第7話 『Innovational Shock Programming』
なんだかな。
投稿してからミスを発見するって、どうなんだろう…?
夕食が終わり、風呂も入り終えたアテナはかなり早めに『AMO』の世界へとインしていた。
ラボに籠ると、メモ機能を応用して設計図イラストを作成。
資材に関しては戦利品であるジャンクメタルがあるので今回はそれを利用する。
まずラボに設置された溶鉱炉に洗浄し付着しているゴミを取り除き『ジャンクメタル・アイアン』を入れる。
火の加減に注意しながら溶かし一旦インゴットを作成、今度は溶かさない様に慎重に再び熱を加え炭素を含ませながら不純物を取り除いて、パーツとフレームを形成していく。
続いて基盤やパーツ作りに入る。
資材が少ないのでラプターフレームを解体し必要な分の基盤と導線を取り出していく。
そこから組み上げて今回の作成物に合った大きさの基盤に作り替えていった。
それが終わると、今回のメインであるラジエーターの転用改造に取り掛かった。
まずカヴァーを外すと、ラジエーターを構成しているパーツが剥き出しになる。
一目見て理解したが、このラジエーターは驚いた事に冷却エネルギーによって機体を冷やすタイプである事が判明した。
普通は不凍液を利用した『水冷式』を採用するためである。
「何…これ……」
文明開化どころの話では無い、完全なオーパーツである。
ミネルヴァはこの事実に胸中を驚愕の色に染め上げていたが、手を止めている訳にもいかず、作業を続ける。
熱源探知機を取り外すと、自作したコネクタを取り付ける。
これは“通電すると熱源を認識する”プログラムがインストールされており、それにより任意に冷却システムを発動させられる事が出来るようになる様に仕向けた。
所謂“誤認”を利用した形だ。
しかもジャンクショップで序でに買った冷却保護材でカヴァーしてあるので機材が凍って使い物にならない状態にしてある。
(この構造を見るに、この方法を採用しなかったからあんな不祥事に繋がった…っていう所が今回の見解かな)
此処までは順風満帆に行っていたが、壁にぶち当たってしまう事となった。
ラジエーター冷却力を冷却エネルギーへと変換させるためのプログラム作成であった。
何度やっても反応が無い。
通電はきちんと通ってはいる…ものの、全くの無反応状態である。
暫く頭を悩ませていると、そこへ三人がラボに入ってきた。
「ん…ああ、もう九時か…お疲れ」
メニューのモニターで時間を確認すると、既に九時四五分を回っていた。
「お疲れ様です…その…」
ミキヒサは目の前の見慣れぬ機材に言葉を向ける。
「う、ん…件の…ね」
「…? どうしたんです?」
ゴーライオーはミネルヴァの歯切れの悪い応答に疑問を抱く。
壁にぶつかっている…という事は辛うじて理解できるものの、どの様に躓いているのか解らなかった。
「ちゃんとプログラミングしているのに起動しないんだ…」
「どうして?」
「うーん…それが解れば苦労しないんだけどね…恐らくだけど『ネメシス』も此処で蹴っ躓いたせいで急遽熱源探知機なんてもので対応したのかもしれない」
「もっと良くアイテムを調べられたらね……」
と苦々しい口調で腕を組んで画面と睨めっこする。
「これ、何?」
ブラックウイドーが画面の内容に、疑問をぶつけてみる。
「これ? …『C言語』ってヤツ。これを組まないと、全てのプログラムが思い通りに動いてくれないって事」
「ふぅん…」
「ま、そう言うのは学校の先生に聞いてみたら?」
「専門家が目の前に居るっていうのに?」
「専門家かどうかは置いといて…そっちも何かあったのかな? 随分と遅かったけど」
「…ゴーライオーの馬鹿が早くINしたいからノート見せてくれってね。宿題ぐらい自分でしろって言ったんだけど…なんて言ったか解る? 『俺は過去を振り返らない主義なんだ!』よ? ほんと頭にきちゃったからミキヒサ呼び出してアイツの家に乗り込んで叩き込ませてきたって訳!」
どうやら勉強を放り投げる頭の悪い人のために奮闘していたというのだ。
しかしそれでもきちんとIN出来ているのだから流石の執念と言った所である。
(――――ん? 振り返らない…? 過去……?)
