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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第7章 砂漠の獣神
135/195

中庭の猫達

打ち倒す者(メジェド)クロキ


 翌日になり自分はメジェドの姿へと戻る。

 既に日は高い。

 自分は今アルナックの中庭へと来ている。

 中庭は大変広く、砂漠の中にあるにも関わらず水と花が豊富だ。

 泉には色鮮やかなスイレンが咲き、目を楽しませてくれる。

 陽光の中を蝶が舞い、穏やかな空気を運ぶ。

 その穏やかな中庭で自分はメジェドの姿で鍛錬をする。

 布を被ったままだと戦いにくいからだ。

 それに戦っている最中に布がめくれる事があってはならない。

 特に下半身丸出しの状態でめくれれば、まいっちんぐな状態だ。

 おそらく、まだ誰にも見られていないはず。

 正体がばれるわけにはいかない。

 そうならないように布を被った状態で戦えるようならなけらばならない。

 昨晩飲んだお酒が体に残っているので、動きが鈍い。

 動きが鈍くなるなんて、本当に修行が足りない。

 積極的に動く事で酒精を消す。

 まだ、頭は痛いが毎日の鍛錬を怠ってはいけない。

 それに、どのような時でも平常心を保つ努力をするべきだろう。

 石畳の上をゆっくり動く。

 1つの動作にじっくりと時間をかける。

 重心を崩さず、すり足で動く。

 すると側にいるネルと猫が同じ動作をしようとする。

 足をゆっくりと交差し回転する。

 すると、ネルと猫も同じ動きをする。


「あの……。ネル王女。何をしているのですか?」


 自分が周りにレイジ達がいない事を確認して聞くとネルと猫達が可愛らしく首を傾げる。

 起きてから鍛錬をしようとすると、ネルたちも一緒について来たのだ。

 てっきり、トトナの側にいるものだとばかり思っていた。

 ちなみにトトナは昨晩無理をしすぎて部屋で寝ている。

 今日は鍛錬をやめて、トトナの側にいても良かったけど、トトナの方から駄目だと言われた。

 恥ずかしくて今日は顔を見る事ができないらしい。

 そのトトナの表情に萌えてしまったが、本当にダメそうだったので、外に出て鍛錬をする事にしたのだ。

 すると一緒に来たネル達が真似をしだしたのである。


「う~ん。クロキお兄さんがにゃにをしているのか気になったから真似したみたにゃ。新しい踊りかにゃ?」


 ネルが自分の本名を無邪気で言うので慌てる。


「あのネル王女。今はメジェドでお願いします」


「にゃ?!そうだったにゃあ。ごめんにゃあ」


 ネルが舌を出して謝る。

 その仕草は可愛らしい。


「そういえば、お兄さんはどうしてそんな格好をしているのにゃあ?脱いだ方が格好良いのにゃあ」


「えーっと、それは前も説明しましたが、正体を悟られたくないからです。光の勇者と自分は喧嘩をしてますので」


「えー?お兄さんの方が強いって聞いているにゃあ。だったら堂々としていれば良いのにゃあ」


 ネルがうんうんと頷く。

 ネルは猫のように見えるが獅子の女王の娘。

 獅子のように堂々としろとでも教わっているのだろうか?

