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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第6章 魔界の姫君
109/195

純白の聖騎士

◆赤熊の戦士団団員レムス


「くそ!!何で俺たちが後発なんだ?! レムス?」


 トルクスが僕の方を睨み文句を言う。

 トルクスは力が強いのでとても苦しい。


「そんな事を言われても……、そう決まったのだから仕方がないじゃないか……」


 僕は首を横に振って答える。

 なぜトルクスが怒っているのは魔物のいる森への突入の順番だ。

 僕達赤熊の戦士団は他の戦士団の後発になってしまったのである。

 戦士にとって先陣を行く事は名誉な事だ。そのため僕達赤熊の戦士団は誰よりも先に魔物と戦う事を誇りにしていた。

 しかし、それは他の戦士団にとっても同じことである。

 どの戦士団が先陣を切るのかで喧嘩になってしまったのである。

 そして、黒髪の賢者様の仲裁と話し合いで進む順番が決められた。

 その結果、僕達は最後に突入する事になってしまったのである。

 その事を赤熊の戦士団の、特に若い団員達は不満に思っているのである。

 団を代表して僕はカリスとアルカス団長と共に話し合いに参加した。

 カリスや団長に不満をぶつけるわけにはいかないから、矛先は僕へと向けられる。


「全く手前から口を取ったら何が残るって言うんだ?え? 役に立たねえ奴だな?ケッ!!!」


 トルクスが僕に悪態をつく。

 それは他の若い団員も同じだ。


「ちょっと!!私達が最後になったのはレムスのせいじゃないよ! 全部黒髪の賢者様が決めた事なんだから!!」


 一番先を歩くカリスが振り向いて言う。

 カリスの言うとおりだ。

 黒髪の賢者チユキ様が僕達は最後に突入するように指名したのだ。

 なぜ、賢者様が僕達を最後にするように言ったのかわからない。

 しかし、頭の良い賢者様の言う事だ。何か深い考えがあるのだろう。


「ちっ!!わかりましたよお嬢!!」


 カリスに注意されてトルクスは黙る。


「それよりもみんな! 親父達に早く追いつくよ!!」


 カリスが大声を上げる。

 アルカス団長が率いる熟練の戦士達の足は速い。あっというまに若い団員を置き去りにしてしまった。

 本当ならカリスはもっと先に進みたいのだろう。

 しかし、若い団員を率いるように父親であるアルカス団長から命令されている。

 そのため、カリスは僕達に合わせているのである。

 僕達はカリスを先頭に森を進む。

 一番最後のせいだろうか?ここまで魔物に出くわす事はなかった。

 それよりも先発の戦士と巨大な蟲の魔物の死体があちこちに転がっている。

 それが戦いの激しさを物語っている。


「止まってみんな!!」


 突然カリスが全員を止める。

 カリスの前を見ると人間と魔物の死体がたくさん転がっている。

 だけど、それはここに来るまでに何度も見た光景だ。

 なぜ急にカリスが止めたのかわからない。どうしたのだろう?


