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<炎風の旋槍Ⅰ>

今回は戦闘回前編です。

 《ギルドにドラゴン》。リノから告げられた思いもよらない言葉にエルナードは驚愕し、今はただひたすらにギルド《自由の悪魔(フリーダムデビルス)》のあるシュルト中央街を目指して走っていた。

「リノ、ギルドにドラゴンって何があったんだ?」

「それが、よくわからないんですよ。とくになにかをしたわけでもされたわけでもないようで、いきなり上空からやって来てギルドに稲妻を落としたんです……」

「あ、ああ、わかったから」

起きたことを涙目になりながら説明するリノを慰めながら、エルナードは1つの可能性を頭に浮かべた。

――歯が立たないという可能性だ。本来、魔力の相性からしてエルナードの風の魔力は雷の魔力の前では全くの無力。リノの場合はまだ扱いがうまくない。

 そうすると答えは……

「リノ、戻るぞ」

「え、なにいってるんですか師匠! 見捨てるつもりですか!?」「違う。センスを呼びにいくんだ。それにあいつらならそう簡単にやられやしない。ムカつくやつらだけど腕はたつ」

「じゃあ、なんでセンスさんを?」

リノは混乱しているようで、簡単かつわかりづらい質問をした。

「それは、相手がドラゴンだからだ。その存在すらもが伝説と言われてるんだ。何があるかわからない……」

「――そんなところに人を連れ込もうとするんだから、困っちゃうよな〜」

リノを説得していたエルナードの背後、先程別れたセンスが装備を整えて立っていた。

「話は聞いてたよ。協力させてもらおうか」

「恩に着る」

 エルナード、リノ、そしてセンスは、ドラゴンのもとへと駆けた。


 一方、ギルド《自由の悪魔(フリーダムデビルス)》前。

「こいつは困ったことになったわね。リノちゃんが行ってから随分だから、もうそろそろ来る頃だと思うんだけど、もう……体に力が入らないわ……」

 落雷のドラゴン――《サンダーボルト・ドラゴン》――。古き伝承にて伝えられたドラゴンにより、すでに壊滅状態にあった。

 屋根には大穴があき、敷地を囲む塀の正面部は完全に崩れていた。正門も粉々に砕けており、その破片の上には人が無造作に転がっていた。

 その青白いタテガミをたなびかせながら少なからずの雷を纏ったドラゴンは、屋根の上にとどまりじっと来るべき時を待っている。

 そして、エルナード達が到着した――。

「これは……ドラゴンってのはこんな規格外の力を備えてるのか?」

エルナードは目の前の光景に驚愕し、目を見はった。

「いったい、何でこんな事に? みんな強かったじゃないか……」

「エル……」

 その時奥から聞こえた声に、エルナードはすぐさま反応し駆けつけた。

「ユウカ! 大丈夫か? こんなひどいことになって……。これじゃ、あいつの……あいつの帰るところが……。…………!」

 エルナードは涙ぐんできた瞳を右手でぬぐい、1つの約束を決めた。

「ユウカ、安全なところまで行って、待っててくれ。あのドラゴンは俺が倒す」

「ダメよエル。あいつは人の敵うような相手じゃ――」

「関係ない。この場所を守る。それだけで十分だ……!」

 ユウカを安全な物影に連れて行き、エルナードはリノとセンスの元まで戻ると、ドラゴンに顔を向けた。サンダーボルト・ドラゴンはそんなエルナードたちの準備が整うのを待っていたかのように、ゆっくりと降りてくる。

「センス、力を貸してくれるか?」

「もちろんさ。仲間だろ?」

「そうだったな。それとリノ、お前は下がってろ」

「な、なんでですか? わたしだってじっとしているわけには……」

深刻そうな顔でエルナードに告げられリノは不服そうだ。

「お前は俺の大事な弟子なんだ。それに、お前にはそこらのやつらの手当てを頼みたい」

「……わかりました。絶対、勝ってくださいね」

「当たり前だ……! 行くぜ、センス!」

「ああ。行こう」

 リノは最寄の負傷者の許へ向かい、センスはエルナードの近くへよった。そして、エルナードは、石膏で固めてあった剣を石膏を砕いて取り出し、前に構えた。

 それを見て、サンダーボルト・ドラゴンもまた大地に後ろ足を着くと、エルナード達を凝視し大翼を広げた。

「ギュオオオオォォォォン!!!!」

 耳を劈くような竜の咆哮に空いた手で片耳を防ぎつつ、しっかりと敵を睨みつけたエルナードの瞳は、竜が大口を開く瞬間を確かに見ていた。

「センス!」

エルナードがセンスを押し回避した後、今の今までいたその位置には黒く焦げた跡しか残ってはいなかった。もともとあった瓦礫の山もより細かくなり、少なからず生えていた草花は跡形もなくなっていた。

「悪い助かった。危なかったよ」

「雷のブレス。伝承にも残ってなかったぞ。……あんなのくらったら一貫の終わりだぜ?」

 しかし、そのブレスの脅威の先、1つだけ勝機を見出せたのは運がよかったのか必然的な運命なのか、エルナードとセンスにはそれが見えていた。

「おい、見たか今の?」

「うん。見えたよ。あいつ、ブレスの後、反動で数秒麻痺になる」

 それが、この戦いに勝つ鍵。この鍵に繋げる道は、一体いくつあるのか、その数は、エルナードとセンスの二人だけが知っている。

ご閲覧ありがとうございました。

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