表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第7章 砂漠の獣神
121/195

アポフィスの蛇

◆死神ザルキシス


 転移の門をくぐり抜けると目の前には巨大な砂漠が広がっている。

 相変わらず殺風景な風景だ。

 赤い砂の岩肌と砂だけのこの地で見るものは特に無い。

 このアポフィスの砂漠は同じ砂漠地帯のジプシールの南にあり、ラミアやゴーゴンにバジリスクといった多く蛇の一族が生息している。

 そして、蛇の女王ディアドナの支配領域でもある。

 少し歩くと突然目の前に宮殿が現れる。

 アポフィスの離宮。

 エリオスの奴らに抗するために結成された、我らアポフィス同盟が誕生した場でもある。

 この結界によって隠された離宮には今蛇の女王ディアドナが滞在しているはずだ。

 宮殿にたどりつきゴーゴン族の女戦士に案内され宮殿の中を歩く。

 完全に光が遮断された廊下は暗い。

 しかし、感覚が優れた蛇の女王の眷属達に光は必要無い。

 ゴーゴンは迷うことなく廊下を進む。

 案内された部屋に入る。

 部屋は広く壁には綺麗な装飾が施されている。

 まさに女王の部屋という所だろう。

 そして、その女王ディアドナは宮殿の大広間が見える大きな窓の側で外を眺めている。


「戻ったようだねザルキシス。貴様の息子は見つかったのか?」


 ディアドナはこちらを振り向かずに言う。


「いや、見つからぬ。もしやすると既に何者かの手にかかって殺されているのやもしれぬな」


 夢の眠りの神ザンドはこのザルキシスの息子だ。

 その不肖の息子から連絡が途絶えて久しい。

 ザンドは連絡が途絶える前に重要な情報を伝えてきた。もしや、さらに重要な情報を手に入れてそれをエリオスの者共に感づかれたのかもしれない。

 ザンドは大した力を持っていない小神だ。

 アルフォスにでも見つかれば瞬殺されるだろう。

 いや、アルフォスで無くてもトールズ程度でもやられる程だ。だから、すでに死んでいると思った方が良いだろう。

 溜息を吐く。

 ザンドは惜しく無いが、情報は惜しい。


「まさか裏切ったと言う事はあるまいな?」


 ディアドナの懸念に笑う。


「それは、ありえんな。エリオスの者共が例え嘘でも奴を仲間にするとは思えん」


 エリオスの者共は我らを嫌っている。

 例え嘘でも仲間にしたいとは思うまい。


「確かにそうだな。ではやられたという事か?気の毒だったなザルキシス」


 その言葉に首を振る。


「そうでもない。奴には最初から期待などしていない。それよりもディアドナ。さっきから何を見ている」


 先程からディアドナはこちらを見ようとしない。

 窓から下に見える大広間を見ているようだ。

 そういえば大広間から歓声が聞こえている。

 大広間で何かをしているようだ。

 ディアドナの側に行き窓の外を見る。


「これは何をしているのだ? ディアドナ?」


 窓から大広間を見降ろすと2名の男が戦っている。

 歓声はそれを見ている者達から上がっている。

 戦っている男の片方はラヴュリュスだ。

 牛頭に6腕の姿を見誤るわけが無い。

 そして、ラヴュリュスと戦っているのは長い槍を持った人間の子供だ。

 もちろん人間の子供では無い。真実の姿は別にあり、今はその姿を見せていない。

 名前は蛇の王子ダハーク。蛇の女王ディアドナの息子でもある。

 そのダハークがラヴュリュスと大広間で戦っている。

 ラヴュリュスが両刃の大斧を振るい。ダハークは自らの身長の三倍以上の長さの槍を振るう。

 その攻防に周囲にいる者達は歓声を上げながら眺めている。


「ダハークとラヴュリュスと手合せをしているのだよ。ザルキシス。ふふふ見るが良い。あのラヴュリュスを相手に見事な戦いぶりではないか?」


 ディアドナが嬉しそうに言う。

 確かにその通りだ。

 ダハークの攻撃にラヴュリュスは防戦一方だ。

 ラヴュリュスも反撃をするが、ことごとく躱されている。


「おい!おい! どうしたラヴュリュスのおっさんよう!! そんなんじゃ俺を捕える事はできなぜ!!!」

「くそ!! この若造が!!」


 ラヴュリュスは自慢な斧だけでなく他の腕に持つ槍や剣を駆使するが。

