竜の覚醒
◆暗黒騎士クロキ
「どうだ!!暗黒騎士!! 近づかなければ僕の勝ちだ!!」
アルフォスが叫びながら矢を射る。
「うおう!!!」
自分は身を反らして矢を避ける。
矢が当たった庭園の床が爆発して衝撃波が足元から伝わってくる。
どれだけの魔力を込めているのだろう?
一矢でも食らえば大ダメージに違いない。
アルフォスは先ほどから近づかず遠くから弓矢で攻撃してくる。
はっきり言ってズルい。
確かに近づいてくれなければこちらの剣は届かない。
何とか距離を縮めるしかないだろう。
しかし、周りがそれをさせてくれない。
周囲を見ると水晶のような氷の鎧で武装した雪の乙女達が空を飛んでいる。
彼女達は自分がアルフォスに近づこうとすると氷の槍を使い邪魔してくる。
そのため彼女達を排除しようとすると、今度はアルフォスが弓矢で牽制してくる。
かなり、不利な状況だ。
そして、生半可な攻撃ではアルフォスや雪の乙女達はすぐに回復してしまう。
やはり、この結界を破壊するしかないのかもしれない。
自分の中にいる竜達の力を目覚めさせれば可能だろうけど、この力はまだ制御できない。できれば使いたくない。
「いい加減に僕の矢を受けたまえ!!暗黒騎士!!!」
空中から矢を放つアルフォスが馬鹿な事を言う。
矢を受けろと言われて受ける奴がいるものか。
自分は水晶庭園を走り回り、矢から逃れる。
「ちょっと逃げるな暗黒騎士!!」
「大人しく矢を受けなさいよ!!」
「バーカ! バーカ!!」
「お願いだから! アルフォス様に勝たせてあげてよ!!」
空船の美女達が無茶な事を言う。
誰がやられてたまるか!!
「何?!!!」
何も無かった所に突然に巨大な氷の壁が現れて行く手を塞がれる。
雪の乙女の仕業かどうかわからない。しかし、この空間はアルフォスにとって有利に働く。
突然壁が現れても不思議ではない。
少しだけ油断した。
「これで終わりだ暗黒騎士!!」
叫び声と共にアルフォスが矢を放つ。逃げ場は無い。
「こなくそ!!!」
自分は魔剣に魔力を込めると矢を打ち返す。
「馬鹿な!! 矢を打ち返しただと!! ぐわあっ!!!」
今度は自分では無くアルフォスの方が驚きの声を出す。
打ち返された矢は左肩に命中して、空から引きずり落とす。
飛び道具対策のために編み出したこの技は実戦で使うのは初めてだったりする。だけど、うまくいった。
矢を受けたアルフォスが庭園の床でのた打ち回る。
どれだけヤバい魔法を込めていたいたのだろう?
自分が受けていたらと思うとゾッとする。
空船から聞こえてくる美女達の悲鳴。
アルフォスは矢を受けたダメージで中々起き上がれないようだ。
今のうちに叩く。そうでなければ次は矢を打ち返せないかもしれない。
自分は矢を打ち返した時の衝撃で崩した体勢を立て直すと、前傾の姿勢を取り一気に移動する。
空間を縮める事で相手との距離をゼロにする。キョウカと一緒にいたカヤが使った縮地という技である。
しかし、アルフォスの方へと向かおうとする自分の正面から強烈な吹雪が襲い掛かる。
「な?!!雪の女王!!」
雪の女王から放たれたオーロラ色に輝く吹雪が自分の行く手を遮る。
その間にアルフォスが起き上がろうとしている。
「させるか!! 斬撃よ空間を飛び!! 敵を斬り裂け!! 飛燕刃」
剣に魔力を込めて斬撃を飛ばす。
この技は飛距離が短いが、この距離なら届くはずだ。
斬撃は吹雪を斬り裂きながらアルフォスへと真っすぐ飛ぶ。
「ぐわああああ!!!!」
アルフォスの右腕から血しぶきが飛ぶ。
しかし、アルフォスを倒すには浅かったようだ。
アルフォスは右腕から血を流しながら自分から距離を取る。
「やってくれたなああ!! 暗黒騎士!!!」
