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<青髪の少女Ⅰ>

今回は今章最大重要人物の再登場です。

 昨日の晩、俺は最近一番の噂となっている≪エルエスの亡霊≫と対峙した。その戦闘で得た情報はとても乏しいもので、わかったことと言えば、亡霊の正体は実体を持つ少女でありその狙いが≪リノ≫を苦しめたという光の力を多く持つものではないかと予想させるものくらいだ。

 そのリノというのがなにものかはわからないが、その行動が間違っているのは確かだった。彼女がそれに気づかなければこれからも被害者は増すだろう。それを無理にでも阻止するべきか、放っておくべきか、悩ましいところだ。

 俺は今エルエスで借りた宿屋の2階の自室に篭って頭を抱えている。その原因は昨日のことだが、あの少女の事ではない。自分自身のことだ。

 昨日は不本意ながら頭に血が上って、ついつい闇の魔力まで披露してしまった。あそこでもし人が見ていたとするならば、変な話始末まで視野に入れなければならない。それほどまでに重要な事なのだ。

 この世界にいる闇の力の継承者は全てで10人だと言われている。それははるか昔の伝承からなるもので、信憑性に欠けるものもありはするが、それ以外にこれといった情報もないことから、信じざるをえない。俺は今のところそのなかで面識のあるものは一人もおらず、ある意味ボッチ状態だった。

 そんなとき、どたどたどたっ!! と、1階から何かが階段を慌てて登る音がした。がしかし、俺は気にしない。俺がこの街で面識があるのはセンスとへネスのみで、センスはこんなに慌てるような自体を起こすまたはおきても冷静でいると予想され、へネスはそもそもここに来ようとしないだろう。

 しかし、次の瞬間その俺の考えは否定された。へネスのほうは思った通りらしく、センスだけが1人で部屋に飛び込んできた。

「ど、どうしたんだよお前がそんなに慌てて」

 正直わけがわからない。そもそもセンスお前どうやってこの部屋に入った? そう思った刹那、俺の視界には黒くこげた扉が目に入った。そして、センスの右手に握られる小槍もまた、目にはっきりと映りこんだ。

 お前、ドア壊しやがったな……。

 そんな俺の恨めしい視線に気づいているのか気づいていないのかは知らないが、その焦りに満ちた表情からはよほどの事態であると感じさせた。

「な、なにかあった?」

俺がそう問うてから答えるまでに、センスは酸素を肺へ送るためいくつか深呼吸をした。

「そ、それが、中央広場に、細剣(レイピア)を持って暴れてるヤツがいるんだ。フードを被ってて顔は見えないけど、多分子供だ。剣持ってるからって、ごつい戦士達にどうにかされそうで、君ならと思ってきたんだ。君も、剣を使うし」

 フード、そしてレイピアの2言で俺の体は自然と動き出した。もしそれがエルエスの亡霊こと、昨晩出くわしたあの少女かもしれないと言う可能性があるからだ。そう考えると、いても経ってもいられない。あの少女じゃなくても、話に言っていたリノっていう可能性も否定できない。

「センス、今すぐ俺をそこに連れて行ってくれ」

「ああ。すぐ行こう」

俺は最近愛用している黒い耐寒性に優れた生地を使用したコートローブ《クールスナイト》を着ると、背中に剣を鞘と共に背負い、フードを目深に被った。そして部屋を出て、勢いよく破壊された扉を力一杯に閉め、階段を下りた。その瞬間扉は完全に崩壊し、数枚の板になったとき俺はひそかにセンスに弁償させる術を考案していた……。

 中央広場にて――センスの言っていたとおり、大きな人だかりができており、中心にはやたらごつい旧式装備を身に纏う戦士と、それに押されるフードを被った背の低い誰かがいた。

 その剣筋を見るに昨夜の少女ではない事は明白だ。それにより、リノという人物である可能性がやや増す。

 そして、俺とセンスがその人ごみの中心にたどり着いたころ、フードの内側の顔をその場にいるうちのごく数人が見ることとなる。

 振り上げられた剣により生じた風がフードを払ったのだ。驚くべきスピードでそれを元に戻しはしたものの、俺たちのいるほうではその顔がはっきりと見えた。

 その正体は青い髪をした少女で、苦戦している所為かあまりさえない表情をしていた。しかし、少女の顔を見たセンスの反応のほうが、俺には多くのクエスチョンマークを浮かばせた。驚いた顔をしているは変らないのだが、他の傍観者とは少し違った驚き方をしていた。

「どうした?」

「私たちは彼女に1度会ったことがあるんだ。シュルトの酒場でね……と、いうわけで」

 その話に一度言葉を失い、再び視線を中央に向ける。ごつい戦士数名と武器を交える少女のほうだ。先ほどから見ているものと、センスから聞いた話を聞く限り、おそらく少女から仕掛けたわけではなく、剣を見た戦士たちが仕掛けたのだろう。今の時代、広間にて自ら剣をさらすのは馬鹿でしかないのだがな……。

 しかし、このまま斬られるのを見ているわけにも行かない。

 俺は少しずつ人の波を分けて中央へ近づいていった。あともう少し、あともう少しでたどり着く。そんな、ごつい戦士1人が動きの止まった少女に大きな槌矛(メイス)を振り上げ、勢い任せに下ろした瞬間だ。

 俺の剣シルバークロスが戦士のメイスを破壊した。かなりの難易度があり、下手をすれば自分の武器すら壊してしまうかもしれない武器破壊だ。しかし、これを行い相手の武器を破壊できるという絶対の自信が俺にはあった。そんじょそこらの戦士の使うような武器とは違い、この剣を鍛えたのはかなりの腕の立つ職人であり何よりも信頼できる人間なのだ。その剣が市販の武器に劣るはずがない。

 俺の背後で武器破壊から来る衝撃風によりフードを再び払われた少女は、目の前の光景に目を張り、フードを戻すどころではなくなっていたことには、俺もしばらく気がつかなかった。

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