 ダハークには届かない。

 それにしても見事な動きだ。

 ラヴュリュスはここにいる者達でも上位の強さを持つ。そのラヴュリュス相手にここまで戦えるとは、よっぽどアルフォスに負けた事が悔しかったようだ。


「そこまで!! 両者ともやめよ!!」


 ディアドナがダハークとラヴュリュスを止める。

 さすがにこれ以上手合せをすればどちらも本気になりかねないからだろう。


「俺の勝ちだな。ラヴュリュスのおっさんよ」


 ダハークが勝ち誇ったように言う。


「はん!!何を言ってやがる!! 手合せというから手加減をしてやったんだ!! そもそも俺様はまだモロクの火を使っていねえ!!」


 ラヴュリュスが鼻息を荒げて言う。

 確かにラヴュリュスの奥の手であるモロクの火は使っていなかったようだが、それ以外では手加減できるような性格ではない。


「ああ、そうかい。なら次は本気でやるか?おっさん? 次はモロクの火を使ってみろよ」


 負けを認めないラヴュリュスにダハークがいらだちの声を出す。


「ふん!! 若造が!!」


 両者がそれぞれ武器を構える。

 このままでは本当の殺し合いが始まるかもしれない。

 それまで、歓声を上げていた周囲の者達がただならぬ様子に静かになる。


「やめぬか!!! 馬鹿者が!!!!!!!!!」


 その静寂をディアドナの怒声が破る。

 横を見るとディアドナの髪が逆立ち、瞳が輝いている。

 ディアドナの邪眼は神族ですら畏怖させる。

 ディアドナの眼光にさらされたダハークとラヴュリュスの動きが止まる。


「ラヴュリュスよ。お前が真に倒すべき相手は誰だ。貴様の住処を奪いとった憎い相手は?」


 ディアドナが窓から身を乗り出し、空中を浮かびながらゆっくりと大広間に降りながら言う。


「ああ!!わかっている!! あの光の勇者を奈落の底に叩き落としてやる!!」


 ラヴュリュスがふんと言ってダハークに背を向ける。


「ダハークよ。貴様にピサールの毒槍を授けたのは、つまらぬ喧嘩をさせる為では無い。お前の真の相手は誰だ?」


 ディアドナがダハークに向かって言う。

 ダハークの持っているピサールの毒槍は元々ディアドナの武器だ。

 血と戦いをいつも求めていて、その熱は大地を溶かすほどで、いつも氷につけてある魔法の槍をディアドナが授けたのは憎きエリオスの者共を倒すためだ。

 決してつまらぬ喧嘩をさせる為では無い。


「ああ、わかっているぜ母上!! あのいけすかねえアルフォスの綺麗な顔をずたずたに引き裂く!!」


 ダハークが悔しそうな顔をする。

 ダハークの言葉に周囲の者達の様子が変わる。

 その様子はまるで何かに怯えているようだ。

 エリオスの歌と芸術の神にして白麗の聖騎士アルフォスの名はエリオスに属さない神々にとって忌まわしいものだ。

 美しく、多くの神々が恋い焦がれる、ほとんどの女神達の愛を得ている事を妬ましく思っている者は多い。

 しかし、いくら妬ましくても手を出す事はできない。

 なぜならアルフォスは美しいだけでなく、とんでもなく強いからだ。

 見た目に騙されて返り討ちにあった者は多いのである。

 そして、ダハークもまた過去にアルフォスに敗れた。

 蛇の執念で何とか生き延びたが、しばらくは動く事も出来なかったと聞く。

 それ以来ダハークはアルフォスに復讐するために自らを鍛えていたのだ。


「今度こそ負けねえ!! あの無敗のアルフォスに俺が最初に土を付けてやる!!」


 ダハークがピサールの毒槍を掲げて叫ぶ。


「残念ながら、それは無理ですね」


 どこからか声が響く。


「誰だ!! それにどういう意味だ!!」


 ダハークが声の主を探そうと周囲を見る。

 声の主はすぐに見つかった。

 なぜなら、その者は自ら姿を現したからだ。

 姿を現した者は赤い外骨格を持ち、赤い毒の尾を持っている。

 両肩の後ろには巨大な二つの鋏が翼のよう広げられている。

 赤い蠍神ギルタル。

 それが、この者の名である。

 妹のブルウルと共に蠍人ギルタブルウル達に崇められる神でもある。

 ギルタルは蛙の女神ヘルカートに誘われて光の勇者を倒しに行っていたはずだ。

 いつ戻ったのだろう?