「どうしたんですかい?お嬢?何もないですぜ」


 団員のデクノスがカリスの前に出る。

 彼は若い団員の中で一番体が大きく、魔物の生首を集めるのが趣味だ。

 今もゴブリンの生首を体中にぶら下げて鎧替わりにしている。


「下がって!!!デクノス!!!!」


 カリスが叫ぶと同時だった。

 戦士の死体の腹の中から何かが突然飛び出してくる。


「ふえ?」


 それがデクノスの最後の言葉だった。

 飛び出して来た何かに首を一瞬で掻き斬られる。

 デクノスは首から血を吹き出し、後ろへと倒れる。


「ゴブリンだと?! 何も感じなかったぞ!!」


 トルクスが叫ぶ。

 トルクスは敵を感知する能力を持っている。その彼が全く気付かなかったみたいだ。

 デクノスを倒したゴブリンは赤い帽子を被り、こちらをニヤリと見て笑う。

 このゴブリンは小柄なのを利用して人間の死体の中に隠れて僕達をやり過ごして後ろから襲うつもりだったのだろう。

 危ない所だった。

 気付かれた赤い帽子のゴブリンは逃げ出す。


「待ちやがれ!!」


 トルクスと数名の団員達が赤い帽子のゴブリンを追いかける。


「馬鹿!!待ちなさい!!」


 カリスの慌てた声。

 その声にトルクスの後を追おうとしていた団員の何人かが残る。


「そこ!!」


 カリスが斧を投げる。

 魔物死骸と人間の死体の間に隠れていたゴブリンが悲鳴を上げて飛び出す。

 隠れていたのは一匹だけではなかったようだ。


「みんな! 武器を構えて!!」


 カリスは素早く投げた斧を拾うと素早く構える。

 その目が金色に輝いている。カリスの持つ豹の霊感はどの獣の霊感よりも感知能力に優れている。

 隠れていた赤い帽子のゴブリン達が出て来る。隠れるのは不可能と思ったのかもしれない。

 迂闊にあの場所を通っていたらどうなっていただろう?

