<奇みょうな夜>
現在、時刻は午前6時……のはずだ。
窓の外から小鳥のさえずりが心地よく聞こえるし、下の階から朝食の香ばしい香りが漂ってきていた。もちろん、気分的にももう完全に朝だった。
がしかし、窓が閉まっているわけでもカーテンが閉まっているわけでもなかったのはずなのに、なぜか部屋はほとんどよると同じ状態――つまりは真っ暗だった。
エルナードは一番最初に起きたので誰かに聞く事もできず、しばらくわけの分からないままキョロキョロとしていた。
すると運よく、センスが起きてくれた。
「ん……あれ、へーエルナードは早起きなんだね」
「え、あぁ、まぁな。んや、そんなことはいいからよ、できれば今の状況説明してくんない? 俺も目が可笑しいのかな? 今朝だよね? 夜にしか見えないんだけどさ」
そういうと、センスがいかにも「なにを言ってるんだろう」と言いたげな顔に変わり、エルナードは自分がおかしなことを言っているのかと焦りはじめた。そしてその様子を見たセンスは、今度は「呆れた」と言いたげな顔をしてため息を吐いた。
「昨日、君が話してくれたじゃないか。ココは《夜の村》なんだろ? だったら、ずっと夜だったって不思議はないだろ? まったく、一番早く起きたかと思ったら、僕より寝ぼけてるなんてね。結構のんびり屋さんなんだね」
「あっ……」
ここで、エルナードは寝ぼけがなおった。というより、なおされた。
いままでエルナードはまさに寝ぼけており、昨日あった出来事が夢でも見ていたような気がしていたのだ。しかし、そんなおかしな考えも、センスによって破壊された。
と、まぁある程度騒がしくなったところで、眠っていたほかの皆も目を覚まし、重いまぶたを擦りながら朝の挨拶をした。部屋はほとんど真っ暗であったのだが。
ただ、1人を除いて。
「おい、また1人足りないぞ?」
昨夜と同様、朝食配膳係りのジャンケンをしているときだった。出された手の数が人数と合わないことに気付き、4人の頭の中でその犯人が誰なのかすぐに察し、そのベッドのほうへと視線を向けた。
「……って、あれ?」
視線を向けた、はいいのだが、肝心の犯人がいなかった。
エルナード、センス、ヘネス、ユマは1人が何処にも見当たらない事に困惑し、1つのありえないけどありえそうな可能性に行き着く。
すると同じ考えを持った4人は我先にと部屋をでるなり、そそくさと階段を下っていった。
4人の考えというのは吸血鬼に襲われているというもので、襲わないとは言っていたものの、もしかしたらという事もある。急いで確認しに行くのには十分なものだった。
が、騒音を立てながら階段を下った先、4人は唖然と立ち尽くすことになる。
「あ、みなひゃん、おひゃようございまふ。ゴクンッ、どうしたんですか、そんな変な顔して。なにかありました?」
昨日から常習犯のリノは、ライトのした、宿屋の主人とその妻と、フレッシュな朝食を味わっていた。
その光景を見て4人は、あんなに心配して損した。何で1人だけおいしそうに朝食食べてんだよ。など、様々な不安が浮かんでいた。
「まぁ、わかった。……はぁ、俺達も朝食食べよう」
「うん。そうだね」
「そうすっか……」
「そうですね」
呆れるのすらももう馬鹿馬鹿しくなり、エルナードたちもそれぞれ席について、朝食を食べ始めた。
――さて、それから数十分。
「はぁ、ご馳走様。それじゃ、そろそろ出発するか~」
朝食も終わり、エルナードはすでに出発するき満々だった。外が暗い所為で調子は乗らないのだが。
「えーダメですよー。ユマさんと一緒に買い物行くんです!」
が、リノがそれを許さなかった。
「え?」
どうやらリノの言動にはユマも少々驚いたようで、というか初耳だったようで、なんともいえない雰囲気になってきた。
「なに言ってるんだよ。急がないとだぞ? 夜が来る前に行かないとだったのにもう夜は来ちまってるんだ!」
そういうと、親父が一言加えた。
「ああ、1つ言い忘れてたがな、今きてんのは夜じゃねえよ? ありゃあ、夜みたいなもんだがな、《奇夜》っつってな、この村の結界が薄れたのが原因で起こる怪奇現象みたいなもんだな」
「え? じゃあなに? 夜はまだ来てないの? え、夜までまだあと10日?!」
受付の親父の言葉に、エルナードだけでなく他のメンバーの目を丸くして聞いていた。
そしてこれはつまり、リノとユマがともに買い物に出かけられるということ。それが分かった途端、やはりというべきかリノの舌が回りだした。
「ユマさん! 一緒にお買い物行きましょうよ! こんなとこ滅多にこれませんから! ね?」
「う、うん。そうね……」
どうやらユマもあまり気乗りしないようだった。




