<赤森の戦いⅠ>
タイトル元に戻そうかな。
なんか今のタイトル嫌い。
左腕から血が数滴落ちる。息はすでに荒く、実力の差というものを見せつけられる。足元には焼けたあとが無数にあり、それまでの戦闘の一方的さを物語っているた。
俺はすでに左腕が思うように使えないほどまでのダメージを負っていた。もともとレミネとの戦いで相当焼かれていたのだから無理はないと言ってしまえば、それは言い訳になるだろう。
俺の目の前にいる男《獄炎》は本当に強かったのだ。レミネのような偽りではなく、本当に。
爆炎をうまく回避したかと思えば、地面を這うように炎が追ってくる。風でかき消したと思えば、本人が背後に回り物理攻撃を仕掛けてきた。
攻撃の威力から、魔宝石を使っていることは明らかだったが、それでもどこか違和感を覚えずにはいられなかった。世界中に存在するはずの光の力でもなく、もちろん闇の力でもなく、俺の知らない別の力のような気がしていた。
しかし、その答えは勝って聞くしかなかった。
だが、この戦い、勝機がまるで見られなかった。いや、これは半分嘘だな。いま俺はまだ風の魔力しか使っていない。さっきからリノもそれを不審に思ってか、こちらをじっと見ていた。
でもそうすれば、ギルドに、なによりユウカに迷惑をかけてしまう。リノは俺がカバーするとして、俺が狙われれば、剣のこともあわせて2重になってしまう。
それに、あいつの夢からも遠ざかってしまう恐れもある。その逆もあり得るのだが……。
俺には、とてもその判断は重すぎる。
とその時、その答えを出す声が発せられた。
「師匠! なんで闇の魔力使わないんですか!?」
リノによってばらされた。
バカかお前は? なんであえて使わないでいたのに言うんだよ! が、お陰で吹っ切れた。
俺は地面に刺し支えにしていた剣を引き抜くと、再び力を加えた。
風の魔力と闇の魔力を同時解放し、地面を黒い霧が漂い始める。それはけして温度を持たず、質量も持たない幻のようなものだが、そこはひんやりとした冷たさを感じられ、より気が引き締まった。
「本当の戦いはこれからだ。行くぞ、《獄炎》のヒューリエス!!」
俺はキサキシと悲鳴を上げる体に鞭うって、地面を這うようにして流れる黒い霧の上を身を低くした駆けた。霧の所為か体は思うより軽く、いつもなら鈍い重さを持った剣もまた、軽く感じていた。
勝てるという確証はない。だがしかし、負けるという確証もまた、ありはしなかったのだ。
ヒューリエスに急接近した俺のシルバークロスが、相手の胴目掛けて振り上げられた。しかし、その攻撃はヒューリエスの持つ黒い槍によって弾かれてしまう。
しかし、いまの攻撃は敵に物理的なダメージを与えることではない。
真の狙いは追加効果による攻撃だ。シルバークロスが纏っていた黒い風が、ヒューリエスの槍を持つ右腕を切りつける。エルナードの特殊スキル《シェイドエッジ》。
赤い血は静かにヒューリエスの右腕を伝い地面に落ちた。しかし、そんな傷も大した事はないといった様子で、平気な顔をしていた。
「やっぱ、アレやるしかないか」
《アレ》というのは、エルナード2番の大技、特殊スキル《ウィンドリ・テンペスト》だ。しかし今回のものはヘネス戦とは比べ物にならない規模で、おそらく準備にもかなりの時間を有する上に、ばれてはおしまいなので前回のような単純な五芳星ではなく、もっと角数の多いもので円を描かなくてはならない。そのうえ闇の魔力も発動に使うつもりなので、おそらく発動後には体が動かなくなっている事だろう。
つまり、これが最後の一撃となるわけだ。
《攻撃こそ最大の防御》。俺は最後の一撃を決心して、一気にヒューリエスの接近した。
シルバークロスが振り下ろされ、それを回避され、爆炎によるカウンターが迫る。それをまたこちらも回避し、死角に飛び込み再び剣を振り上げる。煙の中手応えを感じず、1歩後退。俺はひたすらそんな型にはまったような攻防を繰り返した。そしてランダムに魔力を散らし円を作っていく。
一箇所、また一箇所と、順調に完成へと進んでいった。
――そして、とうとう完成の時がやってくる。
ヒューリエスが回避のため1歩後退した俺に向かい、槍を振り下ろしたその時、闇の魔力によって地面に薄く漂っていた黒い霧が狩場に侵入した獲物をロックした。そう、その狩り場こそ、俺が定めた円の中心点。
「な、なんだこれは……!?」
「そこが、俺の狩場の中心だ……」
円周から中心点へと鋭い風が吹き荒れ、ヒューリエスを切り裂き打ち上げた。黒霧によって動きを封じられているヒューリエスはどうする事もできず、鋭い刃となった風にされるがままとなり、そのままダメージを受け続けながら落下してきた。そしてその下、俺は最後の一撃として剣を鞘に1度しまい、居合いの構えをとった。
「これで終わりだああぁぁぁ!!」
雄たけびを上げると共に剣を抜き、一閃した。その衝撃でヒューリエスはギルド正門に叩きつけられていた。
「俺の勝ちだぜ? リノは、返して――」
あれ? どうしたんだろう。何も見えなくなった。あ、だめだ、体がぜんぜん動かないや。くそっ、今が大事なのに……。
――俺はこの時点でどうやら意識を失ってしまったようだった。
前書きがただの独り言になってしまった気がするんだよな。