 もしカリスがいなかったら僕達は全滅していたかもしれない。

 僕達は全員武器を構える。

 トルクス達は僕達を置いて先へと進んでしまった。僕達は半分の人員でゴブリンと戦わなくてはいけなくなったのだった。




◆黒髪の賢者チユキ


 私達は結界の中へと入り空から森の中を見る。


「まずいっすよチユキさん! このままだと全滅するかもしれないっす!!」


 ナオが森の自由戦士達の戦いぶりを見ながら言う。


「そうみたいね……。ゴブリンの方が連携がとれているわね。やっぱり止めるべきだったかもしれない」


 私は後悔する。何度も思ったが無理をしてでも止めるべきだった。

 遠視の魔法で戦士達の戦いぶりを見る限り、自由戦士達は赤い帽子(レッドキャップ)のゴブリン達の奇襲により次々と打ち取られている。

 赤い帽子(レッドキャップ)のゴブリンは通常のゴブリンよりも残忍で強い。

 彼らは人間の血を染料にして自らの衣服を飾る。

 過去に戦った赤い帽子(レッドキャップ)のゴブリンの中には人間の皮を剥いで衣装にしていた者もいたぐらいだ。

 そのゴブリンと出会った時は、あまりの気持ち悪さに吐きそうになったぐらいだ。

 それ以外にも蟲の魔物も多い。

 約5000人の戦力では勝てない。


「何とか戦えているのは、アルカスさん達ぐらいだね」


 そういうシロネの視線を追うと魔獣の皮を着た戦士団が戦っているのが見える。

 魔獣の血を原料した特殊な刺青により獣の霊感を得る事ができる。

 熊の魔獣の力を得たアルカスの戦いぶりはすさまじい。

 次々と魔物を倒している。

 しかし、彼らだけではどうにもならない。

 彼の娘のカリスも頑張っているみたいだ。

 だけど、その周りの戦士達はそこまで強く無いないようだ。彼女の足手まといになっている。

 レムスもいるみたいだし、最後にして良かった。少なくとも今からなら彼女達は助けられる。


「ねえ、レイジさんどうするの? このままだとやられちゃうよ」


 リノがレイジに不安そうに言う。


「こうなっては全員を撤退させるのは難しい。しかし、できるだけ助けるべきだろうな」


 レイジが真面目な顔をして言う。


「そう、じゃあ。魔法で声を拡大して撤退を呼びかけ……。レイジ君?!!」


 私は魔法を発動しようとしたときだった。

 強烈な光の矢がレイジに向かって飛んで来たのである。

 一瞬の事だったので声を掛けるのが遅れた。


「大丈夫だチユキ」


 見る限りレイジは無傷だ。

 突然の不意打ちだったけど、どうやら防御が間に合ったらしい。

 私だったら間に合わなかっただろう。もし、私を狙っていたらと思うとぞっとする。


「ほう、防いだか。やるではないか」


 光りの矢が飛んで来た方向を見ると翼を背中から生やした男性がこちらに来るのが見える。

 翼が生えているが、おそらく天使ではない。

 翼の生えた男性は褐色の肌をしていて、黄金細工の装身具を身に付けていてキラキラとしている。そのため見ていると目が痛くなる。


「我が名はハルセス。ウシャルスの子にしてジプシールの地の支配者なり。我は汝と勝負を……ぼげえ!!!!」


 褐色の肌をした男性がレイジの放った光砲で吹っ飛ぶ。

 “光砲”は“神威の光砲”程ではないがそれでもかなりの威力がある。

 まともに当たったみたいなのでただでは済まないだろう。


「レイジ君。相手は何か話している途中だったみたいだったけど……」

「いや、何か長くなりそうだったから、ついな」


 レイジが笑って答える。

 レイジもまさか今の一撃で倒せるとは思っていなかったようだ。


「待ってレイジさん! まだ何かいるよ!!」


 シロネが指し示すとそこには複数の空を飛ぶ影がいた。


「ふん、砂漠の小僧がやられたか……」

「奴は我々の中でも一番の若造。所詮レーナにはふさわしくない存在よ」

「良い気になるなよ。光の勇者。貴様が天上の美姫レーナの仲なぞ断じて認めん」

「そうだ!!そうだ!!お前なんかレーナちゃんにふさわしくないぞ! レーナちゃんはぼくちんのものだ!!」

「さあ、私達の挑戦を受けてもらいましょうか?」


 口々に喋り出す。


「なんすかあれ……」

「なんだか。レイジさんに恨みを持っているみたいだけ……」


 ナオとリノが不安そうな声を出す。


「まずいわね。まさかこんな奴らが待ち構えているなんて……」


 私は杖を構えるのだった。







◆ゴブリンの王子ゴズ


「ちっ!!何をやっているんだ人間共!!!」


 魔法の鏡によって映しだされた映像では人間達がやられている。

 母から人間の相手の指揮をするように言われゴブリンと蟲兵に指示を出している。

 そのゴブリン達の働きにより人間共は駆逐されようとしている。

 それを見て頭が痛くなる。


「こっちはまだ精鋭が残っているんだぞ……」


 白銀の魔女が残した最強である黄金の蟲戦士は温存している。

 この蟲戦士達を使えば人間なぞ一気に殲滅できるだろう。

 しかし、全滅させるわけにはいかない。

 これぐらいなら大丈夫だろうと思って赤帽子や蟲兵を出したが。

 予想以上に人間は脆かった。

 ここから何とか迷采配をして人間を助けなければならない。

 全滅させてしまったら人間に紛れて母から逃げる事ができなくなってしまうではないか。

 やはり逃げた事に気付かれるかもしれないが、無理やり人間共に紛れるしかないだろうか?

 とりあえず俺は母の様子を見に行く。

 こちらを気にしていないようなら逃げるべきだ。

 母はカエルの魔女と一緒に勇者共の様子を見ているようだ。

 人間の方には興味がないようである。


「ああ、砂漠の光神が倒されましたわ」


 母であるダティエが悲痛な叫びを上げる。

 鏡を見ると砂漠の光神が勇者の一撃で吹っ飛んでいる。


「全く……、死んではいないだろうけど、何をやっているのだが……。後で回収しといてやるかね。ゲロゲロ」


 カエル魔女が首を振る。


「他の男神達も不安だね。アルフォスが参加してくれりゃあ楽だったんだがね」

「えっ?!!!アルフォス様も誘ったのですか?! あの美しいあの御方を?!!!」


 アルフォスの名を出すと母が嬉しそうな声を出す。


「ああ確かに誘ったよ。それがどうしたね?」


 カエル魔女が少し母を睨みつけて言う。


「い!いえ!!何でもありませんわ! おほほほほほほ!!」


 母が気色悪い声で笑う。背筋に怖気がはしりそうだ。

 歌と芸術の神アルフォスの事は知っている。

 母が持つ男神の絵の中で一番多く描かれているからだ。

 そして、その絵の全てが変な液体をかけられたため汚れている事も当然しっている。


「でも、ヘルカート様。アルフォス様が来られると楽というのはどういう事でしょう? あの御方は戦いとは無縁の方に思えます。美しい御方ですが強そうには感じませんわ」


 母の言う通りだ。

 アルフォスは歌って遊んでばかりの神と聞く。

 強そうな感じはしない。


「ふん。お前の目は節穴かね。確かにこの数百年アルフォスは遊んでばかり。とても強そうには思えないだろうね。でもね、あの男は強いよ。間違いなくここに来た男神の誰よりもね」

「えっ?そうなのですか?」

「そうさ。今でこそ遊んでばかりいるが、かつては神王オーディスに仕える最強の聖騎士と呼ばれていた男さ。それが奴の正体さね。もしかするとオーディスよりも強いかもしれないねえアルフォスは。ゲロゲロゲロゲロ」


 その言葉に母は絶句するのだった。






◆暗黒騎士クロキ


 雲の上で自分達とアルフォス達は対峙する。

 アルフォスの空飛ぶ船の上では美女達がこちらを見て笑っている。

 その笑いには間違いなく嘲りが含まれているのがわかる。

 こういう美女に嘲笑の的にされるのは正直きつい。

 その美女達をそばで侍らせているアルフォスはこちらを見て穏やかに笑っている。

 しかし、その目は間違いなく笑っていない。

 なぜ、こんな爆発して欲しいイケメンが弓矢で自分を狙ったのだろう?


