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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第7章 砂漠の獣神
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光を喰らう者を喰らう者

◆暗黒騎士クロキ


 暗雲の立ち込める砂漠でジプシールとアポフィスの2つの陣営が対峙する。

 その中でジプシールの陣営に歓声が上がる。

 理由は勝利の女神レーナが来たからである。

 特にジプシールの王子ハルセスは大喜びだ。

 そして、敵の邪神達の中にも歓声を上げる者がいる。

 それほどレーナは人気なのだろう。

 レーナに愛された男は永遠に勝利し続ける。

 そう男性の神々の間で噂されている。

 それも男神達がレーナを得ようと必死になる理由である。

 そのレーナが来てくれた事でこちらに勝機が生まれた。

 さすが勝利の女神と言えるだろう。


「よくも性懲りも無く現れたなレーナ!!我が父を誑かしたミナの孫娘にして!!モデスを誑かしたメルフィナの娘よ!!次は誰を誑かし裏切らせるつもりか?!!」


 ディアドナの怒声。

 ディアドナから見ればレーナの血筋はもっとも忌まわしいのだろう。

 その怒りの視線を向けられていないのにも関わらず、体が震えそうになる。


「誑かす?何を言っているのかしら?」


 横からレーナの視線を感じる。

 何だかすごく自分を見てませんか?

