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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第7章 砂漠の獣神
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闇の中の想い(第七章エピローグ2)

◆死神ザルキシス


 闇の中、瞑想していると、何者かが近づいて来る気配を感じる。


「ディアドナか?ダハークとギルタルはどうだったのだ?」


 ディアドナは傷を負ったダハークとギルタルの様子を見に行っていたはずだ。

 これからの戦いを考えると戦力は多い方が良い。

 まだまだ、未熟だがあの者達の力は欲しい。

 だからこそディアドナは様子を見に行っていたのだ。


「ダハークは問題無い、暗黒騎士と戦えなかった事を悔やんでいるよ。ただ、ギルタルは問題だ。毒の尾は再生したが、心の方が癒えておらぬ、このままでは戦力にはならぬ」

「そうか……。戦力はいくらでも欲しいのだがな。残念だ」


 ギルタルは邪神の中では強い方だった。

 だからこそ残念に思う。


「確かにな。戦力と言えば、ザルキシスよ?肉体の方はどうなのだ?貴様の力をあてにしたいのだが?」


 ディアドナが聞く。


「まだだ。元の力にはまだ足りぬよディアドナ。だが、もう少しだ、必ずや復活してみせる」

「そうか、期待しているぞ。ザルキシス」


 ディアドナと共に笑う。

 闇が広がっていくのを感じるのだった。






◆魔王モデス


 闇の中、報告を受ける。


「そうか。ザルキシスが、本来の力を取り戻したか」


 光を嫌う母を祀る祭壇の間は、常に暗くなるようにしている。

 その祭壇の前でルーガスから報告を受けている。

 報告を受けて、嫌な奴が力を取り戻したと思う。


「まさか、陛下に対して復讐をしようなどとは思わないでしょうが、念のため、ザルキシスに関する情報を集めさせております」


 謁見の間で報告していたルーガスが頭を下げる。

 過去にザルキシスが力を失う事になった原因は、このモデスである。

 奴と戦い。打ち破った。

 しかし、ザルキシスは力を失いこそすれ、消滅はしていなかった。

 力を取り戻した奴が、復讐に来る事は考えられる。


「このモデスを狙う可能性はあるだろうな、母を裏切った者を奴らが許すとは思えん……」

「しかし陛下、そうしなければ世界は滅んでおりました。陛下が行った事はこのルーガスには間違いとは思えませぬ」

「そうか……。ありがとうルーガス」


 ルーガスが慰めてくれる。


「それにしても、ディアドナ達に付き従う者達が何を考えているのかわかりませぬな。ディアドナとザルキシスが進む道は世界の滅びとしか思えませぬ」

「滅びか?だろうな……。ディアドナに付き従う者達はそれをわかってはいないだろう。馬鹿な奴らだ」


 ごく一部を除き、ディアドナに付き従う神々はおそらく騙されている。

 何か餌をチラつかされたのだろう。

 欲望で動く奴らなのでありえる。

 そして、モーナの事を考える。

 ディアドナはモーナの存在を許すだろうか?

 とてもそうは思えない。


「できれば争いたくは無いのだが……」


 祭壇を見上げそう呟く。

 闇が広がっていくのを感じるのだった。







◆踊り子シェンナ


 闇の中、ものすごいブサイクな男が縄でつるされている。


「ふふふ、ゴズ。まさか貴方とここで出会うとは思いませんでした」


 その男の前でリジェナさんが鞭を持ち不気味に笑う。

 縄はカメの甲羅のように男の体を締め上げている。

 猿轡をされた男は苦しそうに呻いている。

 この男の名はゴズ。

 かなり強かったが、竜女(メリュジーヌ)であるリジェナさんの方が強く、最後には捕らえる事が出来た。

 このゴズという男はリジェナさんの昔の知り合いらしい。

 ただ、リジェナさんの表情を見る限り、あまり良い関係ではないようだ。

 2人の間に何があったのだろう?

 リジェナさんの顔を見る限り知りたいような、知りたくないような微妙な気持ちになる。

 この場所はアリアディア共和国のリジェナさんの屋敷の地下室だ。

 暗い闇を照らすのは僅かな蝋燭の光、鞭を持った美女に縛られたブサイクな男。

 何だかとんでもない状況だ。


「残念でしたね。ゴズ。貴方の体には魔法の印が付けられているのです。逃げられるはずが無いのです。こちらに来たから捕らえるように、旦那様からお願いされた時はびっくりしました」


 そう言ってリジェナさんはゴズの体を鞭で叩く。


「むふー!」


 ゴズのうめき声。


「あのー?リジェナさん?」


 私はたまらずリジェナさんに声を掛ける。

 何だかリジェナさんが怖い。止めた方が良いような気がする。


「何ですか?シェンナさん?」


 リジェナさんがこちらを向く。

 その目は正気では無かった。


「……いえ。何でも無いです」


 ダメだ怖くて何も言えない!