「どうしたのですか? アルフォス様。早く戻らないと勇者達が戦いをはじめてしまいますよ」


 アルフォスの側にいた美少女が尋ねる。

 美少女はまだ幼く胸がない。少年の格好をさせても似合いそうだ。


「可愛いヒヤシス。勇者よりもこちらの方が面白そうなのでね」

「へえ、そうなの? アルフォス様。私にはこの暗黒騎士よりも勇者の方に興味があるのだけど」


 ドライアド氏族だろうか?緑の髪をしたエルフがアルフォスの側に来て言う。


「相変わらず君はつれないねダフィーネ。もしかして僕よりもあの勇者に気があるのかい?」

「もうアルフォス様ったら。意地悪な言い方。ふんだ!!誰もが貴方ばかりを見てるとは限らないわ。それに他のみんなも暗黒騎士よりも勇者に興味があると思うけど」


 ダフィーネと呼ばれたエルフが他の女性達を見て言う。


「みんなもそう思うのかい?」


 アルフォスの問いに美女達が相談し合う。


「そうね。あんな暗黒騎士よりもカッコ良い光の勇者の方に興味があるわね。もちろんアルフォス様には敵わないけど」

「そうそう。あんな醜い魔王の部下なんて興味ないっていうか~」

「あの魔王の部下だもの。きっと、あの兜の下の顔はブサイクに違いないわ~」

「本当。ブサイクは消えて欲しいわね。この世界にはいらないわ」

「ちょっとあんたその兜の下を見せなさいよ。どんなブサイクな顔があるか見て上げるわよ」

「やめてよブサイクの顔なんて、わざわざ見たく無いわ」


 美女達がこちらを見てくすくすと笑う。

 大勢の美女に笑われて自分は消えてしまいたくなる。

 レイジに比べて良い男とは思えない。この兜の下の顔を見せる事は絶対にできない。


「何だあいつら……。首を跳ねてやる」

「待ってクーナ! 押さえて!!」


 後ろでクーナが飛び出しそうになるのを制する

 彼女達を完全な敵にしたくなかった。

 全く自分が嫌になる。

 こんな事を言われても、なお自分は綺麗な女性から嫌われたくないのだ。

 少しは言い返した方が良いのかもしれないが、それすらできない。

 ちょっと泣きたくなってくる。


「ねえ、ちょっとみんなあそこにいるのって魔王の子供なんじゃない? すごくそっくりよ」


 突然美女の一名がポレンを指差す。


「えっ?!!」


 名指しされてポレンのとまどう声が聞こえる。


「あっ本当だ!!そっくり!!」

「本当魔王にそっくりでブタみたい! みんな~ブタがいるわ! ブタブタ!!」

「ねえ、そこのブタさん。貴方魔王の子供なんでしょ?だってすごく醜いんだもの。そんな姿で生まれたら私だったら死んじゃいたくなるわね」

「ほーんと。何で生きていられるんだろう」

「本当に醜いわね。子供かどうかわからないけど、どうせ魔王の仲間なんでしょ。だったら性格も腐っているに違いないわね」

「すごいわね~。生まれた時から汚物なんて。さっさと死んだら」


 美女達はポレンを見て嘲笑する。


「あうあう……」

「で、殿下?」


 ポレンの泣きそうな声が聞こえ、プチナが慰めようとしているのが気配でわかる。

 自分はマントを広げポレンが相手の視界に入らないようにする。

 そして―――――。



「黙れええええええええええええええっ! ブス共おおおおおおおおおお!」



 思った以上に大きな声が出たので、びっくりしてしまう。

 さっきまで喋っていた美女達が驚いた顔をして自分を見ている。

 なに?こいつという目でこちらを見ている。

 だけど自分の口が止らない。


「お前らにポレン殿下の何がわかる! 殿下はとてもお優しい御方だっ! 自らを慕う者達のために泳いだ事も無いのに身を挺して海に入りクラ―ケンを退治されるような方なんだよ! 貴様らが馬鹿にして良い相手じゃない!!!!!」