 しかし、正体を見せるわけにはいかない。

 レイジと争えばシロネを助ける障害となる可能性もある。

 争う事で邪魔をするわけにはいかない。

 だから、別の説明が必要だ。 


「いえ、それが実はこの恰好が気に入っているのですよ。可愛いでしょう」


 自分は腰をふりふりする。

 おそらく、傍から見たら変態だろう。

 しかし、他に言い訳が思い付かない。

 当然ネルは微妙な顔をする。


「う~ん。面白いけど、ちょっと可愛くないのにゃあ。そうだ!!ちょっと待つのにゃあ!!」


 突然ネルが走る。

 後には自分と猫達が取り残される。

 どうしようか迷っていると、すぐにネルが戻ってくる。

 手に何かを抱えている。


「色々と持って来たのにゃあ!!これを付けると良いのにゃあ!!」


 そう言うとネルは自分の頭にその何かを付ける。


「あの……。これは……」


 ネルの持っている物を見る。

 その内の1つを自分の頭に付けたみたいだ。


「にゃはは!!これで、ちょっとは可愛くなったにゃあ」


 ネルが楽しそうに笑う。

 鏡が無いので現在の自分の姿がわからないが想像してみる。

 怪しいのは変わらないが確かに少しは可愛くなったかもしれない。


「確かに可愛くなったのかもしれません。ありがとうございます。ネル」


「気にしなくて良いにゃあ。みんな仲間が出来たと思っているのにゃあ」


「「「「にゃーーーー!!」」」」


 ネルが言うと猫達が一斉に鳴く。

 本当に無邪気だ。

 ネルは踊り飲んで食べて、気が付くと真っ先に寝ていた。

 おそらく、自分とトトナの昨晩の事に気付いていないだろう。


「ところで。昨晩はトトナんとどうだったのにゃ?」


 その質問にドキリとする。

 何て答えよう。


「……2人で楽しくすごしました」


 取りあえず無難に答える。

 少なくとも間違いでは無い。

 しかし、冷や汗が出て来る。 クーナの顔が浮かんでしまう。


「それは良かったのにゃあ!!トトナんはうまく行ったのにゃあ!!お母様の時もガンガン行って成功したから、きっとうまく行くと思ってたにゃあ」


 ネルが楽しそうに、にししと笑う。

 ヘイボス神と獅子の女王セクメトラの馴れ初めはセクメトラの方からガンガン行って夫婦になったらしい。

 ヘイボス神は子供の頃にナルゴルとの攻撃により、足が不自由になり背が曲がるというエリオスの神々の中でもっとも醜い姿になった。

 モデスと違い、女性を完全に諦め、鍛冶場だけが自らの世界として引き籠った。

 だけど、貴金属が豊富なジプシールをヘイボス神がたまたま訪れた時に、その技量と性格に惚れたセクメトラがガンガンアタックして男女の関係になったらしい。

 さすが獅子の女王だけあってかなりの肉食系だ。


「にゃはははは。トトナんが信頼するお兄さんならきっとピラミッドも取り戻せるのにゃ」


 ネルが笑う。

 取り戻せるかどうかわからない。

 しかし、トトナが自分を信頼するのなら、それに応えたいと思う。


「全力を尽くします。ネル。トトナの信頼に応えます。それに妖精猫ケットシー達とも約束しましたので」


 その言葉に嘘は無い。

 できる限りの事はするつもりだ。


「ありがとうにゃん!!もしうまくいったのならトトナんと一緒にネルもお兄さんを好きににゃるのにゃあ!!」


 そう言うとネルが抱き着き、頭をすりすりする。

 無邪気な行動だ。

 穏やかな気持ちになる。

 ネルが顔を上げる。


「えっ?」


 ネルの目を見た瞬間だった。

 一瞬だけ肉食獣が獲物を狙うような瞳に見えたのである。


「どうしたのにゃあ?」


「いえ……。何でもないですネル」


 気のせいだろう。

 ネルは無邪気に笑っている。


「さあ!!みんなで踊りの続きをするのにゃあ!!」


「「「「にゃーーーーー!!!」」」」


 猫達が一斉に鳴く。

 どうやら踊りに付き合う事になりそうだった。





◆黒髪の賢者チユキ


 ようやく、起きる気になる。

 それにしても良く寝た。

 黒檀の寝台には美しい模様の布団が敷かれ、私を優しく包んでくれた。

 すでに日は高いみたいだ。

 薄絹で遮られた窓からは陽光が柔らかく差し込んで来る。

 昨晩のお酒が抜けていなくて、体がだるい。

 蠍の女神ブルウルが薦めてくれたお酒は口当たりが良くて飲みやすいが、度数が高いみたいで後からじわりじわりと酔いが回り、途中でダウンしてしまった。

 気が付くと寝台の上で寝かされていた。

 イシュティアから借りた装飾品は外されている。

 レイジがしたのだろうか?

