<炎塵再びⅠ>
最近下手な戦闘ばっかかいてる気がする。
もっと頑張らないと!
――エルナードサイド、現在ギルド周辺を徘徊中。
このとき、エルナードは内心数刻前に聞こえた爆発音が気になっていた。
「さっきの音、ユーリスのいる辺りだったけど、大丈夫かな? 一応この辺のやつらは全滅させたからな〜。見に行くか」
――その時、背後から何かの気配を感じた。禍々しく馬鹿馬鹿しく、それでいて暑苦しそうな気配だ。
「あんた、どうしてこんなところにいるんだ? 牢屋のなかじゃなかったのか?」
「ああ、狭苦しくてなぁ、出てきちまったよ。てめぇを殺すためになぁ?」
エルナードの背後にいた男、それは、数日前にエルエスで総合ギルドに身柄を引き渡し、牢獄へ入ったはずのレミネだった。
そのうえ真っ向から来ているだけあって、レミネからは以前にはなかったなにかを感じていた。
「あんた、なんか変わったか?」
「そうだな、変わったといえば、武器が変ったかな?」
確かに、よく見ると片手に持っている槍が以前見たものと違っていた。いや、それ以前にどうして牢を出ることができた? そもそもなぜ首謀者であるレミネを捕らえたのに今計画が実行されているのか。わからないことだらけだな。
「それにしても弱ぇー奴らだなぁ。これだけに人数がいて敵1人倒せねぇーとは……」
レミネは倒れている占拠派メンバーを一蹴りしていった。
「あんたにとってはそいつらもただのいしずえなのか?」
「そうだなぁ、こんな使えねぇ奴らはいしずえにもなりゃしねえな」
「腐ってやがる――」
エルナードは即座に短剣を構え、レミネの首目掛けて思い切り飛んだ。今回レミネは大盾を持っておらず、はじめから両手に槍を持っていた。つまり、防御を完全に捨て攻撃のみに力を加えるということで、この戦い、エルナードはレミネの一撃には十分に注意しなければならない。ただでさえ防御手段を持たないスタイルのエルナードであり、そのうえ武器もリーチのない短剣なのだから、一度でもくらえば致命傷になる恐れもあった。
そんなエルナードの初撃は、レミネの槍に呆気なく弾けれてしまい、まったく成果を得られなかった。
「なんだ、短剣か? 前に使ってた剣はどうしたよ? まさか折れたんじゃねえよなぁ?」
「ちゃんと持ってるさ。今はそのこと知らないやつらもいるからな、使えないんだよ」
「馬鹿なヤツだ。そんな無駄な事してんじゃねえよ。無駄な制限かけてんじゃねえよ! 力こそ全てだ! 本気でかかってきやがれぇー!」
「――――!!」
目にも留まらぬの速さでレミネが接近し、右手の槍を一振りした。その瞬間、槍先の着地地点から閃光とともに大爆発が起きエルナードは最寄の木まで吹き飛ばされた。
見えなかった……。あいつの動き、何であんなに速いんだ? この数日でどうしたらあんなに力がつく? ありえない。そもそもあの威力はなんだ? あいつの槍についていた魔宝石は見た。あんな威力の攻撃をできるような代物じゃなかったはずだぞ? と、エルナードは徐々に現状にあせり始めていた。このまま戦っていけば、下手をすれば死さえ有り得る。どうにかして状況を良化しなければならなかった。
「くそっ、どうすれば……!」
とりあえず今は極力回避するしかない。
エルナードはひたすらレミネの攻撃を見極めようと木々の陰を右往左往した。しかし、それでも攻撃を避ける事は不可能だったのだ。レミネは気付けば急接近していて、瞬時に短剣を前へ出しガードしようとも、爆発の衝撃はまったく防げず、吹き飛ばされてしまう。その後はうしろに立つ木に思い切り体を打ち付けられ、徐々に木々の陰を移動する事すらもままならなくなっていった。
そしてとうとう、捕まった。
1本の木にコートローブの袖を刺され、腕にももう力が入らずぶら下がっている。体中がギシギシと嫌な音を起てているようで、そこら中焼かれたような痛みがあった。
「呆気ないもんだなぁ。あんなにいきがってたのによ、せめて剣でも使えばいいのによぉ?」
「そうだな。使えばよかったかな?」
エルナードの声は低く小さいものだった。
「あんた、力が増したのはその武器の所為か? 一体それは何なんだ」
「ふんっ、いいだろう。冥土の土産に教えてやるよ。この槍はなぁ、殺した相手の力を喰うんだよ。そしてこの俺の力を増幅させてくれるんだ。今俺は、エルエスで殺した何人もの戦士の力を持ってるんだよぉ! それにしても、一段階強化でここまで力が増すとはなぁ、我ながらいい買い物をした」
この話を聞いて、エルナードは1つ思い出したことがあった。それはエルエスでレミネがしていた話。『本物』を探していたという話だ。つまり、レミネは亡霊/リノを探しながら、力を手に入れるためにどさくさに紛れて数々の戦士を殺していたんだ。
いや、それ以上に気になることがあった。それは今レミネが口にした言葉だ。一段階強化。つまり、今レミネが使用している武器は前回と実は同じものということだ。そして、もう1つ、レミネの裏でもっと大きなものが動いているということ。レミネのような人間が"力を喰う"なんていう奇怪なものを簡単に手にできるわけが無い。それに、そんな奇怪なものの強化をできる人間は、そう滅多にいない。
この時点で、エルナードは勝機を得た。