起き上がったアルフォスの顔がすごい形相で睨んでくる。
最初に見せた貴公子の姿は捨てたようだ。
傷はすぐに治るかもしれないがダメージを受ければ痛みは残る。
その痛みがアルフォスの淡麗な顔を歪ませている。
「剣でも弓でも倒せないなら!! 僕の最大の魔法で仕留めてやる!!」
アルフォスが浮かび上がる。
その体がオーロラ色に輝く。
いや、輝いているのはアルフォスだけではない。天空のオーロラのもまた輝きを強めている。
鏡面のような庭園の床が天空のオーロラを写し、輝く。
「な?!!なんだこれ?!!!」
オーロラの輝きが自分に纏わりつくとその部分の鎧が凍りつく。この鎧はヘイボス神が作った特別製だ。凍りつくはずがないはずなのにだ。
それに先程から強い圧力が自分に押しつぶそうとしている気がする。
まるで空間が縮まっているような感じだ。
「どうだい!! この水晶庭園の魔力の全てを受けている気持ちは!! 魂すら凍りつかせ砕く!! 僕の最大の魔法は冷気の耐性を持つ者だって耐える事は不可能なのさ!!!」
アルフォスが高らかに笑う。
空間が縮まりオーロラの輝きが自分に収束している。
水晶庭園の全てが自分に向かっているようだ。
足元が凍り、先ほどから震えが止まらない。
肉体だけでなく、精神すら凍りつくかのようだ。
精神攻撃を受けた竜達の力が目覚めようとしているのがわかる。
この魔法はマズイ。
「永遠に溶けない水晶の牢獄で眠るがいい!! 暗黒騎士!!!」
アルフォスの笑い声と共に自分の体が凍りついた。
◆魔界の姫ポレン
空のオーロラが消えて、青空が広がっている。
目の前には巨大な氷の柱、いや光り輝く水晶の塔がそびえ立っていた。
アルフォス様の作った水晶庭園はクロキ先生を凍りつかせるために全ての魔力を使い果たして消えた。
雪の女王と雪の乙女達も魔力を使い果たしたのかもういない。
ただ、アルフォス様だけが空中を飛んでいる。
「はははははは!! 僕の勝ちだ!! 褒めてあげるよ暗黒騎士!! 僕にこの魔法を使わせたのだからね!! この美しい墓標で永遠に眠りたまえ!!!」
アルフォス様の笑い声が天空に響く。
それを聞いた美女達が喜びの声を上げる。
「やった! やった! アルフォス様の勝ちよ!!」
「そうよ! 最後に勝のはアルフォス様に決まっているわ!!」
「そうそう! 悪は滅ぶ運命にあるのよ!!」
「アルフォス様―! カッコ良い―――!!!」
美女達が喜ぶのとは裏腹に私の気持ちが沈んでいくのがわかる。
「ああ……。ポレン殿下……。閣下が……。閣下が……。大変なのさ」
ぷーちゃんがあわあわと慌てて私に言う。
いや、慌てているのは私も一緒だ。
「あわわわわわわわ!! しっ師匠!! 先生が! クロキ先生が!!!」
私もまたクーナ師匠に慌てて言う。
しかし、師匠は全く慌てていない。
「ふふ、アルフォスの勝ちのようですね魔女よ。暗黒騎士はアルフォスの魔法で凍りつきました。貴方達の負けです」
ミューサが勝ち誇ったように師匠に言う。
その後ろには美女達の何名かが付いて来て、私達を見下すように見ている。
美女達の顔は勝ち誇っている。
すごく悔しい。
「ふん。愚かだな、本当に勝ったとでも思っているのか?」
しかし、師匠から放たれた言葉は意外だった。
「何を言っているのですか!魔女よ!! アルフォスの最強の魔法は肉体だけでなく魂すらも砕くのですよ!! 暗黒騎士は水晶の牢獄で永遠の眠りについたはずです!!」
ミューサが声を荒げて言う。
しかし、師匠は落ち着いて笑っている。
「それはどうかな? 聞こえないか? あの水晶の塔から響く竜の咆哮が? クーナの耳にははっきりと聞こえているぞ」
師匠がそう言うとミューサと美女達が水晶の塔を見る。
