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ACTIVATION MACHINERY ONLINE  作者: 沖 智美
Second Tittle
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第4話 『Emergency Scramble!』

 ミネルヴァが降り立った場所は『旧東京都』の一角にあるドッグだった。

 ハンガーには二・五メートル程度でしかない『ギルマルチ=マイス』の姿が有った。

 黄土色のカラーリングで、膝の無しの脚に踵・爪先折れ式の足。

 尻尾は胴体から伸びており、まるでトカゲか魚の尾っぽに近い。

 腕部は、特に手は手首なるものは存在せずにそのまま三つ指(爪)が付いている。

 また、胴体が肉食恐竜の様な顔面であり、メインカメラはツインであり、そのまま生物の眼の様な形になっている。

 また先端のカバーを外すと顎がせり出し、口となる仕様である。


 「どっかのヴ○ルシオ○ネも驚きの汎用機だ…」


 そんな壊れ性能に感嘆の声を上げつつも、機体に乗り込み、機体のOSを起動させた。


 「意外とコクピットはゼ○ガに近いかな?」


 嬉しい事に素人でも扱い易い構造になっている。

 数あるアーケードのロボゲーをプレイしていた経験故か、操縦し易いコクピットがお気に入り№1にランクインした瞬間でもあった。

 まず、歩行。

 アクセルをゆっくり踏むと前へと歩く。

 思い切り踏むと、走る。

 続いて腕。

 リング状の操縦棍を握り、動かすとその通りに動いた。

 特に指先に潰れ易い卵を持っても潰れない程、OSにインストールされたAIの補助とはいえ力加減も優秀であった。

 他の機体ならこんな芸当は不可能だろう。

 一頻り機体を動かしていると不意に警報が鳴り響く。


 『緊急通報エマージェンシー! 緊急通報エマージェンシー! 緊急出撃スクランブル要請が発令されました! ポイント556にて『ジャンボロイド・グレイヴァー』が出現、これを撃破してください』


 ミネルヴァはギルマルチを所定の位置であるカタパルトに移動させるとアクセルを全開にした。


 「出撃要請コール!? とと…ミネルヴァ、ギルマルチ=マイス、出る!」


 ぐん、と勢いよくGが掛ったため酔いそうになったが、これを堪えて外に飛び出した。


 

 

 所変わってポイント556.

 現在は廃街であるが、昔は江東区一、最先端の開発区であった。


 『くっそっ! 何でこんな辺鄙な場所にジャンキーが出現しやがる!?』


 『ジェネラル』製の機体BD-GTWI『DONE』を駆るプレイヤーが戦闘を既に開始していた。


 『知るか! それよりもこいつ等、雑魚とはいえ際限なく出現(POP)してきやがる…』


 パイロットは苦虫を噛んだ様な表情でエネミーを屠っていく。

 出現したエネミーは比較的雑魚の部類に入る『ラプター』で、ヴェロキラプトルやディノニクスといった小型肉食獣の様な姿をしていた。


 『シット! これじゃ幾ら倒してもキリがねぇ』


 『慌てないで、ミキヒサ。いまPOP元をサーチしてる所だから』


 少女の声が、ミキヒサと呼ばれたプレイヤーの苛つきを諌める。


 『そうは言っても…こいつ等恐れる所か数段で飛び掛かってきて鬱陶しいんだよ』


 『さっきから精神がガリガリ削れる』


 二機あるDONEが奮闘しているが、ほぼ孤立無援、四面楚歌の状況が続いている。

 機体の燃料も尽きかけている。

 (POP元が近くにある事は確かなのに…見付からない。でもどうし――――)


