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暗黒騎士物語(なろう版)  作者: 根崎タケル
第6章 魔界の姫君
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魔姫双影Ⅱ

◆魔界の姫ポレン


「お前がポレンだな。クロキから話を聞いている。クロキのつ!ま!クーナだ!! よろしく頼むぞ」


 妻の部分をものすごく強調して美少女が言う。

 その目はこちらを見下しているように感じる。

 また、最初に見られた時に、何となく鼻で笑われたような気がするが気のせいだろう。

 しかし、この美少女の放つ強烈な威圧感に圧倒されてしまう。

 この威圧感はお母様に匹敵する。


「あの……クーナ。呼び捨てはちょっと……」


 クロキ先生が少し慌てている。

 私は魔王であるお父様の娘。いわばお姫様だ。

 どんなに醜くても、みんながちやほやしてくれる。

 だからこそ中々気付かなかった。

 いかに自身が醜いかを。

 エリオスを魔法の映像で見た時の衝撃はすごかった。

 そこにいる美しい男神達。

 彼らは敵だけど、私はその姿に夢中になった。

 だから隠れて眺めていた。

 今でもゴブリンの女王ダティエから貰ったエリオスの殿方達の裸画は宝物である。

 そして、何時の日だっただろうか?

 たまたま、彼らと並んで映っている女神達の映像を見ている時だった。

 私は気付いてしまった。

 私ってすごいブスじゃない?どう鏡を見てもブタじゃん。

 気付いた私は荒れてしまった。

 今まで自分が可愛いと思ってやった数々の行動はどう考えても黒歴史なんですけど――!!!

 死ね!!死ね!!私死ね!!!

 今思い出しても悶えて転がりたくなるほど恥ずかしい。

 久しぶりにエリオスの女神達を超える美少女を見たから思い出してしまった。


「あの殿下? 大丈夫ですか? もしかしてクーナの言葉で?」


 私が突然悶えはじめたので、クロキ先生が心配そうに私を見ている。

 うう、クロキ先生にこんな綺麗な奥さんがいるとは思わなかったよ~。

 私は心の中で泣く。

 そのクロキ先生の横で美少女はすっごく冷たい視線で私を見ている。

 だけど、これほどの美少女なら当然の態度といえる。

 私もこれだけ美少女なら髪を縦にまいて「おほほほほほ」と仰け反りながら笑って他者を見下すだろう。

 そして、優雅に蜂蜜に付けた揚げ菓子を食べながら「蜂蜜が足りなくってよ!!」と言って、傲慢に怒ったりするのだ。


「いえ、違いますクロキ先生。奥さんのせいじゃないです……」


 私は心の中で泣きながら、何とか平静を装って立ち上がる。


「そ、それは良かった。それからクーナ。同じ女の子同士なんだし、できれば仲良くしてあげて」


 クロキ先生が不安そうに美少女に言う。

 しかし、それはかなり厳しいのではないだろうか?

 一緒に横に立っても良いのだろうか?

 そもそも、この美少女にすごく嫌がられるかもしれない。


「こいつと仲良く? ああ、別に構わないぞ」


 しかし、美少女は了承する。

 彼女の表情は読みにくい。

 あまり興味が無いのかもしれない。


「えっ? 本当に良いのですか?」

「ああ。クロキの頼みだからな。仕方が無い」


 美少女が私の前に立つ。

 私の身長は彼女の胸ぐらいしかない。

 そのため近づかれるとポヨンと突き出た胸が目の前に来る。

 とっても強烈だ!!こいつは、とってもエロいで~!!

 目を奪われてしまう。


「ん?どうした?クーナの胸を眺めて?」


 私の様子に美少女が首を傾げる。

 すごい可愛い!!

 そんな首を傾げるだけでも絵になる。


「いえ、何でもないです。あのどうしたら、そんなエロカワ美少女になれるのですかっ?」


 思わず尋ねてしまう。

 どうやれば?こんなぽよんぽよんな体になれるのだろう?