 それにしてもレーナは相変わらずすごいと思う。

 盾で邪視を防いでもなおあの視線はきついと思うのだけど全く動じていない。

 涼しい顔をしている。

 どんな時でも凛として前を向き恐れない。それが彼女の魅力でもあるのだろう。


「すまないレーナ。君が来てくれたのに」


 レイジが申し訳なさそうにレーナに謝る。

 その顔は少し辛そうだ。


「謝るのは後よレイジ!!貴方は回復に専念しなさい!!イシュティア様!!トトナ!!敵の攻撃を防ぐわ!!手伝って!!輝ける光の盾よ!!壁を作りなさい!!」


 レーナは自らの盾を掲げ叫ぶ。

 すると輝く巨大な魔法の盾が複数現れる。

 レーナの盾は最硬のアダマントで作られた魔法の盾であり、レーナの防御魔法を高める能力を持つ。


「わかったわレーナちゃん!!」

「仕方ない。わかったレーナ」


 トトナとイシュティアが魔力を送りレーナのサポートをする。

 三柱の女神による複合魔法による魔法の盾は硬く、例え破られても新しい魔法の盾を次々と作る。

 これで時間が稼げるはずだ。


「おのれレーナ!!忌まわしき女神め!!」


 蛇の女王ディアドナが憎々しげに叫ぶ。

 攻撃が一切届かなくなったのだ、無理も無い。


「言っておくけど長くは持たないわよ。その間に対策をしなさい」


 レーナは涼しい顔をして言うが、少しきつそうだ。

 それはトトナやイシュティアも同じだ。

 これだけの巨大な魔法の壁を作ったのだ、無理も無い。

 それがわかるので急いで対策を練らなければならない。

 暗い空を飛ぶエクリプスの闇の波動がこちらを襲う。

 この波動を受けた者は力が徐々に失われる。

 レーナの魔法の盾も浸食されるが、その度にレーナは魔法の盾を補強する。

 撤退したいが、そこまでの余裕は無い。

 かなり厳しい状況といえるだろう。


「どうするつもりクロキ?」


 トトナが不安そうに聞く。


「エクリプスを自分のものにします」


 自分は空を見上げる。

 闇の上位精霊であるエクリプスはレイジの召喚したベンヌを押さえるために全力を出してはいない。

 しかし、それも時間の問題だ。

 光を喰らう者(ライトイーター)と呼ばれるだけあって、エクリプスは光の精霊の天敵である。

 光の上位精霊であるベンヌの輝きが小さくなっていく。

 いずれ消滅してしまうだろう。

 そうなれば、ただでさえ強力な力を持つエクリプスが全力を出せるようになってしまう。


「敵の支配下にある精霊を奪うというの?それは難しいわよ?」


 レーナが自分を見て言う。

 もちろん、それが難しい事は知っている。

 ルーガスの授業で精霊の使役方法を学んだ。

 精霊を使役するには特別な力が必要である。

 自分にはその才能があるとは思えない。

 なぜなら力の弱い下位の精霊ですら満足に使えないからだ。

 にもかかわらず上位精霊を得ようとしている。

 無謀と言わざるを得ない。

 竜の力も使えない。

 自分のなまの心だけで精霊と向き合わなければならない。

 しかも敵が支配している精霊だ。

 難易度はさらに高くなっている。

 しかし、どうしてもやらなければならない理由があった。


「レーナ。クロキならできる。クロキは強い。信じるべき」


 レーナを魔法で補助しながらトトナが言う。

 トトナは自分をすごく信じてくれている。

 それはとても嬉しく思う。だけど、その言葉を聞いたレーナから何か黒いオーラを感じる。


「ふふふ。別に信じてないわけじゃないのだけど……。それにしてもトトナ。何だか彼と仲良さそうねえ。一体どういう事なのかしら?」


 レーナの顔は笑っている。

 しかし、絶対に怒っている事だけはわかる。


「答える必要は無い。クロキと私の仲はレーナには関係ない」


 トトナはレーナの問いを無視する。

 その時のレーナの表情はとても見る事が出来なかった。

 思わずレーナに対して背を向ける。

 美人が怒ると、これ程冷たく感じるとは思わなかったのである。


「い!い!え!!トトナ!!関係ありありありありありありありありありまくりです!!!!!!!」


 レーナは語気を強めて言う。

 まずい。今レーナとトトナが喧嘩すると勝てなくなってしまう。

 ただ、自分が止めると火に油のような気がする。

 どう考えても原因は自分ですよね……。


「ちょっと!!落ち着いて!!レーナちゃん!!大好きなレイジを倒した暗黒騎士とトトナちゃんが仲良くするのは確かに面白くないでしょうけど!!今は盾を作る事に集中して!!」


 争いになりそうなレーナとトトナを見てさすがにイシュティアが止める。


「うっ!!まさかイシュティア様にそんな事を言われるなんて!!ちょっと否定する所もありますが!!わかりました!!でも後で問い詰めさせてもらいますからね!!トトナ!!!」


 レーナはすごく怒っている。

 何だか胃が痛い。

 この戦いが終わったら後が怖いような気がする。

 しかし、その憂いも今からやる事に対して無事だったらの話だ。

 エクリプスを見上げる。

 今はエクリプスに集中しよう。


「今からエクリプスに突っ込みます!!自分が通る穴を開けて下さい!!」


「わかったわ!!」


 自分は魔法を発動して飛ぶ。

 レーナが作った魔法の盾の隙間から飛び出てエクリプスへと向かう。


「何をするつもりだ!!暗黒騎士!!血迷ったか!!」


 ザルキシスが叫ぶ。

 無謀なのはわかっている。

 だけどやらなければならない。

 弱っているベンヌを見る。

 光の上位精霊ベンヌはレイジが呼び出した精霊である。

 レイジは光の上位精霊を手に入れた。

 理由は自分に勝つためかもしれない。

 レイジは強くなろうとしている。

 追い越されるかもしれない。

 それは、とても怖い。

 怖くて怖くてたまらない。

 自分がクーナを手に入れて幸せを手に入れたのは勝ったからだ。

 クーナに限らず勝って無ければ誰も自分を見ようとはしなかっただろう。

 勝てない男を誰も愛さない。弱い奴は食われるだけだ。

 そして、負ければ全てを失うに決まっている。

 それはとてもみじめだろう。

 そんな思いは絶対に嫌だと思った。

 折角可愛いクーナを得られたのに失うなんて嫌だ!!

 だからこそエクリプスを手に入れなければいけない。

 上位精霊を自分のものにする!!

