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<透明な声Ⅰ>

透明な声って何ぞや

――エルナードサイド。

 どこからか差し込む光に照らされる岩に包まれた道を、出口へ――上へと向けて歩き続けていた。

 状況はあまり進展していない。唯一変わったことと言えば、足場が……ゴツゴツした岩からきれいに敷き詰められた石のタイルになっているということだけだ。

「なんか、雰囲気変わってきたな。この先にいったい何があるのか……」

「本当ですね。なんか神秘的です。地下の洞窟なのに、光が指して、その上道がしっかりと整えてある。もしかしたら、この先に例の《ヒント》があるのかもしれませんね。だとしたら、私たちは運がよかったのでしょうか?」

リノは唇に指をあて首をかしげる。

「さぁ、どうだろうな。このままヒントを見つけられて、さらに地上に戻れたら、運がいいんじゃないか?」

エルナードは後ろを振り向くことなく、歩き続きた。

 そんななか、とある疑問が頭のなかでぐるぐると回っていた。

 なぜ、あのとき俺はあの頃を思い出したのか……。夢を見ているような感覚はまるでなかった。いままで、1度も夢に見たことはなかったのに。なぜ、いまになって? なにか意味があるのだろうか? だとしたら、この道の先、いったい何が待っているんだろう……。

 エルナードの心には不安と期待が積もっていた。

 景色は相も変わらず。岩の壁に天井、タイルの床がどこまでも続いていた。

「先は長いな……」

――一方、センスサイド。

 センスはすでに意識を失っており、ヘネスに背負われていた。ヘネスの白いローブを真っ赤に染めながら。

 ヘネス自信も、センスの傷口が再び開けばそれ間違いなく致命傷になりえるので、慎重に道を進んでいる。

 目指すは闇の魔力――治癒の能力――をもつリノのところだ。一刻も早く、一刻でも早く見つけ出し、センスを治療してもらわないと、本当にセンスの命が危ない……。

「急げ……! 早くしないとセンスが……!」

 走り続けて体力もほとんどない。しかし、そんなことは気にさえならなかった。

 松明群を抜け、再び暗がりに潜り込む。

 しばらくすると目もそれに慣れ、視界が改善される。

「ユマ、水矢で前を打て! うっすら見えても、道が塞がれちゃ意味がない」

「うん!」

ユマはうなずくと弓を構え、空気中の水分で形成した水矢を前方に射ちばらまいた。

 そこから跳ね返ってくる水はない。

 ユマの放つ水圧なら、その反射でおそらく30メートルくらい先の物体に気づくことができるだろう。

 つまり、いまヘネスたちの正面、それほどの距離の範囲には障害物がないのだ。

 そう判断するや否や、さらに走る速度を加速させて、暗がりを突き進んだ。

 すると、そこから約100メートルほど進んだ辺りで、水が跳ね返ってくるようになった。

「クソッ! ここまで来て行き止まりかよ! どっかで道を間違えたのか? それとも最初から道は繋がってなかったのか?」

ヘネスは多いに取り乱した。そして、絶望した。

「くそっ、くそっ……。諦めない。諦めないからな……センスは絶対に死なせない。こんなところで殺してたまるか!」

 どこにも光が見えなくても、それでもヘネスは岩の壁に拳を叩きつけ続けた。

 するとその時、2人の右側から、何かの物音がした。

「なんだろう?」

ユマは不振に思い、警戒した。しかし、いまのヘネスにはそんな余裕はなく、すぐさま音のした方へいくと、あるものを見つけた。

「これ、ドアノブ……? まさか、何かの部屋が?」

 ゴツゴツした壁にはひとつのドアノブがついていたのだ。しかも、それは城の機能のようにまったく寂れていなかったのだ。

「最後の可能性……。こいつに賭ける……!」

 ヘネスは力一杯扉を押した。すると、扉が消えた。

 正直意味がわからなかったが、やはりそんなことは頭の中の片隅にすら入らなかったのだった。

 とにかく、センスが助かる可能性、リノの許へとたどり着ける可能性があると信じていたのだ。

「あそこか……」

 消えた扉の奥、部屋の隅に物音の正体があった。依然カタカタと揺れ動くそれは小さく光を放ち、それでいて熱を持っていなかった。

 上にかぶさっていた布を払うと、勢いよく飛び、宙に浮いた。

「これは、何かの機械か?」

「多分……。でも、今まで見たことのない形だね。製作者は、ヲルブ? はじめて聞くね」

うしろから声をかけるユマも、不信感はどこかへ行き、その物体に疑問を抱いていた。

「んでも、こいつがあれば足元もはっきり見える。もしかしたら、ここの他にも岩に隠れてる道があるかもしれない。急いで探そう」

「うん」

 それからヘネスたちは周辺の探索を開始した。壁となる岩を念入りに探り、どこかに突破口がないかと探し続けた。

 そしてとうとう――突破口になりえるものを見つけたのだ。はじめ行き止まりだと思っていた岩の壁に見つけたそれは、肌を合わせれば分かるレベルの小さなものだ。向かいから少しずつだが、風が来ているのだ。

「ここを崩せば、前に進める……」

 しかし、センスが瀕死状態であるいま、その岩の壁を崩すのは簡単な事ではない。

 ここからは、壁との時間のない戦いとなる。

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