「……やるしか、ないか」
何を思い立ったのか、文字を既存の英語から或る文字へと変換させる。
使用したのは最もポピュラーな文字であった。
「これで……反応、有り!」
反応したが、ただ反応しただけであり、特に何も起きない。
それでも何かを掴んだのか、余りのラプターフレームから、とあるUFOの様な円形の台座形をしたの機材を作り出し、USBに繋げPCに接続する。
「ミキヒサ、ラプターハートをお願い」
「うん? 良いけど?」
ミキヒサはストレージからラプターハートを取り出してミネルヴァに渡すと、彼はラプターハートを機材の上にある窪みへ嵌め込んだ。
そしてあるソフトを即興で作り上げて、それをPCへとインストールし、そこから再びプログラミングを施す。
「予想通り!」
かくしてミネルヴァの目論見は大当たりとなり、正常に起動を始めたのだった。
「何をしたの?」
三人とも訳が解らないと言った状態だ。
きょとんとした今日上で首を傾げる。
「何故、今まで反応できなかったのか……それは僕等を含めた全ての人間が“現代文字”に依存してたからだ!」
「どゆ事?」
「そう、だね…。兎に角、現在は共通語でもある英語を基盤にプログラム設計を行っている。そしてそこが穴だったんだ」
こほん、と言葉を区切る。
「現代文字は確かに昔から…紀元前から使用されてきたけど、それ以前はそうじゃ無かった。…寧ろ文字が現れた当初はそれこそ“叡智の塊”だったんだ。無論“叡智の塊”は同時に神聖なものでもあった。当然神聖なものである“古代文字”――――“叡智の塊”――――は神秘的な力が宿ると信じられてきた訳だから、僕は現代でもお馴染みの“古代文字”であるヒエログリフを使用したんだ。その結果がこれだ」
台座が他の機材に置かれたラプターハートを手に取る。
そこには何時出来たのか、幾何学的な模様のサーキットが刻まれていた。
「これ…」
「ヒエログリフのC言語でプログラミングしたものをインストールした結果だ。多分これを組み込めば今回の件での問題も間違いなく解消される」
意味有り気に言葉を濁られながらも、断言をする。
その後も残りの二つも試したが特に反応が良かったのは“ルーン”。
次いで“マヤ、”ヒエログリフ“の順であった。
結果、ヒエログリフ50%、マヤ100%、ルーン120%という風に記録された。
「凄い…」
「ルーンは神話上、知識を欲した主神が工程を経て直接得たらしいから反応はでかいと思ってたけど、これは予想以上だよ」
「取り敢えず、ラプターハートはミキヒサ君に返すよ」
「けど…」
借りたものは返すという主張を頑として取り下げなかったために、しぶしぶ返却されたラプターハートをストレージに戻した。
ミキヒサは返却されたそれを見る。
・ラプターハート・ヒエログリフS(レア+):ラプターを動かしていた核、未だに謎に満ちている。ミネルヴァによってヒエログリフによる【冷却エネルギー変換】のプログラムサーキットが刻まれている。
・ラプターハート・マヤS(レア+):ラプターを動かしていた核、未だに謎に満ちている。ミネルヴァによってマヤによる【冷却エネルギー変換】のプログラムサーキットが刻まれている。
・ラプターハート・ルーンS(レア+):ラプターを動かしていた核、未だに謎に満ちている。ミネルヴァによってルーンによる【冷却エネルギー変換】のプログラムサーキットが刻まれている。
(コレ、学会に発表したら革命できるレベルじゃないか?)
そう考えるとミキヒサは一抹の不安と恐怖に駆られそうになった。
出さなければ良い――――そう考えてこれを記憶の片隅に置く事を決意した。
「もう一時半近く!? ごめん、明日早いから今日はもう落ちるね」
「…うん、僕も明日は学校あるからこれで落ちるよ」
お休み、と全員落ちて行った。
翌日、学校から帰省し、昼食を終えてログインすると既に三人の姿が見えていた。
「お疲れ様、皆早いね」
「元々夏期講習だけですからね」
何処も似た様な物か、と思いながら基地に備わっている部屋のソファーに就き、今日分の予定のミーティングを開始した。
「今日はどうする?」
ミキヒサが話を切り出す。
「んー…昨日は特殊だったからあんな感じになっちゃったけど、【旧東京都・江戸川区】で狩りをしようと思う」
「暫くは近場か…。で、場所は?」
「荒川周辺。小松川・平井・船堀エリアが一番良い」
ミネルヴァはメニューからマップを広げて指したエリアを三人に見せる。
此処、葛西(臨海公園)エリアでも良かったのだがミネルヴァは自身が慣れ親しんだ場所が初心者には良いという情報を掲示板を読んで得ていた。
「へぇ…昨日は気付かなかったけど同じ江戸川区でもこんなに違うのね」
「…それに此処は潮風で機体も痛み易いから、出来れば川の上流が、現状としては好ましいんだ」
昨日の今日で水による浸水度や、海水に対する耐性が何処までなのか等未だに判明していない。
勿論それだけの理由ではないが、臨海公園でのレベリングはもう少し先の未来だと判断したのだ。
「そんな訳で出発したいんだけど…ゴーライオーとミキヒサは先発組として先に目的地に向かっててくれないかな?」
「? 何で?」
「……まだ完成して無い状態で行ける、とでも?」
男子二人はその言葉の意味を理解した。
「大丈夫。完成したら直ぐに向かうから、全くの無神経って訳じゃないし」
「おう、頼りにしてるぜ」
そこで、ミキヒサがふと疑問を抱いた。
「あれ…俺ら二人?」
そう、“先陣切って目的地へ特攻するのが二人だけ”という内容に。
「そう、言えばそうね?」
ブラックウイドーにも疑問が生まれる。
「…あれをBEMに搭載出来るとでも?」
昨晩ラボで見た『外装』のサイズは如何程だったか。
それが理解できない二人では無かった。
「バックウェポンにしては少しでかすぎると思ってたんだけど」
「だからどういう意味なのよっ!?」
「――――まさかあれを改造するつもりなんて思いも寄らなかったわな」
名前:ミネルヴァ
性別:男性
【PS】
・『空間認識』Lv8(初期)
・『地形利用』Lv6(初期)
・『適材適所』Lv8(初期)
・『設計開発』Lv4(初期)
・『修理』Lv6(初期)
・『精密作業』Lv7(Unlock メイキング系でより精密な作業をこなした)
機体:『ギルマルチ=マイス』Lv10
【AA】
・『レーザークロー』(初期)
・『クローシューター』(初期)
・『テイルアタック』(Unlock 尻尾でエネミー撃破報酬)
・『ハウリング・ヴォイス』(シュミレーションチュートリアルクリア報酬)
・『ブレイクファング』(LvUP)
・『クローシューター・ザンバー』(Unlock マニュアル操作で『クローシューター』を発動)
・『クローシューター・スナイパー』(Unlock 良く見据えて『クローシューター』を発動)