 『げ、しまっ…』


 どうやら余所見をしている内に囲まれてしまったらしい。


 『ミキヒサ! ゴーライオー!』


 もう駄目だ。

 そんな絶望の空気が三人を覆っていた。


 『くっそおぉぉぉぉぉ!!』


 一斉に飛び掛かるラプター。


 二機に逃げ場は無い。


 そんな時だった。

 ――――正体不明の機体が空から落ちて、眼前のラプター共を破壊していったのだ。


 『――――は?』


 二人は突如現れ、ラプターを仕留めた何者かに目を剥き大いに驚く。


 『敵か?』


 『ううん。アイコンは緑だからプレイヤーの可能性が高い』


 彼等が目にした機体は何処かコミカルで、それでいて奇妙なBEMの姿であった。




 時は少しばかり遡り、ミネルヴァはEPポイントの画面を眺めていた。


 「ポイント556、ってお台場だよね」


 東京都の臨海部に住む人なら誰でも言った事のある場所で、アテナも、秋葉原より良く遊びに行く場所でもあった。


 「旧有明駅の近く。反応は…あれ、これって結構ヤバい?」


 既に戦闘が始まっており、幾ら倒してもPOPしている。

 いや、異常と呼べる程それ以上に過剰POPしている。


 「取り敢えず、ぶっ飛ばしますか」


 アクセルを二回踏み、ブースターを噴かせる。

 ぐん、とGが掛り吐きそうになるが、堪えて目的地へと急ぐ。


 「見えてきた!」


 ギルマルチは、体重を足の裏に掛けると、僅かに溜めて、勢いよく跳躍する。

 上空に飛び上がった機体は、口を二機に襲いかかるラプターに向けると狙いを定めて機体技を発動させた。


 「『ハウリング・ヴォイス』!!」


 『GOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAANN!!!!』


 ギルマルチの大口から放たれた衝撃波は、数百機のラプターを巻き込み、蹂躙していった。

 そのまま着地し再び『ハウリング・ヴォイス』を発動、眼前のラプターを一掃する。


 『大丈夫ですか?』


 『ああ。まぁ、何とか、な』


 二機のパイロットである彼等は闖入者であるその奇妙なフォルムの機体に目を奪われ、戸惑っていた。


 『ええっとお二人はプレイヤー、で会ってますよね?』


 ミネルヴァは機体のパイロットに向かって質問を投げ掛ける。


 『ああ。俺はミキヒサ、こいつはゴーライオーだ』


 『僕はミネルヴァ。兎に角今は緊急事態みたいですから、貴方方の臨時PTとしてお願いします』


 『そいつは有りがたい』


 ミネルヴァのPT要請にミキヒサは受け入れようとするが


 『ちょっと待って』


 と、少女の声が待ったを掛けた。


 『えっと…貴女は?』


 『私はブラックウイドー。二人ののサポートを担当しています』


 『先程【緊急要請コール】が発令されたから此方へ来ました』


 『…そう、ですか』


 ミネルヴァの出撃理由に一先ずは胸を撫で下ろすブラックウイドー。


 『所で過剰POPの原因は?』


 『それが…未だにっけん出来ないんです』


 彼女曰く、隈なく地上のエリアに探索サーチを掛けても発見できないとの事だ。


 『上空は?』


 『それも引っ掛からない』


 打つ手無いらしい。


 『――――なら、地下、及び水中は?』


 『…あっ!』


 どうやら盲点だったらしい。


 『取り敢えず、ミネルヴァのPT要請を受理します。…改めてミキヒサとゴーライオーにはこのままもう少し踏ん張って貰います。ミネルヴァは二人の援護に回り、POP元が発見され次第、そこへ向かって貰います』


 『了解!』


 『では、ミッション・スタートです』


 ミネルヴァはギルマルチを駆り、味方のDONE二機を援護する。

 銃やナイフといった武装兵器オプショナルウエポンは一切持たないが、それ故に余計な荷物は一切ないので身軽だ。

 内臓武器が干渉してしまう心配も無い。

 指である爪の先からビームを射出し、牽制を行ったり、切り裂いたり、或いは自慢の尻尾で吹き飛ばしたりした。

 そうでなくともラプターは噛み付かれ、咀嚼され吐き出される。


 『うっわ…モロ怪獣映画に出てくる最凶怪獣(ゴ○ラ)じゃねーか』


 『味方で良かったと思うとぞっとしないな……』


 『全くだ』


 『そこ、私語を慎まないといざって時に助けてあげないわよ?』


 『げげっ!?』


 『ご愁傷様』


 ミネルヴァはそう言いながら、ラプターを自慢の牙でバクリ、ゴリゴリと次々に噛み砕いていく。


 『…………』


 『…………』


 最早恐怖の光景としか思えない。

 それでも怪獣プレイでラプターを屠っていく光景を傍目に、アサルトビームライフル『プロミネンス』で貫いていく。


 『水中・地下も無し』


 『外れかよ』


 『待って…近くに高エネルギー反応を確認、ボスクラスの敵エネミーと判断!』


 『うへぇ…マジか』


 『二人共、“来る”よ!』


 地震と共に、ビッグサイトが破壊され、現れたのは巨大ティラノサウルスの形をしたジャンボロイドだった。

 