「何……?あれ……?」
美女の1人が呟く。
そこで私も気付く。
水晶の塔が震えている。
そして、振動するたびに中から唸り声のようなものが聞こえて来る。
「ばっ馬鹿な?! 僕の最大の魔法を受けてなお生きているというのか!!」
アルフォス様が絶叫する。
水晶にひびが入る。
そして、その瞬間だった。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
天を揺るがす咆哮が聞こえると水晶が完全に割れて、中から黒い炎が噴き出す。
「そんな!! ありえない!!!!」
空中を飛ぶアルフォス様が砕かれた水晶の塔から吹き上げてくる黒い炎を見て叫ぶ。
炎は天空に吹き上がると広がり青空を黒く染め上げて行く。
「ちょっと! 何あれ?!!」
美女が空を指差す。
天空を覆い尽くす黒い炎の中から巨大な何かが見える。
それは巨大な黒い竜だった。
あまりにも巨大すぎて、この空船が小舟に見えるぐらいだ。
黒い竜が翼を広げると黒い炎が体から吹き出し、青空を黒く染め上げて行く。
黒い竜が翼を羽ばたかせると空船が激しく揺れる。
まるで嵐の中の小舟のようだ。
美女達が悲鳴を上げてそれぞれ甲板のどこかに掴まる。
「この化け物がああ!!!!!」
アルフォス様が巨大な竜に矢を放つ。
しかし、矢は黒い炎により一瞬で消されてしまう。
黒い竜が煩わしい虫を払うように前足を振るう。
アルフォス様が吹き飛ばされる。
「ぐわあああああああ!!!」
「アルフォス!!!!」
アルフォス様とミューサの悲痛な叫び。
アルフォス様は巨大な竜の一撃を受けて地面へと叩きつけられる。
「なっ何なのですか?! あの竜は?! 答えなさい魔女よ!!」
ミューサが師匠を睨む。
「何だと?あれはクロキに決まっているぞ。クロキの中に眠る数十匹の竜の力が解放されたのだ。クーナも初めて見るがこれ程とはな。クロキは自分でも制御できないから使いたがらないが、これはすごい! ははは! すごい!! すごいぞクロキ!!!」
師匠が楽しそうにはしゃぐ。とても嬉しそうだ。
「いやあああああ! アルフォス様ああああ!!!!」
美女達の悲鳴で空船の外を見ると、巨大な竜が地面に叩きつけたアルフォス様に追撃をしている。
アルフォス様は何とか逃れようとするが避けきれず吹き飛ばされる。
空中に飛ばされたアルフォス様を竜が再び地面に叩きつける。
その様子はまるでもてあそんでいるみたいだ。
それを見ている美女達が悲鳴を上げ、泣き始める。
「やっやめさせなさい!! 魔女よ!! 貴方達の勝ちです!! 早くやめさせて!! お願い!! アルフォスが死んでしまう!!」
ミューサが師匠の前に座り込み懇願する。
確かに私も止めて欲しい。
美男子は世界の宝。アルフォス様を失うのはもったいない。
だけど、師匠はミューサの様子を見て冷たく笑う。
「はあ? 何を言っているのだ? 何故クーナが止めねばならない? それよりもお前は自らの心配をするのだな!!!」
そう言うと師匠は立ち上がるとミューサを蹴り飛ばす。
師匠は立ち上がると大鎌を取る。
「そろそろ頃合いだ! ブス共! その絶望した顔は中々愉快だぞ! その表情のまま首を掻き斬ってやろう!!」
「なっ!!!」
ミューサが恐怖の表情を浮かべ後ろに下がる。
師匠の様子に気付いた美女達が悲鳴を上げる。
慌てて何名かの美女達が武器を取る。
「ちょ!ちょっと!! 師匠!! 先生は勝負が終わるまでは大人しくしてなさいって言ってましたよ!!」
私は師匠を引き留める。
「何を言っている? ポレン? 勝負はクロキの勝ちで終わっているぞ。先程ミューサもそう言っていただろうが」
あっ?そうだった!!
