<赤い森の長Ⅲ>
本日二回目
話し合いのあと、部屋にはもう1人の客が来たのだった。
「あのぅ、この部屋そもそも俺とリノの部屋なんですけども? そもそもなんでこの部屋に集まるの? もっと広いところあるでしょ?」
現在地、《俺の部屋》。
ユウカが来てからというもの、何故か人口密度が急上昇していた。入って5、6人というのに、いまではすでに7人もいるのだ。年末に近づいていて気温は比較的低い方なのだが、それなのに暑かった。
しかも今度はギルド《赤い森》の元団長であるアリアが来るのだから、なんかもう自室にいる気がしない。
「別に私は全然構いませんよ。人数が多い方が賑やかでいいですしね。ですから気にせず話を続けてください」
と、アリアからいらない一言。
すいません、あなたには聞いてません。というか誰にも聞いてません。まず質問じゃありません。問いかけです。しかもあなたがそう言ったおかげであなたの下の人は発言しづらくなったし、さらにはユウカなんてこのタイミングでうまい事話を違う部屋に行く方向になんて持っていってくれません。
俺は心の中でひたすら呟いた。
「でも、やっぱり暑苦しいしもうちょっと広いところに行きませんか?」
今度は俺の背後で稲妻の走るイメージが見えた気がした。
待て、待てよ落ち着け! なぜユウカがあんな事を言った? 一体なにを企んでるんだ? 一体なにをしようとしているんだ? 俺には現状がサッパリすぎて頭がゴチャゴチャしすぎてなにがなんだか分からなかった。
苦肉の策としてユウカに真相を確かめようと振り向いた瞬間、ユウカがふふっと言わんばかりの表情でこちらを見ていた。
完全になにか考えてる……!?
俺の背後で今度は稲妻と龍が飛ぶイメージが見えた気がした。
「な、なぁユウカ? あんまり聞きたくないんだけど、一体なにを考えてるんだ?」
「失礼ね、何も考えてないわよ? 強いて言うのであれば、エルの……心配……かな?」
絶対嘘だー!? 何も考えてないわけがないだろ。心配してても何かを考えてるだろ企んでるだろ!
が、結局ユウカから何も聞き出す事はできず、俺は流れに乗って別の部屋に行くはめになってしまった。なにが起こるのかと考えると、まさにハラハラドキドキだ。
俺の自室から1分ほど歩いて移動した部屋はギルドのミーティングルームで、長テーブルに椅子が10脚ほどあるギルドの中で言えば比較的広い部屋だった。
「さて、それでは話を再開しましょう」
アリアがまた一言。
「いや、もうほとんど終わってるんですけど」
次にセンスが一言。
「ていうか一体どうして俺の部屋に?」
最後に俺が一番最初に聞くべきだった質問を。
その結果、
「いえ、みんながあちらに向かっていたのでなんとなく来ました」
と、清清しい笑顔とともに返された。
この人フリーダムすぎるっ!! もはや背後で稲妻すら落ちやしない。それほど呆れたのだ。しかもそれが冗談とかふざけとかではなく本気なのだから、天然でこれなのだから、ただ呆れるしかなかった――。
――それから数十分、会議終了。というより雑談終了といったほうがいいだろう。
今は部屋を出る際にユウカに呼ばれた理由を知るために、本人の部屋の前で待機中だ。
「ユウカー、もう来てるんだけどまだか~?」
すると、ドアを挟んだ向こうからコンッ、コンッと、2つノックの音が聞こえた。入れという意味だろうか?
「ユウカ、入るぞ?」
するとまた、コンッと、ノックの音が聞こえた。
俺はそれが了解だと判断し、ドアノブを握って、部屋に足を踏み入れた。
と、そこでいきなり視界がふさがった。
「な、なんだ?!」
俺はあわてて前にあるものをどかそうとすると、それは大量のバッグで、その奥には丁寧に着飾ったユウカが座っていたのだ。
「な、どうしたんだよその格好? デートでもするのかよ?」
今のユウカの格好はそういう有り得ないことしか連想させてはくれないので、今の発言は仕方ない。
「よくわかったじゃない、エルのクセに。そうよ、これからデートするの。2人でね」
しかも冗談でいったつもりが本当そうだとなっては、もはや出る言葉もない。
「お姉ちゃんは、義理の姉でも弟が大好きなのよ。心配かけたお詫びだと思って付き合いなさい。……もう、しばらくゆっくりできないかもしれないんだから……」
はじめのうちはすぐに突っ込もうかと思った。でも、ユウカの最後の表情を見て気が変わった。
「わかった。デートしようか。"姉ちゃん"?」
「うん」
それから俺たちは一緒に映画を見に行き、一緒に買い物をして、一緒に笑った。
こんな日々が、いつまでも続けばいいのに……。そう思って、俺は今日という日の幕を下ろした。
なんとか溜めてたぶんかけてよかった。
ノルマ達成まであとどれくらいだろうか?




