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<神が禁ずる物>

今パートは正直言って昨日書いたので覚えていません。

すいません、眠かったもので……

 剣――それは神によって禁じられた武器とされる。

 聖祭に使用される短剣の類を除きすべての剣は、神の命、魂を削るものとして恐れ拒まれているのだ。

 それを扱うものは異教徒とされ、人里を追放され、野を彷徨うこととなった。それが、神を信じ、崇めないものの主な末路だった。


――異教徒じゃねぇか!!

 この言葉を聞いたのは何度目ぐらいだろうか。いままで幾度も聞いて、受け流し、その先を歩き続けてきた。

 へネスは俺に当たり前のようにその言葉を放った。熱も持たない無機質な言葉。特別な意味を持たない平たい言葉だ。

 俺はその言葉を当たり前のように受け流し、目の前に立ちふさがるレス・シェアキャットに対して特殊スキル《ソニック・ストライク》を繰り出した。

 シルバークロスに鋭い風を纏わせ、体を中心軸にして回転するように斬りつけた。切り傷周辺を風が更に細かく切り刻み、ダメージを蓄積させる。

 仕留めるには及ばないが、相当のダメージを与えたはずだ。

 もしシェアキャットが通常サイズだったら、俺の予備武器(サブウェポン)の短剣でも討伐できただろうが――いまさらそんなことを考えていても無駄だった。

 レス・シェアキャットも今の特殊攻撃はそれなりに答えたらしく、大きく怯んで先ほどから大きな動きを見せない。微かに低いうなり声をあげ、こちらをジッと睨みつけている。

 センスは俺と共にレス・シェアキャットを睨みつけているが、へネスはそちらには気が行かず俺のほうをずっと睨みつけている。その視線は感情のこもったものではなく、ただ例に倣い睨みつけているといった感じだ。今となってはこの視線に対し、逆に同情してしまう。

 しかしへネスもさすがに戦闘中には無駄な気を起こせないようで、一応はレス・シェアキャットに注意が向いてはいるが、先ほどよりも俺とやや距離が開いていた。

 俺は軽くため息を吐きつつも視線を魔獣に戻し、深く息を吸い込む。そして、それを含めたまま大きく目を見開き行動に移る。

 大きさのあまり瞬時に背後に回る事はできないので、正面からやや右にそれた位置につく。

 そして、体勢を低く直し、それをばねのように利用して再びスキル《ソニック・ストライク》をレス・シェアキャットの首筋におみまいした。

 先刻の攻撃を直撃していたレス・シェアキャットは瞬時な回避行動をとることができず、力尽きて洞窟の冷たい石床の上に体を倒した。それから一切動く事はなく、緊張の糸が切れる音がしなくもなかった。

 しかし、切れたようなそれは、再びきつく絞められてしまう。それは、へネスによるものだった。

「――おい! お前、説明してもらおうか。それについて」

「おいへネス!」

 へネスの視線は収まる事を知らず、ついには俺の限界まで続いた。

 1つ軽いため息を吐いて、俺はへネスに向き合った。

「へネス。お前はどうして《光の神レオルト》を信じる……?」

 《光の神》――それは剣を禁ずる神であり、この世を占めるとされる神だ。

「そんなの決まってるだろ? 《光の神》が最上なんだ。そのほかに理由がいるか?」

「《光の神》が最上……ね。なら聞くけど、《闇の神》はどうしちゃったんだろうね。もともと《闇の神》と《光の神》が力の均衡を保ってたんだ。何が原因で喧嘩になったのかね?」