駄目だ止められそうにない。
この性格の悪い美女達は好きに慣れないが殺す程では無い。
どうしようかと迷う。
この中で師匠に敵う者はいなさそうだ。このままでは虐殺が始まる。
美女達の顔が恐怖に染まっている。
師匠が大鎌を持ち近づく。
「待ちなさい!!!」
突然声がする。
そして、声をした方を見た瞬間だった。
私は目を奪われる。
そこにはとても美しい女神がいた。
いつの間にか別の空船がこの空船に横付けされていた。
女神はその空船の甲板からこちらを見ている。
明るくキラキラと輝くような髪に、透けるような白い肌。服の上からでもわかる豊かな胸、だけど腰はとても細い。
顔の造形は完璧で、綺麗な瞳はとても力強い。
見た瞬間その存在感に圧倒される。
それは他の美女達も一緒で全員がその女神を見ている。
一瞬で場の空気を支配してしまった。
何者だろう?
「レーナ様……」
美女の一名が呟く。
「レーナ様だわ! レーナ様が来てくれたわ!!」
「レーナ様! レーナ様が助けに来てくれたわ!!」
「レーナ様! レーナ様!!」
「レーナ様が来てくれた! これで勝てる!!」
美女達が喜びの声を出す。
この女神が知恵と勝利の女神レーナ?初めて見た。
アルフォス様の妹でこの世界でもっとも美しいとされる三美神の一柱。確かに噂に劣らない美しさだ。
その女神レーナがこちらの空船へと乗り込んで来る。
「レーナ! 何しに来た! 邪魔をするのならお前でも許さないぞ!!」
師匠がレーナを睨む。
なぜだろう?改めて見ると師匠とレーナは良く似ている。
「悪いけど大人しくしてくれる? クーナ」
レーナが掌を師匠に向ける。
その途端、師匠が跪く。
「おま……。クーナの体を……。動け……」
師匠は苦しそうにレーナを睨む。
「本物である私なら貴方の動きを封じるぐらいならできるわ!! 大人しくしていなさい!! クーナ!!!」
レーナが勝ち誇ったように言う。
なんてとんでもない女神だ。師匠を一瞬で動けなくしてしまった。
「レーナ様! 悪魔達が近づいています!!」
レーナのお供の天使が報告する。
後ろを見ると飛竜に乗ったデイモン達が近づくのが見える。
「こちらから手を出しては駄目よニーア。大人しくこの船に乗せて上げなさい」
レーナがそう言うと天使が驚く。
良かった戦うつもりは無いようだ。
「殿下――! ポレン殿下――!!!!」
デイモン達がこの船に乗り込む。
「殿下! ご無事でしたか!!!」
女性のデイモンが私の前で跪く。
「グゥノ。そちらが手を出さないのなら、こちらも手出しはしません。大人しく見ていなさい」
レーナがデイモンを睨んで言う。
「なぜ? 私の名を?しかし、殿下がいる以上はこちらも無理は出来ない……」
名前を呼ばれたデイモンが驚いて呻く。
なぜ、レーナはデイモンの名を知っていたのだろう?
