなかった。

 それに彼らにはコウキの守りになってもらわなければならない。


「なるほどね。勇者君では敵わないか。だとすれば我々では打つ手が無いな。うん?待てよ?では彼だったらどうかな?」


 突然アルフォスが何かを思いついたように言う。


「彼? 誰の事?」

「もちろん暗黒騎士の彼だよ。この僕に勝った彼ならどうかな?」


 暗黒騎士の彼。

 それが誰の事を指すのかわからないはずが無い。

 確かにクロキならどうだろうか?

 クロキならばモードガルでもザルキシスに対抗できそうな気がする。

 しかし、それでも死の都で戦うのは危険だ。

 だから、どうなるかわからない。


「そんなのわかるわけないでしょ」


 怒った声を出しアルフォスに背を向ける。

 歩きながらアルフォスの言葉が頭によぎる。

 もし、クロキがモードガルに行く事になったらと考えると不安になる。

 おそらく、私では助けるのは無理だろう。

 だけど、あの子ならどうだろうか?

 死神の息子を捕まえたあの子なら、私よりもクロキを助けられる。

 もし、クロキが行くのなら彼女に動いてもらわなければいけないだろう。

 私はそんな事を考えるのだった。






◆オーディスを信仰する見習い戦士


 蒼の森はナルゴルに近い北の地に広がっている。

 かつて、その中心部には醜いオーガの魔女が住み、森に近づく者を食べていた。

 しかし、その魔女はいない。

 代わりに現れたのは美しい白銀の魔女。

 白銀の魔女は蒼の森を怖ろしい魔界へと変えた。

 ナルゴルにしか存在しなかった魔物が、森をうろつくようになった。

 オーガの魔女がいた頃もこの森は怖ろしかったが、白銀の魔女が現れてからはその比では無い。

 現に蒼の森の中心部へと足を踏み入れた僕達を、重厚な鎧を纏った者達が周りを囲んでいる。

 その者達の鎧の色はそれぞれで1つとして同じ色は無い。

 しかし、共通して鎧の至る所にトゲが生え、闇の気配をさせている所は同じだ。

 この者達は伝承に出て来る魔戦士(イビルウォーリア)のようであった。

 重厚な鎧を身に付けているにも関わらず動きが素早い。

 仲間の神官戦士達が次々と倒れていく。


「愚かな人間共め。警告はしたはずだ。近づくならば容赦はせぬとな」


 魔戦士(イビルウォーリア)の一名が剣を向けて言い放つ。

 その兜の隙間から見える赤い瞳を見るだけで、恐怖が沸き上がって来る。

 僕はここで死ぬのだろうか?

 死など怖くないはずだった。

 神王様のために戦う事は名誉である。

 だからこそ神官戦士になろうと思った。

 しかし、いざ死ぬような状況に立った時、足が震える。

 僕達は第2次蒼の森遠征の途中だった。

 第1次はヴェロス王が主催していたが、失敗した事でヴェロス王は蒼の森に手を出さない事に決めた。

 それに、怒ったのがヴェロス王国のオーディス様に仕える司祭様達だ。

 蒼の森の魔物が出てきて周辺諸国に被害が出る可能性もあると主張して、お抱えの神官戦士団の派遣を決めたのである。

 それに見習い戦士の僕も参加したのだ。

 そして蟲の魔物を倒し、森の奥へと進んだ時だった。

 突然、魔戦士(イビルウォーリア)の一団が出て来たのである。

 奴らはこれ以上進むのなら死ぬ事になると警告した。

 もちろん仲間達が聞く訳が無く、戦闘が始まった。

 目の前で仲間が殺されている。

 魔戦士(イビルウォーリア)の持つ剣が血を吸うと紅く輝く。

 それはまるで喜んでいるようだった。


「戦士達よ! 怯むな! 神王様のご加護があるぞ!」


 巨大なメイスを持つ司祭様が叫ぶ。

 戦司祭(ウォープリースト)のオルド様だ。僕達の指揮官でもある。

 齢50を超えているが、まだまだ現役の戦士である。

 オルド様の叫びに僕達はそれぞれ武器を取る。

 しかし、腰が引けて戦う事が出来そうに無い。

 唯一戦う事が出来ているのはオルド様だけだ。

 天使様のご加護を得たオルド様は強く、魔戦士(イビルウォーリア)と互角の戦いを繰り広げている。


「なかなかやるな貴様! ならばこのウォードが相手をしよう!」


 突然オルド様と戦っていた魔戦士(イビルウォーリア)が下がると、奥から馬に乗った深紅の鎧の魔戦士(イビルウォーリア)が出てくる。

 新たに出てきたウォードと名乗った魔戦士(イビルウォーリア)は他の魔戦士(イビルウォーリア)よりも強そうだ。

 乗っている馬も普通では無い。

 僕の知るどの馬よりも大きい。そして、通常の馬には無い牙が生えている。

 おそらく伝承に聞く魔馬で間違い無いだろう。

 ウォードと名乗った魔戦士(イビルウォーリア)は馬から降りるとオルド様に剣を向ける。

 兜を被っているため顔は見えないが、笑っているように見える。

 その様子にオルド様は怒りで歯ぎしりする。


「なめるな! 魔の者め! 裁きの鉄槌を受けるが良い!」


 オルド様がメイスを高く掲げるとメイスが光輝く。

 加護の力だ。

 聖なる力を得たメイスは重厚な鎧とて打ち砕く事が出来る。

 これならばあの魔戦士(イビルウォーリア)にも勝てるのではないか?