「はあ? クーナが可愛いのは生まれつきだ。それに努力もしている。だから、クーナが可愛い美少女なのは当たり前だぞ」


 その言葉に衝撃を受ける。


「元から可愛いのに努力をしているのですか?」


 当然のごとく敬語になってしまう。


「当たり前だ! クロキを見てみろ! 元から強いのにさらに努力をしている!!」


 確かにクロキ先生はこの旅の道中で剣の練習を欠かさずしていた。

 あんなに強いのに、さらに練習をしていたのだ。

 私は自分から剣を習いたいと言っておきながら食べてばかりだったような気がする。

 元々剣に興味があったわけでは無かったから気にしなかった。

 だけど、この美少女の言葉は胸に刺さる。


「そうですか……。さらに努力を……。私も努力すれば美少女になれますか?」


 私はおそるおそる尋ねる。


「さあな。しかし、何もしないなら、そのままに決まっているぞ」


 当たり前に指摘に頭がぐわんぐわんと鳴る。

 確かにその通りだ。何もしなければそのままに決まっている。


「確かに……。あの……。私にもその努力とやらを教えてくれませんか?師匠~」


 私は涙目になりながらしがみつく。


「な?!!何だ!!お前は!!」


 クーナ師匠が慌てた声を出す。


「お願いです~。どうやったらそんな大きな胸になれるのですか~?」

「それは! クロキに大きくしてもらっているからだ! ちょっと離せ! 何とかしてくれクロキ!!」


 クーナ師匠がクロキ先生に助けを求める。

 だけど、クロキ先生は違う方向を見ている。

 何だか表情が険しい。

 私とクーナ師匠は先生の様子を見る。


「どうしたのだ? クロキ?」


 するとクロキ先生はこちらを見る。


「緊急事態です殿下。どうやら勇者達が近くに来ているようです」






◆暗黒騎士クロキ


 人狼ダイガンから魔法の連絡が来たのは、つい今しがただ。

 彼はナルゴルにもっとも近いアルゴア王国で、もし勇者達が近づいたら自分に知らせるように言ってある。

 そして、シロネがアルゴア王国にやって来た。

 理由は御菓子の城の様子を見に来たらしい。

 どうやら御菓子の城の存在を気付かれたみたいだ。

 このままではダティエが危ない。


「クーナ! ダティエ殿に連絡をして! 急いで退避するようにと!!」


 自分は説明するとクーナに指示を出す。

「駄目だぞ。クロキ。連絡が取れない。おそらく結界が張られている。これでは転移もできないだろうな」


 しかし、クーナは首を振って答える。

 何てこったい!!

 正直に言うとダティエは苦手だ。

 しかし、仲間である以上は助けに行くべきだろう。


「そう……。それじゃあ助けに行かないと……。申し訳ございません。殿下。自分は行きます」


 自分はポレンに礼をする。


「待ってください! クロキ先生! ダティエが危ないのですか?!!」


 突然ポレンが大声を出す。


「ポレン殿下はダティエ殿の事を知っているのですか?」

「はい。ダティエからは良く絵を貰っています。今度また新作の絵をくれるそうです」


 自分は少し驚く。

 ダティエとポレンに絵画の趣味があったとは思わなかった。

 どんな絵なのだろう?

 かくいう自分も綺麗な絵が好きだったりする。


「絵か。そういえばダティエの奴が沢山の絵を城に持ち込んでいたな。もしかして新作の絵もあるかもしれないな」

「そんな!!!!」


 クーナの言葉にポレンが絶望した顔をする。

 よっぽど楽しみにしていたのかもしれない。


「殿下。ダティエ殿を助けるついでに、可能ならその新作も回収します。どのような絵なのですか?」

「えっと。それは……」


 ポレンの顔から滝のような汗が流れ落ちる。

 説明しにくい絵なのだろうか?


