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<鬼の住む村Ⅱ>

 白、赤、青、黄。色鮮やかな星々とともに、蒼く輝くクラリスと紅く輝くヘルテス、さらには雲までもがそれらの光を返し、久しく見ない景色を作っていた。どうやら空気がいつにもまして澄んでいるようで、味さえも覚えた。

 エルナードたちの訪れた村はとても豊かなものとは言えず、というよりも村といっていいのは外観だけで、塀の内側は何処をどう見ても廃墟という感じだったのだ。

 しかし、少し変ってはいるが人は住んでいるようで、一応村としての機能を果たしているようだった。よく見れば宿屋の看板なんかもちょくちょく目に映り、さらにはギルドらしき物まであった。どのようなものか気にはなるものの、今は宿を取らなくてはならないわけで、5人は真っ直ぐと入り口の最寄宿へ向かった。

 ボロボロの木製の建物は、しばらく前の対ギルド占拠群作戦のときのシュルトのボロ小屋を思い出させた。ここはアレと同じく2階建てだが、もう少し支柱がしっかりしているようで、エルナードもほっとして胸をなでおろした。なんかの衝撃かなんかで崩れたとあってはシャレにならないからだ。

「すいません。部屋を2部屋借りたいのですが、空いてますでしょうか?」

 受付の柄の悪そうな親父に話しかけたのは、5人の中で一番人との接し方の分かっているセンスだ。他4名のうち2名は人見知り状態に陥っており、もう2名はいきなりなにを言い出すか分からないのだ。

「悪りぃな坊ちゃん。今1部屋しか空いてないわ。どうする? 他のところいくか?」

そう親父は言っているが、見るからに威嚇している。見るからになにかやりそうだ。

「だ、大丈夫です。1部屋で何とかなりそうなんで」

あまり騒ぎを起こすのは不味いと悟ったのだろう。センスは丁寧に話をまとめると、後のほうで待機していた他4人のもとへ帰ってきた。

「ごめん。1部屋しか取れなかったよ」

苦笑しながら謝罪するセンス。

「いやいいですよ。わたしはギルドでも師匠と同室ですし」

お前1人の問題じゃねえ! とツッコみたいエルナード。

 そして、

「だ、だだ大丈夫ですよ。き、気にしないでください!」

かなり挙動不審になってるユマ。察するに男性と同じ部屋なんてことが今までまずなかったんだろう。なんて金持ちだ。ちょっと腹立つな。

「わ、わかったよ。とりあえず部屋に行こう。それからいろいろ考えよう」

 少々対応に困ったセンスであったが、なんとなくだがうまくまとめ、とりあえずは借りることのできた部屋にたどり着いた。

 そこは外観からは想像できないほど広く、そして香る部屋だった。

「なにこれ広っ! なのに臭っ!」

「なに言ってんだよエルナード。バラの香りじゃん、ぜんぜん臭くないし。お前はな捻じ曲がってんじゃねえの?」

「この臭いでひん曲がるわっ!」

 なかにはご丁寧にベットが5つとテーブル1つ椅子5脚が用意されており、ベットにいたっては2人分だけお姫様ベットのようなフリフリのレースで飾ってあった。リノもそれに気付くと、呆れて笑えないほどの勢いでダッシュし、飛び込んでいった。さすがに前者がいると後者は同じ行動をとるのがつらいようで、ユマはなんともいえない表情でベットのほうを見て、目を輝かせているのか輝かせていないのかという感じだった。

「じゃ、じゃあ2人はそのベットで決定だな……」

「…………」

 なぜかしらけた。なぜかは知らないが、とてつもなくビミョーな空気が漂ってきた。

 そこへ助け舟を出してくれたのは空気の読める優等生センスだった。

「と、とりあえずベットは後にして食事にしよう! ずっと歩いててお腹も空いてだろうしさ、ね?」

 そう聞いてとりあえずみな賛成し、夕食の準備を始める。どうやらこの宿は食事の用意はしてくれるが、それは作るところまでで、その後の配膳やらなにやらは客がしなくちゃいけないらしい。

 その担当を決めるのは流れでじゃんけんという事になり、いっせーのーせでそれぞれ手を出した。そしてここで1つ謎ができた。まぁすぐに解決するのだが。

「あれ、1人足りなくない?」

「1、2、3、4……ホントだ。1人足りないね」

 謎、というのはじゃんけんしている人が1人足りないという事だった。が、前記のとおりこの謎はすぐ解決する。

「あっ、犯人見っけ」

「あ……。リノちゃん寝てる……」

 みなの視線の先、ピンク色のフリフリレース付きのお姫様ベットでリノは幸福といった言った顔で気持ち良さそうにぐっすりと眠っていたのだ。一応その師であるエルナードは呆れてものも言えず、長いため息を吐いた。

 それと、ヘネスから同情もされた。エルナード曰く、いらんわそんなもん!!

「仕方ない。あいつは寝かせておこう。てっ、あっ……」

気付けば、負けていた。

「あれ? 何かの間違いだよね?」

エルナードはなんとなく手をパーの状態にしているうちに、他の皆はちゃっかり手をチョキにしておいてあったのだ。

 完全にはめられた。

 ギシギシと音をならす階段を一歩、また一歩と下りながら、エルナードはそう思った。

 と、そこでエルナードは変った話を耳にする。

「なぁ、さっきの客なんか雰囲気とか変だったよな?」

「え? そうか? おまえが威嚇してたからだろ?」

「いやいや、威嚇じゃないって。ただ真剣な顔しただけだって」

「いやそれが威嚇なんだよお前の場合!」

「てかそのことじゃなくて、ほら、角とか羽とかなかったじゃん? あいつらまさか人間かな?」

「そんなわけないだろ? きっとしばらく上京してて変化解除すんの忘れてたか、お前の見間違いだろ?」

「そっかなー。じゃあ、夕飯取り来るときちゃんとチェックしとくか。人間なんてしばらく来てなかったからな。ぐへへへ……」

「おい、よだれよだれ」

 それは受付の親父と厨房のその会い方との会話で、なんとも危ない香りを漂わせていた。

 エルナードはごくりと固唾を飲み、おそるおそる階段を一歩、また一歩と下っていったのだった。

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