「レーナ! アルフォスが! アルフォスが!!!」
ミューサがレーナに縋り付く。
アルフォス様は吹き飛ばされ、黒い嵐の中を木の葉のように舞っている。
巨大な黒い竜となったクロキ先生はそんなアルフォス様をもてあそんでいる。
「まさか……。まさか……。暗黒騎士がこんな力を隠しているなんて……」
ミューサが泣きながら、訴える。
私もびっくりだ。
まさか先生にこんな力があったなんて、師匠が余裕なのも頷ける。
先生が最初からこの力を使っていたら、簡単に勝負がついていたに違いない。
「あれでも力を抑えてくれている方なのよ……。ミューサ。この子達がいるからでしょうね。だけど、いつまで抑え込めるかわからない。このままだと、まずいわねえ……。全くアルフォスも世話がやける」
レーナが溜息を吐く。
「何をするつもりだ……。レーナ。折角クロキが本気を出そうとしているのに……。それを邪魔するつもりか……」
師匠が苦しそうにレーナに言う。
「まあ、確かに私も本気を見てみたいわね。でも、それだとこの辺り一帯は死の大地に変わるでしょうね。それはちょっとやりすぎ。だから止めさせてもらうわよ」
レーナがクロキ先生を見て微笑む。
「危険ですレーナ様! あのような化け物を止めるなんて! 無理です! 逃げましょう!!」
天使が叫ぶ。
私も無理だと思う。先生が咆哮するたびに恐怖が内側から湧きだして来る。
美女達の何名かが恐怖のあまり腰を抜かして、中には気絶している者もいる。
さらには漏らしている者もいるぐらいだ。正直私もおしっこちびりそうだ。
その先生を止めるなんて無理としか考えられない。
「何を言っているのかしらニーア? 私になら止められるわ! アルフォスの北風では駄目! 彼を抑えられるのは太陽である私だけよ! 見てなさい!!」
そう言うとレーナは船から飛び出す。
レーナは黒い嵐の中を飛び地面に叩きつけられたアルフォス様を守るようにクロキ先生の前へと行く。
「馬鹿な!!自殺行為だ!!」
女性のデイモン達が叫ぶ。
巨大な竜となったクロキ先生に比べてレーナは豆粒程の大きさでしかない。
誰が見ても自殺行為だ。
しかし、レーナの体が光り輝いた瞬間だった。
巨大なクロキ先生の動きが止まる。
それは信じられない光景だった。
「嘘……。竜が鎮まった……」
美女の一名が呟く。
それは信じられない光景だった。
レーナの輝きが増すごとにクロキ先生の動きが小さくなる。
竜の咆哮も弱弱しくなり、大人しくなる。
「あああ!!竜が!!竜が!!鎮まっていく!!」
「すごい……。レーナ様……。あんな怖ろしい竜を鎮めるなんて……」
「まるで、太陽のようだわ!! まさに光の女神!!!」
「なんて神々しい御姿なの……」
「美しい光……。アルフォス様を助けるために危険を顧みないなんて」
「ああ!! レーナ様!! レーナ様!!」
美女達がその光景を見て感動している。
中には涙を流している者もいる。
確かにすごい。
巨大な竜と化したクロキ先生を小さな体で鎮めている。
彼女は怖ろしくないのだろうか?
「どっどういう事なのさ?! 閣下が鎮まっているのさ?!!!」
ぷーちゃんが驚いた顔をして言う。
私も同じだ。どうやってクロキ先生を抑え込んでいるのだろう。
「不思議な事ではないぞ……。クロキの中に眠っていた竜達の破壊衝動を別の強力な本能を目覚めさせる事で抑え込ませているのだ……。レーナならば、それは可能だ……」
クーナ師匠が喘ぐように言う。
まだ、体が不自由みだいだ。
しかし、別の強力な本能とはどういう事だろう?
ぷーちゃんも不思議そうな顔している。
「それにしても……。おのれ……レーナ。折角クロキが本気を出したというのに……」
クーナ師匠はとても悔しそうだ。でも私にはこれで良かったと思う。
さすがにこの辺り一帯を焼き尽くすのはやりすぎだ。
黒い竜の体が黒い炎に包まれて小さくなっていくのがわかる。
見ると空を覆っていた黒い炎が収束して青空が戻っていく。
完全に戻った青空に残ったのは暗黒騎士と光の女神。
クロキ先生達が地上へと降りていく。
地上には傷つき横たわったアルフォス様がいる。
倒れた聖騎士とそれを見下ろす暗黒騎士。
勝負がついた瞬間だった。
これにて決着。
アルフォス戦はちょっと長かったかなと思っていますm(_ _;)m
ちなみにアルフォスとレーナは北風と太陽もモチーフにしていたりします。