 レイジに出来て自分に出来ないなんて許されない!!

 これはエリオスのためでもジプシールのためでも、シロネの為でも無いんだ。

 何よりも自分の為に!!何よりも自分の為に!!

 何よりも自分の為に戦わなければならないんだ!!

 心の中に黒い炎が噴き出すのを感じる。


「エクリプス!!お前を喰ってやる!!!!」


 得意ではない精神魔法を駆使してエクリプスの心に接触する。

 そして、そのままエクリプスの口の中へと飲み込まれた。

 暗い闇の空間。

 エクリプスの力が自分の精神を喰らおうとするのを感じる。

 負けるものか!!逆に喰らってやる!!

 歯を食いしばる。

 絶対!!絶対!!負けるものか!!





◆知識と書物の女神トトナ


 目の前で巨大な竜の姿をしたエクリプスが暗黒騎士の姿に戻ったクロキを飲み込む。


「ちょっとトトナちゃん!!飲み込まれちゃったわよ!!」


 イシュティア様が私に慌てた声を出す。

 慌てているのはイシュティア様だけではない。

 黒髪の賢者チユキも王子のハルセスも軍神のイスデスも慌てている。

 私の隣にいるネルや猫達なんて大慌てだ。

 光の勇者も何をやっているんだと怒りの声を上げている。

 レーナだけは落ち着いているように見える。だけど、心の中まではわからない。


「がははははははは!!!馬鹿な奴!!!自らエクリプスに喰われよったわ!!!」


 死神ザルキシスの嘲笑。

 蛇の女王ディアドナも笑っている。

 邪神達も馬鹿にした表情で空を見ている。

 だけど、その喜びもすぐに終わるであろう事を私は知っている。

 クロキは必ず戻ってくる。

 私はそう信じている。


「はははは!!暗黒騎士は自ら死んだぞ!!光の勇者も倒れたままで戦えまい!!これで貴様達に勝ち目はないぞ!!エリオスの女神達を渡さなかった事を悔やむが良い!!」


 蛇の女王の目が光る。

 私達を絶対に逃がさないつもりなのだろう。

 だけど、逃げる必要があるのだろうか?


「蛇の女王よ!!光の勇者と違って暗黒騎士は戻ってくる!!レーナの光の勇者と一緒にしないで!!レーナの愛する男なんかよりもすごく強いのだから!!」


 私の言葉を聞いた光の勇者がぐはっと呻き声を出すのが聞こえる。

 彼には悪いがレーナに愛されたのが悪い。

 少し傷ついてもらおう。


「ふふふ。何かしらトトナ?いつも私を怖れて引きこもっている貴方にしては珍しわね?何だか私に喧嘩を売っているように聞こえるのだけど?」


 レーナが私の方を見る。笑っているようだけど、すごく怒っているのはわかる。


「別にそんなつもりは無い。本当の事を言っただけ、負けた貴方の愛する男と違いクロキは勝つ」


 レーナの方を見ずに白々しく言う。

 私のクロキは必ず勝つ。

 レーナの勇者よりも強いのだ。

 初めて会った時、クロキから私と同じ匂いがした。

 話して過去を聞いてみるとやはりそうだった。

 光の影に隠れてしまう者。

 眩い光を羨みながらも光になれない日陰者。

 それが、私とクロキの共通点だと思う。

 だけど、一つだけ違う点があった。

 私は光であるレーナと比べられるのを恐れて引きこもっていたのに対して、クロキは光に打ち勝とうと努力していた事だ。

 私はいつもレーナの影に隠れていた。

 生まれた時から誰よりも美しく、何でも出来たレーナ。

 レーナは子供の時から、私よりも遥かに優れていた。

 同世代で姉妹のように育てられ、いつも比較の対象だった。

 それでもレーナと仲良く出来ていたら気にならなかっただろう。

 しかし、レーナはとても意地悪だった。

 母や他の神の前では良い子で要領が良いから誰も気付かないけど、レーナはとても意地悪なのである。

 だから私はレーナから逃げるために引きこもるしか無かった。

 だって、どう考えてもレーナには敵わないのだから。

 そうして暗い影で本を読み、自分だけの世界にいたのである。

 だけどクロキは違う。

 勝てないとわかっていても、戦いから逃げなかった。

 そして、ついには輝くアルフォスにすら勝ってしまった。

 戦ったからこそ勝ったのだ。

 私にはクロキが眩しく見える。

 自ら輝く闇がクロキなのだろう。

 そんなクロキが負けるわけがない!!