「おおギルタルか。光の勇者はどうであった? 噂通りの強さなのか?」


 ディアドナの眼光がするどくなる。

 光の勇者は女神レーナの恋人だ。

 つまり、エリオスに加わった新たな戦力である。

 ディアドナとしても気になるのだろう。


「中々の強さでしたよ。おそらく噂通りで間違いありませんね。我らが盟主」


 ギルタルが恭しく礼をする。

 その姿はとても様になっている。相変わらず気障な男だ。


「待て!!ギルタル!! 先程の言葉はどういう意味だ!!!」


 突然ダハークが両者の話を遮りギルタルに槍を向ける。


「言った通りの意味ですよ。若君。貴方がアルフォスに最初に土を付けるのは不可能です」


 ギルタルはとぼけたように言う。


「俺ではアルフォスに勝てないと言うつもりか!! ギルタル!!!」


 その言葉にギルタルは首を振る。


「そういう意味ではありませんよ。王子。貴方が最初にアルフォスに土を付けるのは無理です。なぜならすでにアルフォスを負かした者がいるからです」

「何だと?!!!」


 ダハークの驚く声。

 そのギルタルの言葉に驚いているのはダハークだけではない。

 周囲の者達も驚いている。

 アルフォスはこれまで無敗だと聞いている。

 もしやするとエリオスの頭目であるオーディスよりも強いかもしれないと噂されている。

 そのアルフォスを負かした者がいるならば驚きだ。


「誰だ!! 誰がアルフォスを負かしたんだ!! 畜生!! 俺が最初に奴を打ち負かしてやるはずだったのに!!」


 ダハークが心底悔しそうに叫ぶ。


「アルフォスを負かしたのは最近噂の暗黒騎士ですよ。ダハーク。彼がアルフォスを打ち破りました」


 ギルタルの言葉に驚く。

 魔王モデスに仕える最強の暗黒騎士。

 かつて、人の住む地であった事がある。

 あの暗黒騎士にそれほどの力があるとは思わなかった。

 暗黒騎士の名を聞いてラヴュリュスもまた悔しそうな顔をする。

 光の勇者同様、暗黒騎士もラヴュリュスの憎い敵だからだ。


「暗黒騎士だと!! そいつが何者か知らねえが!! 俺の獲物を横取りした事を後悔させてやるぜ!!!」


 ダハークが叫ぶ。

 今にも飛び出していきそうだ。


「待て!! ダハークよ!! あの腑抜けのモデス達を相手にするのは後だ!!」


 しかし、ディアドナが止める。


「何言ってんだ? 母上よう? いずれは魔王をも倒すつもり何だろ? だったら今でも問題無いはずだ」


 ダハークは不満そうだ。


「駄目だ。暗黒騎士は後回しにするのだ。ダハークよ。まずはエリオスの者共や、我らに組しない者共を相手にすべきだ」


 そう言うとディアドナの眼光が鋭くなる。

 邪眼に睨まれたダハークが大人しくなる。

 ディアドナは例え我が子であっても逆らう者には容赦はしない。

 その事をダハークは良くわかっているのだ。


「くっ!! わかったぜ母上!! 暗黒騎士は後回しにする!!」

 ダハークが不満そうだが、母親には逆らえず渋々承諾する。


「良い子だね。ダハーク」


 ディアドナが笑う。


「だがよ、母上。もし暗黒騎士がこちらに攻めて来たなら戦っても良いよな?」


 暗黒騎士がこちらにわざわざ攻めて来るとは思えないが、ダハークが母親に対するせめてもの反抗をする。


「まあ、それならば良いだろう。その時は存分に戦うが良いぞ。ダハーク」


 ディアドナのその言葉を聞いたダハークが笑う。


「それを聞いて安心したぜ。アルフォスを破った暗黒騎士か? 一体どんな奴なんだろうな?」


 そう言ってダハークはナルゴルの方角を見るのだった。



今日から再開です( `・ω・´)


7月2日に試験を受けたのですが……。駄目っぽいです・゜゜・(≧д≦)・゜゜・

2ヶ月も小説を書くのを我慢して勉強したのにこの様ですよ。

おかげで、この一週間落ち込んでいました(T▽T;)


しかし、落ち込んでばかりもいられません。この悔しい思いを小説にぶつけようと思います。

次話はなるべく早くあげたいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