 『でかい…!』


 モニタで確認してみると『【JGジャンボロイド・グレイヴァー・タイラントレックス】Lv8』と表記されていた。


 巨大エネミーこと大型肉食恐竜レックスを眼前に捉え、その姿に驚愕する。


 『…もしかしてコイツがPOP元?』


 『馬鹿な…けどはっきりしてるのはこいつを倒さないと俺達に明日は無い、って事だけだ』


 現在、人々はアンダーグラウンド(以下UG)と呼ばれる地下シェルター内の中で暮らしている。

 いち早く地上で再び暮らしたいという願いをかなえるためにはJGジャンボロイド・グレイヴァーというエネミーを駆逐し、滅ぼさなければならない。

 そのためのBEMブレイヴ・エクス・マキナなのだ。


 『……本機はこれよりタイラント級を破壊する』


 『ブラックウイドー、指示を』


 ミキヒサが抗戦の趣旨を伝え、発令を促す。

 そして三人は初の、高レベルエネミーとの戦闘に備える。


 『良いわ。存分にやっちゃって頂戴。良い事? 負けたら承知しないんだから』


 『了解!』


 ミネルヴァ達は散開し、お台場の地を駆けた。




 まず手始めにミネルヴァは注意を惹かせるために『ハウリング・ヴォイス』で威嚇。

 レックスはすぐに食いつき、ギルマルチに向かって移動を始める。

 ギルマルチも先を走るが、遅い。

 それもその筈で、ティラノサウルスは獲物を追い詰めて狩るハンタータイプと死肉を漁るスカベンジャータイプの二説あるが、最近は後者の説が色濃い。

 よって、走行スピードはそんなに無いと考えているからである。


 『今だ!』


 足裏のエネルギー供給パイプ及びリード線を狙って二機のDONEの『プロミネンス』の銃口が火を噴き、ビームという名の高エネルギーの弾丸が命中する。


 『GYAU!』


 『マジか…』

 

 『でも効いてる』


 僅かな焦げ跡しか付けられずに悔しい思いが込み上げてきたが、ぐずぐずしているとあっという間にやられて全滅してしまう。

 それでもクリティカルの効力が効いているのか、ほんの1/10程度のダメージであるにも拘らず、レックスの表情も一瞬痛みで歪んだ気がした。

 レックスは二機のDONEを踏み潰そうとミキヒサ達の方向に顔を向けたが、ミネルヴァの『ハウリング・ヴォイス』の衝撃波で硬直。

 そのまま先程の狙撃ポイントに思いっきり噛み付いた。


 『GUGYA!? GYAOOOAAAAAAAAAAAAA!??』


 予想していなかったのだろう、苦痛に再び顔を歪ませる。

 単なる鉄屑の集合体の癖に通貨句があるのは何事か、と一瞬思ってしまったが、VRの、延いてはゲームだからと無理矢理納得させ、噛む力を強めた。

 痛みで暴れるが、ミネルヴァの操縦する機体が小さい故か其処まで器用に振り解く事も出来ず、またギルマルチの牙が線を噛み千切る勢いで傷め付けてくるので、更に倍増された痛みがレックスを恐怖のどん底へと叩き落とし、無限地獄のループへと導いて行くのであった。

 一方ミキヒサとゴーライオーは支給された物資も、補給も底を尽き、損傷はそれ程でもなかったが、機体消耗も激しい事から援護を断念、ミネルヴァの奮闘振りを見守る事しか無かった。