「それなら、それっぽい絵を片っ端から持って帰りましょう」


「い!!いえ! それは駄目ですっ! そうだ! 先生! 私も連れて行って下さい! 私もダティエを助けたいんです! だから一緒に行くよ! ぷーちゃん!!」

「まあ、殿下が行くなら。一緒に行くのさ」


 ポレンがとんでもない事を言い出す。

 そういえばポレンはセルキー達を救ったように自身を慕う者を放っておけない性格だった。

 それは王者として素晴らしい事だと思う。

 だけど、そんな事はさせられない。

 何しろレイジ達と戦う事になる。

 レイジはクラ―ケンよりもはるかに危険だ。

 ポレンが傷つく可能性がある。魔王の御子を危ない目にあわせるわけにはいかない。


「殿下。ダティエ殿を心配する気持ちはわかりますが、危険です。安全な所で待っていて下さい」

 自分は再びポレンに頭を下げる。

「良いのではないか。クロキ。連れて行ってやっても。それから、もちろんクーナも行くぞ」


 クーナがさも当然と言う顔をする。


「クロキ先生! お願いします! 連れて行って下さい!!」


 ポレンが真剣な目をして言う。

 きっとダティエを助けたいのだろう。

 これでは連れて行かないわけには行かなさそうだ。

 自分は溜息を吐くのだった。






◆白銀の魔女クーナ


「良いかい? クーナ? 危なかったら、ポレン殿下を連れて逃げるんだよ。まずは自分達の身の安全を考えるんだよ」


 クロキが心配そうにクーナに言う。

 クロキは何よりもクーナの身を心配する。

 だけど、それはクーナも同じだ。


「わかったぞ。クロキ。もちろん危なかったらクロキも連れて逃げる」


 クーナがそう言うとクロキは困った顔をする。

 自分は助けなくても良いと思っているみたいだ。

 だけど、そんな事を聞くつもりは無い。

 もっともクロキは強いから危ない目に会う事は無いだろう。

 どんな相手もクロキには敵わないに決まっている。

 しかし、付いていかないわけにはいかない。

 先回りしてダティエが余計な事を喋らないように釘を刺すべきだろう。

 そもそもダティエを助ける必要があるとは思えない。

 何より師匠であるヘルカートがいる。

 沼地の大魔女と呼ばれる、あの女がたやすく勇者にやられるとは思えない。

 だから、ダティエの心配はしていない。

 ダティエは少し痛い目をみた方が良い。

 ダティエの持っているいかがわしい絵画の中にはクロキの絵もあった。

 もちろん、クロキの分は処分しておいた。

 あれを見たらクロキも不快に思うだろう。クロキを不快させる者は死ねばよい。

 だから、ダティエを残してクロキに勇者達が近づいている事を隠した。

 うかつだったのはクロキが独自の情報網を持っていた事だ。

 おかげでクロキに知られてしまったではないか。


「それじゃあ、行こうか」


 何も気づいていないクロキがクーナ達を促す。


「わかったぞ。クロキ」


「はい!!先生! それからよろしくお願いします! 師匠!!」


 ポレンがクーナを師匠と呼ぶ。

 どうやら、綺麗になる方法を知りたいようだ。

 クーナがレーナから教わった美容術を教えても良いが、このブタに教えた所でどうにかなるとは思えない。

 しかし、ブタはブタでも魔王の子だ。何か利用価値があるかもしれない。

 表面的には仲良くしてやろう。


「本当に行くのさ? 殿下? 危険かもしれないのさ?」

「大丈夫だよ。ぷーちゃん。クロキ先生がいるから。それよりも、何とか先生の目に入る前に絵を回収するよ。ぷーちゃん」

「はあ……。わかったのさ。殿下」


 クーナの後ろでポレン達が小声で何かを相談している。

 クロキがいるから大丈夫なのはたしかだが緊張感が無さすぎやしないだろうか?

 クロキには敵わなくても勇者は強敵である。

 だが、保護をクロキから任されている以上は助けなければならないだろう。

 面倒くさい事になったと思うのだった。


初の二分割の後編です。

これでようやく話が一本にまとまります。


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