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<透明な声Ⅱ>

終わりのほうは後で書いたので、文章が変になってしまいました;

――エルナードサイド。

 タイルの床から、とうとう洞窟の中であるというのに大理石の柱までもが目に映るようになった。

 エルナードたちは俯きそれをチラチラと見ながら、なんとなく《これじゃない感》を抱いていた。

 洞窟といえばで大理石の柱とか絶対に出てこないよな? これってあれか、俺が可笑しいのか? いや、そんなことはないはずだ。少なくとも今の場合は……。可笑しいのは絶対にこの洞窟だろ?

 エルナードは額に汗を浮かべながら、心の中で必死に呟いた。

 リノもその例外ではない。

 なんでしょうか、地上に帰還したいのは山々なのに、これ以上進んでしまったら私の中で洞窟というものの定義がなにかおかしなものになってしまう気がします。なんででしょうかー!

 2人はとうとう、大理石の柱のある空間をすぎるまで、俯いた顔を上げる事はなかった。

「師匠、アレはなんだったんでしょうかな」

「言うな、変に考えるとなんか大事なものがなくなる気がするから。まぁでも、きっとあれだよ。ココは神殿か何かなんだよ。うん、きっとそうだ」

「きっとそうですね……」

 2人は自分達の中で勝手にそう決め付けると、そそくさと道と進んだ。

 そして、それからしばらくあるくと、とうとう念願の地上に近づいていることを感じさせる出来事が起きた。地面が下向きではなく、上向きになってきたのだ。

 緩やかなので気付くのは遅れたが、それでも2人は大いに喜んだ。

「よかったですよ師匠! まだ希望はあります」

「ああ! そうだな、ここから上にいけるかもしれない!」

 しかし、まだまだ先は長い。なにせこれまでより地下に向けて道を進んできたのだから……。

――その時、はるか後方から爆発音が聞こえてきた。それも何度も何度も鳴り響き、しばらくして鳴り止んだ。

「なんだったんでしょうか……」

「わからないが、もしかしたら敵かもしれない。慎重に進もう」

 爆発の正体は分からない。だが、警戒するにこしたことはない。

 エルナードとリノは歩きながらも背後を警戒しはじめた。

 綺麗に敷き詰められたタイル。無造作に掛けられた松明。そして、天井から滴り落ちる水滴。そのどれもが、洞窟の奥深くにいるということを感じさせた。それにより、緩んできていた緊張の糸が再び締めあげられた。

 水溜りが増えてきた。

 歩くたびにぴちゃぴちゃと地上でも地下でも変らない音をたてる。

「結構歩きましたけど、あんまり地上に近づいているって実感が湧きませんね。本当に地上に向かってるんでしょうか?」

「向かってるに決まってるさ。その証拠に、水気が増えてきた。おそらくいま俺達はあの広大な湖の下にいるんだろう。だから、このまま進んでいけば地上に出られるって、な?」

「……はい」

 そうと入っているものの、リノは進めば進むほど疲れが溜まってきてでもいるのか、どこか元気がないようだった。

 それから、またしばらく歩く。

 さすがのエルナードも歩き詰めで疲れが溜まってきていた。しかし、ここで弱音を吐くわけにはいかないと、我慢していた。


――助けて――


 突然、誰かの声が聞こえた。

「リノ、今なんか言ったか?」

「いえ、なにも言ってませんけど? どうしたんですか? なにか音しました今?」

「い、いや……」

 気のせいか、そうエルナードは思った。

 しかし、それは違った。


――私をココから助けて――


――お願い連れ出して――


 それから幾度も、同じ声が聞こえた。

 しかしどれもリノの声ではない。そのうえ、リノには何の音も聞こえていない。

「いったい、なんなんだ……?」

エルナードは頭を抱えて考えた。しかし、答えは見つからない。


――助けて、エル……――


「……!?」

 名前を呼ばれた。聞き間違いかもしれない。違う人物かもしれない。それでもエルナードは自分の事だと確信して、走り出した。

「し、師匠!?」

 リノは何がなんだか判らないというようではあるが、とにかくエルナードの後を追いかけた。

 エルナードは何かに執り付かれたようにどんどん走る。前に何があるのかも分からない。しかし、間違いなく前に進まなければいけないという使命感が彼の中にはあったのだ。

 はぁはぁはぁ……。

 息が切れながらも止まることなく走った。

「ぁ…………」

 エルナードはいつの間にか目の前に広がっていた光景に絶句した。それは、自分のいる空間を疑わせるものだった。

 地下から光の指す泉に不思議に浮かぶ石のタイル。岩の壁から垂れる草のつる。そして、泉の中心の岩場に存在する、謎の氷塊。

 その全てが、エルナードを魅了した。

「ここは一体……。もしかして、本当に何かの神殿か?」

 エルナードは何かを考えてというわけでもなく、ゆっくりと泉に浮かぶタイルに足を伸ばした。足を乗せても沈むこともなくぷかぷかと浮いたままだ。水面上のため少しバランスが崩れそうになる。

 一枚、また一枚と、足を進めた。

 そして、泉の中心――氷塊の許へとたどり着く。するとまた驚くことに、その氷塊の中には人が入っていたのだ。しかも、どうやら死んでいる様子はなく、眠りについているように見えた。

「これは、いったい……」

 氷塊に触れる。

 冷たいという感覚はあった。そこから流れる冷気のためか寒いという感覚もあった。しかし、それ以上に、触れたことでよく透けて見えた中身に、エルナードは再び絶句させられたのだった。

「…………」

 口を開けても、言葉は出ない。それどころか、両の目から涙が溢れてきた。視界はにじみ、まぶたの裏で過去の思い出と化していた光景をよみがえらせる。

 エルナードは、声の正体を悟った。

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