 恐怖で震えていた心に勇気が少しだけ湧く。

 オルド様は神王様の名を叫び相手に向かう。

 その動きは電光石火。

 

「愚か!」

 

 しかし、ウォードは嘲笑うと剣でメイスを簡単に受け流す。


「何?」


 オルド様がそう叫んだ時だった。

 ウォードの剣がオルド様を貫く。

 絶望の声が残った仲間達の口から洩れる。

 オルド様は口から血を吹き出して、そのまま倒れる。


「さて、君達の指揮官は片づけた。まだ、やるかね?」


 そう言ってウォードは僕達に剣を向ける。

 僕も含めて仲間達は動けない。

 あのオルド様が簡単にやられてしまった事で放心状態になってしまった。


「ウォード様。残った奴らをどうしますか? 戦意を無くしているようですが?」

「捨て置け。この者達は戦意を無くしている。これ以上入らぬだろう。入って来ない者は見逃せとのお達しだ」


 ウォードは剣を収めると魔馬に跨る。

 地獄の底から出てきた魔戦士(イビルウォーリア)達に僕達はどうする事も出来なかった。

 怖ろしい。

 助かったけど、心は無事ではいられない。

 きっと、彼らは世界に恐怖を撒き散らすための存在なのだろう。


「さて、『愛らしいクーナ様に踏まれ隊』の諸君。我らが姫の元へ戻ろうではないか」


 最後にエッ?と思う事を言うと魔戦士(イビルウォーリア)達は去っていくのだった。





 ◆白銀の魔女クーナ


 御菓子の城(スイートキャッスル)の玉座の間。

 ダークフェアリーのティベルが空中から突然あらわれる。

 ティベルはプシュケアの蝶と同じく空間を超えて移動できる。

 そのため、扉を開ける必要が無い。


「クーナ様~。ウォード達が戻って来ました~」


 ティベルは楽しそう笑いながら報告する。


「そうか、通せ」


 そう言うと蟲の戦士が扉を開ける。

 重装な鎧を纏った戦士達が入って来る。

 ウォード率いる魔戦士(イビルウォーリア)達だ。

 ウォード達は玉座に座るクーナの前に来ると、一斉に膝を付き頭を下げる。


「クーナ様。侵入者を撃退してまいりました」

「そうか、ご苦労」


 そう言うとウォード達は嬉しそうにする。

 ウォード達は元は魔王を崇拝する人間の戦士であった。

 魔王を崇拝し、魔王のために戦う者に対して、デイモンは贈り物を与える事がある。

 その1つが魔鎧(イビルアーマー)だ。

 見た者に恐怖を与える魔法が付与された鎧を、身に纏う事で魔戦士(イビルウォーリア)となる。

 重装な鎧だが、着用者の筋力を向上させるので、以前よりも早く動く事が出来る。

 蟲の戦士ばかりでは不便な事があるかもしれないと、彼らに恩恵を与えたデイモンがクーナに寄こしたのである。

 最初は間諜を疑った。

 しかし、ウォード達の忠誠に嘘は無かった。

 理由はわからないが、役に立って貰おう。


「さて、ウォード。これからクーナは出かけなければならない。留守を頼むぞ」

「はっ!」


 そう言って玉座から立ち上がると、ティベルと共に城主の私室へと戻る。

 先程クロキから連絡が入ったのだ。

 死神の支配する都へと行くらしい。

 ならばクーナが役に立つはずだ。だから、共に出かけようと思う。


「道化。いるな」


 そう言うと影から道化の姿をした者が現れる。


「もちろん、いますよ。クーナ様ぁ~」


 道化が気持ち悪い声を出す。

 しかし、殴るのも面倒だ。


「それから、ティベル」

「はーい。なーに。クーナ様」


 名を呼ぶとティベルが空中で飛び回りながら返事をする。


「出かけるぞ。今回はお前達に役に立って貰わなければならないからな」


今日中に間に合いました。ここまでが八章のプロローグみたいなものだったりします。

前回よりもちょっと短いです。

連投はここまでです。ちょっと無理をしましたm(_ _;)m


魔戦士の箇所は特にいらなかったりします。

でも魔戦士とデモニックマウントを書きたいから書きました。

後悔はちょっとあります……。


最後に設定資料集を別に作りました。よろしかったらどうぞ……。


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