<赤い森の長Ⅰ>
今パートに長は登場しません;
ギルド《赤い森》での内戦が終わり、数日。エルナードがとうとう目を醒ました。
「あれ、ここは……」
エルナードは自分が自室にいることに驚いた。意識があったのがつい先ほどのことように思えるからであろう。しばらくのあいだは、何がどうなったかという混乱状態にあった。
そこへフラりと様子見にきたのが、ギルド《自由の悪魔》のマスターであり、俺の幼馴染みけん義姉のようなユウカだった。
しかし、どうなったのかと聞こうとしたのだが、エルナードを見るなりユウカは猛ダッシュで部屋を出ていってしまった。
いったい何があったというのか……。
だがその答えは、しばらくすれば分かることだった。
ユウカは戻ってきたかと思うと猪のような勢いで部屋へ飛び入り、カンガルーのように跳ぶと、エルナード目掛けて飛び付いた。
まじで状況がつかめない。しかもめっちゃ痛い。
「ユ、ユウカ、離せ、離せって、傷口開く傷口開く!」
「っ! ああごめん」
ユウカがようやく離れた、といっても掴むのを止めただけだが。
「んで、どうしたんだ?」
「エルが目覚めたからみんなを呼びにいったの」
エルナードはひとつ呆れたため息を吐いた。
「そんなことじゃなくてだな、なんでいきなり飛び付くんだよ?」
するとユウカは今度は涙目になって言った。
「だって、血は繋がってなくても家族なんだよ? それが3日も寝たきりだったら心配するよ。……もう、1人だって家族を失いたくないんだよ」
「ユウカ……」
遠い過去、苦しくも幸せな生活の記憶が、2人の心を覆い尽くしていた。
「あー、お熱いところ悪いんですがぁ……」
ですよねーと言わんばかりのタイミングで、ユーリスが扉からかおを出した。そしてそれとほぼ同じタイミング、扉の向こうの気配を感じでもしたのか、ユウカがすごい勢いで離れた。
だが、ユウカのその行動はほぼ手遅れといった感じで、ユーリスが変ににやにやしているのを見てガクッとうつむいていた。
「いや、別にそ――」
「――なんでもないから! 誰がどう見たってなんでもないからね?!」
うつむいていたかと思うと今度は怒鳴り始めた。なんだってんだユウカのヤツ……。
今にも殴りかかってきそうな勢いで詰め寄るユウカに、ユーリスは驚いて声がでないでいた。
「ほんとになんでもないから。幼馴染と会話してただけだから!」
「お、おう。わかった、わかったから」
だがしかし、ユウカが口を止めることは無く、ただひたすらに騒ぎ続けた。それを止めてくれたのはリノで、ユーリスの後にセンスとユマとともに一緒に来ていたのだ。結局ユウカが騒いでいたのはよく分からないまま終わったが、まぁ、どうせ大した事じゃないだろうし放っとこう。
そして、話の本題へと移る。
「さて、エルナードがようやく目を覚ましたところで、今後の話をしようか?」
「そうだな――」
エルナードの部屋は今、本人・リノ・センス・ユウカ・ユーリス・ユマと、もともと2人用の小さな部屋なのに無駄に人口密度が多いのだが、暑苦しさよりも妙な緊張感が感じられた。
「まず、エルナードには悪いけど、今後の事を見据えて今動けるユーリスとユマには君の剣と魔力の事教えてあるからね?」
「ふーん……。っておい! お前は馬鹿なのか? なんでわざわざ被害拡大してんだよ!」
センスから告げられた思いもよらない第一声に、エルナードは驚愕した。しかもそれは悪影響を及ぼすものでしかなく、意味不明極まりないのだ。
「いや、この2人が自分で聞いてきたんだよ。君たちになにが起きているのかってね?」
「そう言ったってよぉ……それに、俺倒れた所為で情報聞きそびれちゃったし……」
そう、エルナードはヒューリエスから情報を聞くどころか、戦闘での疲労で3日間も寝込んでしまっていたのだ。完全に行き詰っている。
「それがそうでもないんだな~」
「え……? それどういうことだよ?!」
センスはどうやら何か知っているという様子であり、それに食いつくようにエルナードは椅子から立ち上がった。
「そのまんまの意味さ。僕はあの戦いの中でミラって女の子から情報を聞いたんだ。君と戦ってたヤツはそのことを知っていたみたいで何も話さなかったけどね」
ミラ、おそらく《赤い森》の団長室の本棚の前にいたヤツだな。
「いや、頼むセンス、譲ってくれその情報! それがあれば、まだ進めるかもしれない!」
「もちろんいいとも。ただし、1つ条件がある」
センスがこの話を始めたとたん、ほかのメンバーが少しざわざわし始めた。
「条件?」
「そう。僕らに君を協力させてくれ」
「つまり?」
センスはため息を吐いて言った。
「だからね、君の大切な人を救う手伝いをさせて欲しいんだ。僕達のギルドを利用してくれたヤツも関係ありそうだしね。ダメかな?」
「それは……。皆に迷惑をかけることになるぞ?」
「覚悟の上だよ」
エルナードは考えた。少し前にあったばかりの人間を自分の問題に巻き込んでしまっていいのかと。しかし、その答えは簡単に見つかった。センスの目を見て、ユーリスとユマの顔を見て、本気だと分かった。
「わかった。俺も知っている事を全て話すよ。驚かないで聞いてくれ」
その呼びかけに周りが頷いたのを確認すると、エルナードは話を始めた。