 『ブラックウイドー?』


 『…何よ、ゴーライオー』


 『もし、仮に、俺等がミネルヴァと同じ機体を手に入れたからって、あれと同じ真似が出来るか…?』


 『無理、ね』


 『…随分とあっさりだな?』


 『まぁ、そうね…敢えて言うなら私達には奇抜な発想を瞬時に行動に移せる程の行動力が無いって事ね』


 『それって、俺等に立ち向かえるだけの胆力が無いって言うのか?』


 『そうよ? ――――文句ある?』


 『…いや? 何でも』


 彼女の最後の一言に背筋を凍らせた男二人であった。


 『…粘るなぁ』


 ミネルヴァが噛み付き攻撃を仕掛けてから早十分、レックスのHPが残り三割を切った所で黒いオーラが体のあちこちから漏れ出し、噴き出される。

 だが、運が悪かったのか、直後に脚部に露出したパイプ等の線がぶちりと嫌な音を立てて切れてしまう。


 『――――――――――――――――――――――――――――――――!!!?』


 声にも出せない悲鳴が、バトルフィールドを支配した。

 片方の支えを失い、バランスを崩し、その巨体が地に叩き付けられる。

 こうなっては格好の餌食だ。

 好機と見た二機もここぞとばかりに再突撃を開始、そしてトドメにミネルヴァが胸舞に迫り出した深紅のコアを破壊、あっという間にレックスは只の鉄屑の塊へと果ててしまうのだった。




 「助かった」


 ミネルヴァ達三人はコクピットハッチを開けて、お互いの顔を合わせた。


 「さっきも言った様に緊急出撃スクランブルだったからね…偶然としか言えないって」


 髪止めのゴムを外すと、赤茶色の長い髪がふわりとほんの僅かに空気の抵抗を受けて降りる。

 よく観察すると顔も童顔というよりは美少女顔で、体付きもパイロットスーツの恩恵か、よりメリハリがはっきりと解る(特に腰回りが)。

 これで男性というから驚きだ。

 ――――目のやり場に困る、そんな言葉が相応しい。


 『こぉ~~~ら、そこの男子共(エロ猿二名)、何を見てらっしゃるのかしら~?』


 ドスの利いた少女ブラックウイドーの声がモニタ越しに響く。

 

 『何よ、そんなに私に魅力が無い訳?』


 「いや、誰もそんな事言ってないだろ?」


 『うっさい! 全く…最近の男共は同性でもすぐに発情しちゃうんだから』


 「いやちょっと待て、その暴言は明らかにおかしいぞ!?」


 『ホモォ(笑)』


 「やめい!」


 暫くミキヒサとゴーライオーがぎゃあぎゃあとブラックウイドーに弄り倒される光景が、ミネルヴァの記憶に刻まれる事となった。


 「しっかし…今んところ俺らしか見掛けないな」


 「まぁ、俺等βからやってる奴等なら兎も角として、第一陣にも一度も会って無いってのもおかしな話だけどな」


 「それこそアンダーグラウンドを探検してたりしてね」


 「あり得ない話じゃないのが怖いぞ」


 『ミネルヴァさんはこれからどうするんですか?』


 ブラックウイドーが今後の行動についてミネルヴァに訊ねた。


 「なーんも。ロボットを作って動かす以外興味無かったから行き当たりばったり」


 『じゃあソロって事?』


 「んー…そう、でもないかなぁ? “袖振り合うのも多少の縁”っていうし。もし宜しければエンジニアとして君達のチームに入れて貰えると助かるんだけど」


 『此方こそ! 願っても無い事よ?』


 「その前にフレンド登録お願い」


 「おう」


 ミキヒサとゴーライオーのフレンド登録を済ませると、(リアルでの)食事の為に一旦基地に戻ってから(異動のための整理含め)ログアウトを行った。

 名前:ミネルヴァ

 性別:男性

 【PSプレイヤーズスキル

・『空間認識』Lv3

・『地形利用』Lv2

・『適材適所』Lv6

・『設計開発』Lv1

・『修理』Lv1

 機体:『ギルマルチ=マイス』Lv8

 【AAアタックアビリティー

 ・『レーザークロー』(初期)

 ・『クローシューター』(初期)

 ・『テイルアタック』(Unlock NEW! 尻尾でエネミー撃破)

 ・『ハウリング・ヴォイス』(シュミレーションチュートリアルクリア報酬)

 ・『ブレイクファング』(LvUP NEW!)

 






 さて、ウイドーさんを知っている人は何人いるのでしょうかね…?

 キャラの名前を一部修正しました。

 (誤)カザミネ→(正)ミキヒサ

 今更ですが、都市の名称を変更いたしました。

 メガトキオシティー→旧東京都

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