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<吸血猫の舞>

今回も大して進展しませんでした。

しかも2000文字超えてしまったな~。

やっぱ2000じゃ少ないかな。もう少し増やすかな?

 橋の下で流れる水の音と、いくつかの砂利を踏む足音が耳に、森に響いている。今日は快晴で空からの明かりがより一層強いが、周囲は木々で囲まれているため、木漏れ日となってちょうどいい具合の光だ。気温もちょうどいい具合で、とても快適な日といっていいだろう。

 いいのだろうが――

「どうしてお前達までついてきてるんだ?」

 この時森の中に響いていたエルナード以外の砂利を踏む足音の正体は、先日エルエスで出会ったばかりのセンスとへネスだった。

 センスはどうやらエルナードについて観察――といった具合で、へネスはいまだにエルナードについて警戒しているのか、表情が強ばっている。

「いや、協力してもらうにあたり、どれくらいのものか見させてもらおうと思ってね。それに、へネスの警戒も解かないといけないし」

 3人は今、エルエスの総合ギルドで受けた魔獣討伐依頼の遂行中なのだ。今回のターゲットはこの少し先に潜む吸血(ドレイン)を得意とする猫型魔獣レス・シェアキャットだ。

 このレス・シェアキャットは雌で、主に吸血(ドレイン)で獲物の生命力を吸収して、その肉ごと巣に運ぶといった習性を持つ、なんとも厄介な魔獣だ。雄の個体はロス・シェアキャットと呼ばれ、基本的には巣で雌の帰りを待ちながら子の周囲を警戒している。

 しかし、今の時期は育成期、繁殖期ではないのであまりそれを警戒する必要は無いだろう。

「はぁ。怪我しても知らないからな」

エルナードの無愛想な対応は変らず、後ろのへネスはいつ飛び掛ってくるか知れたものではないが、その隣でセンスがそれを止めているお陰で何事も起きずにすんでいた。

 そうして幅広い川の上を通過し終えると、微かに血の匂いが漂ってきた。

「そろそろだな。血の匂いがする」

「そうか。いつでも武器を取れるようにしておこう」

エルナードの言葉にセンスは慎重になるものの、へネスはどこか納得がいかないのか、「何言ってんだ」と、顔を横に振っている。

 しかし、それもすぐに終わった。道の先に、薄っすらと足跡が見えたからだ。近づくとどうやらそれはまだ新しいもので、跡の上にはまだ砂や埃などもほとんど乗っていない。

 そして、その横を太い一本のラインが無い事から、エルナードの頭にはひとつのヒントが浮かんだ。

「今回のレス・シェアキャットは独身だな」

「そうだね」

 基本的に、シェアキャットの雌――というより妻・母としての役目は、吸血(ドレイン)で手に入れたエネルギーの提供と、獲物の肉塊の運搬だ。しかし、運搬していたはずの肉を運んだ形跡がここには無い。とすると、導き出される答えはただ1つだ。シェアキャットは基本的に独身の場合、駆った獲物をその場で食べてしまうのだ。他の固体に盗られないために。

「んでもよ、そのレス・シェアキャットが軽く持ち上げられるくらいの小型を持ってたってのはないのかよ?」

「いや、ないな。シェアキャットは1回に食う量が多い。それも旦那子供と合わせて複数となれば尚更だ。その線はまず無い。それにロス・シェアキャットは怒りっぽいから、そんなちまちまやってられない。……なんだよ?」

 エルナードの話は物珍しいのか、センスは話の間ずっと興味深そうに聞いていた。その表情にクエスチョンマークが浮かび、エルナードは問いかける。

「やけに詳しいな、と思ってね」

「山育ちだからかな」

 エルナードが幼少の時代、シェアキャットとはよく喧嘩になった。喧嘩といっても、基本的には本気の殺し合いなのだが……。

 そんな他愛無い話を続けるうちに、とうとう目的の洞窟にたどり着いた。

「ここが巣だな」

 いつの間にか足元でなる砂利の音も消え、シェアキャットの足跡も、数を増していた。

「だね」

エルナードとセンス、へネスはお互いに顔を見合わせてゆっくりと足を前に進める。先ほどまで痛い視線を送り続けていたへネスも、真剣の表情になり戦場を見つめていた。

 洞窟の中は不気味なほど静かで薄暗く、なんとか周辺を見渡せるといった具合だ。エルナードは山育ちなのがあり、そこそこ夜目は利くのだが、センスとへネスはそうでもないらしく、足元がおぼつかない様子だ。

 おまけにシェアキャット自体がもともと夜目がとても利くのだ。常に神経を研ぎ澄ませていなければ、不意打ちを受けてしまうだろう。

 足音を忍ばせつつ、エルナードは周囲を見渡すが、そこにレス・シェアキャットの姿は無い。

「油断するな。もしかしたら後ろから来るかもしれないからな」

 小声で助言しつつもエルナードは足を前へ進めた。

 刹那、エルナードは右足を振り上げるのと共に後方からの強い殺気を感じた。それはとても確かなものとは言えないものの、振り向いて確認するには十分なものだった。

 洞窟の入り口に立ちはだかったのは雌のシェアキャット――レス・シェアキャットだった。しかも、その大きさはエルナードや他の2人が今までに見てきたものとは比べ物にならないくらい巨大なもので、思わず息を呑む。

 お互いにその力量を測るかのように睨み合いつつ、エルナード、センス、へネスの3人は自らの武器をその手に持った。

 センスは小槍(スピア)使い、背中から小振りの槍をとり、右手で強く握って敵に向ける。そして左手につけた円形の盾を前に出す。

 へネスは治癒魔導師(ヒーラー)らしく、1歩下がって小型魔法石のはめ込まれた軽量槌矛(メイス)を手に取った。

 ちなみにこの魔法とは、戦闘用スキルの中の1括りで、基本的には体内にあったりなかったりする魔力を、魔宝石の力を借りて形にしたもので、人によって対応する魔法は異なる。逆に言えば、魔法石を持たない場合は魔法を使う事はできないのだ。エルナードのような例外も、いるのだが……。

 さてレス・シェアキャットもまた、こちらに対して攻撃対象・獲物と認識したようで、体勢を低く保ち、いつでも瞬時に動ける体制となる。エルナードたちもまたそれに倣い武器を構え、体勢を低くする。

 そして、どちらからでもなく戦闘の火蓋は落とされた。

 癖なのか、レス・シェアキャットは1度体を左に傾けると、先頭にいるエルナード目掛けて飛びあがった。それを見て、エルナードはフードを払い、背中から愛剣シルバークロスを抜いた。

 そして、例の如くスキル《カウンターエッジ》を繰り出そうとする。しかし、それをさせないかのように巨大なシェアキャットは前足を交互に振り、カウンターの隙を与えない。

 それを見て、センスは右サイドから盾を構えつつ槍で一突きした。それにより、シェアキャットはエルナードから離れ、エルナードも崩れかけていた体勢を元に戻した。

 そんなとき、目の前に広がるその光景にセンスは何も口を出さなかったのだが、へネスは即効口出しをした。

「おい! てめぇそれ――お前異教徒じゃんか! 俺はこんな野蛮なやつとは組めねぇぞ!」

 その言葉は一瞬でエルナードの耳に届き、聞きなれた言葉と苦笑した。

 目の前に立ちはだかるシェアキャットを前に、でてくるものがまさかの苦笑だけだった。

 この状況の中、エルナードは勝利を確信していたのだ――。

感想・評価・意見等いただけましたら改善・反省・次回構成などに活かさせて頂きます。

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