 リジェナさんはゴズの方を再び見る。


「ふふふ、ゴズ。貴方を殺すなと言われていますから、殺しません。ですが、貴方をナルゴルに引き渡すまで痛ぶってあげます。シェンナさんから教えていただいた、この拷問方法は生かさず殺さず痛ぶる事ができるのですよ。そうですよねシェンナさん?」


 リジェナさんに問われ頷く。


「ええ、たぶん死ぬ事は無いと思います……」


 そもそもリジェナさんが行っている拷問は私が教えたものだ。

 実は私はクーナ様の命令で、イシュティア信徒の、夜の秘技を書き記した、資料を集めている。

 その資料の中に、何故か拷問に関する資料が、紛れ込んでいたのである。

 最初の方の文字が掠れていて読めなかったが、挿絵を見る限り、拷問に関する内容のようだ。

 リジェナさんがゴズを生かさず殺さないように、痛ぶりたいと言うので教えたのである。


「何も確認しないまま、資料の内容をクーナ様に伝えちゃったけど、大丈夫かな?」


 私はそんな事を考える。


「ふふふ、痛いですか? ゴズ? ですがまだまだ終わりではないですよ」


 目の前ではリジェナさんが蝋燭を手に取っている。

 蝋燭は鞭や荒縄と共に、私がイシュティア神殿の倉庫から持ち出したものだ。

 どれも特殊な素材で作られていて、相手を傷つけずに痛めつける事ができるらしい。


「この蝋燭は低温でも溶けるので、火傷を負う事はありません。ですが、確実に熱さを貴方に伝えてくれるでしょう」


 リジェナさんは蝋燭に火を灯すとゴズに溶けた蝋を垂らす。

 ゴズは苦しそうに呻き声を上げて、身をよじる。

 だけど、何故だろう?ゴズは喜んでいるように見える。

 その醜い顔が恍惚の表情を浮かべているように感じる。

 その顔は醜すぎて、はっきり言って見たくない。


「ほほほほ!」


 リジェナさんが蝋燭を垂らしながら、鞭を振るう。

 恍惚の表情を浮かべながら、呻き声を上げるゴズ。

 何だろう?間違い無く、良くない何かが目覚めようとしている。

 闇が広がっていくのを感じるのだった。






◆暗黒騎士クロキ


「クロキ。シロネは助かったようだぞ」


 御菓子の城(スウィーツキャッスル)でクーナの報告を受ける。

 クーナはレーナから情報を得られる。

 だから、シロネの事を教えてくれる。


「そう……。ありがとうクーナ」


 短く答える。クーナの前で喜ぶ姿は見せられない。

 しかし、シロネが無事で良かった。

 自分の所に来てくれなくても良い。元気ならそれで良い。


「ところでクロキ。わかっているな」


 クーナが期待するような目で自分を見上げる。


「わかっているよ。クーナ。さあ、お嬢様、どうぞこちらに」


 クーナの手を取り、椅子に座らせる。

 今日一日、自分はクーナの従者である。クーナの命令に従わなければならない。

 それが、クーナに寂しい思いをさせた代償である。

 もちろん、命令はしない。

 いわゆる遊びのようなものだ。クーナがお嬢様で自分は執事である。

 しかし、執事と言われてもどうすれば、良いのかわからない。うまく出来ただろうか?


「うむ、苦しゅうないぞ」


 そう言うクーナの様子は嬉しそうだ。

 それを見てほっとする。

 自分の拙い行為を喜んでくれる。

 すごく大事にしないといけない。改めてそう思う。


「さあ、お嬢様。ネペンテスのお茶でございます」


 用意していたお茶を淹れる。

 ネペンテスはジプシールから取り寄せたものだ。

 良い香りが部屋に漂う。


「クロキ。隣に座って」

「えっ?良いの?」


 従者としては良くないのではないだろうかと思う。


「別に構わないぞ。クロキ。クーナが良いと言っているのだ」


 ふふんとクーナが笑う

 しかし、命令には従わなくてはいけない。

 椅子に座ると、クーナが自分の膝の上に移動する。


「クーナ?」

「やっぱり、従者で無くて良い。クロキ。一緒に御茶にしよう」


 クーナが頭を自分の胸に預ける。

 お尻の柔らかい感触を感じる。

 何だか幸せな気持ちになる。


「ジャックオランタン。クロキの分の御茶を淹れろ」

「「「ホーイ、クーナ様!!」」」


 クーナが命令すると内部に鬼火を宿したカボチ頭の者達がふわふわと飛んでくる。

 カボチは南瓜に似たナルゴル原産の野菜である。

 甘みがあり、そのまま焼くか煮るかして食べても良いが、御菓子の材料にする時もある。

 また、このカボチには霊力があり、鬼火を封じる事で命を持たせる事ができる。

 それに案山子の体を与える事で、ジャックオランタンが完成する。

 このジャックオランタンはクーナがヘルカートから学んだ新たな力だ。

 さらにクーナはジャックオランタンに人形の服を与えて従者として使っている。

 それにしても、御菓子の城(スウィーツキャッスル)にジャックオランタンがいると、何だかお化け屋敷みたいだと思う。

 ジャックオランタンが宙に浮かびながら御茶を淹れてくれる。

 そして、別のジャックオランタンがカボチを使った御菓子を持ってくる。


「クロキ。あーん」


 クーナが口をあける。


「はいクーナ」


 カボチの御菓子を取るとクーナの口に入れる。


「ふふ、美味しいぞ。クロキ」


 クーナが笑う。

 クーナが楽しそうに笑うと、自分も嬉しい。

 心の中に暖かい何かが広がるのを感じるのだった。






これで第7章も終わりです。ゴズとリジェナの感動の再開です。


実はイシュティア視点を前エピローグで書く予定でしたが、思いっきり忘れていました。次章に持越しです。

南瓜は南北アメリカ大陸原産。そのため、この世界には無いはずですが、ジャックオランタンの頭の為にカボチという南瓜に似た野菜を作りました。

ジャックオランタンの頭は元々は蕪なので、蕪にすれば問題は無かったのですが、やっぱり南瓜の方が良いですよね……。無理やりすぎたかも(;´д`)


次回からは設定資料集。予定としては来年の1月8日まではやるつもりです。


最後にブックマークと評価ポイントをお願いしますm(。≧Д≦。)m!

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