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<鬼の住む村Ⅲ>

なかなか話が続いてしまって本編に移りませんね……。

 ドクドクと徐々に強ばる鼓動が体中をめぐっていた。

 緊張でいまにも張り裂けそうであり、階段を下る足がとても重く感じた。階段を降りきっても張り裂けそうな目に遭う可能性もあるのだが。

 しかし、それでも降りなければならない。この先へいかなくては、体の疲れを癒してくれる食事をすることができなくなってしまう。

 だが、食事より命が大事ということもある。いま命を落とさなければ、この先何度でも食事をすることはできる。

 エルナードは必死に考えた。階段を下るか否か。そして自問自答を繰り返した末、ついにその答えを導きだした。

 よし、行くぞ! 男は度胸だ!

「ドワァァッッ!!」

 エルナードは高らかに雄たけびを上げながら勢いよく階段を駆け降りた。が、勢いがつきすぎ案の定、壁に激突した。大事な事だからいうが壁にダメージはない。が、エルナードの心へのダメージは尋常じゃない。自分の行動が恥ずかしすぎて死にそうになっていた。

 もともと下の階にいた受付の親父と厨房の相方に何があったのかという目で見られ、顔を赤くした。

「なんだ坊主、てめぇいきなりどうしたんだよ?」

そう聞かれて、なかなか「あなた達の会話が恐ろしくてやけになった」なんて言える人間はいないだろう。エルナードはいい言葉が見つからず黙り込んでしまった。

 しかし、見れば見るほど不思議なもので、この村の住人達はみな額からは銀色の鋭い角が生えており、そのうえ背中からはあまりよく見えはしないが、黒い翼のようなものも生えていたのだ。まず、人間じゃない。

 それは誰が見ても同じだった。

 もしかしたら人間を食べるかもしれない。先ほどの会話も、そんなことを言っていたのかもしれない。つまり、ばれたら終わり。

 がしかし、運がいいことに、エルナードはフードを目深に被っていて角があるかないかなんてパッと見分からないのだ。いくら柄の悪そうな親父であっても、さすがに客のフードをいきなり取ったりはしないだろう。

「お、そうだそうだちょうどよかったぜ。なぁ坊主、ちょいとフードの中身、見してもらうぞ?」

――かなりストライクに来たっー!!

 エルナードは驚きのあまりまたも背後に稲妻のイメージが見えてしまった。

 いやそんなことよりも、受付の親父の魔の手がエルナードのフードへと徐々に近づいていった。そしてとうとう、触れてしまう。

 一気にバッとフードを取られ、エルナードはもう走馬灯のようなものが見えかけていた。一体自分はどんな結末を迎えるのか、それだけで頭の中が一杯だった。

「ん? あれ? オイ、やっぱりねえよ。こいつらやっぱ人間だぜ」

「へぇー、珍しい事もあったもんだね。どうするの?」

 どんどん話が進められていく。

「そうだなー……って、おい! こいつ、背中に剣持ってんぞ。ってことはまさか、あの依頼受けたのって、こいつらか?!」

 なんだなんだ? 一体なんだってんだ?! エルナードは自分を退けて話が進行している所為で、彼らの言っている事をほとんど理解する事ができなかった。それどころか、かなり緊張で強ばっていた所為か、余計に混乱してしまい、頭が痛かった。

 ともあれ、どうやら命だけは助かったようで、訳分からないなりにほっとしていた。走馬灯のようなものも見えなくなっていた。

「そんで坊主、おめぇら一体何処のギルドだ?」

「え、あ? ああ、《自由の悪魔(フリーダムデビルス)》です。え、なにかあるんですか?」

まだエルナードはキョドキョドしていた。

「なにかあるもなにも、あんたらがうちらの出した依頼を受注してくれたんだろ?」

「へ?」

「だからよ、うちらが南の古城でのお化け狩りの依頼を出したんだよ。んで、それをあんたらのギルドが受注したってことだ。わかったか?」

 受付の親父の熱心な説明により、ようやく理解した。

 それでもって、現在地はどうやら 夜の村「ヴィエス」というところらしく、夜でないと外からは探し出す事ができない村だそうだ。それは特殊な結界によるもので、現在の生存者ではどうこうすることもできず放っておいているそうだ。

 地図に載っていないわけだ。夜なんて普通魔物がいて歩き回れるものではないからだ。

 どうやらエルナードたちは偶然の偶然で、依頼人の仲介人の下ではなく本人の下にたどり着いてしまったというわけだ。

「じゃ、じゃぁ、結論として俺達は食べられないわけか?」

 ホッとした所為か、ついつい本音が出てしまったことに気づくのは事が済んでからであった。

「食べる? 何言ってんだ坊主?」

「あれかな? さっきの会話聞いてたんじゃない? ほら、君がよだれたらしてた」

「ああ。なるほど。あぁ、違う違う。食べやしないよ。俺たち吸血鬼は肉とニンニクは基本食わねぇ。ちっと、血を吸うだけだ。伝承とかに載ってるみたいに吸われて吸血鬼になったりもしないから何も問題ない。それにだ、あんたらはお得意さんというわけだからそんなことしねえよ。痛いらしいしな」

 前記のとおり、ここでエルナードは自分の失言だかに気が付く。が、一応話も進んでいるのであわせて相づちをうつ。

「あ、ああそうなのか。よかったよかった。それじゃ、とりあえず夕食いただけますか?」

「お? ああそうだったな。ほらよ。――坊主、なかなか礼儀も分かってていいやつじゃねえか気に入ったぜ! 最近の若いやつらは礼儀ってもんをしらねえからな~……」

 それから、長い長い親父の話がはじまりなかなか夕食を部屋に持っていくことができず、ほとんど皆すでに眠りについていたというのは、仕方ない事だろうか……。

次回からは話し変るかな?

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