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<青髪の少女Ⅱ>

 先刻、エルナードによって斬り飛ばされたごつい戦士のメイスは勢いまかせに空を舞い、そして乾いた音と共に石の地面に落下した。

 その音で我にかえったのか、エルナードの背後で縮こまる少女は脱げていたフードを慌てて被り直すとすぐさま距離をおいた。

 その様子を見ながら1つ呆れた息を吐くと、エルナードはすぐに視線をもとあった位置に戻した。ごつい戦士も先ほどの音で我にかえったのか、まるで鬼の形相とでもいうような顔でこちらを睨み付けている。

 俺はその視線に強く返し、1言口を開いた。

「いい歳した大人がよってたかって女の子1人をいじめるなんて、大人気ないよ。戦士さん」

「んだとガキ!! お前らみたいな異教徒やろうとなんか同じ空気吸いたくねえんだよ!」

 エルナードが剣をもって乱入した所為か、先程からギャラリーが騒がしくなっている。言い合っている戦士以外は唖然とした表情をうかべ、状況が理解できないといった様子だ。

 エルナードの前に立つ戦士は先程の武器破壊を気に入っていないようで、周りの仲間にも指示を出した。

「お前らも突っ立ってないでやっちまえ!」

 その言葉に反応した戦士数名は勢いよく駆け出し、やや混乱しているのか、本能のいうままに武器を降り下ろす。

 いくつもの風を斬り音が耳に響いた。わかりやすい動きで迫りくるメイス、スピア、ロッドなどいくつかの市販武器が発てる音だ。

 エルナードはそのすべての軌道を見極め、剣を叩きつけた。鈍い金属音を発しながら宙を舞う数々の武器を横目に見ながら、唖然とした表情を作ったまま固まってしまった戦士達を一目見た。

 今回ばかりは脳内情報処理が間に合わないようで、落下して地面に叩きつけられる武器の音を聴いても我にかえるものはいなかった。

 エルナードはこの好機を逃すことなく、その背後でフードを被り終えて再び固まっている少女を抱え、センスの手を強く引いて中央広場をあとにした。

 それからしばらく走り、現在地点は街外れの雑貨屋裏。

 道の途中で都合よくヘネスとも合流し、事情を説明したのちの今だ。

「さて、どうしたもんか」

 いきなり連れてこられた所為か先程の衝撃が残ってるのか、少女は固まったままだ。

「それにしても武器破壊とはね。君の剣の腕はどうなっているんだい? 昔だれかに教わったとか、それとも独学?」

 センスの興味はいまや少女からエルナードに移っているようで、質問攻めを受ける。

「うーん、半々かな? この剣を作った人に教えてもらって、そのあとは独学」

 エルナードはかつての師でもある人物をはっきりと思いだし、少なからず目元が熱くなった。

「ごめん。思い出したくないならいいんだ」

 そう、少々苦い話をしていると、エルナードの傍らで固まっている少女が我にかえったようで肩をつついた。

「ここはどこ?」

 少女は状況が理解できていないようでおどおどしている。

「ここは雑貨屋裏だ。君があそこにいるとなにかと面倒だからな、ここまで連れてきたんだ」

しかし少女は自分で聞いたにも関わらず、腰に収めたレイピアの安否を確認して、話を聞かずに安堵の溜め息を吐いていた。

「聞いちゃいねぇな」

 少々飽きれ顔のエルナードだが、少女の表情を見ていると昔を思いだし、言葉が見つからなかった。

「剣は……折られてないわね」

その言葉に「折るか!」とツッコミをいれたいエルナードだが、その次の言葉に息をつまらせた。

「先程の見事な剣さばき、あの武器破壊といったらもう。私を是非、あなたの弟子にしてください!」

 その破壊力にセンスやヘネスまでもが目を白黒させ口を開けて固まってしまった。

「ちょ、ちょっと待て、俺と君はあったばかりだし、俺にも色々とやることがだな」

「私もお手伝いします!」

「そ、それに、剣なんて使ってたらいつ狙われるか知れたもんじゃないぞ?」

「すでに覚悟はできてます」

「そ、そうだ、俺はギルドに入ってるからさ」

「私が入れば問題ないでしょう?」

「う、うぅ」

エルナードがうまく誤魔化そうとせども、少女は諦めることはなくそれどころか変にやる気になっている。

「お、俺は女の子が苦手なんだ!!」

 その言葉がエルナードの口からでた瞬間、その場の空気は一気に冷めた。熱くなっていた少女でさえも口を開けてポカンとしていた。

「そんな理由なの?」

「お前って最悪だな」

左右から攻める言葉と冷たい視線が来るが気にしない。いや、気にできなかった。少女の言葉の所為で。

「それなら、私で慣れればいいですよ」

 何を言っているんだこの子は?

 その言葉はとても信じられず、困ったものだった。実際エルナードは女が苦手というステータスを備えてはいるが、その他にもエルエスの亡霊のこともあるし、何よりエルナードが闇の力を継承していることが問題だった。

「困ったことになったな」

 エルナードは飽きれ顔でフードを脱いだ少女の顔を見た。

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