 それは、ちょっと問題だ。

 おそらく猫人の侍女がやってくれたに違いない。

 レイジはその後もイシュティアと一緒に飲んでいたみたいだ。

 あの後どうしたのだろう?

 会ったら聞いて見よう。

 寝台から起きると側のテーブルに食事と水差しが置かれている。

 私の為に用意されているみたいだ。

 用意されているのは薄く焼かれたパンに野菜と山羊のチーズと果物である。

 ジプシールといえども、食事の基本的な所は変わらないみたいだ。

 食欲がわかないので、果物だけいただく事にする。

 一口齧ると優しい甘さが口に広がる。

 前に食べたイチジクのような食感だ。


「うーん!!さて!!行くか!!」


 果物を食べ終えると私は背伸びをする。

 取りあえずレイジでも探すか。

 着替えた後で、部屋を出る。

 廊下を歩く。

 途中で猫人の侍女達とすれ違う。

 彼女達は会釈すると道を空けてくれる。

 とても忙しそうだ。

 この世界では猫の手も借りたいを何というのだろうか?

 そんな事を考えていると広い中庭に出る。

 中庭は広く、緑が茂り、泉から水が流れている。

 とても、砂漠の中とは思えない。

 少し歩いてみよう。

 そして中庭を歩いている時だった。


「げっ!!」


 思わず小さく声が出る。

 中庭の隅でメジェド(なまもの)と王女のネルフィティがいたからだ。

 メジェドにはどうしても苦手意識を持ってしまう。

 そのメジェドの足元にはたくさんの猫がいて、楽しそうに踊っている。

 何をしているのやら?

 そして、トトナの姿が見えない。

 別行動を取っているみたいだ。どうしたのだろう?

 隠れているのだろうか?

 昨晩の可憐な姿に心を奪われたハルセスや男神達が再びトトナが現れるのを待っている。

 それに気付いたので隠れているのだろうか?


「おや?光の勇者の仲間が来たのにゃあ?名前は何だったのかにゃあ?」


 ネルが私に気付きこちらを見る。


「チユキです。ネル王女。何をしているのですか?」


 私は自己紹介をする。

 ネルとはほとんど話していない。

 名前を覚えられていなくても仕方が無いだろう。


「見ての通り、ここでメジェドと踊っているのにゃん」


 ネルがそう言うとメジェドが腰をふりふりして踊る。

 おそらく布の下ではブルルルンが揺れているだろう。

 ……何を考えている私。

 昨晩の酒が抜けていないのだろうか?

 なるべく上を見よう。

 そこで私はメジェドの頭に付いている物に気付く。


「ネコミミ?」


 メジェドの頭には昨日と違いネコミミが付いていた。

 思わず、何で?!!!っと叫びそうになる。

 何で?ネコミミモードになっているのだろう?

 メジェドは相変わらず腰をふりふりして踊っている。

 頭が混乱してくる。


「どうしたのにゃあ?」


「えーっと。その……あの」


 ツッコミたい!!すごくツッコミたい!!!

 しかし、その言葉を飲み込む。

 ネルはジプシールの王女。無礼な事はできない。


「ああ?なるほど。わかったのにゃあ。これが欲しかったのにゃあ」


 メジェドのネコミミを見ていると、ネルが手に持っているものを私の頭に付ける。


「えっと?これは?」


 私は頭に付けられた物を触る。

 どうやらネコミミを模した飾りのようだ。


「チユキはメジェドのネコミミが羨ましかったのにゃーね。これでお揃いにゃあ」


 ネルがうんうんと頷く。

 ……そう私はメジェドのネコミミが羨ましかった。

 しかし、今の私もネコミミモードだ。

 ふふ、メジェド。これで負けないにゃん。


「って!!!ちがぁ------う!!!!」


 んなわけあるかーーーー!!!!