「愛する男?誰の事を言っているのかわからないわね~。トトナ。私の愛する男が負けるわけが無いわよ!!」


 珍しくレーナが強がりを言う。

 しかし、そんな言葉も今はどうでも良かった。


「ふん!!何を言っている忌まわしき女神よ!!もはやベンヌも力尽きようとしている!!エクリプスが本気を出せばお前たちの作る壁などすぐに破壊できるはずだ!!ザルキシス!!何をしているさっさとベンヌを打ち消せ!!」


 ディアドナの怒声。

 確かにエクリプスが本気を出し。

 ザルキシスとディアドナの力を合わせれば私達が作った壁を破壊できるだろう。

 しかし、そんな事にはならない。


「わかっている!!ディアドナ!!しかし先程からエクリプスが言う事を聞かぬ!!何故だ!!」


 ザルキシスが慌てた声を出す。

 頭上ではエクリプスが激しく舞っている。

 しかし、それは苦しんでいるようにも見える。

 突然エクリプスが大きく口を開くと黒い炎を天に向かって吹き出す。

 黒い炎が空を覆う。


「おい、黒い炎を吐いたぞ!どういう事だ?!!」


 邪神の一柱が叫ぶと邪神達が慌てだす。

 誰が見ても明らかにエクリプスの状態がおかしいのはわかるからだ。


「黒い炎の中に誰かがいるぞ!!」


 別の邪神が黒い炎の中心を指差す。

 その黒い炎の中にいるのは漆黒の鎧を纏った暗黒騎士。

 当然クロキだ。

 エクリプスから吐き出されたクロキは黒い炎を身に纏い空に浮かんでいる。

 まるで、この暗天を支配しているかのようだった。


「何?!!エクリプスに喰われなかっただと?!!信じられん!!ええいエクリプスよ!!再び暗黒騎士を飲み込め!!」


 ザルキシスが叫ぶ。

 しかし、エクリプスはザルキシスの呼び声に応えない。

 エクリプスはクロキの身を守るようにその周囲を飛んでいる。


「馬鹿な?!!エクリプスの支配を奪ったというのか?!!」


 ディアドナの信じられないという悲痛な叫び。

 信じられないのはこの場にいるほとんどの者がそうだろう。

 光を喰らう者をもってしても喰らう事が出来ない者。

 その場にいる誰もがその事実に畏怖する。

 暗黒に輝くクロキは悠然と空に浮かんでいる。

 まさにその姿は暗黒の太陽だった。



用事があって金曜日に一泊で東京に行ってまいりました。土曜の夕方に帰り、それから執筆に入ったのですが、何とか日曜日に更新できました (´・ω・`)


最近、ポイントがいかに重要であるかという出来事があったりします。

今まで心が折れそうになるので、なるべくランキングが高い他の方の小説は読まないようにしていました。

だけど気になったのでいくつか読んでみたのですが、なぜ自分の作品が微妙と呼ばれるのかわかった気がします(*T▽T*)

全く面白く無いと言われるよりはましなのですが……。限界を突き付けられている気がするのですよ。

小説家になり書籍化のためだけに書いていたら、確実に筆を折っていたでしょう。


自分の10分の1以下しか書いていないのに読者の心をつかんで離さない。いくつもの連載作品で高ポイントを得ている人を見ると心が折れそうになるのですよ。・゜・(ノД`)・゜・。


頑張れ自分!!自分の面白いを突きつめるのだ!!


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