「そんなん決まってるだろ? 《闇の神》が馬鹿やらかしたんだよ。神話でもそう言ってるだろ?」

 へネスは誰かが定めた当たり前の答えを当たり前のように語った。が、エルナードにとってはこれも聞き飽きた台詞で、苦笑した。

「だよな。皆そう言うんだよな。だが、俺はそうは思ってないんだ」

「どういうことだ?」

 妙に張り詰めた空気が漂い始める。その空気はとても居心地が悪いもので、今にでも抜け出したい。

「さぁね。神様にでも聞いてみれば?」

「神様になんて訊けると思ってるのかよ? そもそも今は《光の神》しか居ないんだ。もし訊く様な機会があったとしたって、相手になんて――」

「いや、《光の神》だけじゃない」

俺のその言葉が放たれた瞬間、その場の張り詰めた空気は全てなくなった。へネスの顔はこちらを見て、小馬鹿にでもするような目線を送っている。それと比べてセンスは、先ほどから真剣な表情でこちらを見ている。正直それは俺にとって不思議以外の何者でもなかった。

「《光の神》以外にも、まだいるぜ?」

「なに?」

「ああ、そうだ。《光の神》、そして、《闇の神》だ」

俺の言葉によって再び場の空気が変り始めた。へネスの小馬鹿にするような視線は、ぎこちなく送られ、センスの真剣な顔は一層濃くなる。

「闇の神がまだ生きてるって? 何を根拠に」

ぎこちなかったへネス視線はしばらくすると元に戻り、馬鹿にするように問いかけてきた。本当は答えてやる義理もないのだが、センスの真剣な表情を見ているうちに真実を知ろうとする自分と重ねたのかその気になった。

「闇は生きている。死んでいるのなら、夜もなければ影もないだろう?」

まぁ実はもう1つあるんだが、それは確信がないから言えないか。言ってしまえば、俺はそれの確信を得るために亡霊のいるエルエスにきたんだが……。

 とりあえず、この話を聞いて全てを信じるか、全てを否定するかは彼ら次第だ。

 その答えを聞くまで、俺はじっと沈黙を耐えた。

「全てを信じるのは無理があるけど、まるで嘘や出任せを言ってるとは思えない……君さ、もしかして《片翼》でしょ?」

「うっ……」

《片翼》――その言葉はいままでのそれとは違い、聞きなれて入るもののなかなかなれない言葉だった。その意味はとても複雑なもので、その由来はとてもシンプルなものだった。

 《片翼》とは、この俺――エルナード=グロウエルに付けられた二つ名のようなものだ。意味は複雑といったが、それは他人からしたらの場合で、俺からすると実は簡単な事なのだ。それは俺に闇の魔力があるということに由来する。

 俺は《闇の神》と《光の神》の末裔の間に生まれた人間だ。2人姉弟の弟である俺には闇の力が薄く継承された。よって、本当は両目とも金色のはずがどちらも黒く、意図的に闇の魔力を開放しても金色になるのは右目だけなのだ。

 だがまぁ実際、闇の魔力だとかそういうのはまったく知られていない。一般人からしたら、多分俺は目の色がなぜか変る変人ということになるのだろう。

 そこから付けられたのが、俺の二つ名みたいな《片翼》だ。

 俺はその名で呼ばれ続けているのだが、どうしても聞き慣れない。

「……そうだ。だからどうした?」

「いや、それなら、その話は信ずるに値するものかなと思ってね」

「おい、正気か? こいつは異教徒な上にイカレ野郎だぜ? こんなやつの話信じたっていいことなんて1つもないぜ」

相変わらずへネスの反応はガキのようなもので、センスも若干苦笑しながらため息を軽く吐く。

「へネス、君はどうしてそうなんだよ? 実際影も夜もあるんだ。おかしな話じゃないだろう?」

「……でもよ」

「まったく、へネスは昔から疑り深いというか捻くれてるというか」

 センスの言葉を聞くなりへネスも少し考え始め、しばらくの時が過ぎた。

 結局、レス・シェアキャットに俺が魔道転送網(テレポーター)を覆いかぶせて、センスとへネスを前にして俺たちはエルエスへと帰還した。

 へネスはどうにも答えが出ないらしく、しばらく考えさせてくれとのことだ。

 いつもの通り正体がばれないように、というより剣が見えないように黒いコートローブのフードを深く被り街に入った。へネスの口から真実が語られるのではないかと少し心配ではあるが、センスが止めてくれるだろう。

 そう確信しつつ、俺は借りた宿の部屋に戻り、荷物を整理し、来るべき夜を待った。

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