 とうとう叫んでしまう。

 私は頭を抱えて座り込む。

 ツッコミが追いつかない。

 ネルと猫達がどうしたのだろうと首を傾げる。


「急に座り込んでどうしたのにゃあ?チユキ?」


「いえ……。何でもありません。ネコミミありがとうございます。」


 何とか立ち上がる。

 すごく疲れる。


「どうしたんだ?!!何か大きな声が聞こえたが?!!」


 私の叫び声を聞いた誰かが駆けつけて来る。

 振り向くとレイジがこちらに来るのが見える。

 その後ろにはイシュティアとブルウル、それに綺麗なスフィンクスを初めとした獣人の女性達がいる。

 イシュティア達はレイジと一緒だったみたいだ。

 また、女の子達を引き連れている。


「どうした?!!チユキ?!!何かあったのか?ってネコミミ?!!!」


 レイジが私のネコミミを見て驚く。

 何やってんだという顔になっている。


「えーーと。特に何でもないわ」


 こほんと咳をする。

 イシュティアとブルウルが私を見て笑っている。


「うふふ。良く似合っているわよチユキ。ネルに付けられたみたいね」


「ネル王女。ネコミミを誰にでも構わず付けるのはよした方が良いかと思います。チユキは似合っていますが、似合わない者もいますので」


「わかっているにゃあ。ブルウル。でもメジェドとチユキには良く似合っているのにゃあ」


 ネルが胸を張って言う。

 この王女様は誰にでもネコミミをつけるようにしているのだろうか?

 するとレイジがきょろきょろしている。


「ネル王女?女神トトナはどこに?姿が見えないようですが?」


 おい、お前もトトナを待っていた口か?

 心の中でレイジに突っ込む。


「トトナんは昨日頑張りすぎたので部屋で寝ているのにゃあ」


 何を頑張ったのかは知らないがトトナはいないみたいだ。

 残念ねレイジ。

 心の中で笑う。


「それよりもレイジ君。イシュティアとブルウルとどこに行っていたの?」


 私はレイジを睨む。

 2柱の女神を連れて何処に行っていたのだろう?

 ちょっと気になる。


「ああ。それなら黄金のピラミッドに行っていたんだ」


 レイジがイシュティアとブルウルを見ながら言う。


「黄金のピラミッド?何でまたそんな所に?」


「それは光の上位精霊と契約するためよ。チユキ。レイジは強くなる方法を探していた。それを聞いたセクメトラが黄金のピラミッドに現れる光の上位精霊の事を教えたのよ。光の力を持つのなら契約できるのじゃないかとね」


 レイジに変わりイシュティアが説明する。

 この世界には地水火風光闇等の精霊が存在する。

 それぞれの召喚するにはそれぞれ事に生まれ持った才能が必要だ。

 数多の精霊達と仲良くなれるリノも光の上位精霊を呼ぶ事は出来なかった。


「ああ。そして、うまく行った。簡単だったぜ。チユキ」


 そう言ってレイジがにっと笑う。

 レイジは地水火風と言った基本的な精霊の召喚は全くできない。

 しかし、光の上位精霊には適性があったようだ。


「にゃんと?!ハル君でも無理な事をやりとげるとはすごいのにゃあ!!」


 ネルも驚く。

 ハルセスもレイジと同じく光の力を持っているらしいが、上位精霊とは契約が出来なかったみたいだ。

 悔しがる姿が見える。

 ふと、ネルの隣のメジェドが目に入る。

 メジェドはじっとレイジを見つめているのだった。


次回はクロキとトトナのいちゃいちゃから始まります。

実はレイジの修行編を書こうと思ってましたけど需要が無さそうなので、急きょネコミミの話になりました。批判されるかも……(´ω`。)


それにしても、9月24日から急にアクセスがいつもの5倍に増えてどうしたんだろうと疑問に思っていたら、日刊ランキングの27位に入っていたみたいです。そして、最終的に8位まで上がりました。

さすがにこれ以上の順位にはならないでしょうが、ランキングに入る事の凄まじさを目の当たりにしました。アクセスも10倍です。

去年の今頃は、

今日は3000人も見に来てくれたよヾ(*≧∀≦)ノ゛

と喜んでいたのが懐かしく思えます……。


最後に比音ちょこ様とドダメ様。嬉しいレヴューをありがとうございますm(。≧Д≦。)m

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