<占拠群突破作戦>
とりあえず決闘じゃ!
「――決闘形式は1対1、能力補正他回復アイテム等禁止、スキルは自由、範囲はこの小屋正面のみだ。いいな?」
「ああ、全然OKだぜ?」
それぞれ武器を構える2人、それをうかがうセンス他数名の《赤い森》ギルドメンバー。
そしてとうとう、視線の交錯からエルナード対ギルド員の男――名をユーリス――との決闘が開始した。
エルナードは得物が短剣とリーチが短いため、できるだけ間合いを狭めて積極的に攻撃していかなければならない。そうでもしなければ、ユーリスの大きな斧にたちまちやられてしまう。いつもの武器ならばあんな斧くらい防げるが、その辺の市場で買ったような短剣では、あまり成果は期待できないのだ。
エルナードの作戦では、基本魔法スキルは使用せず手早く倒すつもりだ。接近から止めまでは魔法スキルを使用せず、最後に軽く使用して終わらせる。そもそもこの戦いはかなり意味不明だ。助けとしてきたのに何故助けられる側から攻撃されなければならないのか……。エルナードは内心そう思いつつ、短剣で少しずつ少しずつ攻撃を加えた。
「くぅっ……」
ユーリスも自分と相手との力量の差を感じ始めたのか、顔にそれらしきものがうかがえる。それでも認めようとせず、防御から攻撃に転じようとするのは、なんともこちらからすると困ったものである。
どうやらユーリスは武器に魔宝石はつけていないらしく、スキルも単発系の小さなものだ。以前戦ったレミネとは違い脳筋ではなさそうだが、それでもここまで力任せだと呆れる。
先ほどから何かを考えてはいるものの、エルナードにはなかなかスキルが当たらないのだ。
「どうしたよ? その程度か?」
「くっ……」
それからエルナードは挑発を続けるも、ユーリスがまったく乗らない事に少し驚いていた。先ほどまで喧嘩っ早くてずっともめてたのに、これだけ挑発されてもまったく挑発に乗らず、冷静に次の手を考えている。完全にエルナードが押しているのに、焦りは見せてもけして負けは譲らない。
エルナードは攻撃を止めると、数歩後退した。
「てめぇ何のつもりだ」
「正々堂々勝負する。全力でな。来い!」
「面白い!」
ユーリスは大振りの斧を後ろへ向け、エルナードに向かって駆けた。それを向かえ打つようにエルナードは短剣を前方へ向け構えた。
《ウィンドリ・テンペスト》は無理だが、他のスキルであの斧を抑えないといけないな。
とうとうエルナードのもとまでたどり着いたユ-リスは、後ろに向けたいた斧を思い切り前方へ振った。狙いはエルナードの急所。そのまま行けばエルナードに直撃する。
だが、不思議なことにユーリスの斧はエルナードに直撃する手前、何かに押されたようにしてふわりと押し戻された。その反動でユーリスは1歩後退し、斧を両手で抑える。
何か、というのは第3者から見ればそれはどう考えてもエルナードの右手に持つ短剣なのだが、ユーリスはすぐにそうではないことに気づいていた。
「……風か?」
「ご名答」
――そして最後の一撃。1歩後退したユーリスを風の纏った拳で殴り飛ばした。ユーリスは1本の大木に打ち付けられ、気を失ったようだ。
「はぁ終わったか。つい本気でやっちゃったけど、バレタかな? センス、とりあえず、あいつの事運んでくれ」
エルナードはセンスにそう言い渡すと、ゆっくりと小屋の中へと入っていった。そして、ユーリスはセンスに運ばれて小屋の中に寝かされた。
「――それで、俺は何をしたらいいんだ?」
小屋に戻ってからしばらくしてユーリスも目を覚まし、エルナードは詳しい話を聞いていた。
「ああ。エルナードには、ギルド占拠群の突破を手伝ってほしいんだ」
「占拠群の突破?」
エルナードは首をかしげた。向こう側には人質もあるからだ。
「ああ。まず、ここにいる数名と共に前衛を叩く。そのうちに地下からギルド内部へ侵入して、団長を救出。そして最後に敵の首謀者を叩いて作戦終了だ。地下からの通路なら、団長他数名しか知らないからな。幸い、その数名全員が今ここにいるからな」
「なるほど」
要するにエルナードは敵の注意を引くためのおとりと言うわけだ。相手も人質には迂闊に手を出せない事からきた強行策。それに地下からという奇襲なら、敵によっぽどのヤツがいない限り、内部から崩せる。敵には人質があるくらいで、大した実力者はいないという話だ。
「わかった。で、決行は?」
「決行は、今夜だ」
「……わかった」
緊張感の漂う空間の中、エルナードがひとつ気掛かりなのが、何故首謀者だったレミネを確保したのにもかかわらずギルド占拠計画が実行されているのか、あいつの他に首謀者になるものがいたのか、それとも、それ以外の何かか……。
どちらにせよ、時は一刻を争うのだろう――。
そんな緊張感に包まれた沈黙を打ち破ったのは、今日の昼ごろ会話をした青髪の少女だった。
「師匠ー! 大変ですよー! ギルドにドラゴンがー!!」
「な、なにー!?」
リノより知らされた驚愕の出来事を前に、エルナードは石膏で固めた剣を背負いなおしリノの案内を受け、小屋を出たのだった。
最近終わり方がどんどん雑になっていて困ってます。
どうやって終わらせたらいいんだろうなー;




