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<独蛇の尻尾Ⅰ>

むりやり2回に分けた。

 センスが武器を構えるのを一目見ると、メリーは背後に広がった先の見えない暗闇へと、嘲笑うかのように姿を消した。

 しかし、センスはそれを追うことができない。仮に追っていっても、視界のはっきりしない暗闇の中ではすぐに毒を浴びてあの世行きになるのがオチだ。

「クソッ、暗闇じゃあどこにいるか分からない」

 その反面、向こうははじめ暗闇の中から出てきたってことは蛇の嗅覚で僕らの位置を確認できるんだろうし、一体どうすれば勝てる? 考えろ、考えるんだ……。

 センスは自らに問いかけた。しかし、答えは見つからない。

――すると、なんの前触れもなく、スッと突如暗闇の中から長い1本の鋭い刃……いや、黒い大蛇の尻尾が飛び出してきたのだ。しかもそれはすでに飛び出してきていたのに気付いただけで、その動きは静止するまでまったく目で捉えることはできなかった。

 いや、それも違う。センスがその黒い刃のような尻尾の存在に気付いたのは、自分が攻撃を受けたからだ。

 よく見れば、蛇の尻尾はただ色が黒いのではなく、血が付着したところから、徐々に黒く染まっていっていたのだ。ほかを見れば、それは真っ黒というほど黒くはなく、どちらかといえばダークグレーというような体色をしていた。

 センスは運よく左腕を擦っただけのようだったが、それでも出血は多かった。止まることなくポタポタと地面に垂れていっていて、気付けばセンスも多少呼吸が荒くなってきていた。

「おい、センス大丈夫か! 少し下がれ!」

「……いや、下がれないよ。僕が下がれば、ヘネスたちのほうに攻撃がいく。だから、僕は下がらない。……それに、左腕からなら、そこまでひどい出血にはならない。このまま戦う。なんとかして、あいつの居場所を……探り出す」

 センスは今もなお少しずつ血を流し続ける左手をたらしながら、右手に握った小槍リュース=トックを暗闇の広がる前方へ向け、少量の魔力を込めて小さめの火球を放った。

 しかし、ある程度進み激しく発光して衝撃音もするものの、照らされるのは洞窟の岩のみで、メリーに掠りさえもしていなかった。

「アーッハッハッハッハ!! どこを狙ってるのかしらね? まったく当たりもしないわ」

 洞窟中にメリーの高らかな笑いが響き渡る。その音から位置を探ろうにも、朦朧とする意識の中、洞窟という閉鎖空間で跳ね返る音からは何の情報も掴む事はできなかった。

「次はどこを狙おうかしらね? ……足かしら?」

――メリーがそういった瞬間、センスの右足に激痛が走った。蒼い炎によって照らされた岩壁に血が飛び散る。

 またも黒い刃の如き蛇の尾によって、センスは気付く間もなく攻撃を受けたのだった。

「センス!」

「――大丈夫だ! だから、前に出るな……。君は後衛だろう、前に出るのは僕だけで十分さ」

 傷つけられた右足は蛇の神経毒か何かか、痺れて感覚がなくなっていた。左腕もそうだが、だんだん痛覚もなくなってきた。動いていないから進行は遅いが、着実に回り始めている。

 尻尾を暗闇に戻っていくのとともに右ひざを地面につき、センスは再び前方に向かって火球を放った。

 しかし、メリーにはやはり命中することなく、しかもそのうえメリーは馬鹿にしているかのようにすれすれの位置に立っており、センスを挑発してるかのようにも見えた。

「あら、おしい残念ね。あともーちょっとだったのに。一体いつになったら当てられるのかしら?」

「チクショー……。おいセンス、あんなヤツの言う事は放っといて、やるなら冷静にやるんだ。お前なら絶対にやれる。俺はお前がかつって信じて待ってるんだからな!」

 ヘネスの声がこの時点で届いているかどうかは、他の誰でもないセンスしかわからない。しかし、この時、誰もがセンスは神経毒によって既に後ろの声が聞こえていないものだと思っただろう。

 センスは、深い闇に向けて、幾度も幾度も火球を放った。

「どうしたの? とうとう可笑しくなっちゃったの? アーッハッハッハッハ!! 滑稽だわ、もともと馬鹿だと思ってたけど、魔力の無駄遣いもいいところね!」

 それでも、センスは火球を放ち続けた。撃って撃って、撃ちまくった。

 背後で見守るヘネスとユマも、この光景には謎を抱くしかなかった。

「で、それで満足?」

 センスが火球を放つのをやめた。

「ああ、満足だねぇ。あなたのおかげで、勝機が見えたんだから」

「なんですって……?」

メリーは眉間にしわを寄せる。

「試しに後ろを見てみるといいよ。そうしたら、僕がなにをしたのか分かるから」

 メリーは後ろを振り向いた。――そして、驚愕する。

 メリーの背後、深い暗闇だったはずが、いつの間にか明かりが灯っている。岩の壁に設置されながらも寂れていた松明に火が灯り、洞窟をある程度奥まで照らしていた。

「そ、それが何だって言うのよ!」

「あなたは僕に勝てる絶対の自信があって余裕だった、だからあの時すれすれのところにいた。いや、これは違うね。あなたはわざとあんなすれすれにいたんじゃない、動けなかったんだね。いま、やっと分かったよ。あなたの力が……」

 ヘネスとユマ、そしてメリーは、センスの思いがけない言葉に絶句した。

戦闘回かと思ったら、なんか違う感じでしたね。

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