 そう言って美女達に剣を向ける。


「それでも!なお言うつもりなら! この自分が相手をしてやる!」


 自分の体から黒い炎が噴き出す。


「ひいいいい!!」

「いやあ! 何よ怖い!!」

「助けてアルフォス様ぁ!!」

「きゃあああああ!!」

「いやあああああ! 助けてえアルフォス様あああああ!!」


 美女達が甲板の上で逃げ惑う。

 それはもう滑稽なぐらいに。

 気付かないうちに恐怖の波動を放っていたようだ。

 クーナの驚く気配を感じる。

 またグロリアスが心配そうに首を曲げてこちらを見る。


「クロキ先生ぇ……」


 えぐえぐ泣きながらポレンが自分の名を呼ぶ。


「僕の可愛い子達を相手にするだって? それは困るな。彼女達を傷つけるつもりなら僕が相手をしないといけないね」


 アルフォスがそう言って笑うと光に包まれる。

 光が消えると純白の鎧がアルフォスの身を覆っている。


「嘘? アルフォス様が聖騎士の姿になられるなんて……」

「噂には聞いていたけど初めて見た……」

「まさか? アルフォス様が戦われるなんて」

「私達のために戦われるなんて、騎士の鏡だわ……」

「素敵!! 暗黒騎士から私達を守る為に封印していた聖騎士の鎧を着るなんて!!!」

「アルフォス様なら暗黒騎士なんていちころですわ!!!」

「あんな暗黒騎士なんてやっつけちゃってくださいアルフォス様!!!」


 アルフォスが純白の聖騎士の姿になると美女達がうっとりした表情になる。

 だけど、アルフォスは美女達に構わずこちらを見ている。


「ミューサ! 剣を!!!」

「はいアルフォス。用意していますよ」


 ミューサと呼ばれた美女が一振りの剣を持って来てアルフォスに渡す。


「ありがとうミューサ。さあ出ておいで白き聖竜ヴァルジニアスよ!!!」


 アルフォスが叫ぶと空船の甲板が開き中から純白の竜が飛び出して来る。

 かなり大きい。グロリアスと良い勝負だ。


「とおう!!」


 アルフォスは飛ぶとヴァルジニアスと呼んだ竜に乗る。


「ねえ暗黒騎士。僕とヴァルジニアス、君とその黒い竜。僕達だけにならないかい? 勝負を邪魔されたくないからね」


 アルフォスが剣を抜くとエメラルド色に輝く剣身をこちらに向ける。


「わかった。良いよ。その申し出を受けよう」


 自分は頷く。


「クロキ……」


 クーナが心配そうに声をかける。


「大丈夫だよクーナ。殿下と一緒に下で待っていてくれないか?」


 自分はクーナの頬を触る。


「クロキ先生……」

「大丈夫です殿下。ちょっと行ってきますね」


 ポレンはえぐえぐと泣いている。

 ポレンは今まで引き籠っていた。

 外に出るのは大変な勇気が必要だっただろう。

 何がポレンをそうさせたのかわからない。

 しかし、ポレンは頑張って外に出た。

 事情はわからずとも頑張る者を笑って良いはずがない。

 そのポレンの前で勝負を逃げるわけにはいかないではないか?

 それに奴は優秀な狙撃手。

 どのみち勝負するしかないだろう。

 そう思い純白の聖騎士となったアルフォスを再び睨むのだった。



安彦大先生の名作『アリオン』ではアポロンがラスボスでした。普段は遊んでいるけど実は最強。

つまり最初からアルフォスは強い設定だったりします。


視点が多すぎて読みにくいという意見があります。しかし、今回も視点が多かったりします。なるだけ、入れない方が良いのでしょうが……。

クロキ達だけだったら弱い魔物を出しにくく、いろいろな魔物を書きたい。うまく纏められるように工夫をしないと駄目ですねm(_ _;)m


次回は最強の暗黒騎士と最強の聖騎士の戦いが始まります。

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